18 / 23
ランチは素敵なテラスで❤️
しおりを挟む
契約書を交わし終わるとホッとした。
——よかった。これならば、なんとかやっていけそうだ。
ユリアは白い革表紙の契約書を胸にギュッと抱きしめる。
「書き加えたいことがあったら遠慮なく言ってくれ」
「ありがとうございます、でも、これでもう十分です」
「これから屋敷を案内しようか?」
「はい、お願いします」
少しは落ち着いて会話もできるようになってきた。
最初に案内してもらったのは屋敷の南側に広がる庭だった。中央に、真っ白な大理石で作られた噴水があって、そのまわりには赤やピンクの可憐な薔薇が咲いている。風がふくたびに花々がゆらゆらと揺れている。
「きれいなお庭ですね」
可愛らしい小鳥の鳴き声を聞きながら、平和な空気に満ちた静かな庭だな、と思った。
「気に入ってくれたら嬉しい——」
「はい、とてもすてきです」
深く息を吸い込むと、春の香りがした。ほんわりと暖かくて幸せな気持ちになれる香りだ。
「屋敷の中は一日では案内できないかもしれない」
「すごく広いですね」
「使っていない部屋が多いんだ」
そんな会話をしながら一階の応接室や二階の客間を見せてもらった。
どの部屋にも大きな暖炉があって、品のいい調度品が並んでいる。
シードロフ家の屋敷は巨大だ。廊下はまるで迷路のようで、ゆっくりと歩きながら部屋を見せてもらっていると、あっという間にお昼になった。
セバスチャンがニコニコとご機嫌な顔でやってきて、庭を見渡せるテラスに案内してくれた。
「お天気がよろしいのでお昼はテラスにご用意いたしました」
白いテーブルクロスがかかった丸いテーブルがある。
そのテーブルの上に用意されていたのは、旨味たっぷりのソースがかかった鴨肉、そしてとろけるように滑らかなマッシュポテトのつけ合わせだ。
——緊張して食べられないかも。
心配したが、ヴィクトルとセバスチャンが穏やかで楽しい会話を続けたので、笑いながら聞いているうちにどんどん食べることができた。
いつもは少食なのに自分でもびっくりするほど食欲が出た。鴨肉もポテトも残さずに食べることができたし、食後に出てきた何種類もの珍しいチーズもたくさん食べたし、香り高い紅茶とイチゴと生クリームのケーキにも手を伸ばした。
こんなに食べたのは初めてかもしれない。
「堅苦しくないほうがいいと思いまして、このようなランチにいたしましたが、お口に合いましたか、ユリアさま?」
「はい、とても美味しくいただきました」
——こんなに幸せでいいのかな?
そう思うほど満ち足りたランチだった。
香り高いアールグレイを飲みながらチラリとヴィクトルを見ると、優しい微笑みが返ってきた。
続く
——よかった。これならば、なんとかやっていけそうだ。
ユリアは白い革表紙の契約書を胸にギュッと抱きしめる。
「書き加えたいことがあったら遠慮なく言ってくれ」
「ありがとうございます、でも、これでもう十分です」
「これから屋敷を案内しようか?」
「はい、お願いします」
少しは落ち着いて会話もできるようになってきた。
最初に案内してもらったのは屋敷の南側に広がる庭だった。中央に、真っ白な大理石で作られた噴水があって、そのまわりには赤やピンクの可憐な薔薇が咲いている。風がふくたびに花々がゆらゆらと揺れている。
「きれいなお庭ですね」
可愛らしい小鳥の鳴き声を聞きながら、平和な空気に満ちた静かな庭だな、と思った。
「気に入ってくれたら嬉しい——」
「はい、とてもすてきです」
深く息を吸い込むと、春の香りがした。ほんわりと暖かくて幸せな気持ちになれる香りだ。
「屋敷の中は一日では案内できないかもしれない」
「すごく広いですね」
「使っていない部屋が多いんだ」
そんな会話をしながら一階の応接室や二階の客間を見せてもらった。
どの部屋にも大きな暖炉があって、品のいい調度品が並んでいる。
シードロフ家の屋敷は巨大だ。廊下はまるで迷路のようで、ゆっくりと歩きながら部屋を見せてもらっていると、あっという間にお昼になった。
セバスチャンがニコニコとご機嫌な顔でやってきて、庭を見渡せるテラスに案内してくれた。
「お天気がよろしいのでお昼はテラスにご用意いたしました」
白いテーブルクロスがかかった丸いテーブルがある。
そのテーブルの上に用意されていたのは、旨味たっぷりのソースがかかった鴨肉、そしてとろけるように滑らかなマッシュポテトのつけ合わせだ。
——緊張して食べられないかも。
心配したが、ヴィクトルとセバスチャンが穏やかで楽しい会話を続けたので、笑いながら聞いているうちにどんどん食べることができた。
いつもは少食なのに自分でもびっくりするほど食欲が出た。鴨肉もポテトも残さずに食べることができたし、食後に出てきた何種類もの珍しいチーズもたくさん食べたし、香り高い紅茶とイチゴと生クリームのケーキにも手を伸ばした。
こんなに食べたのは初めてかもしれない。
「堅苦しくないほうがいいと思いまして、このようなランチにいたしましたが、お口に合いましたか、ユリアさま?」
「はい、とても美味しくいただきました」
——こんなに幸せでいいのかな?
そう思うほど満ち足りたランチだった。
香り高いアールグレイを飲みながらチラリとヴィクトルを見ると、優しい微笑みが返ってきた。
