上 下
18 / 45
冒険者ジルク

憤慨

しおりを挟む
ローズはジルクが眠りについたのを確認する。想像以上に厄介なモノに巻き込まれており、ローズ自身でも解決できない問題だった。
だからこそ交渉をしかけたのだが、結果は芳しくないものだった。しかしあれほどの災害獣があんな交渉を仕掛けてきたという事実が、ローズをこの先どう立ち回るべきなのかを決定づけさせる。

「一度ジルクを奴のモノにして、その後私が奪還しようとするというのが奴の筋書きだな。だからまた会うと言ったのだろう」

そしてそういう交渉をしたということは、おそらく奴は未来が読めるのだろう。逆説的にそこから何が起きるかは予想できる。

まずジルクが奴のモノになること。これはそもそも相手が悪過ぎる以上未来を視る必要すらない。
次に私が死なないこと。次に会う時までという時間形式の契約である以上、そこまで殺す気はないと見ていいことからだ。
そして……これが一番嫌なことだが、おそらくその二つは密接に影響していること。私を殺させないためにジルクが奴のモノになるのだろう。それ以外に考えようがない。だがそれを崩すとなれば私が死ぬか、ジルクが死ぬかのどちらかになるだけだ。

「一度でも想い人を奪われるというのは殺意が湧くのだが……。……、……我慢するしかないか」

噛み過ぎて口から血が流れ出るローズ。気づく人は誰もいなかった。
しおりを挟む

処理中です...