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ランチは素敵なテラスで❤️
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契約書を交わし終わるとホッとした。
——よかった。これならば、なんとかやっていけそうだ。
ユリアは白い革表紙の契約書を胸にギュッと抱きしめる。
「書き加えたいことがあったら遠慮なく言ってくれ」
「ありがとうございます、でも、これでもう十分です」
「これから屋敷を案内しようか?」
「はい、お願いします」
少しは落ち着いて会話もできるようになってきた。
最初に案内してもらったのは屋敷の南側に広がる庭だった。中央に、真っ白な大理石で作られた噴水があって、そのまわりには赤やピンクの可憐な薔薇が咲いている。風がふくたびに花々がゆらゆらと揺れている。
「きれいなお庭ですね」
可愛らしい小鳥の鳴き声を聞きながら、平和な空気に満ちた静かな庭だな、と思った。
「気に入ってくれたら嬉しい——」
「はい、とてもすてきです」
深く息を吸い込むと、春の香りがした。ほんわりと暖かくて幸せな気持ちになれる香りだ。
「屋敷の中は一日では案内できないかもしれない」
「すごく広いですね」
「使っていない部屋が多いんだ」
そんな会話をしながら一階の応接室や二階の客間を見せてもらった。
どの部屋にも大きな暖炉があって、品のいい調度品が並んでいる。
シードロフ家の屋敷は巨大だ。廊下はまるで迷路のようで、ゆっくりと歩きながら部屋を見せてもらっていると、あっという間にお昼になった。
セバスチャンがニコニコとご機嫌な顔でやってきて、庭を見渡せるテラスに案内してくれた。
「お天気がよろしいのでお昼はテラスにご用意いたしました」
白いテーブルクロスがかかった丸いテーブルがある。
そのテーブルの上に用意されていたのは、旨味たっぷりのソースがかかった鴨肉、そしてとろけるように滑らかなマッシュポテトのつけ合わせだ。
——緊張して食べられないかも。
心配したが、ヴィクトルとセバスチャンが穏やかで楽しい会話を続けたので、笑いながら聞いているうちにどんどん食べることができた。
いつもは少食なのに自分でもびっくりするほど食欲が出た。鴨肉もポテトも残さずに食べることができたし、食後に出てきた何種類もの珍しいチーズもたくさん食べたし、香り高い紅茶とイチゴと生クリームのケーキにも手を伸ばした。
こんなに食べたのは初めてかもしれない。
「堅苦しくないほうがいいと思いまして、このようなランチにいたしましたが、お口に合いましたか、ユリアさま?」
「はい、とても美味しくいただきました」
——こんなに幸せでいいのかな?
そう思うほど満ち足りたランチだった。
香り高いアールグレイを飲みながらチラリとヴィクトルを見ると、優しい微笑みが返ってきた。
続く
——よかった。これならば、なんとかやっていけそうだ。
ユリアは白い革表紙の契約書を胸にギュッと抱きしめる。
「書き加えたいことがあったら遠慮なく言ってくれ」
「ありがとうございます、でも、これでもう十分です」
「これから屋敷を案内しようか?」
「はい、お願いします」
少しは落ち着いて会話もできるようになってきた。
最初に案内してもらったのは屋敷の南側に広がる庭だった。中央に、真っ白な大理石で作られた噴水があって、そのまわりには赤やピンクの可憐な薔薇が咲いている。風がふくたびに花々がゆらゆらと揺れている。
「きれいなお庭ですね」
可愛らしい小鳥の鳴き声を聞きながら、平和な空気に満ちた静かな庭だな、と思った。
「気に入ってくれたら嬉しい——」
「はい、とてもすてきです」
深く息を吸い込むと、春の香りがした。ほんわりと暖かくて幸せな気持ちになれる香りだ。
「屋敷の中は一日では案内できないかもしれない」
「すごく広いですね」
「使っていない部屋が多いんだ」
そんな会話をしながら一階の応接室や二階の客間を見せてもらった。
どの部屋にも大きな暖炉があって、品のいい調度品が並んでいる。
シードロフ家の屋敷は巨大だ。廊下はまるで迷路のようで、ゆっくりと歩きながら部屋を見せてもらっていると、あっという間にお昼になった。
セバスチャンがニコニコとご機嫌な顔でやってきて、庭を見渡せるテラスに案内してくれた。
「お天気がよろしいのでお昼はテラスにご用意いたしました」
白いテーブルクロスがかかった丸いテーブルがある。
そのテーブルの上に用意されていたのは、旨味たっぷりのソースがかかった鴨肉、そしてとろけるように滑らかなマッシュポテトのつけ合わせだ。
——緊張して食べられないかも。
心配したが、ヴィクトルとセバスチャンが穏やかで楽しい会話を続けたので、笑いながら聞いているうちにどんどん食べることができた。
いつもは少食なのに自分でもびっくりするほど食欲が出た。鴨肉もポテトも残さずに食べることができたし、食後に出てきた何種類もの珍しいチーズもたくさん食べたし、香り高い紅茶とイチゴと生クリームのケーキにも手を伸ばした。
こんなに食べたのは初めてかもしれない。
「堅苦しくないほうがいいと思いまして、このようなランチにいたしましたが、お口に合いましたか、ユリアさま?」
「はい、とても美味しくいただきました」
——こんなに幸せでいいのかな?
そう思うほど満ち足りたランチだった。
香り高いアールグレイを飲みながらチラリとヴィクトルを見ると、優しい微笑みが返ってきた。
続く
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