シンデレラなんてお断り~ハイスペック御曹司にロックオンされました~

夢呼

文字の大きさ
96 / 107

96.荻原の祖父母

しおりを挟む
香織の思考は完全にストップしてしまった。
瞬きも忘れて陽一に見入った。

「お前のお祖父さんの家だよ。アポイントは取ってある」

「アポ・・・」

香織の呆然と呟いた。

「ああ、挨拶しておいた方がいいと思って」

「アポ・・・」

香織は呆けたまま繰り返した。

「ああ、アポ」

陽一は頷きながら香織の頭を撫でた。香織はハッと我に返り、陽一の手を振り払った。

「ちょ、ちょっと! 何、勝手なことしてるんですか? 私、お父さん側の祖父母って、会ったことほとんど無いんですよ! それなのに、急に会うなんて無理ですよ!」

香織は陽一を睨みつけて叫んだ。

「悪かったよ、黙ってたのは。でも、先に教えていたら、ここに到着するまでずっと緊張し通しだろ?」

「だからって、黙ってるなんて酷いですよ! しかも、会いたくない!」

陽一は宥める様に、もう一度香織の頭を撫でると、

「ちょっと、挨拶をするだけだ」

両手で香織の頬を包むと、顔を覗き込んだ。

「結婚前提の付き合いをしている報告をするだけだ。原田の家には報告しているのに、こちらの家に報告しないのは不義理だろ?」

『結婚』

この言葉が香織の怒りをぶち壊した。

(結婚・・・前提・・・)

突然の陽一の爆弾発言に、香織の思考がまたクルクルと回りだした。
頭がまともに働かない。
そこに、追い打ちをかけるように、陽一の口づけが降ってきた。
優しく宥める様な甘いキスに、香織はあっさり陥落した。

「・・・仕方ないですね・・・」

香織は口を尖がらせて、ボソボソと呟いた。
陽一は満足気に香織を見ると、もう一度頭を撫でた。





大きな畳の客間に、老夫婦を前にして、心臓が口から飛び出そうなほど緊張し、喉もカラカラな状態で座っている香織を余所に、陽一はいつもの王子様スマイルを保っていた。

「改めて、遠い所によく来れました。佐田さんに、香織・・・さん」

老紳士が二人に挨拶をしてくれた。

「こちらこそ、お時間を頂戴いたしまして、ありがとうございます」

陽一が頭を下げたのを見て、香織も慌てて頭を下げた。

「いいえ、こちらこそ、佐田さんにはお礼の申し上げようもないですよ。こうして孫を連れてきてくれたのですから」

老紳士はそう言うと、香織に視線が注がれた。
老婦人も香織を一心に見つめている。
香織は居たたまれなくて、目を伏せた。

「とても綺麗な女性になったね。嬉しく思うよ」

老人の優しい言葉に思わず顔を上げたが、その声音とは裏腹に目は笑っていなかった。
その視線に香織は冷たいものを感じ、自分の体温が下がるのが分かった。
老婦人の方をチラッと見ると、相変わらず香織を見つめている。彼女の目も笑っていなかった。

本当にこの二人は自分の祖父母なのだろうか?
ほとんど会ったことがなく、初対面にも等しいとは言え、親しみを露とも感じられない目線に、香織の中に激しい疑問が沸いてきた。

