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金盞花
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ーおはよう
その声で気が付いた。
あぁ、朝が来たんだ。
また彼が起こしに来てくれた。
なんとなく周りが明るい気がする。
今日は天気が良いのだろうか。
ー少し雨が降り出したみたいだ。
さっきまではまだ曇りだったんだけどね。
夕方は少し寒くなるみたいだよ。
あぁ、貴方の離れる音が聞こえる。
今日も頑張ってね、雨、濡れないようにね。
風邪引いちゃうといけないからね。
...また、きっと来てくれるよね。
貴方が外で働き走り回っている間、
私は今日も眠りにつく。
死と眠りが繋がる恐怖は今でも消えたわけじゃない。
だけど、きっと貴方がまた来てくれるから。
貴方を抱き締めることはできないけれど
貴方に微笑みかけることはできないけれど
貴方を見つめることはできないけれど
貴方の傍に、まだ私はここにいるから
またここに来てくれる貴方を、私は待っていなきゃいけない。
まだ、離れたくないの。
その時が来るまでは、もう、少しだけだから、
ーただいま
またその声で気が付いた。
おかえりなさい。お疲れ様。
いつもなら、髪を撫でながら、今日あったことを話してくれる。
だけど、今日は違う。
あぁ、泣いているの?
強く握ってくれる手が、熱くて、震えている。
私には、握り返すことは、できない。
ーごめんな。
絞り出された言葉も、震えていて、
彼は何度も、そう繰り返した。
わかっていた。
いつか、限界が、来るんだって。
貴方ばかりが、背負って、苦しんでいた。
そうまでして、私をここに留めていた。
だからこそ灯を消すのは、貴方が決めてからでなければ
私から消えては、いけなかった。
貴方の声が聞こえる。
たくさんの昔の話を、ぽつりぽつりと語る。
ーたくさん間違えた道を辿った先で出逢ったね。
ー二人で頑張ろうって何度も約束したね。
ーいつか一緒に暮らそうって、ずっと夢見てたね。
ーたくさん、笑いあったね。
ーずっと傍にいるって、誓いあったね。
どうして
どうしてこんなことになったの?
ねぇ、神様。
ずっと、ずっと死にたかった。
何もかもから逃げ出したかった。
ようやく、生きたいって思えたのに
どうして
どうして、貴方が涙を流すの?
どうして、この手を包んであげられないの?
どうして、貴方を抱き締められないの?
どうして、微笑みかけることもできないの?
あぁ、貴方が離れていく。
幸せにしてあげられなかった。
あぁ、私が離れていく。
ゴメンは、私からの言葉なのに...
あぁ、消えていく
これで、終わってしまうんだ
さよなら、その一言さえも伝えさせてくれないんだね。
それどころか、
私がここにいたことも
貴方の声を全部聞いてたことも
貴方に伝えることはできないんだね。
最後に手を伸ばした。
離れてしまう寸前に
貴方は気付いてくれただろうか。
もう
その声を聞き取る「私」は どこにもいないけれど。
ー金盞花ー 花言葉:悲しみ
その声で気が付いた。
あぁ、朝が来たんだ。
また彼が起こしに来てくれた。
なんとなく周りが明るい気がする。
今日は天気が良いのだろうか。
ー少し雨が降り出したみたいだ。
さっきまではまだ曇りだったんだけどね。
夕方は少し寒くなるみたいだよ。
あぁ、貴方の離れる音が聞こえる。
今日も頑張ってね、雨、濡れないようにね。
風邪引いちゃうといけないからね。
...また、きっと来てくれるよね。
貴方が外で働き走り回っている間、
私は今日も眠りにつく。
死と眠りが繋がる恐怖は今でも消えたわけじゃない。
だけど、きっと貴方がまた来てくれるから。
貴方を抱き締めることはできないけれど
貴方に微笑みかけることはできないけれど
貴方を見つめることはできないけれど
貴方の傍に、まだ私はここにいるから
またここに来てくれる貴方を、私は待っていなきゃいけない。
まだ、離れたくないの。
その時が来るまでは、もう、少しだけだから、
ーただいま
またその声で気が付いた。
おかえりなさい。お疲れ様。
いつもなら、髪を撫でながら、今日あったことを話してくれる。
だけど、今日は違う。
あぁ、泣いているの?
強く握ってくれる手が、熱くて、震えている。
私には、握り返すことは、できない。
ーごめんな。
絞り出された言葉も、震えていて、
彼は何度も、そう繰り返した。
わかっていた。
いつか、限界が、来るんだって。
貴方ばかりが、背負って、苦しんでいた。
そうまでして、私をここに留めていた。
だからこそ灯を消すのは、貴方が決めてからでなければ
私から消えては、いけなかった。
貴方の声が聞こえる。
たくさんの昔の話を、ぽつりぽつりと語る。
ーたくさん間違えた道を辿った先で出逢ったね。
ー二人で頑張ろうって何度も約束したね。
ーいつか一緒に暮らそうって、ずっと夢見てたね。
ーたくさん、笑いあったね。
ーずっと傍にいるって、誓いあったね。
どうして
どうしてこんなことになったの?
ねぇ、神様。
ずっと、ずっと死にたかった。
何もかもから逃げ出したかった。
ようやく、生きたいって思えたのに
どうして
どうして、貴方が涙を流すの?
どうして、この手を包んであげられないの?
どうして、貴方を抱き締められないの?
どうして、微笑みかけることもできないの?
あぁ、貴方が離れていく。
幸せにしてあげられなかった。
あぁ、私が離れていく。
ゴメンは、私からの言葉なのに...
あぁ、消えていく
これで、終わってしまうんだ
さよなら、その一言さえも伝えさせてくれないんだね。
それどころか、
私がここにいたことも
貴方の声を全部聞いてたことも
貴方に伝えることはできないんだね。
最後に手を伸ばした。
離れてしまう寸前に
貴方は気付いてくれただろうか。
もう
その声を聞き取る「私」は どこにもいないけれど。
ー金盞花ー 花言葉:悲しみ
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