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第三章 チタニア教帝領~教帝聖下救出編~
黒い嵐
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まぶしい。
窓から射し込む朝日で、目が覚めた。
昨夜は、ベッドに入ると、即眠りに落ちた。
思っていた以上に、疲労が溜まっていたようだ。
ピロロの部屋に、行ってみることした。
シアニン帝国では殆ど、行動を共にしていたのだ。疲労が蓄積しているに違いない。休めていると、いいのだが。
ノックすると、中からマダムさんの返事が聞こえ、扉が開いた。
「ピロロ姫は戻ってきましたか」
「昨夜は1時間ほどでお戻りになり、先程、お出かけになりました。
ピロロ姫様から、言伝をいただいております。
朱雀の間にお連れするようにと。ご案内いたしますので、私に着いてきてください」
そう言うと、マドムさんは歩き出した。慌てて着いていく。
階段を降りて右に曲がる。
この通りは、会議室が並んでいるらしい。
歴代国王陛下の守護魔獣に因んで、名づけらるそうだ。
歩きながらマドムさんが教えてくれる。
朱雀の間は5番目の部屋だった。
両開きの扉に、金細工でニ对の朱雀があしらわれている。
マドムさんがドアノッカーを鳴らした。朱雀の頭がモチーフとなっている。
「入るが良い」
ラキノン王がいった。
「ピロル様をお連れしました」
「うむ、ご苦労。ピロルはそちらへ座れ。
下がって良いぞ」
マドムさんは、一礼すると部屋を出ていった。
ピロロの隣の椅子へ飛び乗る。
円形のテーブルには、ラキノン王とピロロ、大臣と思われる二人の紳士、ラヴォア博士、そして、白装束に身を包んだ若い男とその部下が着座していた。
床は謁見の間同様、ふわっふわっの絨毯仕様だ。
中央には光輝く太陽が、鮮やかなグラデーションで描かれている。
着座すると拝めるように、計算されていた。
「アナターゼ総主教、悪いのだがもう一度、状況を説明してくれまいか」
ラキノン王の申し出に、白装束の男が答える。
色素女神教団のトップである、サンカチタン5世教帝聖下と連絡がとれないのだそうだ。
教帝聖下は色素女神様の代弁者であるらしい。色素女神様のお告げを、御宣託として各国の神殿に伝える役割を担っている。その御宣託が、各国の総主教から統治者へと伝えられ、政治に反映されるのだ。
御宣託は、神殿に安置されている水瓶を介して、下されるらしい。
常時、色素が白く輝きながら、円を描くように聖水中を泳いでいるのだという。御宣託があると、それが文字を描くのだ。
1週間ほど前、突如として御宣託が下された。
水瓶に「黒い嵐、チタニア崩壊」との文字が描かれると、瞬く間に、聖水が満ちていった。
遂には溢れ出し、三日三晩止まらなかったという。
それが落ち着くと、今度は色素が底に沈み、輝きも日に日に弱くなっていったそうだ。
総主教が昨夜ルブルム城を訪れたのも、この調査依頼のためらしい。
国王陛下とピロロが対応にあたったのだが、余りにも事が重大なので、皆を集めてから決めようと、再度、会議の場が設けられたのだという。
「そもそも、チタニア教帝領は聖なる光に包まれており、天災・厄災の影響は受けないのではありませんか」
大臣が不思議そうに問うた。
チタニア教帝領というのは、ピグマリア教団の自治領土を指すようだ。
「その通りです。
ですから、私もチタニア教帝領が嵐に襲われ崩壊するなど、信じらぬのです」
アナターゼ総主教が同意する。
「あのっ……」
皆の視線が俺に集まる。
アナターゼ総主教が怪訝そうな顔をした。
やべっ、出過ぎた真似だったかな。
思わず口を開いたことに、後悔する。
「続けよ」
ラキノン王が、促してくれた。
少しだけ気まずさが払拭される。
「1週間前と言えば、ちょうど、俺とピロロ姫様が、シアニン帝国で黒龍と戦っていた頃だと思います。黒い嵐とは、黒竜が呼び起こした嵐のことではないでしょうか」
実は、ずっと引っかかっていたのだ。黒竜は何故、天候操作を使わないのだろうかと。
「なるほど。
黒龍はピロル君達との戦いで、天候操作を使わなかったのではなく、使えなかったのか。
ニガレオス帝国は、そうさせることで、シアニン帝国とチタニア教帝領の両方を一度に攻めることができた。
シアニン帝国はピロルくん達の働きで、守られたがね」
博士が補足説明するように、そう付け足しながら、うーんと唸った。
「待ってください。チタニア教帝領は、シアニン帝国で戦っていた黒竜が生み出した嵐により、滅ぼされたというのですか」
アナターゼ総主教が焦ったように言った。みるみる内に、顔色が悪くなる。
「定かではありませんが、状況は宜しくないでしょう。
聖水が溢れ出した事象は、チタニア教帝領での出来事との連動が予想されます。大規模な水害に晒されたと見て、間違いないでしょう。
ただ、希望もあります。まだ、色素が、光を失っていないということは、教帝聖下がご存命だということです。
一刻を争います。早急に調査団を派遣し、救出作戦を展開すべきです」
ラブォア博士の進言に、一同が頷く。
「では、早急にチームを編成して、調査と救出に当たらせよう。
ピロロピロール、そなたを団長とする。適任者を選抜し、チームを編成せよ。また、必要な資材をリスト化するように。
こちらで、各所に手配しよう。各人、ピロロピロールを補佐を頼む。明後日を出発目標日に定める。
異論のある者はいるか」
場が静寂につつまれた。
「無ければ、これで会議を終了する。各人、善処せよ! 」
「「「御意! 」」」
ラキノン王の一声で、人々が動き出す。
ピロロに大きく皺寄せがきている気がするが、それだけ信頼されているということだろう。
俺は、その一部でも背負ってあげられるだろうか。出来ることから、着実にこなそう。
昨夜の博士との会話を思い出す。
黒龍の存在が神への冒涜であるならば、それが生み出した嵐が、神の代弁者を抹殺するなど許される訳がない。
そして、ピロロの働きだってご覧になっているはずだ。きっと、御加護を与えてくれる。
色素女神様が存在するならば、それを受け入れ、存分に利用すればいい。今の俺は化学者ではなく、ピロロの守護魔獣なのだから。
心のモヤモヤがすーっと、晴れていく気がした。
窓から射し込む朝日で、目が覚めた。
昨夜は、ベッドに入ると、即眠りに落ちた。
思っていた以上に、疲労が溜まっていたようだ。
ピロロの部屋に、行ってみることした。
シアニン帝国では殆ど、行動を共にしていたのだ。疲労が蓄積しているに違いない。休めていると、いいのだが。
ノックすると、中からマダムさんの返事が聞こえ、扉が開いた。
「ピロロ姫は戻ってきましたか」
「昨夜は1時間ほどでお戻りになり、先程、お出かけになりました。
ピロロ姫様から、言伝をいただいております。
朱雀の間にお連れするようにと。ご案内いたしますので、私に着いてきてください」
そう言うと、マドムさんは歩き出した。慌てて着いていく。
階段を降りて右に曲がる。
この通りは、会議室が並んでいるらしい。
歴代国王陛下の守護魔獣に因んで、名づけらるそうだ。
歩きながらマドムさんが教えてくれる。
朱雀の間は5番目の部屋だった。
両開きの扉に、金細工でニ对の朱雀があしらわれている。
マドムさんがドアノッカーを鳴らした。朱雀の頭がモチーフとなっている。
「入るが良い」
ラキノン王がいった。
「ピロル様をお連れしました」
「うむ、ご苦労。ピロルはそちらへ座れ。
下がって良いぞ」
マドムさんは、一礼すると部屋を出ていった。
ピロロの隣の椅子へ飛び乗る。
円形のテーブルには、ラキノン王とピロロ、大臣と思われる二人の紳士、ラヴォア博士、そして、白装束に身を包んだ若い男とその部下が着座していた。
床は謁見の間同様、ふわっふわっの絨毯仕様だ。
中央には光輝く太陽が、鮮やかなグラデーションで描かれている。
着座すると拝めるように、計算されていた。
「アナターゼ総主教、悪いのだがもう一度、状況を説明してくれまいか」
ラキノン王の申し出に、白装束の男が答える。
色素女神教団のトップである、サンカチタン5世教帝聖下と連絡がとれないのだそうだ。
