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シルバ・アリウム、剣聖と成る
三十四話
しおりを挟む「……おや」
後を付ける輩がどんな者かと思えば、小走りで駆けて来たのは可憐な少女。
彼女は私がさっきまでいた場所をあたふたと見回し、困った顔で左右に振り向く。
(流石に……悪者では、ないよね?)
あまりにもほがらかとした人物に、一応の警戒はしつつも彼女の背後に静かに降り立つ。
そして、様子見を兼ねた先制で声を掛けた。
「誰かお探しですか」
「っへ……ぁ、シ、シルバ王女っ!?すみませんっ…!!」
「あー……安心してください、手荒な真似はしません、ですが質問には答えてください、
何故私を追うような事を?貴方の目的は?」
怯えたように声を震わせ、絞るように答えた彼女の瞳はどこか見覚えのある眼差しであり、とても綺麗で美しい。
「その身を知っての御無礼、謝って済む問題ではありませんがどうかお許しください、
……私はただ、貴方様と、王女様とお話がしたく機を伺っていたのです、
結果として御身にご不快な想いをさせてしまい、大変申し訳ありません……」
「なるほど……、どうやら込み入った事情がありそうですね、
でしたら、そこのお店でお茶でもしながらお話しません?」
「す、すみません……寛容なお心に感謝致します」
丁度気になっていた茶葉の良い香りがするお店に入り、暖かい紅茶を頼んで席に着く。
落ち着いた状況で、改めて彼女を見ると目線が重なり、私は微笑んで話題を切り出す。
「……さて、どうです?ちょっと落ち着きましたか?」
「はい……ありがとうございます」
「いえいえ、こちらもちょっと怖がらせてしまいましたし、
あまり気になさらないでください、
それに見たところ……高貴な生まれとお見えしますが?」
身に着けている衣服や装飾、そして佇まいからその所作までとても流麗。
であれば、私の正体を知って内情を探るにしても、どこぞの御令嬢がそれを実行するのは不自然である。
「―――正体を隠す様になってしまい申し訳ありません、
わたくし、シュバルツ侯爵の婚約者であり、シバ公爵の娘、ネネと申します」
予想外の正体に驚きを隠しつつ、程よい暖かさになった紅茶を口に含む。
「私の正体を知っていたのもシュバルツ殿を介して訊いたのですね、
ですが……なにゆえ私に接触を?彼が貴方に命令したとは考えにくいですが」
「ち、違いますっ……、この行動も、王女様の正体を知ったのも彼は関係ありません、
全部……私の独断です、どうしても王女様にお伝えしたい事があり、
失礼を承知で近寄らせて頂きました」
「伝えたい事、ですか……それは貴方の父、シバ公爵に関する事ですか?」
「…………はい」
重く、何かを決意した彼女は語りだす。
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