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異世界で会う
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〈異世界〉
それは、誰しもが憧れるユートピア。
異種族が入り混じる、賑わった中世の街並み。
剣が火花を散らし魔法が飛び交う、強大な魔物との戦い。
神秘的な迷宮に、幻想的な魔境の数々。
富と力と名声、そして、夢を求め、剣と魔法の世界を旅する。
––––そんな夢。
私が〈異世界〉を夢見るようになったのは、いつだったか…。
『あーあ、俺も異世界行ってハーレム無双してーなー』
いつか、幼馴染のユウイチがそう言った。
〈異世界〉という言葉は、幼き日の私にとって、とても魅力的なものに聞こえた。
『異世界って、何?』
私は、思わずそう聞いた。
ユウイチが嬉しそうに答えてくれたのを、覚えている。同時に、彼が語る夢幻は私の胸を高鳴ならせ、欲求は募った。
私もその世界を知りたい。
私の––––私自身への要求だった。
★ーーーー
家々が連なる街中の路地に、剣戟が響く。
「カナ、下がって!」
長剣の一撃を受け流し、ユウイチは手に持つ両手剣で反撃に移る。
しかし、甘い迷いを含んだ刺突は、男に紙一重で躱されてしまった。
バックステップで間合いを取った男は、長剣を構え直し、卑屈な笑みを浮かべた。
「おぅおぅ、甘いね~。
今の、殺す気でくれば当たってたぞ」
ユウイチは、歯軋りの音を小さくたてながら、冷静に間合いを取り直す。
私は、その背に自分の背を合わせた。
襲撃者達のギラついた目は、大通りからそれた暗い路地で、不気味なほどに鋭い。
狭い路地なら迎撃しやすいと思い、逃げ込んだが、それが裏目に出た。
ユウイチの視界に二人、私の視界に三人。左右に反り立つ壁と道を塞ぐ5人の賊が、私達を囲う。
逃げ場はなかった。
私は、お気に入りの杖型〈魔道具〉の金具を外し、短剣を引き抜いた。
「おっ!? ギミック!珍しいなぁ~。駆け出し冒険者には、お高いだろうに」
と、襲撃者の一人が珍しがる。
その手に持つ、桁違いに高い〈魔導剣〉は嫌味だろうか?
魔導剣を得意げに見せびらかしながら、その襲撃者はジリジリと間合いを詰める。
「女もやる気になっちゃって……。
命まで取ろうって訳じゃないんだから、ちったぁ大人しくなれよ。
俺らが欲しいのは、そのバックの中身!
財布とか、金目のものとかだ!」
襲撃者の指は、私が腰に下げるバックに向けられていた。
私は、恐怖を内に押し込んで平常を装い、威勢をはる。
「悪いけど、こっちも貧乏でさ…。
今、金とられると来月餓死しかねないし、諦めてくれない?」
そう言い終えると同時に、〈魔導具〉を起点として、簡易的な魔法陣を展開した。
簡単な防御結界だが、威嚇を目的としたもので、大した効果は無い。
魔導剣の襲撃者は、ヒュ~と、余裕げに口笛を吹く。
「生きがいいなぁ…。
じゃあ、見てやるよ!お前らが『許してください』って、泣き叫ぶ様をなっ!」
そう言い終えるや否や、魔導剣を振り被り、襲撃者は石畳みを蹴った。
「それは、アンタの方だっ!!」
私は、魔導剣の剣筋と交差する様にして、手に持つ短剣を振る。
魔導剣と短剣が斬り結ぶ音と、青空が襲撃者に”白い塊”を叩きつけた瞬間が重なった。
「「「––––えっ⁇⁇」」」
襲撃者の体が、ドザァァーと盛大に、石畳みに投げ出される。
私は、思わず飛びずさる様にして、それを避けていた。
白い塊は、私が立っていた所に顔から倒れ込んだ襲撃者の上で、鮮やかに着地する。
この場の全員(後ろを向くユウイチを除く)が、この瞬間を刮目した。
一瞬遅れて、事に気がついたユウイチが振り返る。
私達も、襲撃者達も、戦いを忘れ、呆然と白い塊を見続ける。
まるで、時が止まった様だった。
「痛てて~。クッションあって、助かった~」
場違いなセリフと共に、白い塊は立ち上がる。
よく見ると、それは、白い外套を羽織った、少年程の身長を持つ”人”だ。
外套を揺らし、辺りを見渡す顔と目が合った。
整った、可愛げのある少女の顔だ。しかし、私の目は、その上に焦点を当てたきり動かない。
それも、仕方ないだろう。
