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決戦
決戦-1
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翌日の昼、ローザリッサはかつてカルザ達が訪れた岩山まで来ていた。今のローザリッサの速度ならカルザ達が時間をかけて歩んできた旅路もすぐだ。
「ここだな」
岩山にある洞窟。ここを探索した果てにジルクはああなったはずだ。であれば、もう一度同じことを起こせば奴は現れると考えるのが妥当だ。
「入っていけば階段があるはず」
カルザ達が覚えていた最後の記憶、それは階段にヤヴォールの魔術を打ち込んだというものだ。つまりそこまで再現すればそこから先は記憶を失った領域に入れる。
今のローザリッサなら魔力感知もかつてのレベルではない。一瞬で階段を探知し、移動ルートを確定させる。
そして姿を戻して歩いて移動する。あのヤギが考えている通りの力を持っているなら、さっきまでの姿を知らないはずだ。
「ここだな」
階段に辿り着く。ただの階段にしか見えないが、これが深淵につながっているなどとは誰も考えないだろう。
知っているからこそ怯えもする。一つの深呼吸と共に、威力をかつてのレベルまで落とした炎の魔術を放つ。
しかし放ったと同時に魔術は目の前で消滅する。どこか邪悪さが見える魔力に覆われて消えてしまったのだ。
「待っていましたよ」
その言葉と共に空間が捻じれ、ローザリッサは別の空間へと転移された。抵抗などせず、ローザリッサはその転移に身を任せていた。
転移された場所はかつてジルクがシアになった洞窟。ローズにとって忌々しい場所であり、二度と帰らないと決めたかった場所だ。
だがローザリッサにとってはそうではない。絶対に帰ってくると決めた場所だ。
「出たな。ジルクはどこにいる?」
「シアですか?。彼女ならここに」
ローザリッサはヤギと対等になるような話し方をしていた。それはかつてローズがだましだましで行っていたものではない。実際に対等なのだというような態度だった。
ヤギの後光が消え、その周囲の風景が正しく見えるようになる。ローザリッサはその光景に怒りこそ覚えたものの、どこか悲しい目もしていた。
「フィーアさまぁ」
甘ったるい声と共にフィーアに抱き着いているシア。美少女という言葉がしっくりくるシアが抱きつくというのは、人間の裏社会に潜む者の夢でも叶えているのかと思ってしまう。
取り戻すと言っているものの、ここまで堕ちた者ともなるとその気も落ち込んでしまう。
「……」
「可愛いでしょう?。かつての姿は消え失せ、私に従順な眷属となったシア。返せと言われても返せる部分はありませんよ?」
ふぅと一つ溜息をつく。最悪の予想と最低の予想をしていたが……最低の予想の方が当たったようだ。最悪とはジルクという存在を消去したのかということ。そして最低とは、ジルクの存在を嘲笑うような力の使い方をしたのかということだ。
「ああ、そんな気はしていた」
だからこそ、嬉しい。
「……ほう?」
それならば、取り戻せる。
「だからこそ私は力を求めた。私の知っているジルクを取り戻せる力を」
全身に力を漲らせる。両手両足が燃えるような魔力に覆われ、以前とは全く別物の力を宿す。ローザリッサとしての力を少しずつ展開していく。
「これは……一体?」
その反応を見てローザリッサはにやりと笑う。獰猛な肉食動物を思い起こさせるような笑顔は、ヤギとシアを引かせるには十分だった。
「その反応、確信したぞ。私はジルクを取り戻せる」
「……妄信というのですよそれは」
ヤギも魔力を展開し始める。かつてローズを圧しきった魔力が周囲を覆い、さらに密度を濃ゆくしていく。ローザリッサもそれに覆われ、その炎は相対的にどんどんと小さくなっていく。
さらにかつてジルクとローズに致命傷を負わせたエルダードワーフとエルダーエルフが現れる。ローズからすればトラウマを刺激するには十分であり、怯えの表情すら見せただろう。
だが今ここにいるのはローズではない。奪われたモノを取り返すために試練を乗り越えてきた者、ローザリッサだ。
エルダードワーフとエルダーエルフがかつてと同じ速度で大槌と長剣をローザリッサへと振るう。だがそれらが届く前に、ローザリッサの燃える指が彼らの首をなぞった。
「いいや確信さ。例え未来予知できても、お前は私の名前が分からないだろう?」
二人の動きは止まり、力無く前のめりに倒れる。そこには首を焼き切られた跡が残っていた。
ヤギ……災害獣フィーア・ラヴィリエントはそこで初めて動揺を見せた。一度聞いたはずの名前は分かっても、そこから先に見た未来の名乗りが違っていたからだ。
「ローズと言って……いや、これは。ローザ……」
ローザリッサの背中から大きく蝶の羽が羽ばたく。それと同時に周囲を覆っていた邪悪とも言えるフィーアの魔力は焼き払われた。
「赤い……羽根……?」
フィーアの言葉に訂正するように彼女は……彼女らは名乗る。
「ローズ・アリッサ。我が主である赤い羽根に頂いた、眷属たる私の名前よ」
「名乗る程の強さでもないですね。赤い羽根とでも呼べばいいですよ。しかし予想より早かったですね。急ぐのは悪い癖ですよ?」
