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第11話 ホワイトデーの宴
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「えっと、クリス……?」
「はい、ミリア様」
「着いたみたいよ」
「はい」
「もう、離れても大丈夫だと思うけど」
「でも……」
私達三人は、転移魔法陣を使って国境の川辺に転移してきた。
転移の間ずっと(といっても一、二秒)クリスは私に抱きついていた。
そして転移が終わったにも関わらず、未だに抱きついたままでいる。
魔王湊山くんが、何か言いたそうな素振りをしていた。
私はそれを目で制してクリスに言った。
「さあ行くわよ、クリス」
ここで魔王湊山くんが何か言ったら、クリスに睨まれてしまう。
そうなったら、また魔王湊山くんが切ない思いをすることになる。
「はい」
そう言ってクリスは、やっと私から体を離して歩き出した。
手はしっかり私の腕をつかんでいたが。
転移した場所は開けた草原だった。振り返って後ろを見ると、木々が並んでいるのが見える。
「あの並木が国境の川があるところ?」
クリスを恐れて明らかに三メートル以上距離を取っている魔王湊山くんに私は聞いた。
自然、声が大きくなる。
「そうです、向こう側が王国です」
答える魔王湊山くんの声も大きい。
見た感じでは国境の川は思っていたほどは広くはなさそうだ。
(国境っていってもこの程度なのね……)
王国と魔王国は表向きは敵対関係のようだが、実際は単なるお隣の国同士というのが実態じゃないかと私は感じている。
私の転生人生は、いきなり王国の玉座の間で、王様の「魔王を討伐するのだ」という言葉から始まった。
(私が転生してくる前ってどうだったのかしら?)
討伐せよと言われた魔王が湊山くんだったので、彼との思い出が蘇ってきて、そのことばかりが気になっていた。
(そもそもこの世界って……)
「勇者ミリア……」
「あ、ごめん……!」
後ろから魔王湊山くんに呼ばれて、川を見ながら自分の世界に入り込んでいた私はハッとした。
またもや魔王湊山くんを睨もうとしたクリスをなだめながら、私は振り返って歩き出した。
「わぁ、もう皆集まってるのね」
転移場所から二十メートル程先にはテーブルが並べられていた。
そこに、以前も見たことがあるオークの料理人や割烹着姿のコブリンやガーゴイル達が集まっていた。
そんな中で、一際異彩を放つ魔物が進み出てきて、
「ようこそおいでくださいました、勇者ミリア」
と、まるで貴族のような優雅な挨拶をした。
そして顔を上げるなり、目といい、白い歯といい、ゆるく波打つ黒髪までもキラキラさせながら、私に微笑みかけてきた。
「ど、どうも……」
(うわっ、なんか無駄にキラキラしてる……!)
イケメンと言えばイケメンなのだが、これ見よがしで、くどいのが私的にはどうにも苦手なタイプだ。
そのせいで私は半歩くらい後ずさってしまった。
だが、あろうことか、そのキラキラ男は尚も進み出てきて私の手を取ろうとした。
(え……!)
しかし、私のすぐ横にいたクリスがすかさず間に入ってきた。
そして、
ペシッ!
と、キラキラ男の手を払い除けた。
「ミリア様に触らないで!」
「これはこれは、失礼をしました、お嬢さん」
クリスの剣幕にも怯んだ様子もなく、キラキラ男は穏やかに返した。
「ねえ、魔王、この人誰?」
私が聞くと、
「ああ……彼は悪魔卿アスウスといって、悪魔を束ねているんです」
「へえーー」
(魔王との関係はどうなってるんだろ?)
魔王というくらいだから、湊山くんが魔王国のトップなのだろう。
(てことは悪魔卿は魔王の傘下なのかな?)