教帝聖下は色素女神様の代弁者であるらしい。色素女神様のお告げを、御宣託として各国の神殿に伝える役割を担っている。その御宣託が、各国の総主教から統治者へと伝えられ、政治に反映されるのだ。
御宣託は、神殿に安置されている水瓶を介して、下されるらしい。
常時、色素が白く輝きながら、円を描くように聖水中を泳いでいるのだという。御宣託があると、それが文字を描くのだ。
1週間ほど前、突如として御宣託が下された。
水瓶に「黒い嵐、チタニア崩壊」との文字が描かれると、瞬く間に、聖水が満ちていった。
遂には溢れ出し、三日三晩止まらなかったという。
それが落ち着くと、今度は色素が底に沈み、輝きも日に日に弱くなっていったそうだ。
総主教が昨夜ルブルム城を訪れたのも、この調査依頼のためらしい。
国王陛下とピロロが対応にあたったのだが、余りにも事が重大なので、皆を集めてから決めようと、再度、会議の場が設けられたのだという。
「そもそも、チタニア教帝領は聖なる光に包まれており、天災・厄災の影響は受けないのではありませんか」
大臣が不思議そうに問うた。
チタニア教帝領というのは、ピグマリア教団の自治領土を指すようだ。
「その通りです。
ですから、私もチタニア教帝領が嵐に襲われ崩壊するなど、信じらぬのです」
アナターゼ総主教が同意する。
「あのっ……」
皆の視線が俺に集まる。
アナターゼ総主教が怪訝そうな顔をした。
やべっ、出過ぎた真似だったかな。
思わず口を開いたことに、後悔する。
「続けよ」
ラキノン王が、促してくれた。
少しだけ気まずさが払拭される。
「1週間前と言えば、ちょうど、俺とピロロ姫様が、シアニン帝国で黒龍と戦っていた頃だと思います。黒い嵐とは、黒竜が呼び起こした嵐のことではないでしょうか」
実は、ずっと引っかかっていたのだ。黒竜は何故、天候操作を使わないのだろうかと。
「なるほど。
黒龍はピロル君達との戦いで、天候操作を使わなかったのではなく、使えなかったのか。
ニガレオス帝国は、そうさせることで、シアニン帝国とチタニア教帝領の両方を一度に攻めることができた。
シアニン帝国はピロルくん達の働きで、守られたがね」
博士が補足説明するように、そう付け足しながら、うーんと唸った。
「待ってください。チタニア教帝領は、シアニン帝国で戦っていた黒竜が生み出した嵐により、滅ぼされたというのですか」
アナターゼ総主教が焦ったように言った。みるみる内に、顔色が悪くなる。
「定かではありませんが、状況は宜しくないでしょう。
聖水が溢れ出した事象は、チタニア教帝領での出来事との連動が予想されます。大規模な水害に晒されたと見て、間違いないでしょう。
ただ、希望もあります。まだ、色素が、光を失っていないということは、教帝聖下がご存命だということです。
一刻を争います。早急に調査団を派遣し、救出作戦を展開すべきです」
ラブォア博士の進言に、一同が頷く。
「では、早急にチームを編成して、調査と救出に当たらせよう。
ピロロピロール、そなたを団長とする。適任者を選抜し、チームを編成せよ。また、必要な資材をリスト化するように。
こちらで、各所に手配しよう。各人、ピロロピロールを補佐を頼む。明後日を出発目標日に定める。
異論のある者はいるか」
場が静寂につつまれた。
「無ければ、これで会議を終了する。各人、善処せよ! 」
「「「御意! 」」」
ラキノン王の一声で、人々が動き出す。
ピロロに大きく皺寄せがきている気がするが、それだけ信頼されているということだろう。
俺は、その一部でも背負ってあげられるだろうか。出来ることから、着実にこなそう。
昨夜の博士との会話を思い出す。
黒龍の存在が神への冒涜であるならば、それが生み出した嵐が、神の代弁者を抹殺するなど許される訳がない。
そして、ピロロの働きだってご覧になっているはずだ。きっと、御加護を与えてくれる。
色素女神様が存在するならば、それを受け入れ、存分に利用すればいい。今の俺は化学者ではなく、ピロロの守護魔獣なのだから。
心のモヤモヤがすーっと、晴れていく気がした。
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