全身に災害獣レ■ィ■■■■■ の力を宿すローザリッサ。そしてその肩の上に小さな赤い蝶が一羽飛んでいた。
全てを燃やし尽くす紅蓮の火を灯す一人と一羽は、明確な意思を持って敵対の目をフィーアとシアに向けた。
「ここだな」
岩山にある洞窟。ここを探索した果てにジルクはああなったはずだ。であれば、もう一度同じことを起こせば奴は現れると考えるのが妥当だ。
「入っていけば階段があるはず」
カルザ達が覚えていた最後の記憶、それは階段にヤヴォールの魔術を打ち込んだというものだ。つまりそこまで再現すればそこから先は記憶を失った領域に入れる。
今のローザリッサなら魔力感知もかつてのレベルではない。一瞬で階段を探知し、移動ルートを確定させる。
そして姿を戻して歩いて移動する。あのヤギが考えている通りの力を持っているなら、さっきまでの姿を知らないはずだ。
「ここだな」
階段に辿り着く。ただの階段にしか見えないが、これが深淵につながっているなどとは誰も考えないだろう。
知っているからこそ怯えもする。一つの深呼吸と共に、威力をかつてのレベルまで落とした炎の魔術を放つ。
しかし放ったと同時に魔術は目の前で消滅する。どこか邪悪さが見える魔力に覆われて消えてしまったのだ。
「待っていましたよ」
その言葉と共に空間が捻じれ、ローザリッサは別の空間へと転移された。抵抗などせず、ローザリッサはその転移に身を任せていた。
転移された場所はかつてジルクがシアになった洞窟。ローズにとって忌々しい場所であり、二度と帰らないと決めたかった場所だ。
だがローザリッサにとってはそうではない。絶対に帰ってくると決めた場所だ。
「出たな。ジルクはどこにいる?」
「シアですか?。彼女ならここに」
ローザリッサはヤギと対等になるような話し方をしていた。それはかつてローズがだましだましで行っていたものではない。実際に対等なのだというような態度だった。
ヤギの後光が消え、その周囲の風景が正しく見えるようになる。ローザリッサはその光景に怒りこそ覚えたものの、どこか悲しい目もしていた。
「フィーアさまぁ」
甘ったるい声と共にフィーアに抱き着いているシア。美少女という言葉がしっくりくるシアが抱きつくというのは、人間の裏社会に潜む者の夢でも叶えているのかと思ってしまう。
取り戻すと言っているものの、ここまで堕ちた者ともなるとその気も落ち込んでしまう。
「……」
「可愛いでしょう?。かつての姿は消え失せ、私に従順な眷属となったシア。返せと言われても返せる部分はありませんよ?」
ふぅと一つ溜息をつく。最悪の予想と最低の予想をしていたが……最低の予想の方が当たったようだ。最悪とはジルクという存在を消去したのかということ。そして最低とは、ジルクの存在を嘲笑うような力の使い方をしたのかということだ。
「ああ、そんな気はしていた」
だからこそ、嬉しい。
「……ほう?」
それならば、取り戻せる。
「だからこそ私は力を求めた。私の知っているジルクを取り戻せる力を」
全身に力を漲らせる。両手両足が燃えるような魔力に覆われ、以前とは全く別物の力を宿す。ローザリッサとしての力を少しずつ展開していく。
「これは……一体?」
その反応を見てローザリッサはにやりと笑う。獰猛な肉食動物を思い起こさせるような笑顔は、ヤギとシアを引かせるには十分だった。
「その反応、確信したぞ。私はジルクを取り戻せる」
「……妄信というのですよそれは」
ヤギも魔力を展開し始める。かつてローズを圧しきった魔力が周囲を覆い、さらに密度を濃ゆくしていく。ローザリッサもそれに覆われ、その炎は相対的にどんどんと小さくなっていく。
さらにかつてジルクとローズに致命傷を負わせたエルダードワーフとエルダーエルフが現れる。ローズからすればトラウマを刺激するには十分であり、怯えの表情すら見せただろう。
だが今ここにいるのはローズではない。奪われたモノを取り返すために試練を乗り越えてきた者、ローザリッサだ。
エルダードワーフとエルダーエルフがかつてと同じ速度で大槌と長剣をローザリッサへと振るう。だがそれらが届く前に、ローザリッサの燃える指が彼らの首をなぞった。
「いいや確信さ。例え未来予知できても、お前は私の名前が分からないだろう?」
二人の動きは止まり、力無く前のめりに倒れる。そこには首を焼き切られた跡が残っていた。
ヤギ……災害獣フィーア・ラヴィリエントはそこで初めて動揺を見せた。一度聞いたはずの名前は分かっても、そこから先に見た未来の名乗りが違っていたからだ。
「ローズと言って……いや、これは。ローザ……」
ローザリッサの背中から大きく蝶の羽が羽ばたく。それと同時に周囲を覆っていた邪悪とも言えるフィーアの魔力は焼き払われた。
「赤い……羽根……?」
フィーアの言葉に訂正するように彼女は……彼女らは名乗る。
「ローズ・アリッサ。我が主である赤い羽根に頂いた、眷属たる私の名前よ」
「名乗る程の強さでもないですね。赤い羽根とでも呼べばいいですよ。しかし予想より早かったですね。急ぐのは悪い癖ですよ?」
全身に災害獣レ■ィ■■■■■ の力を宿すローザリッサ。そしてその肩の上に小さな赤い蝶が一羽飛んでいた。
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