シンデレラなんてお断り~ハイスペック御曹司にロックオンされました~

夢呼

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57.引っ越し完了

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仕事が早くて出来る男は恐ろしい。

翌日の日曜日には、本当に香織のアパートから陽一のマンションまで、家の荷物は全て運ばれてしまった。

前日、デリバリーの食事を終えた後、何とか思い直すように何度も陽一に頼み込んだが、徒労に終わった。
混乱する頭で自分のアパートに帰ると、現実逃避するかのようにベッドに突っ伏すと、昨日の寝不足もあり、そのまま朝まで眠ってしまった。

朝起きて、シャワーを浴びてから朝食を食べているとき、チャイムが鳴った。
モニターの向こうには元気溌溂そうな若者が立っている。

「●△引越社でーす!」

(げ!)

本当に来た!
やっぱり来た!
嘘じゃなかった・・・。

香織はガックリと肩を落とし、玄関を開けた。

香織が廃人のように立っている間、引越し業者のスタッフはテキパキと荷造りをしていく。
もともと単身六畳一間のアパートだ。あっという間に作業は終わってしまった。

だが、冷蔵庫と洗濯機とベッドだけは残された。
一人暮らし用の冷蔵庫も洗濯機も陽一の家に持って行っても邪魔なだけだ。
でも、ベッドは・・・。

(持ってけよ!)

確かに陽一のベッドはキングサイズほどの大きさだ。
必要ないと言えばそうだが、そう判断したこと自体が生々しく感じ、つい赤面してしまう。

(でも、待てよ・・・)

冷蔵庫と洗濯機とベッド・・・。

「これさえあれば、まだ、ここに住めるじゃん!」

わっははと、腰に手を当てて笑おうとした時、

「お前って、ホント、往生際が悪いのな」

背後から陽一の声が聞こえた。

「うわぁぁ!」

振り向くと、迎えに来た陽一が腕を組んで呆れたように香織を見ていた。

「残念だけど、それは残しているんじゃなくて、業者引き取りだから。引取りは明日。冷蔵庫のコンセント抜いとけ。あと中身も処分しとけよ」

「・・・」

こうして、香織の引っ越しは無事に終了した。





「お疲れさん」

新しい自分の部屋の中で小さいテーブルの前でちょこんと座っている香織の頭を、陽一はポンと叩いた。

「・・・何か妙に広いんですけど・・・」

「ここも六畳だぞ。ベッドがない分広いんだろ」

「・・・何か落ち着かないんですけど」

「そのうち慣れるって」

「・・・」

「それに、この部屋にはほとんどいないだろ?リビングも向こうだし、寝室も別にあるんだから」

「え? あ・・・、そうか・・・。じゃなくって!ベッドは欲しかった!」

「何言ってんだよ。一番要らないだろ、それが」

陽一は香織の髪をクシャクシャっと撫でると、

「じゃあ、今日の夕飯は引越し蕎麦だな」

笑いながらリビングに戻って行った。
香織は溜息を付くと、ノロノロと立ち上がり、残った雑物を片付け始めた。





翌朝、香織が目を覚ますと、隣に人がいてギョッとした。

(あ、そうか・・・。昨日から一緒のベッドだったんだっけ・・・)

昨日、陽一は遅くまで書斎に籠っていたので、先にさっさと寝てしまったのだ。
緊張して眠れないかと思いきや、マットレスが高級のせいか、心地よくってすぐに眠りに落ちてしまった。
いつ陽一がベッドに入ったのかも気が付かなかった。

そっと陽一を見ると、よく眠っている。
今日は祝日だ。香織は陽一を起こさないように慎重にベッドから出ると、キッチンに向かった。

「冷蔵庫に何かあるのかな?」

昨日もその前も外食やデリバリーだったこの家に、食材が置いてあるのかすら怪しい。
朝食はしっかり食べる派の香織にとって、食材がないのは非常に困る。
祈る思いで冷蔵庫を開けた。すると・・・。

なんということでしょう!
冷蔵庫にはちゃんと食材がびっしり入っている。
しかも、全て高級そうなものばかり!

ハムもソーセージもバターもチーズも有名高級ブランドばかりだ!
いつもスーパーでプライベートブランドばかり買っている香織にとって夢のような光景だ。
野菜室を開けてみても、それなりのものが揃っている。

「ま、野菜に限ってはうちの方が上ね。なんせ畑直送だもんね」

ふふふと勝ち誇った笑みを浮かべて、トマトとレタスと取り出した。
そして、今度は高級食材を吟味する。
高そうなソーセージとベーコン、そして卵を取り出すと、

「へへへ~、勝手に食べちゃうもんね! 怒っても知~らないっと」

にんまりと笑って、パジャマの袖を捲り上げた。
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