続く
263
あなたにおすすめの小説
捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~
水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。
死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!?
「こんなところで寝られるか!」
極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く!
ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。
すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……?
「……貴様、私を堕落させる気か」
(※いいえ、ただ快適に寝たいだけです)
殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。
捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!
最強βの俺が偽装Ωになったら、フェロモン無効なのに狂犬王子に求愛されました~前世武道家なので物理で分からせます~
水凪しおん
BL
前世は日本の武道家、今世は平民β(ベータ)のルッツ。
「Ωだって強い」ことを証明するため、性別を偽り「Ω」として騎士団へ入団した彼は、その卓越した身体能力と前世の武術で周囲を圧倒する。
しかし、その強さと堂々とした態度が仇となり、最強のα(アルファ)である第一王子・イグニスの目に止まってしまった!
「お前こそ俺の運命の番だ」
βだからフェロモンなんて効かないのに、なぜかイグニスの熱烈な求愛(物理)攻撃を受ける日々に突入!?
勘違いから始まる、武闘派β×最強王子のドタバタ王宮BLファンタジー!
異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!
めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈
社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。
もらった能力は“全言語理解”と“回復力”!
……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈
キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん!
出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。
最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈
攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉
--------------------
※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!
新年に余り物でおせちを作ったら、冷酷と噂の騎士団長様に「運命の番」だと求婚されました
水凪しおん
BL
料理人だった俺が転生したのは、男性オメガというだけで家族に虐げられる不遇の青年カイ。
新年くらいはと前世の記憶を頼りに作ったのは、この世界にはない『おせち料理』だった。
それを偶然口にしたのは、氷のように冷酷と噂される最強の騎士団長リアム。
「お前は俺の運命の番だ」
彼の屋敷に保護され、俺の作る料理が彼の心を溶かしていく。
不器用で、だけどまっすぐな愛情を注いでくれる彼と、美味しい料理で紡ぐ、甘くて温かい異世界スローライフ。
【本編完結】最強魔導騎士は、騎士団長に頭を撫でて欲しい【番外編あり】
ゆらり
BL
帝国の侵略から国境を守る、レゲムアーク皇国第一魔導騎士団の駐屯地に派遣された、新人の魔導騎士ネウクレア。
着任当日に勃発した砲撃防衛戦で、彼は敵の砲撃部隊を単独で壊滅に追いやった。
凄まじい能力を持つ彼を部下として迎え入れた騎士団長セディウスは、研究機関育ちであるネウクレアの独特な言動に戸惑いながらも、全身鎧の下に隠された……どこか歪ではあるが、純粋無垢であどけない姿に触れたことで、彼に対して強い庇護欲を抱いてしまう。
撫でて、抱きしめて、甘やかしたい。
帝国との全面戦争が迫るなか、ネウクレアへの深い想いと、皇国の守護者たる騎士としての責務の間で、セディウスは葛藤する。
独身なのに父性強めな騎士団長×不憫な生い立ちで情緒薄めな甘えたがり魔導騎士+仲が良すぎる副官コンビ。
甘いだけじゃない、骨太文体でお送りする軍記物BL小説です。番外は日常エピソード中心。ややダーク・ファンタジー寄り。
※ぼかしなし、本当の意味で全年齢向け。
★お気に入りやいいね、エールをありがとうございます! お気に召しましたらぜひポチリとお願いします。凄く励みになります!
