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【リクエスト2】
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※他の投稿サイトにて記念リクエスト募集し、抽選したものです。
リクエスト内容
[栗河 凪メインのお話]
です。
ごゆるりとお楽しみください。
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『◯◯高校に行きなさい』
---はい、母さん---
『テストは満点を取りなさい』
---はい、母さん---
『貴方はお兄さんでしょ、甘えないで』
---……はい、母さん---
俺は前世では、両親に恵まれなかった。
今風に言ったら『親ガチャ失敗』とか言うのかな。
俺の前世の家は良い家とは言えず、俺が幼稚園に通ってる時には両親が離婚。
それからすぐに母は新しい男と再婚して子供を産んだ。
その時から母は俺に『しっかりした会社に入って金を入れなさい』と毎日言うようになった。
まだ子供だからわからない、はあの人には通用しない。
わからないなら勉強しなさい。
わからないからって甘えるな。
勉強しなさい。
テスト100点取りなさい。
良い高校行きなさい。
家を出て稼いで来なさい。
産んでやった恩を返しなさい。
そう言われる俺の隣で母や義父の愛を全身で受けた弟がいた。
弟は俺に懐いていたけど、俺は弟が憎くて仕方なかった。
可愛い私の子
貴方は何も心配しなくていいのよ
愛してるわ
無理しなくて良いの
好きなことをしなさい
お小遣い欲しいなら言いなさいね
そう優しく言われている弟が嫌いだった。
兄ちゃん兄ちゃんと、何も知らずに俺に懐いてくるアイツが嫌いだった。
だから俺は高校に上がったらすぐに寮に入った。
バイトOKの高校に入学し、バイトを沢山した。
…勿論、母や義父からの催促は沢山来るが収入のほんの一部だけ渡した。
勉強を頑張ってるから、そう言い訳して。
自分の携帯料金や食費、日用品だけでも手一杯なのに親に渡す金なんて沢山あるわけがない。
そんな中で、友達が貸してくれるゲームは俺の癒しとなった。
自分で買えない状況なのだと理解してくれている友達が携帯ゲーム機といくつかのゲームを貸してくれた。
それを学校、バイトの休憩中、家でやるのが俺の楽しみであった。
格闘ゲーム、恋愛シュミレーションゲーム、RPG……ジャンルは様々だ。
しかし、俺が一番気に入ってたのは友達がネタで貸してくれたBLゲームだった。
俺自身、男同士でどうなるとか考えたこともなかったし自分が好きになるのも女子ばかりだった事もあり、最初は純粋にどんなものかと好奇心のままに始めたのがきっかけだ。
…その好奇心が、それからの俺の人生を大きく変えた。
「……唯兎」
「お前マジでどハマりしてるじゃん…どんな反応するか見たくて貸しただけのゲームなのに」
「いや本当感謝してる、唯兎に出会わせてくれてありがとう」
ネタでもなんでもなく真面目に言う俺に友達は乾いた笑いを出しながら自分の弁当をつつく。
昼ご飯を一気に食べ終え、残りの時間をゲームをして過ごす。
俺はこのBLゲームの主人公…の、弟であり悪役でもある七海唯兎というキャラに夢中になってしまっていた。
どのルートを進んでも良くて施設送りにされるか、悪ければそこで自らの命を…。
そんな彼の人生はまるで俺のようで
母親に愛されず、兄弟ばかりが愛される。
周りはみんな兄弟ばかりを見て、自分自身を見てくれる人なんていない。
兄弟は自分が欲しいものを全て持っているのに、自分自身には何もない。
そんな彼の足掻きは全て悪い方悪い方へと進み、追い詰められていく彼を見ていると胸が苦しくなってくる。
俺が、そこにいたら君を救ってあげるのに。
君を守ってあげるのに。
そのゲームに唯兎が登場する度に抱きしめてあげたくて。
大丈夫だよ、俺がいるよと。
…彼はゲームのキャラだからそんな事できない、それはわかっていてもそれを望んでしまうのは俺の目にはもう彼しか写っていないからかもしれない。
「…はぁ、唯兎…」
「…お前もう唯兎の祭壇作る勢いだな」
「祭壇?」
「ほら、よくオタクが推しの祭壇って言ってグッズを大々的に並べてるだろ?唯兎のグッズとかあったらやりそうだな」
唯兎の祭壇…?なにそれ作りたい。
しかしこのゲームはBLゲームであり、グッズを売り出す程の人気はないようだ。
残念がる俺にそのゲームやるからそんな悲しそうな顔すんな、と言われた俺はその言葉に驚いて友達の顔をガン見してしまう。
「なんならそのゲーム機もやるよ、今流行りのやつ買ったからそっちしかやってねーし」
「…いくら?今月の生活費で足りるかな…」
「お前の財布事情知ってるのに金取るわけねーだろ、俺に勉強教えてくれれば良いよ」
ニッと笑いながら言う友達にめちゃくちゃ感謝した後でめちゃくちゃスパルタな勉強会を開いたのは俺なりの最大級のお礼だ。
友達のおかげでずっとずっと唯兎を見ていられる。
それでも考えるのは唯兎の幸せについて。
俺は今、唯兎から幸せを貰っているが唯兎の幸せはどこにあるのだろう。
母親にも愛されず、周りにも愛されず。
その悲しい感情は全て身近にいた兄へ向けることしか知らず、その結果攻略対象達によって家からも追い出されてしまう可哀想な唯兎。
「…そうだ」
唯兎は施設送りにされた後、自らの首を吊って悲しい最期を送るエンディングがある。
俺ももうこの世に未練なんてない、有り得ない話だとは思うし限界オタクじゃないんだからと友達にも笑われそうな事だけど…唯兎と同じ最期を迎えたら、転生とか…。
…なんて、有り得なさすぎて寒くなってきた。
1人家で乾いた笑いをこぼした後用意していたロープに首を通す。
転生なんて出来なくてもいい。
彼と…唯兎と同じ最期を迎えられるなら俺はそれだけで幸せだと、そう思うんだ。
俺のズボンのポケットには友人からもらったゲーム機とソフト。
その画面には唯兎の最期を彩ったワンシーンのスチル。
「…唯兎、俺もそっちに行くよ」
そして俺は足場にしていた椅子をどかした。
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「…懐かしいな」
空は快晴、とても良い天気だ。
自室の窓から空を眺める、今日も暑くなりそうだ。
俺はあの後、首に大きな衝撃と共に意識を飛ばした。
次に目が覚めた時には俺は俺ではなく、あのゲームの攻略対象の『栗河 凪』として生まれ変わっていた。
最初は転生なんてもの信じておらず、名前が一緒なんて不思議な感じだなとしか思っていなかった。
しかし、俺が高校受験の際に教師の口から出た【聖心高校】という名前。
教師に聖心高校のパンフレットを貰い、制服や教室、校舎などよく見てみると明らかにゲームのスチルとして出てきた場所そのものだってのだ。
---奇跡だ
そのパンフレットを握り締め、俺は1人泣いた。
これで俺は本当にあの子を…守ることが出来る。
それから俺は高校受験に力を入れた。
あの子を守る為、OGとしてあの高校に通う事が出来るように聖心高校に入学することを決めた。
親に相談した時かなり驚かれたけども、元々前世からテストの点だけは良かった事もあり両親も行けるところまで頑張れと応援してくれることに…今世の両親は優しくて良かった。
「…そしてついに高校生なのである」
「どうした凪、急過ぎるな」
「なんとなくナレーション入れてみた」
無事聖心高校に入学し、まずやる事。
それは両親が経営する映画館でのアルバイトだった。
ここはゲームでも重要なデートスポットであり、俺のキャラ…栗河が唯兎と照史に出会う場所でもある。
ゲームでは思い出話としか出なかったが、2人が映画を観に来るのは照史が中学3年の時。
照史の話では…
『僕が中学生の時、唯兎の誕生日プレゼントとして映画のチケットをプレゼントしたんだ。…あの時は唯兎も僕を嫌ってなかったから…凪さんと初めて会ったのもその時だったよね』
と、3回目以降のデートに映画館を選択したらそのセリフが聞けるという特別なルートがあった。
これは栗河ルート確定のセリフで、この次のデートで栗河は自分の思いを打ち明ける。
その前兆となるセリフだ。
その時のセリフを思い出せば、俺が今やるべき事…それが段々と見えてくる。
まずは照史や唯兎の先輩となる聖心高校に入学する事。
両親の仕事である映画館にてバイトをする事。
そして…唯兎の記憶に残る事。
最後が一番重要だ。
唯兎の記憶に残りさえすれば何かあった時に俺が会いに行っても偶然出会った顔見知りくらいにはなれる。
初対面で顔を覚えてもらう事を最優先事項として俺は行動を始めた。
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「と、いう事で夏休みは映画館のバイトフルで入るから」
「えー、お前って将来の夢映画館のマスターとかだっけ?」
「いや、映画館で可愛い子と出会うのが夢」
「それただの欲望だわ」
先程からツッコミしまくるコイツは俺の友人であり、バイト仲間の佐久間大和である。
俺が両親の職場でバイトすると伝えた次の日に面接に来た強者だ。なかなかに決断力のある頭のキレるやつ。
同じ職場だからって困ることもない為、俺も歓迎するし両親も人手が足りなかったらしく喜んでいた。
特に夏休みは働きたいとシフトに入る人が多くいるにも関わらずそれでも間に合わないくらいの客数が来るためどうしてもいつも以上に人員が必要なのだ。
俺が「夏休みシフト入りまくるから」と両親に伝えた結果、ちゃんと夏休みの課題をやること、そしてしっかり休むことを約束し沢山のシフトを組んでくれた。
あとは出勤中に2人が来るか、休んでる時に2人が来るか…。
念の為出勤中に来なかった時のことを考えて休みの日も映画館を訪れることを決めてはいるが、それでもこの客数の中見つけられるかどうか。
佐久間とバイトをしながら俺は夏休みのことばかりを考えていた、勿論テストの点数はしっかり取っている為両親も教師もバイトに多く入っていることに対して文句など言えるわけもなく、そのまま日数だけが過ぎていった。
「そして待ちに待った夏休み…っ!出会いの季節だな」
「まぁ間違ってないと思うけどお前は違う気がするわ」
「なんで、俺は出会いのためにこの季節を待ち望んできたんだぞ」
相変わらず佐久間とシフトに入り、レジに立ってみたり誘導に回ってみたり食品提供に回ってみたりと様々なことをしていた。
いつの間にやら俺はここで[店長の息子]という肩書きが付いてしまっており俺が少し口を出せばそれが通ってしまうようになった。
それを悪用するつもりなどなく、普通の高校生バイトと同じように過ごした。
…しかし、残念ながら唯兎には出会えなかった。
夏、と断定してシフトに入っていたがゲームの照史は正確な時期は伝えておらず【唯兎の誕生日】と記していた。
唯兎の誕生日は夏、そしてヒントとしてもう一つ出ていたのは照史が中学生出会ったこと。
俺はまだ高校1年生、そして照史は中学1年だろう。
今年がダメならあと2年。
あと2年頑張れば、唯兎に栗河として出会えるのだ。
しかし、今年の夏に期待していた俺は思ってた以上にショックだったのか夏休み明けすぐに熱を出して寝込んでしまった。
両親には心配をかけたが、俺はゆっくり休みながら傷心中の身を誰にもバレることなく宥められることにホッとし、目を閉じた。
「…で、今熱は?」
「……38.7℃…」
「高いな、なんか腹にいれな。林檎擦ってくるか」
夏休み明けから2日過ぎた時、佐久間が家に来た。
LINEでも[大丈夫]とだけ伝えてた筈なのに何故来たのか、なんて事はわざわざ聞かずに佐久間の好きなようにさせる。
佐久間は多分、ただ単純に心配で来てくれたんだろう。
そう、コイツは心配性なんだ。
何かと俺の心配をしてくる、シフトに関しても何度も「入れすぎじゃないか?」「疲れないか?」と言いながらも俺と同じシフトに入っていた。
簡単に言えば、おかん気質なんだろうな。
布団に包まりながらふぅ、と溜め息を吐くと林檎を擦って来た佐久間が扉を開けてベッド横に置いておいた椅子に座り、俺の身体をゆっくりと座らせる手伝いをしてくれた。
正直、身体が重いし怠い。手を貸してくれて助かる。
「食えるか?」
「…食欲はないけど、食べる」
「よし、無理そうなら言えよ。飲むタイプのゼリーも買って来てある」
スーパーの袋をガサガサと漁りながら机の上にスポドリ、ゼリー、冷えピタ、のど飴などを並べていく。
冷えピタは家にもあるだろうし、そんな気を使わなくていいのに。
「…金、払うよ」
「いいよ、とりあえず食える分だけ食って寝て学校来い」
「…ありがと」
一口擦られた林檎を口に入れると、それは一気に喉を通っていく。
林檎が通った後の喉は潤っていて、痛かった喉も少し軽減された気がする。
声に出さずに美味しい、と少しだけ感動してると佐久間はふ、と笑い俺の額に手を当てる。
熱の確認か、と思い軽く目を閉じればその手はそのまま上に上がり俺の前髪を持ち上げる。
…俺、汗ばんでたよな。
一瞬、汗の心配をして目を開けた瞬間。
「…ぁ」
佐久間が俺の額にキスをしていた。
いや、汗気持ち悪いだろ。
何やってんだコイツ。
暑さで気でも狂ったか。
そもそもなんだこの恋愛ゲームみたいな展開
…つまりどういうこと?
離れていく佐久間の顔をアホ面でジッと眺めてみると、少し顔を赤くした佐久間が俺を見つめてくる。
「…弱ってるところにごめん、でも…俺伝えたくて来たんだ」
「な、に?」
「俺…お前が、凪が好きだ。全部を頑張ってるところ、その頑張りを人に悟られまいとしてるところ…そして、前から思っている子が変わらないところ」
なんだコイツ。
佐久間に唯兎の話をした事はない、なのになんで俺がずっと一途に想っていることを知ってるんだ。
まさか、コイツもゲームの事を知ってる…?
しかし、それは思い違いだったらしい。
「なんで知ってるんだ、って顔してるな。お前のことずっと好きだったんだ、ソイツの…いつか映画館で出会う子の話をしてる時空想の中の話じゃない事くらい気付いてた」
「それ、でも…俺を好きだって…?」
「あぁ、砕ける前提での告白だ。お前、今年の夏にその子と会えなかったのショック過ぎて熱出したんだろ?」
「う、」
そこまでバレてるなんて。
言葉に詰まった俺の頭を優しく、それはもう優しく撫でる佐久間に俺は擦ってくれた林檎を食べることもせず抱えている事しか出来ないでいる。
「夏に向けてさ、いろいろ準備してたお前が可愛かった。ドキドキしててさ、ワクワクしててさ。仕事中も入り口だったり椅子だったり、誘導しながら一人一人を見ててさ。でも仕事はしっかりやってて…見てて俺もソワソワしてた」
「…凄い見てるな…」
「そりゃな、ずっと見てたら気付いたんだよな。好きって事」
甘い視線から逃げるように手元の林檎に目を向けると、その手をギュッと握られる。
…もう、コイツに言わないといけない言葉は決まってるのに。
俺はもう、あの子だけを見ているって…決めてるんだ。
俺はスッと息を擦って佐久間を見つめた。
「…ごめん、俺は…俺はあの子のためにここにいるから。だから、お前の気持ちには…」
「わかってるってば、砕ける前提だって言ったろ?だからそんな泣きそうな顔すんな」
困ったような顔をして俺を撫でる佐久間に、次会った時にはもういつものような関係には戻れないのかな、なんて暗い事を考えてしまう。
佐久間は普通に友人だと思っていた。
だからもしかしたら次会った時にはもう[気まずい]なんて離れられてしまうかもしれない。
無意識に佐久間の服をギュッと握っていたようでその手に更に力が入る。
それを見た佐久間がおかしそうに笑う。
「凪、俺が離れたら寂しい?」
「…そりゃ……まぁ…」
「言葉にして」
俺の頬を押さえながら言う佐久間に、俺は熱がある事を思い出した。
カーっと熱くなる頬は熱によるものなのか、それとも佐久間の手の熱なのか判断できないが…俺は佐久間が離れたら寂しい。
せっかく仲良くなれたのに、なんて簡単な言葉じゃない。
俺の隣はコイツがいい、恋人じゃない…相棒として。
「…ね、凪。俺が離れたら」
「寂しい」
「…だよね」
「うん、寂しい…佐久間がいないの、無理だ」
自然と流れてくる涙は熱によるものだと思い込むことにする。
決して佐久間がいない未来を想像したわけじゃない、ただ熱が上がってしんどくて涙が出ただけだ。
熱い佐久間の手から逃げるように顔を俯かせると、佐久間は小さく笑って俺の手を握る。
「…離れるわけないじゃん、こんなに好きなのに」
「……でも、俺お前の気持ち…っ」
「俺の気持ちは知っててくれたらいいんだよ、俺はお前の幸せの方が大事だ…それがどんな未来だとしても」
軽く俺の額にキスをすると、佐久間はニヤッと笑って立ち上がる。
急なことに額を押さえて佐久間を見上げる事しか出来ないでいると、佐久間は鞄を持ちそのまま部屋から出ようと歩き出した。
「このくらいは許せよ、じゃな」
「ぁ、佐久間…っ」
ひらひら、と手を振りながら扉を閉めた佐久間はそのまま玄関に向かったらしく階段を降りる音が聞こえてくる。
佐久間が俺のことを好き、だなんてまだ夢の中にいるような感覚で現実味がない。
でも、確実に言える事は熱が上がったであろうこと。
林檎をヤケクソに口に放り込み薬を飲む。
もう考えるのは熱下がってからにする、もう疲れた。
佐久間にしてやられた感が拭えず、不貞腐れるように布団に潜り込む。
「…佐久間の、ばぁーか」
目を閉じればすぐに眠気が来る、そう俺は疲れてんだ。
だから佐久間の言葉でこんなにざわつく筈がない。
モゾモゾと寝やすい位置を見つけるとそのまま眠りにつくことにした。
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「そして3年目なわけだけど…」
「去年も会えなくてショックで熱出してたよなー、それも今年は見れないのか」
「うるさいな、もしかしたら嬉しすぎて熱出すかもしれないだろ」
「何それ面白い」
あはは、なんて笑う佐久間が隣にいる。
結果あの後は何も変わらず、熱が下がって学校に行けば当然のように佐久間は出迎えてくれて当然のように俺と話をして、何も変わらないまま俺といる。
唯一変わったところは、何かと俺に触るようになったところ。
頬や額にキスするし、腰を抱くし、何より暇さえあれば俺の唇を弄るようになった。
ふにふにむにむにとされ、乾燥している時にはリップクリームを塗られる。
最初はどう反応するべきか分からず困ったが、今では好きにさせておけばいいかと放っておいている。
そんな佐久間と俺は夏休み中の出勤日である。
今日は例年より暑い日が続き、熱中症には気をつけるようニュースでも連日注意されていた。
唯兎がいないか注意深く見てはいるが、これだけお客さんが多いと見つけるのも難しいのかな…。
小さく溜め息を付いた時、パートのおばちゃんから「お父様から連絡です」と呼ばれてしまった。
…なんだよ、唯兎探さないといけないのに…。
唯兎が見つからない苛立ちに加えて突然の父からの電話、ここから離れている間に唯兎が来たら…帰ってしまったら…。
焦りながらも父の言葉をしっかりメモして対応する。
内容は数枚ポスターの貼り替えをお願いしたい、と言うものだった。
そのポスター数枚の場所を確認し、再びフロアに戻ると佐久間が小走りでこちらに走って来た。
「…お前が探してるっぽい子、今貧血起こしてソファに座ってるぞ」
「…っ!」
バッと佐久間の顔を見るとニヤッと笑い、袋に入った2本のスポドリを渡される。
急に渡されてすぐに唯兎の元に行きたい足と、佐久間に渡された飲み物とで身体がユラユラと揺れてしまう。
そんな俺を見てフハッと吹き出すと、スポドリを指差した後唯兎がいるであろう方向に指を向ける。
「あの子のお兄さんらしき子が既にスポドリを買ってた、でも後から優しい店員のお兄さんがわざわざ買って来てくれたら?その袋は家まで持って帰るだろ?そしたら自然とお前の顔を思い出す、あの子の記憶に残る。どうだ」
ニヤッと笑いながら提案された内容は最高のものだった。
それの為にわざわざ俺にこれを持たせて、唯兎の元に行かせようとする…そんな佐久間に俺は嬉しくなりギュッと軽くハグをしてお礼を言う。
「ありがとう…、行ってくる…っ」
「おう、行って来い」
頭をポンポンとされ、そのまま勢いよく離れると唯兎がいるであろう方向になるべく早足で歩いていく。
ついに、ついに会えるんだ…。
あの子に…俺の生きる理由に…っ!
「体調は大丈夫かな?」
あぁ…
やっと会えた……
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「どうだったよ、お前が待ち望んだ子は」
「……夢みたいだ」
唯兎達と別れた後、俺は佐久間を捕まえて休憩室に入り込んだ。
今はどの時間帯のバイトや社員も休憩時間ではない為逃げ場としては最高だ。
鍵をかけて椅子に座ると佐久間に頭をポンポンと撫でられる。
「良かったな、やっと会えて」
「う、ん…やっと…っや、と…あえ…っ」
ボロボロと止まることなく流れる涙に佐久間は何も言わずにタオルを渡してくれた。
それを受け取り、顔を隠すと更に涙が溢れ出る。
「お、れ…っ本当はこわ、くて…っ唯兎は、もしかしたら来ないかもって…っ!」
「あぁ」
「でも来てくれて、居てくれて…あの子は本当にここに…っ!」
「いたな、あの子」
うっうっ、と泣き声を我慢しながらボロボロと泣きじゃくる俺を隣に座って抱きしめてくる佐久間。
暑い、そう思うのにその温もりに安心してしまう。
唯兎はいた、ちゃんといてくれた。
ただ、その事実が嬉しくて嬉しくて佐久間に縋って止まらない涙をずっと流していた。
「凪、泣くのはこれで終わりだ。お前はやることがあるんだろ?」
「ぅっ、ふぇ…っ!」
「これからが、本当にお前がやりたかったことなんだろ?俺もいる、焦らずやれ」
「……っ、うん…っ」
タオルで涙を拭い、赤くなった目を佐久間に向ける。
変わらないその笑顔に俺もぐちゃぐちゃの顔で笑顔を見せた。
「俺は、唯兎を助けたい。その為に俺はいるから…」
「なら俺はお前の助けになる、1人で背負うなよ」
恒例になった額へのキスに俺はヘラ、と笑い佐久間の額にキスの代わりのデコピンをお見舞いした。
佐久間の気持ちを利用していると、罪悪感もある。
けど、それでも俺は…唯兎のために。
唯兎のためなら、全てを敵に回しても構わない。
「唯兎、必ず助けるからね…」
あの子のふわふわな頭を撫でた掌をギュッと握り締め、誓い新たに俺はこれからを生きていく。
それが、どんなに険しい道でも俺は
そのためにいるのだから
リクエスト内容
[栗河 凪メインのお話]
です。
ごゆるりとお楽しみください。
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『◯◯高校に行きなさい』
---はい、母さん---
『テストは満点を取りなさい』
---はい、母さん---
『貴方はお兄さんでしょ、甘えないで』
---……はい、母さん---
俺は前世では、両親に恵まれなかった。
今風に言ったら『親ガチャ失敗』とか言うのかな。
俺の前世の家は良い家とは言えず、俺が幼稚園に通ってる時には両親が離婚。
それからすぐに母は新しい男と再婚して子供を産んだ。
その時から母は俺に『しっかりした会社に入って金を入れなさい』と毎日言うようになった。
まだ子供だからわからない、はあの人には通用しない。
わからないなら勉強しなさい。
わからないからって甘えるな。
勉強しなさい。
テスト100点取りなさい。
良い高校行きなさい。
家を出て稼いで来なさい。
産んでやった恩を返しなさい。
そう言われる俺の隣で母や義父の愛を全身で受けた弟がいた。
弟は俺に懐いていたけど、俺は弟が憎くて仕方なかった。
可愛い私の子
貴方は何も心配しなくていいのよ
愛してるわ
無理しなくて良いの
好きなことをしなさい
お小遣い欲しいなら言いなさいね
そう優しく言われている弟が嫌いだった。
兄ちゃん兄ちゃんと、何も知らずに俺に懐いてくるアイツが嫌いだった。
だから俺は高校に上がったらすぐに寮に入った。
バイトOKの高校に入学し、バイトを沢山した。
…勿論、母や義父からの催促は沢山来るが収入のほんの一部だけ渡した。
勉強を頑張ってるから、そう言い訳して。
自分の携帯料金や食費、日用品だけでも手一杯なのに親に渡す金なんて沢山あるわけがない。
そんな中で、友達が貸してくれるゲームは俺の癒しとなった。
自分で買えない状況なのだと理解してくれている友達が携帯ゲーム機といくつかのゲームを貸してくれた。
それを学校、バイトの休憩中、家でやるのが俺の楽しみであった。
格闘ゲーム、恋愛シュミレーションゲーム、RPG……ジャンルは様々だ。
しかし、俺が一番気に入ってたのは友達がネタで貸してくれたBLゲームだった。
俺自身、男同士でどうなるとか考えたこともなかったし自分が好きになるのも女子ばかりだった事もあり、最初は純粋にどんなものかと好奇心のままに始めたのがきっかけだ。
…その好奇心が、それからの俺の人生を大きく変えた。
「……唯兎」
「お前マジでどハマりしてるじゃん…どんな反応するか見たくて貸しただけのゲームなのに」
「いや本当感謝してる、唯兎に出会わせてくれてありがとう」
ネタでもなんでもなく真面目に言う俺に友達は乾いた笑いを出しながら自分の弁当をつつく。
昼ご飯を一気に食べ終え、残りの時間をゲームをして過ごす。
俺はこのBLゲームの主人公…の、弟であり悪役でもある七海唯兎というキャラに夢中になってしまっていた。
どのルートを進んでも良くて施設送りにされるか、悪ければそこで自らの命を…。
そんな彼の人生はまるで俺のようで
母親に愛されず、兄弟ばかりが愛される。
周りはみんな兄弟ばかりを見て、自分自身を見てくれる人なんていない。
兄弟は自分が欲しいものを全て持っているのに、自分自身には何もない。
そんな彼の足掻きは全て悪い方悪い方へと進み、追い詰められていく彼を見ていると胸が苦しくなってくる。
俺が、そこにいたら君を救ってあげるのに。
君を守ってあげるのに。
そのゲームに唯兎が登場する度に抱きしめてあげたくて。
大丈夫だよ、俺がいるよと。
…彼はゲームのキャラだからそんな事できない、それはわかっていてもそれを望んでしまうのは俺の目にはもう彼しか写っていないからかもしれない。
「…はぁ、唯兎…」
「…お前もう唯兎の祭壇作る勢いだな」
「祭壇?」
「ほら、よくオタクが推しの祭壇って言ってグッズを大々的に並べてるだろ?唯兎のグッズとかあったらやりそうだな」
唯兎の祭壇…?なにそれ作りたい。
しかしこのゲームはBLゲームであり、グッズを売り出す程の人気はないようだ。
残念がる俺にそのゲームやるからそんな悲しそうな顔すんな、と言われた俺はその言葉に驚いて友達の顔をガン見してしまう。
「なんならそのゲーム機もやるよ、今流行りのやつ買ったからそっちしかやってねーし」
「…いくら?今月の生活費で足りるかな…」
「お前の財布事情知ってるのに金取るわけねーだろ、俺に勉強教えてくれれば良いよ」
ニッと笑いながら言う友達にめちゃくちゃ感謝した後でめちゃくちゃスパルタな勉強会を開いたのは俺なりの最大級のお礼だ。
友達のおかげでずっとずっと唯兎を見ていられる。
それでも考えるのは唯兎の幸せについて。
俺は今、唯兎から幸せを貰っているが唯兎の幸せはどこにあるのだろう。
母親にも愛されず、周りにも愛されず。
その悲しい感情は全て身近にいた兄へ向けることしか知らず、その結果攻略対象達によって家からも追い出されてしまう可哀想な唯兎。
「…そうだ」
唯兎は施設送りにされた後、自らの首を吊って悲しい最期を送るエンディングがある。
俺ももうこの世に未練なんてない、有り得ない話だとは思うし限界オタクじゃないんだからと友達にも笑われそうな事だけど…唯兎と同じ最期を迎えたら、転生とか…。
…なんて、有り得なさすぎて寒くなってきた。
1人家で乾いた笑いをこぼした後用意していたロープに首を通す。
転生なんて出来なくてもいい。
彼と…唯兎と同じ最期を迎えられるなら俺はそれだけで幸せだと、そう思うんだ。
