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第三章 チタニア教帝領~教帝聖下救出編~
希望の光
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「きょうていせーか! 僕、マゼンタおーこくに、いってきまーーす! 」
前を走るハクが、そう叫んだ。
視線の先には、教帝聖下が背を向けて立っている。
「おわっ! これ何ですか? 」
「噴水だよ。犠牲者を忘れないために、そして、我々の希望の光になるように、新しく作ったのだ」
横で目を丸くしながら叫ぶハクに、教帝聖下がそう言った。
「きれー!」
覗き込むハクの隣に、俺も並ぶ。
円形の噴水は、黒い御影石で縁取られていた。外側から内部まで1枚の石から掘り出されたかのように、一切接合面がみえない。丸く縁どりされた縁石は、ちょうど俺の胴体ほどの高さだった。
直径5メートル、深さ2メートル程の内部には、水が讃えている。中央に備え付けられた円筒型の細長い棒からは水が吹き出し、半球形の水状カーテンを創り出していた。その上で、シリカバルーンが煌々と輝きながら、ぷかぷか浮かんでいる。
その芸術美に目を奪われていると、水中を白い何かが物凄い速さで、泳ぎゆくのが見えた。
――教帝聖下の色素だろうか。
目で追っていると、白い何かと赤い何かが交錯し始めた。やがてそれらは、紅白の線を結んでいく。縁起の良い趣向に、思わず見取れてしまった。
浮上しては潜る。その波動を繰り返し、どんどん加速していった。もう、目で追うのもやっとだ。
俺の真正面で水面ギリギリに浮上しだした。
シュ、シュッ!──ペチャッ、ピチャッ!
気づいた時には、仰向けに寝転んでいた。青いはずの空は、何故か紅くて白い。
「愛されているのだなぁ」
数メートル先で教帝聖下が、そう呟くのが聞こえた。
「スラリー達が泳いでいるなら、教えて下さいよっ! 」
「まさか飛びかかるとは、思わなかったのだ」
教帝聖下が、苦笑いしながら言う。まぁ、それはそうだろう。
新設の噴水をスライム達は、痛く気に入ったらしい。そこを泳げる悦びを、最大級の愛情表現で伝えてくれたようだ。いや、それならお造りくださった教帝聖下にお伝えしろよ、まったく……。
『顔ペチャ』で気持ちを表現した彼らは、早々に噴水へと戻って行った。今も気持ちよさそうに泳いでいる。
「……で、なんだって。ハクがマゼンタ王国に行くだって! 」
「あっ、はいっ! 」
「いや、子供1人で行かせる訳にはいかない。第一ラキノン王の許可がいるだろう」
「えーーーーっ! 」
ハクが叫んだ。
「ぜーっ、ぜーっ、はーはー。は、ハクの面倒、は、私が、ゼーゼー、見ます、です」
やっと追い付いた博士が、倒れ込みながらそう言った。
落ち着いた博士は、教帝聖下にハクが化学のセンスがあること、そして、今の内から色素について学ばせたいことを説明した。
「そうは言ってもだな。1人でマゼンタ王国に送り出すのは心配だ」
教帝聖下は、中々首を縦に振らない。
「ハクは1人じゃないぜ」
「そうっすよ! 自分たちがついてるっす! 」
異次元ポケットからスネーク兄弟が顔をだし援護する。
「俺もついてますから大丈夫ですよ。ハクにたくさん化学を教えこんで、立派な化学者にしてみせます」
「うーむ、化学者……なぁ。それは良いが、食事はどうするのだ。マゼンタ王国だとハクは生活しづらいのではないか」
「大丈夫ですよ。ルブルム城には優秀なシマ料理長がいますから。この際だから、料理も教わっちゃえばいいじゃないかな」
「うーむ。ハクはどうしても行きたいのか? 」
「はいっ! 」
教帝聖下の問いに、ハクが勢いよく答えた。
「皆がそこまで言うのなら、ラキノン王に一筆認めよう。ハクの意志が一番だからな。ハクのことを呉々もよろしく頼む」
「「「「任せてください! 」」」」
