クリスマス・トールテイル

冬目マコト

文字の大きさ
4 / 6

ウィンドワゴン・スミス船長とサンタさん

しおりを挟む
こちらの話はバルザック夫人がお茶会の時にお話しされていたものでございます。
アメリカのカンザスの大草原での事でございました。当時は今よりカンザスの風が強く、夜は星明りしかなかったころ。この有名なサンタクロースがクリスマスの素敵な贈り物を子供たちの届けようとなさっていたのですが、やはり老朽化というものは物を選ばないのでございましょう、サンタクロース様の愛用の橇が壊れてしまったのでございます。皆様ご存じの通りこちらの橇は魔法の空を飛ぶ橇でございますから他になく、安心して各御家庭にすばやくプレゼントを届けるための大切な移動手段でしたから。サンタクロース様の落胆ぶりは見てられないものでございました。「ああどうしよう。今年のクリスマスはもう無茶苦茶だ」痛烈なお言葉でございました。ところがしばらくすると大きな車輪の音が聞こえてまいりました「?」と後ろに目をやると、現代のわたくしたちでもおそらく見たこともないものでございます。
それは半分船で半分コネストガ荷馬車の乗り物なのでございます。その大きさと言ったらフリゲート艦のよう、近くでご覧になったエマ夫人は驚きのあまり腰が抜けて三日歩けなかったそうでございます。さてサンタクロース様がボーとその奇抜な船馬車を眺めていると船馬車の中から声がするではありませんか。「何をしてる老いぼれめ!腑抜けた水夫の様な面だ」と口汚く大声を出すのはかの有名なウィンドワゴン・スミス(アメリカの伝説の陸の船長。歴史上初めてで最後の風力で動く馬車を発明した。)ではありませんか!
この方の有名はテキサスでは風より早く轟いておりまして、私の叔父ウィード工場長も彼の船馬車のスポンサーでしたのよ。
こほん、話がそれましたわね、ええとつまり、サンタクロース様とウィンドワゴン・スミス様がこの時お会いしたのでございます。サンタクロース様は自分の不幸を酒場でお話になり、ウイスキーを三杯お召し上がりになったそうです。
「なんだ!そんなことで腐ってたのかぁ!」ウィンドワゴン・スミス様はあきれ顔で答えました。「そんなこととは何ですか!橇が壊れてしまってはプレゼントを配る時間がたりません。この国一番の馬を連れてきても間に合いませんよ」サンタクロース様はまたオイオイ泣き出してしまいました。「私の船を使えばいい」ウィンドワゴン・スミス様は手を胸にどんと当てて御答えになられました。「私の船はどんな馬よりも早いしどんなものでも載せられる。さらに今日はいい風が来ておる。一日どころか半日で終わらせられるね!」ウィンドワゴン・スミス様は自信満々におっしゃいました。ご自身の発明に絶対の自信を持っていたのでしょう。サンタクロース様はそれをお聞きになられると藁にも縋る気持ちで船馬車にプレゼント配りを依頼することといたしました。
その夜、ウィンドワゴン・スミス様のおっしゃられていた通り強く言い風がお吹きになられて、帆は風をはんで力強く動き始めました。この船馬車は動き出すととんでもなく早いもので瞬く間にカンザスの各家にプレゼントを配る事が出来たのでございます。サンタクロース様はこの状況にホッと胸をなでおろしましたが何分風が強すぎました。あまりにも強いカンザスの風をうけてどんどん押し出されカンザスを越えてラッセン火山に突っ込みましたすると運悪くラッセン火山が大噴火を起こしその爆風でウィンドワゴン・スミス様の船馬車は天高く押し上げられてしまったのございます。サンタクロース様は間一髪で船馬車から降りられましたがウィンドワゴン・スミス様は船馬車と一緒に天高く飛んでいきもうおめもじ叶うことはございませんでしたわ。



