木瓜

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慟哭は深紅色の空に刺さって

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いつからか、私は彼女に、親近感を抱くようになっていた。

―あの子が、何の用でこんな所に。

不思議に思いながらも、あざみの方を注視する。

あざみは、泣きながら座り込み、土の上で何かをしていた。

―あれ、私が踏みつけたジャスミン…。

どうやら、折れて萎れたジャスミンの花を、差さえ棒で立て、世話をしているようだ。

何故か、一輪だけ残っていたその花。

踏みつけたにも関わらず、一年近く、辛うじて咲き残っていたのは、降り注いだ雨や、外から差し込んでいた日差し達のおかげだろうか。

どちらにせよ、奇跡的に生き残っていたその花を、彼女は、涙を流しながらも、愛でていた。

心に、温かいものが、流れたのを感じた。

―…え?
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