俺のズボンのポケットには友人からもらったゲーム機とソフト。
その画面には唯兎の最期を彩ったワンシーンのスチル。
「…唯兎、俺もそっちに行くよ」
そして俺は足場にしていた椅子をどかした。
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「…懐かしいな」
空は快晴、とても良い天気だ。
自室の窓から空を眺める、今日も暑くなりそうだ。
俺はあの後、首に大きな衝撃と共に意識を飛ばした。
次に目が覚めた時には俺は俺ではなく、あのゲームの攻略対象の『栗河 凪』として生まれ変わっていた。
最初は転生なんてもの信じておらず、名前が一緒なんて不思議な感じだなとしか思っていなかった。
しかし、俺が高校受験の際に教師の口から出た【聖心高校】という名前。
教師に聖心高校のパンフレットを貰い、制服や教室、校舎などよく見てみると明らかにゲームのスチルとして出てきた場所そのものだってのだ。
---奇跡だ
そのパンフレットを握り締め、俺は1人泣いた。
これで俺は本当にあの子を…守ることが出来る。
それから俺は高校受験に力を入れた。
あの子を守る為、OGとしてあの高校に通う事が出来るように聖心高校に入学することを決めた。
親に相談した時かなり驚かれたけども、元々前世からテストの点だけは良かった事もあり両親も行けるところまで頑張れと応援してくれることに…今世の両親は優しくて良かった。
「…そしてついに高校生なのである」
「どうした凪、急過ぎるな」
「なんとなくナレーション入れてみた」
無事聖心高校に入学し、まずやる事。
それは両親が経営する映画館でのアルバイトだった。
ここはゲームでも重要なデートスポットであり、俺のキャラ…栗河が唯兎と照史に出会う場所でもある。
ゲームでは思い出話としか出なかったが、2人が映画を観に来るのは照史が中学3年の時。
照史の話では…
『僕が中学生の時、唯兎の誕生日プレゼントとして映画のチケットをプレゼントしたんだ。…あの時は唯兎も僕を嫌ってなかったから…凪さんと初めて会ったのもその時だったよね』
と、3回目以降のデートに映画館を選択したらそのセリフが聞けるという特別なルートがあった。
これは栗河ルート確定のセリフで、この次のデートで栗河は自分の思いを打ち明ける。
その前兆となるセリフだ。
その時のセリフを思い出せば、俺が今やるべき事…それが段々と見えてくる。
まずは照史や唯兎の先輩となる聖心高校に入学する事。
両親の仕事である映画館にてバイトをする事。
そして…唯兎の記憶に残る事。
最後が一番重要だ。
唯兎の記憶に残りさえすれば何かあった時に俺が会いに行っても偶然出会った顔見知りくらいにはなれる。
初対面で顔を覚えてもらう事を最優先事項として俺は行動を始めた。
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「と、いう事で夏休みは映画館のバイトフルで入るから」
「えー、お前って将来の夢映画館のマスターとかだっけ?」
「いや、映画館で可愛い子と出会うのが夢」
「それただの欲望だわ」
先程からツッコミしまくるコイツは俺の友人であり、バイト仲間の佐久間大和である。
俺が両親の職場でバイトすると伝えた次の日に面接に来た強者だ。なかなかに決断力のある頭のキレるやつ。
同じ職場だからって困ることもない為、俺も歓迎するし両親も人手が足りなかったらしく喜んでいた。
特に夏休みは働きたいとシフトに入る人が多くいるにも関わらずそれでも間に合わないくらいの客数が来るためどうしてもいつも以上に人員が必要なのだ。
俺が「夏休みシフト入りまくるから」と両親に伝えた結果、ちゃんと夏休みの課題をやること、そしてしっかり休むことを約束し沢山のシフトを組んでくれた。
あとは出勤中に2人が来るか、休んでる時に2人が来るか…。
念の為出勤中に来なかった時のことを考えて休みの日も映画館を訪れることを決めてはいるが、それでもこの客数の中見つけられるかどうか。
佐久間とバイトをしながら俺は夏休みのことばかりを考えていた、勿論テストの点数はしっかり取っている為両親も教師もバイトに多く入っていることに対して文句など言えるわけもなく、そのまま日数だけが過ぎていった。
「そして待ちに待った夏休み…っ!出会いの季節だな」
「まぁ間違ってないと思うけどお前は違う気がするわ」
「なんで、俺は出会いのためにこの季節を待ち望んできたんだぞ」
相変わらず佐久間とシフトに入り、レジに立ってみたり誘導に回ってみたり食品提供に回ってみたりと様々なことをしていた。
いつの間にやら俺はここで[店長の息子]という肩書きが付いてしまっており俺が少し口を出せばそれが通ってしまうようになった。
それを悪用するつもりなどなく、普通の高校生バイトと同じように過ごした。
…しかし、残念ながら唯兎には出会えなかった。
夏、と断定してシフトに入っていたがゲームの照史は正確な時期は伝えておらず【唯兎の誕生日】と記していた。
唯兎の誕生日は夏、そしてヒントとしてもう一つ出ていたのは照史が中学生出会ったこと。
俺はまだ高校1年生、そして照史は中学1年だろう。
今年がダメならあと2年。
あと2年頑張れば、唯兎に栗河として出会えるのだ。
しかし、今年の夏に期待していた俺は思ってた以上にショックだったのか夏休み明けすぐに熱を出して寝込んでしまった。
両親には心配をかけたが、俺はゆっくり休みながら傷心中の身を誰にもバレることなく宥められることにホッとし、目を閉じた。
「…で、今熱は?」
「……38.7℃…」
「高いな、なんか腹にいれな。林檎擦ってくるか」