テーブルには美味しそうな料理とケーキやお菓子が並べられていた。
「さあ、存分にお召し上がりください」
と言ってきたのは魔王湊山くんではなく悪魔卿だった。
クリスはやたらキラキラした悪魔卿を「ギンッ!」と睨みつけたが、今度は何も言わなかった。
そんなクリスの塩対応もどこ吹く風、悪魔卿はクリスをテーブルへと誘った。
(こいつ、狙いをクリスに変えたな)
クリスがいては私には近づくこともままならないと見たのだろう。
だがクリスも負けてない。差し出された悪魔卿の手を容赦なくはたき飛ばしている。
「あれはあれで楽しそうだなぁ……」
思わず私は声に出して言ってしまった。
「楽しそう……?」
隣りにいる魔王が聞いてきた、
「あ、ごめん独り言」
「いいえ、その……」
「ん?」
「お、俺たちも……」
うつむき加減の魔王湊山くん。
「あ、そうだね、うん」
そう答えて私は魔王湊山くんとテーブルへと向かった。
(そうだよね、今日はホワイトデーなんだから)
用意された料理もデザートもどれも美味しそうで、またこの前みたいにお腹いっぱいに食べてしまいそうだ。
「さあ、お嬢さん、こちらのケーキも召し上がれ」
強烈な塩対応にも関わらず悪魔卿はクリスにケーキを勧めている。
「ふん!」
と、不機嫌そうにしながらも目の前のケーキの誘惑には逆らえず、クリスは不機嫌そうな顔はそのままにケーキを口にした。
そんなクリスを見て嬉しそうにしながら、悪魔卿は何かと話しかけるがクリスはぞんざいに受け流している。
「勇者ミリアも……」
クリスと悪魔卿の様子をじっと見ていた私に魔王湊山くんが声をかけた。
「あ……うん、ありがと」
私はクリスたちとは少し離れたところで魔王湊山くんと一緒に料理を食べ始めた。
料理もデザートも素晴らしかった、それは間違いない。
なのに、いまひとつしっくりこなかった。
魔王湊山くんは隣で料理をつまみながら、私をチラチラと見ている。
(もうーーじれったい!)
私はそんな魔王湊山くんの脇腹に肘鉄を食らわせた。
「いてっ!」
「いて、じゃないわよ!」
「ご、ごめんなさい……!」
「ねえ、今日は私をデートに誘ってくれたんじゃないの?」
「は、はい、そうです……」
「で、これがあなたが考えるデートなの?」
「えっと……何を話せばいいか分からなくなってしまって……その」
「?」
「勇者ミリアと二人きりだと……」
(そういえば、そうか……)
今までは彼の側には黒ローブ男がいたし、私も今日のクリスのように誰かを連れていた。
(変わってないんだなぁ、あの頃と)
前世の高校時代、私と湊山くんは学校で話をしたり、一緒に帰ったりする仲だった。
その時も、話しかけるのは私からばかりだった。
だが、この世界に転生して最初に会った時、魔王湊山くんは私に告白してきた。
(少しは変わったのかなって思ったのに……)
根っこのところは、そう簡単には変わらないということなのだろう。
(でも、いつまでもその調子じゃあ……)
「とりあえず何か話してみなさい、あなたが誘ってきたデートなんだから」
「は、はい……」
魔王湊山くんは脂汗を垂らしながら、
「えっと、そうしたら……」
と、キョロキョロと周囲を見回した。
「そうしたら……あ……」
「なに?」
「あの……川沿いに花が咲いているので、見に行きませんか?」
「うん、いいわよ」
(やればできるじゃない)
ちらっとクリスを見ると、悪魔卿の他にも似たような格好をしたイケメン悪魔に囲まれて賑やかにやっている。
笑顔ではないものの、クリスは悪魔達とのやり取りをそれなりに楽しんでいるように見えた。
「あっちは大丈夫そうね」
「はい、悪魔たちは女性を饗すことに長けているようです」
「そうみたいね」
「俺とは違うので……」
うつむき加減で答える魔王湊山くん。
私はそれには何も言わなかった。
何か言ったほうが良かったのかもしれない。
(でもなぁ、そうよね、なんて言ったらまたいじけちゃいそうだし)
なにげに面倒くさい男だ、なんていう思いが私の頭をよぎった。
(まあ、これが湊山くんだから、仕方ないか。慣れてるし)
そんなことを思いながら、私は魔王湊山くんと花咲く川辺へと歩いていった。
「はい、ミリア様」
「着いたみたいよ」
「はい」
「もう、離れても大丈夫だと思うけど」
「でも……」
私達三人は、転移魔法陣を使って国境の川辺に転移してきた。
転移の間ずっと(といっても一、二秒)クリスは私に抱きついていた。
そして転移が終わったにも関わらず、未だに抱きついたままでいる。
魔王湊山くんが、何か言いたそうな素振りをしていた。
私はそれを目で制してクリスに言った。
「さあ行くわよ、クリス」
ここで魔王湊山くんが何か言ったら、クリスに睨まれてしまう。
そうなったら、また魔王湊山くんが切ない思いをすることになる。
「はい」
そう言ってクリスは、やっと私から体を離して歩き出した。
手はしっかり私の腕をつかんでいたが。
転移した場所は開けた草原だった。振り返って後ろを見ると、木々が並んでいるのが見える。
「あの並木が国境の川があるところ?」
クリスを恐れて明らかに三メートル以上距離を取っている魔王湊山くんに私は聞いた。
自然、声が大きくなる。
「そうです、向こう側が王国です」
答える魔王湊山くんの声も大きい。
見た感じでは国境の川は思っていたほどは広くはなさそうだ。
(国境っていってもこの程度なのね……)
王国と魔王国は表向きは敵対関係のようだが、実際は単なるお隣の国同士というのが実態じゃないかと私は感じている。
私の転生人生は、いきなり王国の玉座の間で、王様の「魔王を討伐するのだ」という言葉から始まった。
(私が転生してくる前ってどうだったのかしら?)
討伐せよと言われた魔王が湊山くんだったので、彼との思い出が蘇ってきて、そのことばかりが気になっていた。
(そもそもこの世界って……)
「勇者ミリア……」
「あ、ごめん……!」
後ろから魔王湊山くんに呼ばれて、川を見ながら自分の世界に入り込んでいた私はハッとした。
またもや魔王湊山くんを睨もうとしたクリスをなだめながら、私は振り返って歩き出した。
「わぁ、もう皆集まってるのね」
転移場所から二十メートル程先にはテーブルが並べられていた。
そこに、以前も見たことがあるオークの料理人や割烹着姿のコブリンやガーゴイル達が集まっていた。
そんな中で、一際異彩を放つ魔物が進み出てきて、
「ようこそおいでくださいました、勇者ミリア」
と、まるで貴族のような優雅な挨拶をした。
そして顔を上げるなり、目といい、白い歯といい、ゆるく波打つ黒髪までもキラキラさせながら、私に微笑みかけてきた。
「ど、どうも……」
(うわっ、なんか無駄にキラキラしてる……!)
イケメンと言えばイケメンなのだが、これ見よがしで、くどいのが私的にはどうにも苦手なタイプだ。
そのせいで私は半歩くらい後ずさってしまった。
だが、あろうことか、そのキラキラ男は尚も進み出てきて私の手を取ろうとした。
(え……!)
しかし、私のすぐ横にいたクリスがすかさず間に入ってきた。
そして、
ペシッ!
と、キラキラ男の手を払い除けた。
「ミリア様に触らないで!」
「これはこれは、失礼をしました、お嬢さん」
クリスの剣幕にも怯んだ様子もなく、キラキラ男は穏やかに返した。
「ねえ、魔王、この人誰?」
私が聞くと、
「ああ……彼は悪魔卿アスウスといって、悪魔を束ねているんです」
「へえーー」
(魔王との関係はどうなってるんだろ?)
魔王というくらいだから、湊山くんが魔王国のトップなのだろう。
(てことは悪魔卿は魔王の傘下なのかな?)
