シンデレラなんてお断り~ハイスペック御曹司にロックオンされました~

夢呼

文字の大きさ
68 / 107

68.各々の会食

しおりを挟む
「そう言えば、取引先のお偉いさんの姪の人って、どうなったんですか?」

飲食店に入って最初の乾杯を済ませると、早速、第一課の女子社員が秘書二人に聞いてきた。

「あー、あれね。副社長に断られたの。もう来なくなったわよ」

田島と言う秘書が得意気に答えた。

「え? 何の話?」

事情を知らないもう一人の第一課の女子が聞いてきた。

「なんか、取引先の偉い人の姪御さんが、副社長を狙ってたらしいですよ。毎回お昼時に目がけてやってきてランチ一緒に行っていたんですって」

「へえ、積極的!」

「でも、その気も無い人に頻繁に来られたら、副社長だって迷惑ですよ。立場を利用して近づいてくるなんて、どうかと思いません?」

坂上が苛立たし気に答えた。
ホントホントと田島が相槌を打つ。

そんな会話を香織はメニューと覗き込みながら、ハラハラして聞いていた。

「でも、正直なところ、副社長って恋人いないのかしら?」

第一課の女性がビールを口にしながら、秘書たちに聞いてきた。
香織はメニューを落としそうになった。
一番話題にしたくないことだ。だが絶対に話題になるネタだ。
覚悟はしていたが、手が震える。

「多分いないはず。いつも懇親会の席ではそう言ってるし。お見合いだって、また断ったとか言って、会長が愚痴をこぼしていらしたのも聞いてるし」

田島がそう言ったが、坂上の顔が曇った。

「そうですね・・・。特定の人はいないらしいですけど・・・。あんなに素敵な人、モテない訳ないですよ。それなりに女性はいるみたいですよ」

そう言うと、ビールを一気飲みした。

「え? そうなの?」

田島が食い付いた。
もちろん、第一課の二人もテーブルを乗り越えんばかりに、前のめりになって坂上を見た。

「この間、見えちゃったの。ここに痕付いてるの」

坂上は自分の首筋を指した。
香織は血の気が引いた。

「しかも、一回じゃないし。つい二、三か月前も見ちゃった」

(そ、それも・・・、私じゃん・・・)

第一課の二人がきゃぁ~と黄色い声を上げる中、香織はメニューに顔を埋めた。
もう、最悪だ・・・。
あの時の自分を引っ叩きたい・・・。

「何? それ。セフレってこと?」

田島が眉をひそめた。
香織は思わずムッとして、顔を上げた。

「さあ、分からないけど・・・」

坂上がそう答えた時、香織はメニューを差し出した。

「坂上さん、次、何飲みます? 食べ物ももっと頼みましょうよ! ね!?」

坂上がドリンクのメニューを覗いている間、何とか話題を変えたいと、自分の身内にメニューを見せるも、無視された。

「わ~。さっすが副社長、隅に置けないですね~」

「ホントホント! 副社長呼んで追求したーい! なんてね~」

アイドル的対象で陽一を見ている第一課の二人と、本気モードの秘書の二人とは温度差がある。
きゃあきゃあ言っている二人を田島は冷めた目で見つめている。

「あ、でも、お二人が呼べば来てくださるんじゃないですか? 私たちと違ってずっと親しいんだし」

『ずっと親しい』と言われて、田島も坂上も少しだけ頬を緩めた。
坂上はちょっと得意げな顔になり、

「そうですね、声を掛けたら来てくださるかも。でも、今日は会食が入って無理なんですよ」

そう言って、手を挙げて店員を呼んだ。

「確か金田製薬さんだったわよね?」

田島が聞いてきた。
坂上は頷くと、店員にモスコミュールを注文した。

「そう、急に決まってね。急いで手配したの」





会食の席で正則は渋い顔をしていた。

同席するはずだった陽一の姿は無い。
その代わり、もう一人の孫の隼人はやとの姿がある。

今回の会食の相手と一緒に手掛けているプロジェクトは主に隼人がメインを担っている。
だから、当然、仕事上の会食であれば隼人が適任だ。
だが、先方の連れには一人若い女性が混じっている。

正則は軽く溜息を付いた。
その状況に同席した息子である社長と隼人も困惑した顔をしている。

陽一からは同日に別の取引先との会食があり、そちらを優先せざるを得ない旨の連絡が入ったのは昨日だった。
相手先は重要な顧客で、主に陽一が携わっている。
しかも、ここ暫く先方から会食の申し出と上手く調整が付かず、やっと都合が付いたと言う。

「本来なら、会長のおじいさんもこっちの会食に出席してほしいくらいだけどね。でも伊東専務に話を付けたら、同席してもらう。そっちは隼人でいいだろ?なんせ、あいつがプロジェクトのメインなんだから」

会食の本当の理由を伝えなかった正則には、言い返す言葉が見当たらない。
こちらの約束を反故したどころか、逆に恩着せがましく話してくる陽一に腹が立っても、頷くしかなかった。

(まったく、ずる賢い奴だ・・・)

正則は苦々しく思いながら、同席している父子を見た。
隼人は既に見合いが上手くいっており、交際も順調だと聞く。
そんな隼人にこれ以上、若い女性は紹介できない。

息子の正和も、孫の隼人も少々困惑気味だが、率なく応対している。
見合いまがいの会食のはずが、通常の会食へと変貌した瞬間だった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ブラック企業で倒れた私を、ネトゲ仲間の社長が強制保護して溺愛しています

紅 与一
恋愛
過労で倒れた私を救ったのは、 ネトゲ仲間――そしてIT企業の若き社長。 「もう君は、僕の管理下だよ」 退院と同時に退職手続きは完了。 住む場所も、生活も、すべて彼に囲われた。 外出制限、健康管理、過保護な独占欲。 甘くて危険な“保護生活”の中で、 私は少しずつ彼に心を奪われていく――。 元社畜OL×執着気味の溺愛社長 囲い込み同棲ラブストーリー。

【完結】自分の都合で婚約破棄したら穴の中で暮らす羽目になった。

ジャン・幸田
恋愛
 俺は元は王子の伯爵だ。でも治めているのは穴の中だけだ。なぜそうなったのか? ざまあされた結果だ。まあ、聞いてくれ!

会社のイケメン先輩がなぜか夜な夜な私のアパートにやって来る件について(※付き合っていません)

久留茶
恋愛
地味で陰キャでぽっちゃり体型の小森菜乃(24)は、会社の飲み会で女子一番人気のイケメン社員・五十嵐大和(26)を、ひょんなことから自分のアパートに泊めることに。 しかし五十嵐は表の顔とは別に、腹黒でひと癖もふた癖もある男だった。 「お前は俺の恋愛対象外。ヤル気も全く起きない安全地帯」 ――酷い言葉に、菜乃は呆然。二度と関わるまいと決める。 なのに、それを境に彼は夜な夜な菜乃のもとへ現れるようになり……? 溺愛×性格に難ありの執着男子 × 冴えない自分から変身する健気ヒロイン。 王道と刺激が詰まったオフィスラブコメディ! *全28話完結 *辛口で過激な発言あり。苦手な方はご注意ください。 *他誌にも掲載中です。

たとえ夜が姿を変えても ―過保護な兄の親友は、私を逃がさない―

佐竹りふれ
恋愛
重なる吐息、耳元を掠める熱、そして——兄の親友の、隠しきれない独占欲。 19歳のジャスミンにとって、過保護な兄の親友・セバスチャンは、自分を子供扱いする「第二の兄」のような存在だった。 しかし、初めてのパーティーの夜、その関係は一変する。 突然降ってきた、深く、すべてを奪うような口づけ。 「焦らず、お前のペースで進もう」 そう余裕たっぷりに微笑んだセバスチャン。 けれど、彼の言う「ゆっくり」は、翌朝には早くも崩れ始めていた。 学内の視線、兄の沈黙、そして二人きりのアパート――。 外堀が埋まっていくスピードに戸惑いながらも、ジャスミンは彼が隠し持つ「男」の顔に、抗えない好奇心を抱き始める。 「……どうする? 俺と一緒に、いけないことするか?」 余裕の仮面を被るセバスチャンに、あどけない顔で、けれど大胆に踏み込んでいくジャスミン。 理性を繋ぎ止めようとする彼を、翻弄し、追い詰めていくのは彼女の方で……。 「ゆっくり」なんて、ただの建前。 一度火がついた熱は、誰にも止められない。 兄の親友という境界線を軽々と飛び越え、加速しすぎる二人の溺愛ラブストーリー。

復讐の悪女になるはずが、天使系義兄からピュアな執着と溺愛で邪魔されてます!

