目が覚めたら奇妙な同居生活が始まりました。気にしたら負けなのでこのまま生きます。

kei

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森での採集ー②

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 「わ~おいしぃ」

 第一声は歓喜の声だった。その後は無言で口に頬張る姿はもはや餓鬼だ。
 
 一生懸命口いっぱい頬張る姿は、微笑ましいのを通り越した。欠食児童の食いっぷりにたじろぐアイナとモルト。幾ら可愛らしい幼児でもその姿は頂けない。

(うわ~欠食児童だ‥‥そんなベリーばっかり食べてお腹大丈夫なの?)

 ドン引きのアイナだが幼児のお腹が心配だ。モルトも食べ過ぎるとお腹壊すぞと注意していた。

 チビッ子達の口とお手手は真っ赤っか。中には洋服に垂らしている子もいた。まるで血祭の後のような凄惨な光景にアイナは顔が引き攣るのを止めれない。

 (ちょっ! こわ! ホラーかよ!)
 
 まるでスプラッター映画の一場面な絵面が脳裏に霞む。夜中一人でトイレに行けなくなるレベルだ(おまるだけど)これにはモルトさんも困っていた。私もこの惨状をどうにかしたい。

 (おっ、閃いた!)

 実利を摂りたい私はチビッ子達の手口を川で洗ってはどうかと提案した。川があるのは道中で聞いた時から興味があったのだ。

 (これは一石二鳥ね)

 アイナは川に行けるのなら身体を洗いたいと思っていた。だがそれは今ではない。今後の計画だ。今は日中の日差しは暖かいとは言え水浴びするのは不向きな気候だ。朝晩は冷えるし日陰も冷える。

 だが今日は大人がいる。

 使える者モルトがいるのだから使わない手はない。子供好きな彼は何ともお誂え向きではないか。愛らしい幼女のお願いは二つ返事で請け負うだろう。ほくそ笑むアイナの心境を読み取れないモルトは「どうせ後で行くしな」と言って皆で川に移動することになった。

 (ふふふ、誘導は完璧ね! あと一つ、持ち合わせていたらラッキーだよね。駄目もとで聞いてみないと)

 「モルトさん、『マッチ』か『ライター』をお持ちでしょうか」
 「はっ? 何だって? 何て言ったのかな?」
 「えっ、あの『マッチ』‥‥」

 モルトの顔が本当に聞いたことのない言葉なのだと思わせる。内心アイナは焦った。言葉は通じるのにマッチやライターが通じない。否な予感がヒシヒシする。

 手持ちがないのなら次回でもいいし、他の人に頼めばいい。だがこの何を言っているのかわかりませんの表情はどういうことだろう。もしかして、マッチが存在しないのか、それか違う単語なのか。

 兎に角、確認が先決だ。後のことは後でいい。

 「あ、あのぉ火を点ける道具のことは何と言いますか」
 「へっ? 火を点ける…道具? 火を起こすのではなくて?」
 「はっ? 火を‥…おこすぅ? 点けるのではなくてですか‥‥」

 (ふわぁぁぁぁーー! えええ、まさか、おこすって!? 何それーー)

 アイナはここのスローライフを侮っていたと反省した。ここは日本と違う。またもや原始的かと頭を抱えたくなったアイナはモルトが口遊んだ言葉を聞き逃していた。聞き慣れない言葉だった所為かも知れない。

 どうしてこうも便利グッズを嫌うのか。ここの住人をグッズの素晴らしさで骨抜きにしたい。アイナの野望が一つ増えた。

 持っていないのか知らないのかはもうどうでもいい。結果的に火が点けばそれでいいのだから。細かいことは気にしない。要は結果が大事なのだ。『火を起こす』と言ったモルトに任せてしまえば十分だ。

 勢い感は否めない。だが時にはそれも必要だ。今のアイナにはお湯しかない。
 モルトさんに火を起こしてと幼女のおねだりを試みる。使える者は何でも使いたいアイナの奥の手だ。

 「起こせるけど? アイナちゃん一体どうするの?」もの凄く怪しんでいらっしゃる。
 「お湯を作ります!」
 「はっ? それを言うならお湯を沸かすでしょ?」
 「違います。沸かせないからお湯にするのです」

 (うわぁ、モルトさんの私を見る目が痛い。そ、そんな馬鹿な子を見る目で見ないで…‥‥)非常に気不味い。

 沸かすだけが手ではない。他にもやり方はある。暖かい川の水の利用の仕方、子供達に冷たい水は可哀想だと子供好きのモルトの心を突く。


 「確かに冷たいしなー」と一応の納得を見せた彼だが火を起こした後、どうするのか詳しく教えろと詰め寄って来た。
 
 了承したのだ、教えるからしっかりやって貰いたい。 
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