「以前にお話しさせていただいた通り、香織さんとは結婚前提のお付き合いをさせて頂いております。今日は二人でご報告に上がりました」

陽一は全く動じず、いつものにこやかな笑みで話す。

「いいご縁で、嬉しいですよ。なあ、お前」

老紳士は老婦人に声を掛けた。
ジッと香織を見ていた老婦人は、ハッとして荻原の祖父を見ると、

「ええ、本当に」

と相槌を打った。
荻原の祖父は満足そうに頷くと、

「佐田さんのようなご立派な家柄のご子息と縁続きになれるとは、我が家としても歓迎ですよ」

そう言うと、香織に向き合った。

「香織・・・さん、あなたは荻原の孫でもある。これからはこの家にも顔を出しなさい」

「え・・・」

香織は上手く言葉が出ずに、狼狽えた。

「そうですよ、ちょくちょく遊びにいらっしゃい」

老婦人が横から口を出した。

「こんなに立派な方のお嫁さんになるのですから、どうせならこちらで花嫁修業をしたらどう? 荻原の孫として恥を掻かないように。ねえ、あなた?」

「・・・それもいいだろう。あちらのお宅ではどうせまともに花嫁修業もできんだろうから」

その会話に、香織の頭は真っ白になった。
何を話しているか理解できずに、ぼんやりと目の前の老夫婦を眺めた。
もはや、老爺も老婆も香織の瞳にただ映っているだけだった。

まともに返事もできない香織に代わり、陽一が上手く対応している。
香織には、そんな陽一と老夫婦のやり取りすら聞こえない。

霞みがかった世界にただ一人取り残されたように、その後の会話はほとんど香織の耳に入ってこなかった。





どれくらい時間が経っただろうか。
気が付くと、玄関で陽一と並んで暇の挨拶をしていた。

門を出て車に乗り込むと、陽一は労いの言葉を掛けようとして香織に振り向いた。
たが、思わず言葉を飲み込んだ。

香織はハラハラと大粒の涙を流して泣いていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ブラック企業で倒れた私を、ネトゲ仲間の社長が強制保護して溺愛しています

紅 与一
恋愛
過労で倒れた私を救ったのは、 ネトゲ仲間――そしてIT企業の若き社長。 「もう君は、僕の管理下だよ」 退院と同時に退職手続きは完了。 住む場所も、生活も、すべて彼に囲われた。 外出制限、健康管理、過保護な独占欲。 甘くて危険な“保護生活”の中で、 私は少しずつ彼に心を奪われていく――。 元社畜OL×執着気味の溺愛社長 囲い込み同棲ラブストーリー。

【完結】自分の都合で婚約破棄したら穴の中で暮らす羽目になった。

ジャン・幸田
恋愛
 俺は元は王子の伯爵だ。でも治めているのは穴の中だけだ。なぜそうなったのか? ざまあされた結果だ。まあ、聞いてくれ!

会社のイケメン先輩がなぜか夜な夜な私のアパートにやって来る件について(※付き合っていません)

久留茶
恋愛
地味で陰キャでぽっちゃり体型の小森菜乃(24)は、会社の飲み会で女子一番人気のイケメン社員・五十嵐大和(26)を、ひょんなことから自分のアパートに泊めることに。 しかし五十嵐は表の顔とは別に、腹黒でひと癖もふた癖もある男だった。 「お前は俺の恋愛対象外。ヤル気も全く起きない安全地帯」 ――酷い言葉に、菜乃は呆然。二度と関わるまいと決める。 なのに、それを境に彼は夜な夜な菜乃のもとへ現れるようになり……? 溺愛×性格に難ありの執着男子 × 冴えない自分から変身する健気ヒロイン。 王道と刺激が詰まったオフィスラブコメディ! *全28話完結 *辛口で過激な発言あり。苦手な方はご注意ください。 *他誌にも掲載中です。

たとえ夜が姿を変えても ―過保護な兄の親友は、私を逃がさない―

佐竹りふれ
恋愛
重なる吐息、耳元を掠める熱、そして——兄の親友の、隠しきれない独占欲。 19歳のジャスミンにとって、過保護な兄の親友・セバスチャンは、自分を子供扱いする「第二の兄」のような存在だった。 しかし、初めてのパーティーの夜、その関係は一変する。 突然降ってきた、深く、すべてを奪うような口づけ。 「焦らず、お前のペースで進もう」 そう余裕たっぷりに微笑んだセバスチャン。 けれど、彼の言う「ゆっくり」は、翌朝には早くも崩れ始めていた。 学内の視線、兄の沈黙、そして二人きりのアパート――。 外堀が埋まっていくスピードに戸惑いながらも、ジャスミンは彼が隠し持つ「男」の顔に、抗えない好奇心を抱き始める。 「……どうする? 俺と一緒に、いけないことするか?」 余裕の仮面を被るセバスチャンに、あどけない顔で、けれど大胆に踏み込んでいくジャスミン。 理性を繋ぎ止めようとする彼を、翻弄し、追い詰めていくのは彼女の方で……。 「ゆっくり」なんて、ただの建前。 一度火がついた熱は、誰にも止められない。 兄の親友という境界線を軽々と飛び越え、加速しすぎる二人の溺愛ラブストーリー。

復讐の悪女になるはずが、天使系義兄からピュアな執着と溺愛で邪魔されてます!

