転生猫耳少女の異世界クライムサスペンス

ウルティ

文字の大きさ
1 / 2

異世界で会う

しおりを挟む
〈異世界〉
 
 それは、誰しもが憧れるユートピア。
 
 異種族が入り混じる、賑わった中世の街並み。
 剣が火花を散らし魔法が飛び交う、強大な魔物との戦い。
 神秘的な迷宮に、幻想的な魔境の数々。
 富と力と名声、そして、夢を求め、剣と魔法の世界ファンタジーワールドを旅する。

 ––––そんな夢。

 私が〈異世界〉を夢見るようになったのは、いつだったか…。

『あーあ、俺も異世界行ってハーレム無双してーなー』

 いつか、幼馴染のユウイチ雄一がそう言った。
〈異世界〉という言葉は、幼き日の私にとって、とても魅力的なものに聞こえた。

『異世界って、何?』

 私は、思わずそう聞いた。
 ユウイチが嬉しそうに答えてくれたのを、覚えている。同時に、彼が語る夢幻は私の胸を高鳴ならせ、欲求は募った。
 
 私もその世界を知りたい。
 私の––––私自身への要求だった。

 ★ーーーー

 家々が連なる街中の路地に、剣戟が響く。

「カナ、下がって!」

 長剣の一撃を受け流し、ユウイチは手に持つ両手剣で反撃に移る。
 しかし、甘い迷いを含んだ刺突は、男に紙一重で躱されてしまった。
 バックステップで間合いを取った男は、長剣を構え直し、卑屈な笑みを浮かべた。

「おぅおぅ、甘いね~。
 今の、殺す気でくれば当たってたぞ」
 
 ユウイチは、歯軋りの音を小さくたてながら、冷静に間合いを取り直す。
 私は、その背に自分の背を合わせた。

 襲撃者達のギラついた目は、大通りからそれた暗い路地で、不気味なほどに鋭い。
 狭い路地なら迎撃しやすいと思い、逃げ込んだが、それが裏目に出た。
 ユウイチの視界に二人、私の視界に三人。左右に反り立つ壁と道を塞ぐ5人の賊が、私達を囲う。
 逃げ場はなかった。

 私は、お気に入りの杖型〈魔道具〉の金具を外し、短剣ギミックを引き抜いた。

「おっ!?  ギミック!珍しいなぁ~。駆け出し冒険者には、お高いだろうに」

 と、襲撃者の一人が珍しがる。
 その手に持つ、桁違いに高い〈魔導剣〉は嫌味だろうか?
 
 魔導剣を得意げに見せびらかしながら、その襲撃者はジリジリと間合いを詰める。

「女もやる気になっちゃって……。
 命まで取ろうって訳じゃないんだから、ちったぁ大人しくなれよ。
 俺らが欲しいのは、その
 財布とか、金目のものとかだ!」

 襲撃者の指は、私が腰に下げるバックに向けられていた。
 私は、恐怖を内に押し込んで平常を装い、威勢をはる。

「悪いけど、こっちも貧乏でさ…。
 今、金とられると来月餓死しかねないし、諦めてくれない?」

 そう言い終えると同時に、〈魔導具〉を起点として、簡易的な魔法陣を展開した。
 簡単な防御結界だが、威嚇を目的としたもので、大した効果は無い。
 
 魔導剣の襲撃者は、ヒュ~と、余裕げに口笛を吹く。

きがいいなぁ…。
 じゃあ、見てやるよ!お前らが『許してください』って、泣き叫ぶさまをなっ!」

 そう言い終えるや否や、魔導剣を振り被り、襲撃者は石畳みを蹴った。

「それは、アンタの方だっ!!」
 
 私は、魔導剣の剣筋と交差する様にして、手に持つ短剣を振る。
 
 魔導剣と短剣が斬り結ぶ音と、青空が襲撃者に”白い塊”を叩きつけた瞬間が重なった。

      「「「––––えっ⁇⁇」」」

 襲撃者の体が、ドザァァーと盛大に、石畳みに投げ出される。
 私は、思わず飛びずさる様にして、それを避けていた。
 白い塊は、私が立っていた所に顔から倒れ込んだ襲撃者の上で、鮮やかに着地する。

 この場の全員(後ろを向くユウイチを除く)が、この瞬間を刮目した。
 一瞬遅れて、事に気がついたユウイチが振り返る。
 
 私達も、襲撃者達も、戦いを忘れ、呆然と白い塊を見続ける。
 まるで、時が止まった様だった。
 
「痛てて~。クッションあって、助かった~」

 場違いなセリフと共に、白い塊は立ち上がる。
 よく見ると、それは、白い外套マントを羽織った、少年程の身長を持つ”人”だ。
 外套を揺らし、辺りを見渡す顔と目が合った。

 整った、可愛げのある少女の顔だ。しかし、私の目は、その上に焦点を当てたきり動かない。

 それも、仕方ないだろう。
 艶やかなな白銀の髪の上に、美しき”ネコミミ”が乗っていたのだから。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

処理中です...