夏休み明けから2日過ぎた時、佐久間が家に来た。
LINEでも[大丈夫]とだけ伝えてた筈なのに何故来たのか、なんて事はわざわざ聞かずに佐久間の好きなようにさせる。
佐久間は多分、ただ単純に心配で来てくれたんだろう。
そう、コイツは心配性なんだ。
何かと俺の心配をしてくる、シフトに関しても何度も「入れすぎじゃないか?」「疲れないか?」と言いながらも俺と同じシフトに入っていた。
簡単に言えば、おかん気質なんだろうな。
布団に包まりながらふぅ、と溜め息を吐くと林檎を擦って来た佐久間が扉を開けてベッド横に置いておいた椅子に座り、俺の身体をゆっくりと座らせる手伝いをしてくれた。
正直、身体が重いし怠い。手を貸してくれて助かる。
「食えるか?」
「…食欲はないけど、食べる」
「よし、無理そうなら言えよ。飲むタイプのゼリーも買って来てある」
スーパーの袋をガサガサと漁りながら机の上にスポドリ、ゼリー、冷えピタ、のど飴などを並べていく。
冷えピタは家にもあるだろうし、そんな気を使わなくていいのに。
「…金、払うよ」
「いいよ、とりあえず食える分だけ食って寝て学校来い」
「…ありがと」
一口擦られた林檎を口に入れると、それは一気に喉を通っていく。
林檎が通った後の喉は潤っていて、痛かった喉も少し軽減された気がする。
声に出さずに美味しい、と少しだけ感動してると佐久間はふ、と笑い俺の額に手を当てる。
熱の確認か、と思い軽く目を閉じればその手はそのまま上に上がり俺の前髪を持ち上げる。
…俺、汗ばんでたよな。
一瞬、汗の心配をして目を開けた瞬間。
「…ぁ」
佐久間が俺の額にキスをしていた。
いや、汗気持ち悪いだろ。
何やってんだコイツ。
暑さで気でも狂ったか。
そもそもなんだこの恋愛ゲームみたいな展開
…つまりどういうこと?
離れていく佐久間の顔をアホ面でジッと眺めてみると、少し顔を赤くした佐久間が俺を見つめてくる。
「…弱ってるところにごめん、でも…俺伝えたくて来たんだ」
「な、に?」
「俺…お前が、凪が好きだ。全部を頑張ってるところ、その頑張りを人に悟られまいとしてるところ…そして、前から思っている子が変わらないところ」
なんだコイツ。
佐久間に唯兎の話をした事はない、なのになんで俺がずっと一途に想っていることを知ってるんだ。
まさか、コイツもゲームの事を知ってる…?
しかし、それは思い違いだったらしい。
「なんで知ってるんだ、って顔してるな。お前のことずっと好きだったんだ、ソイツの…いつか映画館で出会う子の話をしてる時空想の中の話じゃない事くらい気付いてた」
「それ、でも…俺を好きだって…?」
「あぁ、砕ける前提での告白だ。お前、今年の夏にその子と会えなかったのショック過ぎて熱出したんだろ?」
「う、」
そこまでバレてるなんて。
言葉に詰まった俺の頭を優しく、それはもう優しく撫でる佐久間に俺は擦ってくれた林檎を食べることもせず抱えている事しか出来ないでいる。
「夏に向けてさ、いろいろ準備してたお前が可愛かった。ドキドキしててさ、ワクワクしててさ。仕事中も入り口だったり椅子だったり、誘導しながら一人一人を見ててさ。でも仕事はしっかりやってて…見てて俺もソワソワしてた」
「…凄い見てるな…」
「そりゃな、ずっと見てたら気付いたんだよな。好きって事」
甘い視線から逃げるように手元の林檎に目を向けると、その手をギュッと握られる。
…もう、コイツに言わないといけない言葉は決まってるのに。
俺はもう、あの子だけを見ているって…決めてるんだ。
俺はスッと息を擦って佐久間を見つめた。
「…ごめん、俺は…俺はあの子のためにここにいるから。だから、お前の気持ちには…」
「わかってるってば、砕ける前提だって言ったろ?だからそんな泣きそうな顔すんな」
困ったような顔をして俺を撫でる佐久間に、次会った時にはもういつものような関係には戻れないのかな、なんて暗い事を考えてしまう。
佐久間は普通に友人だと思っていた。
だからもしかしたら次会った時にはもう[気まずい]なんて離れられてしまうかもしれない。
無意識に佐久間の服をギュッと握っていたようでその手に更に力が入る。
それを見た佐久間がおかしそうに笑う。
「凪、俺が離れたら寂しい?」
「…そりゃ……まぁ…」
「言葉にして」
俺の頬を押さえながら言う佐久間に、俺は熱がある事を思い出した。
カーっと熱くなる頬は熱によるものなのか、それとも佐久間の手の熱なのか判断できないが…俺は佐久間が離れたら寂しい。
せっかく仲良くなれたのに、なんて簡単な言葉じゃない。
俺の隣はコイツがいい、恋人じゃない…相棒として。
「…ね、凪。俺が離れたら」
「寂しい」
「…だよね」
「うん、寂しい…佐久間がいないの、無理だ」
自然と流れてくる涙は熱によるものだと思い込むことにする。
決して佐久間がいない未来を想像したわけじゃない、ただ熱が上がってしんどくて涙が出ただけだ。
熱い佐久間の手から逃げるように顔を俯かせると、佐久間は小さく笑って俺の手を握る。
「…離れるわけないじゃん、こんなに好きなのに」
「……でも、俺お前の気持ち…っ」
「俺の気持ちは知っててくれたらいいんだよ、俺はお前の幸せの方が大事だ…それがどんな未来だとしても」
軽く俺の額にキスをすると、佐久間はニヤッと笑って立ち上がる。
急なことに額を押さえて佐久間を見上げる事しか出来ないでいると、佐久間は鞄を持ちそのまま部屋から出ようと歩き出した。
「このくらいは許せよ、じゃな」
「ぁ、佐久間…っ」
ひらひら、と手を振りながら扉を閉めた佐久間はそのまま玄関に向かったらしく階段を降りる音が聞こえてくる。