【土壌改良】スキルで追放された俺、辺境で奇跡の野菜を作ってたら、聖剣の呪いに苦しむ伝説の英雄がやってきて胃袋と心を掴んでしまった
水凪しおん
BL
戦闘にも魔法にも役立たない【土壌改良】スキルを授かった伯爵家三男のフィンは、実家から追放され、痩せ果てた辺境の地へと送られる。しかし、彼は全くめげていなかった。「美味しい野菜が育てばそれでいいや」と、のんびり畑を耕し始める。
そんな彼の作る野菜は、文献にしか存在しない幻の品種だったり、食べた者の体調を回復させたりと、とんでもない奇跡の作物だった。
ある嵐の夜、フィンは一人の男と出会う。彼の名はアッシュ。魔王を倒した伝説の英雄だが、聖剣の呪いに蝕まれ、死を待つ身だった。
フィンの作る野菜スープを口にし、初めて呪いの痛みから解放されたアッシュは、フィンに宣言する。「君の作る野菜が毎日食べたい。……夫もできる」と。
ハズレスキルだと思っていた力は、実は世界を浄化する『創生の力』だった!?
無自覚な追放貴族と、彼に胃袋と心を掴まれた最強の元英雄。二人の甘くて美味しい辺境開拓スローライフが、今、始まる。
婚約破棄された悪役令息は隣国の王子に持ち帰りされる
kouta
BL
婚約破棄された直後に前世の記憶を思い出したノア。
かつて遊んだことがある乙女ゲームの世界に転生したと察した彼は「あ、そういえば俺この後逆上して主人公に斬りかかった挙句にボコされて処刑されるんだったわ」と自分の運命を思い出す。
そしてメンタルがアラフォーとなった彼には最早婚約者は顔が良いだけの二股クズにしか見えず、あっさりと婚約破棄を快諾する。
「まぁ言うてこの年で婚約破棄されたとなると独身確定か……いっそのこと出家して、転生者らしくギルドなんか登録しちゃって俺TUEEE!でもやってみっか!」とポジティブに自分の身の振り方を考えていたノアだったが、それまでまるで接点のなかったキラキライケメンがグイグイ攻めてきて……「あれ? もしかして俺口説かれてます?」
おまけに婚約破棄したはずの二股男もなんかやたらと絡んでくるんですが……俺の冒険者ライフはいつ始まるんですか??(※始まりません)
「オレの番は、いちばん近くて、いちばん遠いアルファだった」
星井 悠里
BL
大好きだった幼なじみのアルファは、皆の憧れだった。
ベータのオレは、王都に誘ってくれたその手を取れなかった。
番にはなれない未来が、ただ怖かった。隣に立ち続ける自信がなかった。
あれから二年。幼馴染の婚約の噂を聞いて胸が痛むことはあるけれど、
平凡だけどちゃんと働いて、それなりに楽しく生きていた。
そんなオレの体に、ふとした異変が起きはじめた。
――何でいまさら。オメガだった、なんて。
オメガだったら、これからますます頑張ろうとしていた仕事も出来なくなる。
2年前のあの時だったら。あの手を取れたかもしれないのに。
どうして、いまさら。
すれ違った運命に、急展開で振り回される、Ωのお話。
ハピエン確定です。(全10話)
2025年 07月12日 ~2025年 07月21日 なろうさんで完結してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる