1 / 1
かえして
しおりを挟む
午前二時。ナースステーションの時計の針が、
2秒も止まっているように見えた。
廊下を歩くと、自分の足音がコツン…コツン…と
音を立てて響く。
巡回表を手に暗い廊下を進むと
「し…て……」
小さな声が、305号室から聞こえた。
一週間前に亡くなった患者の部屋だ。
「誰かいるんですか?」
扉の前で立ち止まり、声をかけてみる。
もしかしたら、深夜徘徊をする高齢者の
患者さんかもしれない。
懐中電灯を手に中に入ると、女が立っていた。
白い病衣に覆われ、顔は髪に隠れている。
恐怖で動けない私に、女が――
『……かえして』
後ずさると廊下の照明がチカチカと瞬き、
目を開けた瞬間、女はすぐ目の前にいた。
皮膚はただれ、頬は裂け、黒い液体が滴る。
笑ってるような、かすれた声が聞こえてきた。
『かえして……わたしの、顔。』
翌朝、同僚は巡回表を見つけた。305号室の欄に、
赤黒く滲んだ文字で、“私”の名前が書かれていた。
『誰かのイタズラなんじゃない?』
同僚は軽く笑う。
そして数日後。私は仕事の帰りに
交通事故に合い305号室に入院することになった。
車椅子で案内される廊下の奥で、長い黒髪の女が、
天井から垂れ下がるように私を見つめてる。
――低く、湿った声が耳元で囁く。
「……やっと、きたんだ……」
もう、逃げられない――。
2秒も止まっているように見えた。
廊下を歩くと、自分の足音がコツン…コツン…と
音を立てて響く。
巡回表を手に暗い廊下を進むと
「し…て……」
小さな声が、305号室から聞こえた。
一週間前に亡くなった患者の部屋だ。
「誰かいるんですか?」
扉の前で立ち止まり、声をかけてみる。
もしかしたら、深夜徘徊をする高齢者の
患者さんかもしれない。
懐中電灯を手に中に入ると、女が立っていた。
白い病衣に覆われ、顔は髪に隠れている。
恐怖で動けない私に、女が――
『……かえして』
後ずさると廊下の照明がチカチカと瞬き、
目を開けた瞬間、女はすぐ目の前にいた。
皮膚はただれ、頬は裂け、黒い液体が滴る。
笑ってるような、かすれた声が聞こえてきた。
『かえして……わたしの、顔。』
翌朝、同僚は巡回表を見つけた。305号室の欄に、
赤黒く滲んだ文字で、“私”の名前が書かれていた。
『誰かのイタズラなんじゃない?』
同僚は軽く笑う。
そして数日後。私は仕事の帰りに
交通事故に合い305号室に入院することになった。
車椅子で案内される廊下の奥で、長い黒髪の女が、
天井から垂れ下がるように私を見つめてる。
――低く、湿った声が耳元で囁く。
「……やっと、きたんだ……」
もう、逃げられない――。
2
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
事故物件
毒島醜女
ホラー
あらすじ:サラリーマンの幹夫は忘れ物を取りにいったん家に戻るが、そこで妻、久恵と鉢合わせになりそうになる。仲の悪い妻と会いたくなかった幹夫はとっさに物置部屋に隠れるが…
※闇芝居さんの妹の部屋をリスペクトした作品となっております。
※表紙はゴリラの素材屋さんから。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
おめでとう。社会貢献指数が上がりました。
水井伸輔(Mizui Shinsuke)
SF
「正しく」生きれば、どこまでも優しいこの国。
17歳のシュウは、社会貢献指数を高め、平穏な未来を手に入れようとしていた。しかし、システムに疑問を抱く父のランクは最低の「D」。
国家機能維持条項が発令された夜、シュウの端末に現れたのは、父の全権利を支配するための「同意」ボタンだった。
支配か、追放か。指先ひとつで決まる、親子の、そして人間の尊厳の行方。
洒落にならない怖い話【短編集】
鍵谷端哉
ホラー
その「ゾワッ」は、あなたのすぐ隣にある。
意味が分かると凍りつく話から、理不尽に追い詰められる怪異まで。
隙間時間に読める短編ながら、読後の静寂が怖くなる。 洒落にならない実話風・創作ホラー短編集。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる