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第一章 マゼンタ王国~皇女の守護魔獣に転生編~

二次会

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    魂晶の儀は無事?  おわった。折角上機嫌だったピロロが、また、荒れ狂っている。一時はニガレオス帝国に、攻め込む勢いだった。周囲が反対すると、一騎で攻め込むと言い出した。

    ここは、マドムさんとモアゼルさんの出番である。二人で手に負えなくなると、マドムさんが目配せしてドン・スネークが投入される。
    予定では、白蛇ドン・スネークが逃げ回って姫を疲れさせるはずだったようだが、姫の怒りは激しく、易々と捕まってしまった。
    蒲焼にされる既のところで、救世主シマさんがやってきた。

    俺達は今、料理長室にいる。魂晶の儀のお祝いをしてくれているのだ。城をあげた盛大なパーティでは、気疲れして楽しめないだろうと内々で、二次会?   を開いてくれたのだ。

    テーブルにはご馳走が並べられている。さらに、天麩羅やお寿司は、目の前でシマさんが調理してくれた。シマさんの芸術のような料理を前に、ピロロの怒りは食欲へと変貌し消化されたようである。

    ラヴォア博士にピロロとラキノン王の撃退劇について聞かせた。
    博士はラキノン王の采配に唸り声をあげた。あの黒い煙は色素ピグメントであり、体内に取り込まれると精神を支配し暴走させるらしい。それを瞬時に判断し焼失させたのは流石である。

    俺とピロロの件でも、お互いに同じ気持ちであることを、一目で見抜いた。この国の平和と安泰は、あの王によって齎されているといっても過言ではないようだ。

    一対の朱雀についても聞いてみた。滅多にお目にかかれず、博士もあまり知らないようだ。ラキノン王の守護魔獣でアントラキノン種であること、色素ピグメントを炎に変換できるらしいという情報だけ得られた。

    あの焼滅の能力だけでも十分取得する価値がある。幸いアントラキノンの合成法も、うろ覚えではあるが知っている。博士の知識とあわせれば、再現可能だろう。ということで、取得実験の立会をお願いした。
    また、悪い顔になっている。裏で論文の題材にでもされているのだろう。

    突然、廊下が騒がしくなった。勢いよくドアが開けられ、衛兵が飛び込んでくる。

「ピロロピロール姫様、ラキノン大王陛下がお呼びです」

「何?  陛下がお呼びだと。わかった、すぐ、参ろう」
    そういうと、ピロロは部屋を後にした。残された俺達も、その物々しさに、これ以上遊ぶ気分にもなれずお開きとなった。

    ピロロはその夜、戻って来なかった。朝日が登り始めた頃、ようやく戻ってきた。

    なんでも、シアニン帝国で内乱が起こったらしい。マゼンタ王国とシアニン帝国は同盟関係にあり、援軍の準備を要請されたそうだ。ピロロはヴァイオレッタの身を案じ、即出兵を進言した。しかし、相手方の内政に関することであり、派遣の要請無しには兵を動かせいないようだ。

「私は行くぞ」
    ピロロが静かにいった。

「そうか。それなら、俺もいこう」
    俺がそう答えると、ピロロが目を見開いた。

「止めぬのか」

「いや、止めたって無駄だろ。今まで散々議論しあってその結果に至ったんだろうから。それに、ラキノン王に言われたんだよ、命ある限りピロロを守れって」

「それは、私も同じだ」

「じゃー、一心同体。派手に暴れるとするか」
    俺のお腹がモゾモゾと動く。ドン・スネークが顔をだした。

「何なに?ヴァイオレッタに会えんのか」
    目がキラキラと輝いている。主のことは一切心配していないようだ。相変わらず能天気なヤツである。

    いつの間にやら、マドムさんとモアゼルさんが傍にたっていた。出立の準備をする気満々のようである。
    情報収集や新たな能力獲得のために、博士の所も尋ねなければならない。

    思い立ったが吉日、皆一斉に動きだすのであった。
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