蒼き春の精霊少女

沼米 さくら

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精霊ティーパーティ(4)

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 そのとき、大気は凍てついた。

 急低下した気温。空気中の水分はが霜となって、視界を白く染め上げる。
 凍り付く世界。ただ一人、突然天空から舞い降りた一人の精霊だけが、その場を支配する。
「空を裂け、シグルドリーヴァ」
 動きの止まった眼前の怪物。その胸部が、一撃で切り裂かれて。
 黒く染まった、水晶玉のようなものが、切り口から出現する。
 ――もしかして、これは精霊のコアと同じもの、だろうか。
 精霊は、コアが破壊されない限り死なない。ならば、コアが破壊されれば。
 つじつまが合う。最初にアキちゃんと会ったとき、魚介人類に後ろから刺されて消えかかっていた。
 もしも、このカマキリが同じ性質を示すのならば。
 一か八かだけど、勝ち目が見えた。
 瞬間、火炎が僕を巻き込む。硬直が解ける。
 ……礼は後で言おう。
 一瞬が勝負だ。敵の身体が修復される、その前に。
 僕は大きなアイスピックを出す。
 そして、跳躍。獲物を振り上げ――。

 そのコアに突き刺した。

 ひび割れるその球体。シンクロするように、修復されかかっていた怪物の黒い身体に、白いひびが広がっていき。
 僕は悟る。
「ビンゴだ」
 そして、音を立てて、球体は割れた。
 悲鳴。それとともに、怪物の身体は形を保てなくなって崩れ落ちていく。
 僕は落下し、土の地面に尻から着地する。
 終わった……。
 座りながら息を吐く僕に、差し伸べられた小さな手。
「……大丈夫か?」
「ああ……うん。助かったよ、クイーン」
 ふふん、と笑う少女。憑き物が取れたみたいなすがすがしい笑顔だ。
 僕はその手を取って、立ち上がり。
 少女は息を吸ってオーディンのほうを向いた。
「わしは魚介人類陣営を代表して、精霊への惨殺行為を謝罪し、今後一切、精霊への襲撃を禁じさせるとともに……魚介人類と精霊との友好関係を望みたい」
「理由は?」
「……わしの、新たな理想――誰も傷つかない世界の構築のため、じゃ」
 瞳を輝かせて語られるそれは、荒唐無稽な少女の夢。
「理想はあくまで理想じゃ。きっと、そうやすやすと実現できはせぬ。けれど、いつか誰も戦わなくていい世界ができるならば、誰も傷つかずに、誰も殺されたりせずに生きていけるならば……そんな世界を、わしは見てみたいのじゃ」
「ふふ、いかにも幼い考えね。でも……一考する価値はあるわ」
 オーディンは笑った。笑って、少女に手を差し出す。
「今夜はうちに泊まりなさい。停戦条約についての会談よ」

 そんな様子を横目に、僕は周りを見渡して、探す。さっき僕らの窮地を救い出した白い髪の女の子。
「……なにを探している」
「うわ!?」
 背後から制服姿のさっきの少女――よく見たら、学校で同じクラスだった霜田さんだ――が、僕の背後から話しかけていた。
「なにを」
「わかった! わかったから! 探してたの君だから!!」
 そう言ってみたら、霜田さんは目を真ん丸にした。
「何故?」
「い、いや……なんで僕らを助けたのかなって」
 言うと、彼女は息を吸って。
「気配である。私の能力は見たことのある精霊の能力を一部使用できる能力。そのうち『悪意を感じる』能力によって、感知した悪意の気配の位置を探り」
 それはもう長い長い説明であった。
 要約すると。
 まず、悪意を感じる能力で感じた悪意をたどって戦闘中の僕らを発見。いくつかの精霊の能力を活用して、僕らをサポートしたということらしい。
「って、それはいきさつだろ……。そもそもなんで僕らに加勢しようとしたんだい?」
「……人類の、救済」
 なんかものすごいことを言い出した……。
 軽くドン引きする僕に、また背後から声。
「つまりは人助けってことよ」
「でじゃぶっ!?」
 勢いをつけて振りかえると、ゴンっと鈍い音。
 眼前には、鼻血を垂らして白目をむくオーディン。というかウズさん。
 ……振り向いた拍子に顔がぶつかっただけでこうはならんやろ。いやなっとるやろがい。
 そのままぶっ倒れるウズさん。え、まじ?
「その精霊は身体があまりにも脆かったのである」
「説明はいいからっ! 早く何とかしないと……」
 あたふたしている僕の足を、ウズさんは最期の力でつかんだ。
「……あし、た……生徒会室に……きな、さ……」
 がくっ。彼女はそこで力尽きた。
「ウズさぁぁぁぁん!!」

『何の茶番ですかこれ』
 僕の中で、アキちゃんが静かにあきれていた。
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