艶やかなな白銀の髪の上に、美しき”ネコミミ”が乗っていたのだから。
それは、誰しもが憧れるユートピア。
異種族が入り混じる、賑わった中世の街並み。
剣が火花を散らし魔法が飛び交う、強大な魔物との戦い。
神秘的な迷宮に、幻想的な魔境の数々。
富と力と名声、そして、夢を求め、剣と魔法の世界を旅する。
––––そんな夢。
私が〈異世界〉を夢見るようになったのは、いつだったか…。
『あーあ、俺も異世界行ってハーレム無双してーなー』
いつか、幼馴染のユウイチがそう言った。
〈異世界〉という言葉は、幼き日の私にとって、とても魅力的なものに聞こえた。
『異世界って、何?』
私は、思わずそう聞いた。
ユウイチが嬉しそうに答えてくれたのを、覚えている。同時に、彼が語る夢幻は私の胸を高鳴ならせ、欲求は募った。
私もその世界を知りたい。
私の––––私自身への要求だった。
★ーーーー
家々が連なる街中の路地に、剣戟が響く。
「カナ、下がって!」
長剣の一撃を受け流し、ユウイチは手に持つ両手剣で反撃に移る。
しかし、甘い迷いを含んだ刺突は、男に紙一重で躱されてしまった。
バックステップで間合いを取った男は、長剣を構え直し、卑屈な笑みを浮かべた。
「おぅおぅ、甘いね~。
今の、殺す気でくれば当たってたぞ」
ユウイチは、歯軋りの音を小さくたてながら、冷静に間合いを取り直す。
私は、その背に自分の背を合わせた。
襲撃者達のギラついた目は、大通りからそれた暗い路地で、不気味なほどに鋭い。
狭い路地なら迎撃しやすいと思い、逃げ込んだが、それが裏目に出た。
ユウイチの視界に二人、私の視界に三人。左右に反り立つ壁と道を塞ぐ5人の賊が、私達を囲う。
逃げ場はなかった。
私は、お気に入りの杖型〈魔道具〉の金具を外し、短剣を引き抜いた。
「おっ!? ギミック!珍しいなぁ~。駆け出し冒険者には、お高いだろうに」
と、襲撃者の一人が珍しがる。
その手に持つ、桁違いに高い〈魔導剣〉は嫌味だろうか?
魔導剣を得意げに見せびらかしながら、その襲撃者はジリジリと間合いを詰める。
「女もやる気になっちゃって……。
命まで取ろうって訳じゃないんだから、ちったぁ大人しくなれよ。
俺らが欲しいのは、そのバックの中身!
財布とか、金目のものとかだ!」
襲撃者の指は、私が腰に下げるバックに向けられていた。
私は、恐怖を内に押し込んで平常を装い、威勢をはる。
「悪いけど、こっちも貧乏でさ…。
今、金とられると来月餓死しかねないし、諦めてくれない?」
そう言い終えると同時に、〈魔導具〉を起点として、簡易的な魔法陣を展開した。
簡単な防御結界だが、威嚇を目的としたもので、大した効果は無い。
魔導剣の襲撃者は、ヒュ~と、余裕げに口笛を吹く。
「生きがいいなぁ…。
じゃあ、見てやるよ!お前らが『許してください』って、泣き叫ぶ様をなっ!」
そう言い終えるや否や、魔導剣を振り被り、襲撃者は石畳みを蹴った。
「それは、アンタの方だっ!!」
私は、魔導剣の剣筋と交差する様にして、手に持つ短剣を振る。
魔導剣と短剣が斬り結ぶ音と、青空が襲撃者に”白い塊”を叩きつけた瞬間が重なった。
「「「––––えっ⁇⁇」」」
襲撃者の体が、ドザァァーと盛大に、石畳みに投げ出される。
私は、思わず飛びずさる様にして、それを避けていた。
白い塊は、私が立っていた所に顔から倒れ込んだ襲撃者の上で、鮮やかに着地する。
この場の全員(後ろを向くユウイチを除く)が、この瞬間を刮目した。
一瞬遅れて、事に気がついたユウイチが振り返る。
私達も、襲撃者達も、戦いを忘れ、呆然と白い塊を見続ける。
まるで、時が止まった様だった。
「痛てて~。クッションあって、助かった~」
場違いなセリフと共に、白い塊は立ち上がる。
よく見ると、それは、白い外套を羽織った、少年程の身長を持つ”人”だ。
外套を揺らし、辺りを見渡す顔と目が合った。
整った、可愛げのある少女の顔だ。しかし、私の目は、その上に焦点を当てたきり動かない。
それも、仕方ないだろう。
艶やかなな白銀の髪の上に、美しき”ネコミミ”が乗っていたのだから。
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