「やっっっったーーーー! 」
ハクが飛び跳ねながら喜ぶ。それに呼応するように水面を跳ねるスラリー達は、とても楽しそうだった。
前を走るハクが、そう叫んだ。
視線の先には、教帝聖下が背を向けて立っている。
「おわっ! これ何ですか? 」
「噴水だよ。犠牲者を忘れないために、そして、我々の希望の光になるように、新しく作ったのだ」
横で目を丸くしながら叫ぶハクに、教帝聖下がそう言った。
「きれー!」
覗き込むハクの隣に、俺も並ぶ。
円形の噴水は、黒い御影石で縁取られていた。外側から内部まで1枚の石から掘り出されたかのように、一切接合面がみえない。丸く縁どりされた縁石は、ちょうど俺の胴体ほどの高さだった。
直径5メートル、深さ2メートル程の内部には、水が讃えている。中央に備え付けられた円筒型の細長い棒からは水が吹き出し、半球形の水状カーテンを創り出していた。その上で、シリカバルーンが煌々と輝きながら、ぷかぷか浮かんでいる。
その芸術美に目を奪われていると、水中を白い何かが物凄い速さで、泳ぎゆくのが見えた。
――教帝聖下の色素だろうか。
目で追っていると、白い何かと赤い何かが交錯し始めた。やがてそれらは、紅白の線を結んでいく。縁起の良い趣向に、思わず見取れてしまった。
浮上しては潜る。その波動を繰り返し、どんどん加速していった。もう、目で追うのもやっとだ。
俺の真正面で水面ギリギリに浮上しだした。
シュ、シュッ!──ペチャッ、ピチャッ!
気づいた時には、仰向けに寝転んでいた。青いはずの空は、何故か紅くて白い。
「愛されているのだなぁ」
数メートル先で教帝聖下が、そう呟くのが聞こえた。
「スラリー達が泳いでいるなら、教えて下さいよっ! 」
「まさか飛びかかるとは、思わなかったのだ」
教帝聖下が、苦笑いしながら言う。まぁ、それはそうだろう。
新設の噴水をスライム達は、痛く気に入ったらしい。そこを泳げる悦びを、最大級の愛情表現で伝えてくれたようだ。いや、それならお造りくださった教帝聖下にお伝えしろよ、まったく……。
『顔ペチャ』で気持ちを表現した彼らは、早々に噴水へと戻って行った。今も気持ちよさそうに泳いでいる。
「……で、なんだって。ハクがマゼンタ王国に行くだって! 」
「あっ、はいっ! 」
「いや、子供1人で行かせる訳にはいかない。第一ラキノン王の許可がいるだろう」
「えーーーーっ! 」
ハクが叫んだ。
「ぜーっ、ぜーっ、はーはー。は、ハクの面倒、は、私が、ゼーゼー、見ます、です」
やっと追い付いた博士が、倒れ込みながらそう言った。
落ち着いた博士は、教帝聖下にハクが化学のセンスがあること、そして、今の内から色素について学ばせたいことを説明した。
「そうは言ってもだな。1人でマゼンタ王国に送り出すのは心配だ」
教帝聖下は、中々首を縦に振らない。
「ハクは1人じゃないぜ」
「そうっすよ! 自分たちがついてるっす! 」
異次元ポケットからスネーク兄弟が顔をだし援護する。
「俺もついてますから大丈夫ですよ。ハクにたくさん化学を教えこんで、立派な化学者にしてみせます」
「うーむ、化学者……なぁ。それは良いが、食事はどうするのだ。マゼンタ王国だとハクは生活しづらいのではないか」
「大丈夫ですよ。ルブルム城には優秀なシマ料理長がいますから。この際だから、料理も教わっちゃえばいいじゃないかな」
「うーむ。ハクはどうしても行きたいのか? 」
「はいっ! 」
教帝聖下の問いに、ハクが勢いよく答えた。
「皆がそこまで言うのなら、ラキノン王に一筆認めよう。ハクの意志が一番だからな。ハクのことを呉々もよろしく頼む」
「「「「任せてください! 」」」」
「やっっっったーーーー! 」
ハクが飛び跳ねながら喜ぶ。それに呼応するように水面を跳ねるスラリー達は、とても楽しそうだった。
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