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異世界転移したらスパダリなオークに出会った。
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言い訳すると、久しぶりのきちんとしたベッドだったから……。
突然の異世界転移(たぶん)で自宅から深い森に飛ばされ、訳もわからず始まった手探りのサバイバル生活3日目。
獣道がやっと轍のある人の手の入った道にぶつかり、ふらふらと歩いて見つけたのは小さな村だった。
言葉も通じずお金もなく、身振り手振りで遭難を訴える不審な私を、よくわからんが事情は後でいいからという心配顔で泊めてくれた優しい宿屋の、あの素敵なベッド。木の枝がチクチク飛び出してくる葉っぱのベッドでもなく、じめじめした枯れ葉や土から変な水分が滲み出てくる洞穴のベッドでもない。
古いけど、清潔な布で作られた、きちんとしたベッド!
その喜びと安心感から、うっかり爆睡していたことは否めない。否めないというか、肉体的にも精神的にも仕方ないじゃない!と開き直ってもいい状況だったと思う。
……確かに、夢うつつにも悲鳴が聞こえたり、ドカバカと破壊音みたいなものが聞こえていたかもしれない。更には、身体を動かされたり、持ち上げられた感覚もあった気もする。
……寝汚いほどにたっぷりと、日もてっぺんに昇りきった頃、ようやく目覚めた私が見たのは、巨体と巨体とが激しくぶつかり合う、謎生物同士の壮絶な肉弾戦の最中だった。
プギィとか、グォォとか聞こえるのは鳴き声だろうか。
褐色や黒い体毛に覆われ、二足歩行の背丈は2メートルくらいあるように見える。布や皮で出来てる粗末な衣類を身に纏い、ずんぐりむっくりした体型で、三角に垂れたペラペラな耳と特徴的な鼻の……あれは……えぇと、そのう……。
……………………………ブタ?……いや、牙があるから、イノシシか?……イノシシの獣人……ていうより、ゲームとかで「オーク」と呼ばれるヤツっぽい生き物。
それが、森のひらけたところで押し合いへし合いの本気相撲をとっている……ようだった。何匹いるのかわからないけれど、よく見ると一匹VS多数の構図になってるようだ。
嘶きながら次々と襲いかかるオーク(仮)を、鷲掴みしては上手投げし、張り倒し、すくい投げ……一歩も退かずに相手しているのは、黒い毛並みでひときわ身体の大きいオーク(仮)だ。めっちゃ強い。たくさんの子どもに囲まれていなしてるお相撲さんのごとき圧倒的強者。
唖然としたまま見ていると、やっと謎のぶつかり稽古が終わったのか、勝ち残った黒いオーク(仮)を残し、他のオーク(仮)はゼェハァ言いながら次々と頭を下げていく。
……あの黒オーク(仮)が優勝したのかな?
黒オーク(仮)改め、横綱オーク(仮)は、平服する他のオーク(仮)を見渡してから「グォォオ!!」と迫力ある声をあげた。
勝どき?勝どきなのか??
よくわからないけど、とりあえず「オメデトー」と拍手を贈る。
……オークたち(仮)の視線が私に集まった。
「あ」
いやちょっと待って。ここどこ?
私は昨日やっと人里にたどり着いて、文明の素晴らしさを感じながらベッドで寝たんじゃなかったか?
なんでまた森の中にいて、こんなオーク(仮)に囲まれてるの?
寝ぼけていた頭が一気にクリアになる。
「オーク」って言ったら、異世界あるあるでエルフとか拐ってアレコレしちゃう展開なかったか?あれってゴブリンだっけ?え、私、拐われた?村はどうなった?
