ただ、あなたのそばで

紅葉花梨

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第2章 新たな始まり

14. 王太子との語らい (レイ)

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コン、コン。

この国の王太子であるリオネル・ディアン・ボナールの執務室の扉の前に立ち、俺はノックをして応えを待った。

「誰だ?」

「第一師団団長レインロード・バスティードです。ご用命と伺い、参上致しました」

「入れ」

「失礼致します」

背筋を伸ばし、勝手知ったる執務室の扉を開けた俺は、慣れた様子で室内の中程まで歩み寄る。

「そこに座ってくれ」

俺に中央にある大きなソファセットに座るよう指示し、リオネル自身も対面に腰をおろし、息を吐く。

「待ってたぞ、レイン。遅くなるのはわかっていたが、いつもより時間がかかったな?魔導士たちとの間で何かあったのか?」

リオネルは、早々に今日の報告を聞きたがった。俺は部屋に入るまでは、周りの目もあるのでリオネルに対して臣下の礼をとっていたが、室内に入り二人きりになると体の力を抜き、ソファに体を預けてリオネルに向き合った。

「いや、そうじゃない。顔合わせ自体はいつものように何事もなく終えて、その後のセリエ団長たちとの打ち合わせも問題なく終わった。・・・んだが、まぁ結論を一言で言えば、俺の運命に出会った。といったところか」

「何!?運命だと?まさか・・・、お前が昔から探していた例の夢の子が現実に現れたっていうのか!?」

リオネルは、ソファから腰を浮き上がらせ俺に詰め寄る。騎士養成学校時代から、リオネルには俺がユーリを探していることをそれとなく話していた。

ただ前世のことなどは語らず、昔から夢に出てくる青年を探しているということにしていた。前世など、今の世界では夢物語であまり話すべきものじゃない。

まぁ、夢に出てくる青年を探しているというのもどうかと思うが・・・。

「まぁ、そうだな。まだお互い知らないことだらけだから、とりあえず友人から始めようということになった」

「おっお前!なんて手が早いんだ!俺の知らない間に展開が早すぎるんじゃないか!?」

「なっ!?手が早いって、だからまだ何もしていないし何も始まっていない!俺もまさか自分がこんなにも我慢がきかないとは思わなかったんだ・・・。だが、彼の姿を目の前で見たらもう言葉を抑えることができなかった」

俺は先程別れたユーリの面影を思い浮かべる。

「フ~ッ・・・、まぁいい。何はともあれ良かったじゃないか?お前ず~っと探していたもんな。養成学校時代からあんなにモテて選び放題だったくせに全く周りを見向きもしないで。俺は最初お前に夢の子の話を聞いた時は、正直頭は大丈夫かと思ったがな。まぁ、お前が必死だったのは、そばで見ていて知っていたし、今後はお前たちが幸せになれるよう、俺ができることならば協力は惜しまないぞ、レイン。俺とお前の仲だからな?」

リオネルは、そういって再びソファに腰をおろし軽くおちゃらけたように俺に向かってウインクしてくる。

「ありがとう、リオネル」

俺は友の想いに心が温かくなるのを感じて頭を下げた。

「あぁ。それで、この短期間で出会ったということは、もしかしてお前の運命の子は今回新しく入ってきた魔導士なのか?」

「そうだ。名前はユーリィ・ブランシュ。今回入ってきた5人の魔導士の中の一人だ」

「ブランシュ?ん~、聞いたことないな・・・。民間からの子かな?王宮に関わる家の者なら大抵は把握してるんだが・・・」

リオネルがそういって首を捻る。

王宮専属魔導士には、魔力量の高い者や、特出した魔法を持つ者たちが集い、その中でも元々王宮に何かしら関わりがある家の者で、魔術学園から実力を認められ、専属魔導士になった者が、今は半数以上を占めている。残りは民間の出で、魔術学園で成績のよい者などが王宮専属魔導士として活躍しているというわけだ。

「そうだな、確かユーリの資料にも民間から魔術学園に入学したと書いてあった」

「フムフム、今回の新人達はなかなか面白い人材が集まっていると聞いているが、その子も何か特殊なのか?」

「いや・・・、特殊といえば特殊なんだが・・・」

俺はここに来る前に、考えていたことを思い出す。

「?なんだ?お前にしては歯切れが悪いな。あまり良くない話か?」

「いや、まだ俺自身もよくわかっていないんだ。おそらく本人もだとは思うが、陛下は何かご存知かもしれない」

「父上が?」

「あぁ、リオネルのところにも資料が行っているかもしれない。また何かユーリのことでわかることがあれば教えてほしい」

俺はユーリのことなら何でも知っておきたいと思い、そう申し出る。

「魔導士関係となると、フランツのところか?ただ、いくらお前といえど開示できない内容については教えてやることはできんぞ?」

「わかっている。できる範囲でかまわない。こんなことを王太子に頼むこと自体、無礼極まりないが・・・」

俺はそう言いながら視線を下に向けた。

「レイン。この王宮にあって、お前は俺にとって唯一心を許せる友だ。それは俺が父上の跡を継いだとしても変わらない。俺はお前を信じている。だが万が一にでも、お前が俺を裏切るのなら、その時は俺が直接手を下してやる。それが俺なりのけじめだ。まぁ、そんな心配はないと思っているがな?」

リオネルから改まって言葉をかけられ、俺はハッとして顔をあげる。

昔からリオネルはハッキリした性格だ。こうと決めたら揺るがない。自分の信じる道を真っ直ぐ歩いていく。さすがはこの国の未来を担う男だと思う。そういうところに、俺は友として惹かれたのかもしれない。

「フッ、ありがとう。俺にとってもリオネルは、掛け替えのない友だ。・・・今後、お前にすぐには言えないことも出てくるかもしれない。だが、信じてほしい。俺はこの国も、俺の大切なものも全て、必ず護ってみせる」

(そう、もう二度と同じ過ちは繰り返さないっ)

俺は無意識に拳を握り込んでいた。

「まぁそう気負うな、レイン。父上にも機会があればそれとなく聞いておくよ。・・・ところで、もちろん今度その子は俺にも紹介してくれるんだろうな?」

リオネルが茶化すように尋ねてくるので、俺もつい悪ノリしてしまった。

「まぁ・・・、気が向けば」

「おい!」

「ハハッ、冗談だ。そのうち、紹介する。俺だってまだ今日話したばかりなんだ。もう少しユーリと打ち解けてから改めてリオネルのところへ共に会いに行くよ」

「あぁ、楽しみにしている」

俺たちは笑い合いながら、二人でいるこの時間を満喫するようにその後も語り合った。


「それで、他の新しく入ってきた子たちは・・・」

そのうち話題は違うことに逸れて、しばらく王太子の執務室では、和やかな雰囲気で時が過ぎていった。

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