転生騎士見習いの憂鬱

鍋底の米

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検証

 風呂から上がるとルーイが一人で待っていてくれた。すっかり身繕いも終わっていて、壁にもたれていた体を起こして問いかけてくる。

「どうだった?他にモヤがかかってた人いた?」

 連行した彼との話は短く済んだようで、待たせてしまったのを申し訳なく思いながらルーイの問いに答える。

「いや、全員ちゃんと見えた」

「ふむふむ。さっき僕が連れて出た子も確認できた?」

「ああ、確認した」

「相互で同じ状態とは限らないってことか…ヴィルだけに見えるものでもない…と」

 どういう事かルーイに説明を求める。

 ルーイが浴室から連れ出した彼の名前はヨシュー。色んな男をつまみ食いしいてるビッチとして有名らしい。ルーイとは違って行動と噂に齟齬そごは無いらしい。そのせいでルーイも余計なあおりを食らっているそうだ。あのぞんざいな扱いにはその様な背景もあったのだ。
 その彼がなんと性的な対象として俺に目を付けたらしい。
 洗い場に居た俺の体をじっくり見ようとしていたが、湯気が邪魔して肝心な場所が隠れて見えない。なんとか覗こうとして、前のめりになったり体をよじったり不審な動きをしていたところをルーイに気付かれ捕まったようだ。
 彼は湯気のせいで見えないと勘違いしていたが、実際には例のモザイクがかかった状態のせいであったという訳だ。

「魔力量や質が関係あるのかと思っていたけど、ヨシューはその辺も平均値かそれ以下なんだよねぇ。器用さと要領の良さで上手くこなすタイプで…」

 ルーイに聞いて股間にモザイクがかかっている状態が現世においても異常だとわかってからは、やはり前世の記憶が関係している現象なのではないかと薄々思っていただけに、自分以外の人間にモザイクが見えたことが意外であった。

 ヨシューがモザイクを湯気と勘違いしたことで、彼にとっては想像もしていない現象であるという予測が立つ。転生者だからという理由でモザイクが見えるというのなら、俺と同じようにまず自分の股間が見えない可能性が高い。であるなら、湯気のせいだと信じて疑っていないことが不自然だ。絶対にそうだという確信は持てないが、違う可能性の方が高い。

「レーベンはどうだろうね?ヴィルにはレーベンにモヤがかかって見えたけど、レーベンから見たヴィルはどうなんだろう。確認して貰ってみる?」

 ジストナーに?!待て待てそれはマズイ!
 着替えの手も止まってしまう。

「無理だ」

「無理ってなんだよ、友達なんだろ?頼んだら協力して貰えるんじゃないの?」

「頼むのが無理だ。友達かどうかも怪しいし…その…なんだ…」

 言い淀んだ俺を促すような視線を投げてくる。

「ジストナーは意中の相手というか…」

「ええっ!ヴィルってレーベンが好きなのっ?!」

「ま…まぁ、そういうことだ」

 へぇ~!とびっくりしたように目を見開き声を上げるルーイに呟きを返す。

「やはり俺ごときには高嶺の花ということか…」

「あ、いや、そういう意味で驚いたんじゃないよ。ヴィルは恋愛方面には淡白そうなイメージがあったっていうか…。ヴィルから好きになるんじゃなくて、相手からアプローチされてほだされるタイプかなと」

 なかなか正確に読まれている。
 淡白なつもりはないが、自分から気付けなかったのは確かだ。ジストナーへの気持ちはジストナーからのアプローチがあってようやく気付いたのだ。
 ジストナーの気持ちの方は俺という人物像を買い被りすぎているのでその誤解を解いたら気の迷いだったとがっかりされるのだろうが。

「ヴィルはクールに見えてカッコイイからモテてるだろーなと思うけど、出されてる秋波に気づかなさそーだし。直接告白でもされたら流石に気付くんだろーけど、ヴィルに直接告白する勇者もなかなか居なさそうな感じ?」

 褒められているんだかけなされているんだかよくわからない言われ様だ。どちらにせよ、ルーイのカッコイイの基準は魔獣のフランガドーレなので褒められていたとしても複雑な気持ちだ。

「モテてはいない。ジストナーから好きとは言われ…いや?言われていないか?キスされただけか?」

「えっ?!キス?!両想いなんだ?!恋人同士なの?!…じゃあ、それこそ確認して貰いやすいんじゃ?ああ!どおりでレーベンのあの様子…え?!大変だよ、僕とのこと勘違いされてるよね!?」

 前のめり気味のルーイに現状を説明した。

「ふぅーん?恋人じゃないし、ヴィルは告白もしてないと。で、レーベンの気持ちは勘違いかもと?」

 半眼で胡乱うろんげな視線を投げかけながらルーイが小さく呟く。

「レーベンも可愛そうに…」

 よく聞こえなかったので聞き返すが、「何でもない」とはぐらかされる。

「とにかく!はんじるには事例が足りなすぎるよ。しばらくは大浴場に通って事例を集める。で、レーベンとの仲も進展させる努力をする。上手く恋人同士になれたらベッドに押し倒してでも確認する!」

 ビシッと伸ばした人差し指で眉間を指される。身長差により視線も下から向けられている筈なのに圧が強い。

「いやそれは…」

「い・い・ね?!」

「…ハイ」

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