テーブルには美味しそうな料理とケーキやお菓子が並べられていた。
「さあ、存分にお召し上がりください」
と言ってきたのは魔王湊山くんではなく悪魔卿だった。
クリスはやたらキラキラした悪魔卿を「ギンッ!」と睨みつけたが、今度は何も言わなかった。
そんなクリスの塩対応もどこ吹く風、悪魔卿はクリスをテーブルへと誘った。
(こいつ、狙いをクリスに変えたな)
クリスがいては私には近づくこともままならないと見たのだろう。
だがクリスも負けてない。差し出された悪魔卿の手を容赦なくはたき飛ばしている。
「あれはあれで楽しそうだなぁ……」
思わず私は声に出して言ってしまった。
「楽しそう……?」
隣りにいる魔王が聞いてきた、
「あ、ごめん独り言」
「いいえ、その……」
「ん?」
「お、俺たちも……」
うつむき加減の魔王湊山くん。
「あ、そうだね、うん」
そう答えて私は魔王湊山くんとテーブルへと向かった。
(そうだよね、今日はホワイトデーなんだから)
用意された料理もデザートもどれも美味しそうで、またこの前みたいにお腹いっぱいに食べてしまいそうだ。
「さあ、お嬢さん、こちらのケーキも召し上がれ」
強烈な塩対応にも関わらず悪魔卿はクリスにケーキを勧めている。
「ふん!」
と、不機嫌そうにしながらも目の前のケーキの誘惑には逆らえず、クリスは不機嫌そうな顔はそのままにケーキを口にした。
そんなクリスを見て嬉しそうにしながら、悪魔卿は何かと話しかけるがクリスはぞんざいに受け流している。
「勇者ミリアも……」
クリスと悪魔卿の様子をじっと見ていた私に魔王湊山くんが声をかけた。
「あ……うん、ありがと」
私はクリスたちとは少し離れたところで魔王湊山くんと一緒に料理を食べ始めた。
料理もデザートも素晴らしかった、それは間違いない。
なのに、いまひとつしっくりこなかった。
魔王湊山くんは隣で料理をつまみながら、私をチラチラと見ている。
(もうーーじれったい!)
私はそんな魔王湊山くんの脇腹に肘鉄を食らわせた。
「いてっ!」
「いて、じゃないわよ!」
「ご、ごめんなさい……!」
「ねえ、今日は私をデートに誘ってくれたんじゃないの?」
「は、はい、そうです……」
「で、これがあなたが考えるデートなの?」
「えっと……何を話せばいいか分からなくなってしまって……その」
「?」
「勇者ミリアと二人きりだと……」
(そういえば、そうか……)
今までは彼の側には黒ローブ男がいたし、私も今日のクリスのように誰かを連れていた。
(変わってないんだなぁ、あの頃と)
前世の高校時代、私と湊山くんは学校で話をしたり、一緒に帰ったりする仲だった。
その時も、話しかけるのは私からばかりだった。
だが、この世界に転生して最初に会った時、魔王湊山くんは私に告白してきた。
(少しは変わったのかなって思ったのに……)
根っこのところは、そう簡単には変わらないということなのだろう。
(でも、いつまでもその調子じゃあ……)
「とりあえず何か話してみなさい、あなたが誘ってきたデートなんだから」
「は、はい……」
魔王湊山くんは脂汗を垂らしながら、
「えっと、そうしたら……」
と、キョロキョロと周囲を見回した。
「そうしたら……あ……」
「なに?」
「あの……川沿いに花が咲いているので、見に行きませんか?」
「うん、いいわよ」
(やればできるじゃない)
ちらっとクリスを見ると、悪魔卿の他にも似たような格好をしたイケメン悪魔に囲まれて賑やかにやっている。
笑顔ではないものの、クリスは悪魔達とのやり取りをそれなりに楽しんでいるように見えた。
「あっちは大丈夫そうね」
「はい、悪魔たちは女性を饗すことに長けているようです」
「そうみたいね」
「俺とは違うので……」
うつむき加減で答える魔王湊山くん。
私はそれには何も言わなかった。
何か言ったほうが良かったのかもしれない。
(でもなぁ、そうよね、なんて言ったらまたいじけちゃいそうだし)
なにげに面倒くさい男だ、なんていう思いが私の頭をよぎった。
(まあ、これが湊山くんだから、仕方ないか。慣れてるし)
そんなことを思いながら、私は魔王湊山くんと花咲く川辺へと歩いていった。
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