それからというもの、カンザスの風に人の声が混ざって聞こえることがあるそうです。それはウィンドワゴン・スミス様がそれの上で船馬車を必死で操作している声なのだとお聞きしておりますわ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

緑色の友達

石河 翠
児童書・童話
むかしむかしあるところに、大きな森に囲まれた小さな村がありました。そこに住む女の子ララは、祭りの前日に不思議な男の子に出会います。ところが男の子にはある秘密があったのです……。 こちらは小説家になろうにも投稿しております。 表紙は、貴様 二太郎様に描いて頂きました。

おっとりドンの童歌

花田 一劫
児童書・童話
いつもおっとりしているドン(道明寺僚) が、通学途中で暴走車に引かれてしまった。 意識を失い気が付くと、この世では見たことのない奇妙な部屋の中。 「どこ。どこ。ここはどこ?」と自問していたら、こっちに雀が近づいて来た。 なんと、その雀は歌をうたい狂ったように踊って(跳ねて)いた。 「チュン。チュン。はあ~。らっせーら。らっせいら。らせらせ、らせーら。」と。 その雀が言うことには、ドンが死んだことを(津軽弁や古いギャグを交えて)伝えに来た者だという。 道明寺が下の世界を覗くと、テレビのドラマで観た昔話の風景のようだった。 その中には、自分と瓜二つのドン助や同級生の瓜二つのハナちゃん、ヤーミ、イート、ヨウカイ、カトッぺがいた。 みんながいる村では、ヌエという妖怪がいた。 ヌエとは、顔は鬼、身体は熊、虎の手や足をもち、何とシッポの先に大蛇の頭がついてあり、人を食べる恐ろしい妖怪のことだった。 ある時、ハナちゃんがヌエに攫われて、ドン助とヤーミがヌエを退治に行くことになるが、天界からドラマを観るように楽しんで鑑賞していた道明寺だったが、道明寺の体は消え、意識はドン助の体と同化していった。 ドン助とヤーミは、ハナちゃんを救出できたのか?恐ろしいヌエは退治できたのか?

にたものどうし

穴木 好生
児童書・童話
イモリとヤモリのものがたり

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

まほうのマカロン

もちっぱち
絵本
ちいさなおんなのこは 貧しい家庭で暮らしていました。 ある日、おんなのこは森に迷い込み、 優しいおばあちゃんに出会います。 おばあちゃんは特別なポットから 美味しいものが出てくる呪文を教え、 おんなのこはわくわくしながら帰宅します。 おうちに戻り、ポットの呪文を唱えると、 驚くべき出来事が待っていました

童話短編集

木野もくば
児童書・童話
一話完結の物語をまとめています。

【もふもふ手芸部】あみぐるみ作ってみる、だけのはずが勇者ってなんなの!?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 網浜ナオは勉強もスポーツも中の下で無難にこなす平凡な少年だ。今年はいよいよ最高学年になったのだが過去5年間で100点を取ったことも運動会で1等を取ったこともない。もちろん習字や美術で賞をもらったこともなかった。  しかしそんなナオでも一つだけ特技を持っていた。それは編み物、それもあみぐるみを作らせたらおそらく学校で一番、もちろん家庭科の先生よりもうまく作れることだった。友達がいないわけではないが、人に合わせるのが苦手なナオにとっては一人でできる趣味としてもいい気晴らしになっていた。  そんなナオがあみぐるみのメイキング動画を動画サイトへ投稿したり動画配信を始めたりしているうちに奇妙な場所へ迷い込んだ夢を見る。それは現実とは思えないが夢と言うには不思議な感覚で、沢山のぬいぐるみが暮らす『もふもふの国』という場所だった。  そのもふもふの国で、元同級生の丸川亜矢と出会いもふもふの国が滅亡の危機にあると聞かされる。実はその国の王女だと言う亜美の願いにより、もふもふの国を救うべく、ナオは立ち上がった。

処理中です...