佐久間が俺のことを好き、だなんてまだ夢の中にいるような感覚で現実味がない。
でも、確実に言える事は熱が上がったであろうこと。
林檎をヤケクソに口に放り込み薬を飲む。
もう考えるのは熱下がってからにする、もう疲れた。
佐久間にしてやられた感が拭えず、不貞腐れるように布団に潜り込む。
「…佐久間の、ばぁーか」
目を閉じればすぐに眠気が来る、そう俺は疲れてんだ。
だから佐久間の言葉でこんなにざわつく筈がない。
モゾモゾと寝やすい位置を見つけるとそのまま眠りにつくことにした。
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「そして3年目なわけだけど…」
「去年も会えなくてショックで熱出してたよなー、それも今年は見れないのか」
「うるさいな、もしかしたら嬉しすぎて熱出すかもしれないだろ」
「何それ面白い」
あはは、なんて笑う佐久間が隣にいる。
結果あの後は何も変わらず、熱が下がって学校に行けば当然のように佐久間は出迎えてくれて当然のように俺と話をして、何も変わらないまま俺といる。
唯一変わったところは、何かと俺に触るようになったところ。
頬や額にキスするし、腰を抱くし、何より暇さえあれば俺の唇を弄るようになった。
ふにふにむにむにとされ、乾燥している時にはリップクリームを塗られる。
最初はどう反応するべきか分からず困ったが、今では好きにさせておけばいいかと放っておいている。
そんな佐久間と俺は夏休み中の出勤日である。
今日は例年より暑い日が続き、熱中症には気をつけるようニュースでも連日注意されていた。
唯兎がいないか注意深く見てはいるが、これだけお客さんが多いと見つけるのも難しいのかな…。
小さく溜め息を付いた時、パートのおばちゃんから「お父様から連絡です」と呼ばれてしまった。
…なんだよ、唯兎探さないといけないのに…。
唯兎が見つからない苛立ちに加えて突然の父からの電話、ここから離れている間に唯兎が来たら…帰ってしまったら…。
焦りながらも父の言葉をしっかりメモして対応する。
内容は数枚ポスターの貼り替えをお願いしたい、と言うものだった。
そのポスター数枚の場所を確認し、再びフロアに戻ると佐久間が小走りでこちらに走って来た。
「…お前が探してるっぽい子、今貧血起こしてソファに座ってるぞ」
「…っ!」
バッと佐久間の顔を見るとニヤッと笑い、袋に入った2本のスポドリを渡される。
急に渡されてすぐに唯兎の元に行きたい足と、佐久間に渡された飲み物とで身体がユラユラと揺れてしまう。
そんな俺を見てフハッと吹き出すと、スポドリを指差した後唯兎がいるであろう方向に指を向ける。
「あの子のお兄さんらしき子が既にスポドリを買ってた、でも後から優しい店員のお兄さんがわざわざ買って来てくれたら?その袋は家まで持って帰るだろ?そしたら自然とお前の顔を思い出す、あの子の記憶に残る。どうだ」
ニヤッと笑いながら提案された内容は最高のものだった。
それの為にわざわざ俺にこれを持たせて、唯兎の元に行かせようとする…そんな佐久間に俺は嬉しくなりギュッと軽くハグをしてお礼を言う。
「ありがとう…、行ってくる…っ」
「おう、行って来い」
頭をポンポンとされ、そのまま勢いよく離れると唯兎がいるであろう方向になるべく早足で歩いていく。
ついに、ついに会えるんだ…。
あの子に…俺の生きる理由に…っ!
「体調は大丈夫かな?」
あぁ…
やっと会えた……
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「どうだったよ、お前が待ち望んだ子は」
「……夢みたいだ」
唯兎達と別れた後、俺は佐久間を捕まえて休憩室に入り込んだ。
今はどの時間帯のバイトや社員も休憩時間ではない為逃げ場としては最高だ。
鍵をかけて椅子に座ると佐久間に頭をポンポンと撫でられる。
「良かったな、やっと会えて」
「う、ん…やっと…っや、と…あえ…っ」
ボロボロと止まることなく流れる涙に佐久間は何も言わずにタオルを渡してくれた。
それを受け取り、顔を隠すと更に涙が溢れ出る。
「お、れ…っ本当はこわ、くて…っ唯兎は、もしかしたら来ないかもって…っ!」
「あぁ」
「でも来てくれて、居てくれて…あの子は本当にここに…っ!」
「いたな、あの子」
うっうっ、と泣き声を我慢しながらボロボロと泣きじゃくる俺を隣に座って抱きしめてくる佐久間。
暑い、そう思うのにその温もりに安心してしまう。
唯兎はいた、ちゃんといてくれた。
ただ、その事実が嬉しくて嬉しくて佐久間に縋って止まらない涙をずっと流していた。
「凪、泣くのはこれで終わりだ。お前はやることがあるんだろ?」
「ぅっ、ふぇ…っ!」
「これからが、本当にお前がやりたかったことなんだろ?俺もいる、焦らずやれ」
「……っ、うん…っ」
タオルで涙を拭い、赤くなった目を佐久間に向ける。
変わらないその笑顔に俺もぐちゃぐちゃの顔で笑顔を見せた。
「俺は、唯兎を助けたい。その為に俺はいるから…」
「なら俺はお前の助けになる、1人で背負うなよ」
恒例になった額へのキスに俺はヘラ、と笑い佐久間の額にキスの代わりのデコピンをお見舞いした。
佐久間の気持ちを利用していると、罪悪感もある。
けど、それでも俺は…唯兎のために。
唯兎のためなら、全てを敵に回しても構わない。
「唯兎、必ず助けるからね…」
あの子のふわふわな頭を撫でた掌をギュッと握り締め、誓い新たに俺はこれからを生きていく。
それが、どんなに険しい道でも俺は
そのためにいるのだから
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