鈴宮(すずみや)
恋愛
 サウジェリアンナ王国の王女エルシャは、不幸だった前世の記憶を持って生まれてきた。現世ではみんなから愛され、幸せになれると信じていたエルシャだったが、生後五ヶ月で城が襲撃されてしまう。  絶体絶命かと思いきや、エルシャは魔術師の男性から救出された上『リビー』という新たな名前を与えられ、養女として生きることに。  襲撃がジルヴィロスキー王国によるものと気づいたリビーは、復讐のため王太子妃になることを思いつく。けれど、義理の兄であるゼリックがあまりにもリビーを溺愛するため、せっかく王太子アインハードに近づくことに成功しても、無邪気に邪魔され計画がうまく進まない。  ゼリックの干渉を減らすためリビーは彼の婚約者を探したり、ゼリック抜きでアインハードとお茶をして復讐を成功させようと画策する。  そんな中、十六歳に成長したリビーはアインハードと同じ学園に入学し、本格的なアプローチを開始する。しかし、ゼリックが講師として学園へ来てしまい、チャンスをことごとく潰されてしまう。 (わたしは復讐がしたいのに!)  そう思うリビーだったが、ゼリックから溺愛される日々はとても幸せで……?

半年間、俺の妻になれ〜幼馴染CEOのありえない求婚から始まる仮初の溺愛新婚生活〜 崖っぷち元社畜、会社が倒産したら玉の輿に乗りました!?

とろみ
恋愛
出勤したら会社が無くなっていた。 高瀬由衣(たかせゆい)二十七歳。金ナシ、職ナシ、彼氏ナシ。ついでに結婚願望も丸でナシ。 明日までに家賃を用意できなければ更に家も無くなってしまう。でも絶対田舎の実家には帰りたくない!! そんな崖っぷちの由衣に救いの手を差し伸べたのは、幼なじみで大企業CEOの宮坂直人(みやさかなおと)。 「なぁ、俺と結婚しないか?」 直人は縁談よけのため、由衣に仮初の花嫁役を打診する。その代わりその間の生活費は全て直人が持つという。 便利な仮初の妻が欲しい直人と、金は無いけど東京に居続けたい由衣。 利害の一致から始まった愛のない結婚生活のはずが、気付けばいつの間にか世話焼きで独占欲強めな幼なじみCEOに囲い込まれていて――。

お兄様「ねえ、イケナイ事をしよっか♡」

小野
恋愛
父が再婚して新しく出来たお兄様と『イケナイ事』をする義妹の話。

二十年以上無視してきた夫が、今さら文通を申し込んできました

小豆缶
恋愛
「お願いです。文通から始めてもらえませんか?」 二十年以上会話もなかった夫――この国の王が、ある日突然そう言ってきた。 第一王妃マリアは、公爵家出身の正妃。だが夫はかつて、寵愛する第三王妃の話のみを信じ、彼女を殴ったことがある。その事件が原因で、マリアは男性恐怖症が悪化して、夫と二人きりでは会話すらできなくなっていた。 それから二十年。 第三王妃はとある事故で亡くなり、夫は反省したらしい。だからといって――今さら夫婦関係をやり直したいと言われても遅すぎる。 なのに王は諦めない。毎日の手紙。花を一輪。夜食の差し入れ。 不器用すぎる求愛に振り回されるうち、マリアの中で止まっていた感情が少しずつ動き始める。 これは、冷えきった政略夫婦が「文通」からやり直す恋の話。 ※本作は「存在されていないことにされていた管理ギフトの少女王宮で真の家族に出会う」のスピンオフですが、単体で読めます。

処理中です...