鈴宮(すずみや)
恋愛
 サウジェリアンナ王国の王女エルシャは、不幸だった前世の記憶を持って生まれてきた。現世ではみんなから愛され、幸せになれると信じていたエルシャだったが、生後五ヶ月で城が襲撃されてしまう。  絶体絶命かと思いきや、エルシャは魔術師の男性から救出された上『リビー』という新たな名前を与えられ、養女として生きることに。  襲撃がジルヴィロスキー王国によるものと気づいたリビーは、復讐のため王太子妃になることを思いつく。けれど、義理の兄であるゼリックがあまりにもリビーを溺愛するため、せっかく王太子アインハードに近づくことに成功しても、無邪気に邪魔され計画がうまく進まない。  ゼリックの干渉を減らすためリビーは彼の婚約者を探したり、ゼリック抜きでアインハードとお茶をして復讐を成功させようと画策する。  そんな中、十六歳に成長したリビーはアインハードと同じ学園に入学し、本格的なアプローチを開始する。しかし、ゼリックが講師として学園へ来てしまい、チャンスをことごとく潰されてしまう。 (わたしは復讐がしたいのに!)  そう思うリビーだったが、ゼリックから溺愛される日々はとても幸せで……?

半年間、俺の妻になれ〜幼馴染CEOのありえない求婚から始まる仮初の溺愛新婚生活〜 崖っぷち元社畜、会社が倒産したら玉の輿に乗りました!?

とろみ
恋愛
出勤したら会社が無くなっていた。 高瀬由衣(たかせゆい)二十七歳。金ナシ、職ナシ、彼氏ナシ。ついでに結婚願望も丸でナシ。 明日までに家賃を用意できなければ更に家も無くなってしまう。でも絶対田舎の実家には帰りたくない!! そんな崖っぷちの由衣に救いの手を差し伸べたのは、幼なじみで大企業CEOの宮坂直人(みやさかなおと)。 「なぁ、俺と結婚しないか?」 直人は縁談よけのため、由衣に仮初の花嫁役を打診する。その代わりその間の生活費は全て直人が持つという。 便利な仮初の妻が欲しい直人と、金は無いけど東京に居続けたい由衣。 利害の一致から始まった愛のない結婚生活のはずが、気付けばいつの間にか世話焼きで独占欲強めな幼なじみCEOに囲い込まれていて――。

お兄様「ねえ、イケナイ事をしよっか♡」

小野
恋愛
父が再婚して新しく出来たお兄様と『イケナイ事』をする義妹の話。

二十年以上無視してきた夫が、今さら文通を申し込んできました

小豆缶
恋愛
「お願いです。文通から始めてもらえませんか?」 二十年以上会話もなかった夫――この国の王が、ある日突然そう言ってきた。 第一王妃マリアは、公爵家出身の正妃。だが夫はかつて、寵愛する第三王妃の話のみを信じ、彼女を殴ったことがある。その事件が原因で、マリアは男性恐怖症が悪化して、夫と二人きりでは会話すらできなくなっていた。 それから二十年。 第三王妃はとある事故で亡くなり、夫は反省したらしい。だからといって――今さら夫婦関係をやり直したいと言われても遅すぎる。 なのに王は諦めない。毎日の手紙。花を一輪。夜食の差し入れ。 不器用すぎる求愛に振り回されるうち、マリアの中で止まっていた感情が少しずつ動き始める。 これは、冷えきった政略夫婦が「文通」からやり直す恋の話。 ※本作は「存在されていないことにされていた管理ギフトの少女王宮で真の家族に出会う」のスピンオフですが、単体で読めます。

処理中です...