2人分生きる世界

晴屋想華

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第1章 無法

意見のぶつかり合い

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 2つある人生。今まで、そこまで深く考えたことがなかった。しかし、人生が1つしかなかった100年前と比べて、考えるべき問題は増えていく一方なんだと最近、実感する。男女の人生を歩んでいる人に対しての差別や2つとも上手くいっている人、1つだけ上手くいっている人、どちらも上手くいっていない人など人それぞれで、それが格差にも繋がっている。人生が1つだけなら問題にならないような問題が本当に山積みなのだ。しかもその解決方法がないに等しい状況。
 こんな状況の中のあの演説。正直、タイミングが良すぎた。犯人達に掻き立てられてしまう人々も多いだろう。しかも、奴らは先手を打っていて、ネットでも着々と信者を増やしていた。だが、共感する人がいくらいようと間違っていることは間違っている。
 人生が2つあるのがすべての原因に繋がっているからといって、1つを消せば終わるわけがない。人は、そんなことも分からなくなってしまうくらい落ちてしまうのだろうか。こんなの間違っている。
 
「このサイトよね?」
「うん。ダイエット商品、頭痛薬、普通の食品とか色々な世代が購入しそうなものが揃ってるわね」

「うっ。頭が割れる……うっ」
「大丈夫ですか?!」

 周りの人たちが次々と頭を抱えて倒れていく。まさか、神山がばら撒いた薬のせい?!
 神山の演説がまたあちこちのビルのモニターに映る。

「さあ、みんなで向かおう。君たちなら、この腐った世界を変えられる。みんなで世界を元に戻そう!さあ、勇気を出すんだ!」

 その直後、キッチンカーのような車が複数やってきた。

「さて、これからみんなにしてほしいことは、君たちの目の前に現れた車から薬をもらって飲んで欲しい。あとは、目が覚めれば望んだ世界が広がっている」

「誰も薬をもらいになんて行くはずない。千郷、中森さんに電話してみて!状況を伝えよう」
「そうだね」

ーー電話ーー

「中森さん!今の映像見た?そっちにもキッチンカーみたいな車いる?」
「ああ、いるよ。しかも、そのキッチンカーに人が並んでるんだ。こんなこと、どうして、、」
「え、嘘でしょ?早く止めないと!」


「千郷!キッチンカーに人が集まってきた、、」
「え?!」

ーー電話ーー

「千郷さん、これが全国で起こるということは、正直現時点で止めるのは困難だ」
「じゃあ、どうするつもりですか!」
「警察は、神山を捜索中だ。神山を捕まえるしか解決方法はないといえる」
「分かりました。私たちも全力で探します」
「今回ばかりは、よろしく頼むよ。でも、死なないでくれ」
「注文が多いですね。大丈夫です、絶対に見つけて、平穏を取り戻します」


「よし、優奈、行こう!」
「うん!」
「でも、神山のいるところの見当がつかない」
「そうだ、茜に探してもらいましょう」
「なるほど!茜ならどこから放送してるのか突き止められるかもしれないね」
「うん、茜に電話してみるね」

 優奈が茜に電話をして、今、茜はハッキングしてくれている。時間が正直ない。今の今も薬を飲んでいる人が大勢いるし、今回の薬がより強力なもので効果が早い場合、もう助からない人がいるかもしれない。確実に、ダイエットサプリを前から頼んで飲んでいた人達は、助からないだろう……。

「うん、うん、分かった。また新しい情報があれば連絡お願い!」
「どうだった?」
「茜は、ハッキングの結果、この辺りの地下に潜伏している可能性があると言っていた」
「地下か」
「地下を探すしかないね」
「了解!また前みたく隠し扉とかがあるかもしれないから、注意しないとだね」
「うん!中森さんたちにも電話してこっちに来てもらおう」
「そうだね!今電話する!」

 私たちは、地下を二手に分かれて捜索することにした。
 捜索開始して、約1時間程経過した頃、謎の着信が入った。

「もしもし」
「こっちに来ちゃったんだね」

 神山の声だった。

「か、神山」
「神山?!千郷、どゆこと?」

「君たち2人に話したいことがある。今すぐその道をまっすぐ行き、私のいるところまで来てくれないか?」
「どういうつもり?」
「僕は気まぐれなんだ。何も言わずに来てくれ。他の2人に伝えた場合、人が集まっているところから爆破していく」
「わ、分かった。案内して」
「良い判断だ」

 私と優奈は、神山に指示されるがままに動き、神山の共とへと向かう。

「優奈、何があっても私が守るからね」
「千郷。それは私のセリフよ!空手でやっつけてやるわよ!」
「ははっ!頼もしい!」

 神山の狙いはやはり優奈なのか。もし、神山が仲間を連れていたら、私たちは終わる。しかし、こんな状況、お互いに不利益しかない。どういうつもりなのだろうか。

 神山の元へと辿り着く。

「よく来てくれたね。さあ、始めようか」


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