パニックになる私に、横綱オーク(仮)がゆっくり近付いてくる。のっしのっし擬音がしそうな巨体。まじで自動販売機より大きい。それが地面に座る私の前に立ち止まり、ゆっくりと膝をつく。
膝をついてなお、見上げるほどに大きな丸っこい身体を前に呆然とする私と、横綱オーク(仮)の視線がぶつかった。近くで見るとずいぶん野性味溢れる顔立ちだけど、目付きは予想外に知的な印象だ。
「フゴ」と小さく鼻を鳴らし、横綱さんは私の頭をそっと撫でた。その手付きも驚くほどに優しい。
勝手にアテレコするならば、「よぉ、お嬢ちゃん。やっとお目覚めかい?」的な感じか。……うーん、これはなかなかのイケオーク……。
私の緊張が状況がわからないためであり、オーク(仮)への恐怖によるものでないと伝わったのか、横綱さんはそっと私を持ち上げ、幼児にさせるような腕ベンチ型の抱っこをしてきた。
さっきまで激しい相撲?取っ組み合い?をしていたのだから人間なら汗だくだろうに、ちょっと堅い毛並みの腕はさらっとしていて、肉厚な触り心地。
私を抱えて移動し始めた横綱さんを囲む、先ほど負けたオーク(仮)たちは地面に転がされまくったせいか、横綱さんに比べるとボロボロでヘロヘロに見える。大きな怪我はなさそうだが、結構本気のバトルだったようだ。
きっと何か重要な意味のあるイベントだったのだろう。
ぞろぞろと森の中を移動するオーク(仮)と私。
この世界がどういうところなのかわからないので、オーク(仮)が人間たちから知的種族として認知されてるのか知らないけど、ちゃんと統率のとれた社会性ある種族のようだ。
夢うつつに聞いたアレコレや、私がここにいる事態から想定される「人間の村を襲って略奪行為をしている」可能性もあるけど、少なくとも今すぐ私が身の危険を感じるような雰囲気はない。
「……ねぇ、どこ行くの?」
言葉は通じないだろうなぁと思いつつも横綱さんに話しかけてみると、私をチラリと見た横綱さんは通りすがりの木から然り気無く林檎のようなものをもぎ取り、私に渡してきた。
「あ、ありがとう」
はい、やっぱり通じませんよね。でも水分もとれる食べ物はありがたい。
渡された林檎的な果物は私の知る林檎の2倍はある大きさ。両手で持つ私の頭を再びそっと指先で撫で、横綱さんは「フゴ」と言う。
勝手にアテレコするならば、「心配ないから、大人しくしてな」ってとこか。……うーん、イケオーク……。
これは、突然異世界転移してしまった私が、スパダリなオーク(仮)に何故か溺愛されるお話。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※
人間の村を襲う凶悪な魔獣オーク族が、不思議な魔力を持つ異世界人を見つけた。
異世界人を誰が得るかを決めるために勝負し、結果的に横綱さん(「私」命名)が権利を得た。
この世界では異世界人は一族に繁栄をもたらす伝承があり、ある程度の知的生命体であれば異世界人というだけで大切にされる。(「私」はこの世界の言語がわからないので知らないまま)
突然の異世界転移(たぶん)で自宅から深い森に飛ばされ、訳もわからず始まった手探りのサバイバル生活3日目。
獣道がやっと轍のある人の手の入った道にぶつかり、ふらふらと歩いて見つけたのは小さな村だった。
言葉も通じずお金もなく、身振り手振りで遭難を訴える不審な私を、よくわからんが事情は後でいいからという心配顔で泊めてくれた優しい宿屋の、あの素敵なベッド。木の枝がチクチク飛び出してくる葉っぱのベッドでもなく、じめじめした枯れ葉や土から変な水分が滲み出てくる洞穴のベッドでもない。
古いけど、清潔な布で作られた、きちんとしたベッド!
その喜びと安心感から、うっかり爆睡していたことは否めない。否めないというか、肉体的にも精神的にも仕方ないじゃない!と開き直ってもいい状況だったと思う。
……確かに、夢うつつにも悲鳴が聞こえたり、ドカバカと破壊音みたいなものが聞こえていたかもしれない。更には、身体を動かされたり、持ち上げられた感覚もあった気もする。
……寝汚いほどにたっぷりと、日もてっぺんに昇りきった頃、ようやく目覚めた私が見たのは、巨体と巨体とが激しくぶつかり合う、謎生物同士の壮絶な肉弾戦の最中だった。
プギィとか、グォォとか聞こえるのは鳴き声だろうか。
褐色や黒い体毛に覆われ、二足歩行の背丈は2メートルくらいあるように見える。布や皮で出来てる粗末な衣類を身に纏い、ずんぐりむっくりした体型で、三角に垂れたペラペラな耳と特徴的な鼻の……あれは……えぇと、そのう……。
……………………………ブタ?……いや、牙があるから、イノシシか?……イノシシの獣人……ていうより、ゲームとかで「オーク」と呼ばれるヤツっぽい生き物。
それが、森のひらけたところで押し合いへし合いの本気相撲をとっている……ようだった。何匹いるのかわからないけれど、よく見ると一匹VS多数の構図になってるようだ。
嘶きながら次々と襲いかかるオーク(仮)を、鷲掴みしては上手投げし、張り倒し、すくい投げ……一歩も退かずに相手しているのは、黒い毛並みでひときわ身体の大きいオーク(仮)だ。めっちゃ強い。たくさんの子どもに囲まれていなしてるお相撲さんのごとき圧倒的強者。
唖然としたまま見ていると、やっと謎のぶつかり稽古が終わったのか、勝ち残った黒いオーク(仮)を残し、他のオーク(仮)はゼェハァ言いながら次々と頭を下げていく。
……あの黒オーク(仮)が優勝したのかな?
黒オーク(仮)改め、横綱オーク(仮)は、平服する他のオーク(仮)を見渡してから「グォォオ!!」と迫力ある声をあげた。
勝どき?勝どきなのか??
よくわからないけど、とりあえず「オメデトー」と拍手を贈る。
……オークたち(仮)の視線が私に集まった。
「あ」
いやちょっと待って。ここどこ?
私は昨日やっと人里にたどり着いて、文明の素晴らしさを感じながらベッドで寝たんじゃなかったか?
なんでまた森の中にいて、こんなオーク(仮)に囲まれてるの?
寝ぼけていた頭が一気にクリアになる。
「オーク」って言ったら、異世界あるあるでエルフとか拐ってアレコレしちゃう展開なかったか?あれってゴブリンだっけ?え、私、拐われた?村はどうなった?
パニックになる私に、横綱オーク(仮)がゆっくり近付いてくる。のっしのっし擬音がしそうな巨体。まじで自動販売機より大きい。それが地面に座る私の前に立ち止まり、ゆっくりと膝をつく。
膝をついてなお、見上げるほどに大きな丸っこい身体を前に呆然とする私と、横綱オーク(仮)の視線がぶつかった。近くで見るとずいぶん野性味溢れる顔立ちだけど、目付きは予想外に知的な印象だ。
「フゴ」と小さく鼻を鳴らし、横綱さんは私の頭をそっと撫でた。その手付きも驚くほどに優しい。
勝手にアテレコするならば、「よぉ、お嬢ちゃん。やっとお目覚めかい?」的な感じか。……うーん、これはなかなかのイケオーク……。
私の緊張が状況がわからないためであり、オーク(仮)への恐怖によるものでないと伝わったのか、横綱さんはそっと私を持ち上げ、幼児にさせるような腕ベンチ型の抱っこをしてきた。
さっきまで激しい相撲?取っ組み合い?をしていたのだから人間なら汗だくだろうに、ちょっと堅い毛並みの腕はさらっとしていて、肉厚な触り心地。
私を抱えて移動し始めた横綱さんを囲む、先ほど負けたオーク(仮)たちは地面に転がされまくったせいか、横綱さんに比べるとボロボロでヘロヘロに見える。大きな怪我はなさそうだが、結構本気のバトルだったようだ。
きっと何か重要な意味のあるイベントだったのだろう。
ぞろぞろと森の中を移動するオーク(仮)と私。
この世界がどういうところなのかわからないので、オーク(仮)が人間たちから知的種族として認知されてるのか知らないけど、ちゃんと統率のとれた社会性ある種族のようだ。
夢うつつに聞いたアレコレや、私がここにいる事態から想定される「人間の村を襲って略奪行為をしている」可能性もあるけど、少なくとも今すぐ私が身の危険を感じるような雰囲気はない。
「……ねぇ、どこ行くの?」
言葉は通じないだろうなぁと思いつつも横綱さんに話しかけてみると、私をチラリと見た横綱さんは通りすがりの木から然り気無く林檎のようなものをもぎ取り、私に渡してきた。
「あ、ありがとう」
はい、やっぱり通じませんよね。でも水分もとれる食べ物はありがたい。
渡された林檎的な果物は私の知る林檎の2倍はある大きさ。両手で持つ私の頭を再びそっと指先で撫で、横綱さんは「フゴ」と言う。
勝手にアテレコするならば、「心配ないから、大人しくしてな」ってとこか。……うーん、イケオーク……。
これは、突然異世界転移してしまった私が、スパダリなオーク(仮)に何故か溺愛されるお話。
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人間の村を襲う凶悪な魔獣オーク族が、不思議な魔力を持つ異世界人を見つけた。
異世界人を誰が得るかを決めるために勝負し、結果的に横綱さん(「私」命名)が権利を得た。
この世界では異世界人は一族に繁栄をもたらす伝承があり、ある程度の知的生命体であれば異世界人というだけで大切にされる。(「私」はこの世界の言語がわからないので知らないまま)
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