9 / 71
森での採集ー②
しおりを挟む「わ~おいしぃ」
第一声は歓喜の声だった。その後は無言で口に頬張る姿はもはや餓鬼だ。
一生懸命口いっぱい頬張る姿は、微笑ましいのを通り越した。欠食児童の食いっぷりにたじろぐアイナとモルト。幾ら可愛らしい幼児でもその姿は頂けない。
(うわ~欠食児童だ‥‥そんなベリーばっかり食べてお腹大丈夫なの?)
ドン引きのアイナだが幼児のお腹が心配だ。モルトも食べ過ぎるとお腹壊すぞと注意していた。
チビッ子達の口とお手手は真っ赤っか。中には洋服に垂らしている子もいた。まるで血祭の後のような凄惨な光景にアイナは顔が引き攣るのを止めれない。
(ちょっ! こわ! ホラーかよ!)
まるでスプラッター映画の一場面な絵面が脳裏に霞む。夜中一人でトイレに行けなくなるレベルだ(おまるだけど)これにはモルトさんも困っていた。私もこの惨状をどうにかしたい。
(おっ、閃いた!)
実利を摂りたい私はチビッ子達の手口を川で洗ってはどうかと提案した。川があるのは道中で聞いた時から興味があったのだ。
(これは一石二鳥ね)
アイナは川に行けるのなら身体を洗いたいと思っていた。だがそれは今ではない。今後の計画だ。今は日中の日差しは暖かいとは言え水浴びするのは不向きな気候だ。朝晩は冷えるし日陰も冷える。
だが今日は大人がいる。
使える者モルトがいるのだから使わない手はない。子供好きな彼は何ともお誂え向きではないか。愛らしい幼女のお願いは二つ返事で請け負うだろう。ほくそ笑むアイナの心境を読み取れないモルトは「どうせ後で行くしな」と言って皆で川に移動することになった。
(ふふふ、誘導は完璧ね! あと一つ、持ち合わせていたらラッキーだよね。駄目もとで聞いてみないと)
「モルトさん、『マッチ』か『ライター』をお持ちでしょうか」
「はっ? 何だって? 何て言ったのかな?」
「えっ、あの『マッチ』‥‥」
モルトの顔が本当に聞いたことのない言葉なのだと思わせる。内心アイナは焦った。言葉は通じるのにマッチやライターが通じない。否な予感がヒシヒシする。
手持ちがないのなら次回でもいいし、他の人に頼めばいい。だがこの何を言っているのかわかりませんの表情はどういうことだろう。もしかして、マッチが存在しないのか、それか違う単語なのか。
兎に角、確認が先決だ。後のことは後でいい。
「あ、あのぉ火を点ける道具のことは何と言いますか」
「へっ? 火を点ける…道具? 火を起こすのではなくて?」
「はっ? 火を‥…おこすぅ? 点けるのではなくてですか‥‥」
(ふわぁぁぁぁーー! えええ、まさか、おこすって!? 何それーー)
アイナはここのスローライフを侮っていたと反省した。ここは日本と違う。またもや原始的かと頭を抱えたくなったアイナはモルトが口遊んだ言葉を聞き逃していた。聞き慣れない言葉だった所為かも知れない。
どうしてこうも便利グッズを嫌うのか。ここの住人をグッズの素晴らしさで骨抜きにしたい。アイナの野望が一つ増えた。
持っていないのか知らないのかはもうどうでもいい。結果的に火が点けばそれでいいのだから。細かいことは気にしない。要は結果が大事なのだ。『火を起こす』と言ったモルトに任せてしまえば十分だ。
勢い感は否めない。だが時にはそれも必要だ。今のアイナにはお湯しかない。
モルトさんに火を起こしてと幼女のおねだりを試みる。使える者は何でも使いたいアイナの奥の手だ。
「起こせるけど? アイナちゃん一体どうするの?」もの凄く怪しんでいらっしゃる。
「お湯を作ります!」
「はっ? それを言うならお湯を沸かすでしょ?」
「違います。沸かせないからお湯にするのです」
(うわぁ、モルトさんの私を見る目が痛い。そ、そんな馬鹿な子を見る目で見ないで…‥‥)非常に気不味い。
沸かすだけが手ではない。他にもやり方はある。暖かい川の水の利用の仕方、子供達に冷たい水は可哀想だと子供好きのモルトの心を突く。
「確かに冷たいしなー」と一応の納得を見せた彼だが火を起こした後、どうするのか詳しく教えろと詰め寄って来た。
了承したのだ、教えるからしっかりやって貰いたい。
0
あなたにおすすめの小説
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
狼になっちゃった!
家具屋ふふみに
ファンタジー
登山中に足を滑らせて滑落した私。気が付けば何処かの洞窟に倒れていた。……しかも狼の姿となって。うん、なんで?
色々と試していたらなんか魔法みたいな力も使えたし、此処ってもしや異世界!?
……なら、なんで私の目の前を通る人間の手にはスマホがあるんでしょう?
これはなんやかんやあって狼になってしまった私が、気まぐれに人間を助けたりして勝手にワッショイされるお話である。
転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて
ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記
大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。
それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。
生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、
まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。
しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。
無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。
これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?
依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、
いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。
誰かこの悪循環、何とかして!
まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる