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タケノコドンⅡ 〜タケノコドンVSスペースコーン〜
死闘
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遂に2つの巨影が相見える。咆哮を上げながら走り出すタケノコドン。強大な脅威の出現に宇宙コーンもその意識をタケノコドンに向け、外殻を展開し蟲体を差し向ける。残された弾薬を装填し、陸自部隊は最後の砲火で迫り行く蟲の群れを払い除ける。
「1匹でも多く叩き落とせ。何としてもタケノコドンを目標の前に立たせるんだ!」
延々と湧き続ける黄色い群れは、さながら巣を突かれ怒り狂った鉢の様に塊となってタケノコドン目掛け飛んで行く。薄くなった弾幕を擦り抜けた蟲体がタケノコドンに接触し、体の彼方此方で絶えず爆発が起きる。体を覆う重なった茶色い表皮が焼け焦げ剥がれ落ち、内側の緑の体が剥き出しになりながらも巨獣は脚を止めず、敵に向かって猛進して行く。コーンは更に新たな蟲体を飛ばそうとしていた。が、ここで既に奴の間合いに入っていた。歩を緩めたタケノコドンの緑の体が光を発し、大きく開けた口腔から緑の熱線が撃ち放たれた。逸早く察知したコーンはすんでのところで外殻を閉じ内部への直撃を免れる。増援が止まった間に更に距離を詰めるタケノコドン。もう疲れ果て立つのもやっとな歩兵の1人1人までもが震える足を踏ん張り、自動小銃やライフルを撃ち尽くし拳銃の最後の1発まで懸命に銃口を天に向け戦い抜いた。かくして、怪獣タケノコドンは宇宙コーンと対峙した。
咆哮を上げなら突進をかけるタケノコドン。受け止めた宇宙コーンは一瞬堪えるも、その勢いを止めきれず倒れる事は無かったが数百メートル後退させられた。続けてタケノコドンは相手に掴みかかり外殻に噛み付く。如何程の力が有るのか、計り知れない強靭な顎によって硬いコーンの外殻がバキバキと音を立てる。その時――ギィィィィという金切音の様な不快な音が辺りに響いた。それは初めて耳にした宇宙コーンの鳴き声だったと皆は直感した。と、突然登頂部から触毛を伸ばしタケノコドンを絡め取った。阻害されたタケノコドンは牙を離し触毛を振り払おうと暴れるが、しなやかで見た目より力強い毛束の拘束は執拗に巨獣を締め付け離そうとはしない。触毛は更にタケノコドンの口を括り付け塞ぎ、熱線が吐けないと見るやコーンは僅かに外殻を開き、少しずつ這い出た蟲体共がタケノコドンの体を覆い始めた。尖った脚で攻撃をしている様だがダメージは無い様に見える……が、このまま数が増えれば一斉起爆で甚大なダメージを受ける――そう瞬時に判断した上條は残り少ない手札を切る。
「虎の子は残してあるな⁉︎」
「はい。特殊焼夷弾残弾5、いつでも発射可能です。しかし宜しいのですか? これではタケノコドンごと……」
「構わん。あの程度の炎で堪える様な奴でない事は、自分が一番よく知っている」
「照準よおーし!」
「外すなよ……てええっ‼︎」
曲射砲から放たれた焼夷弾が高く打ち上がり、放物線を描いて宇宙コーンへと迫る。それを察知した目標は素早く外殻を閉じ蟲体に迎撃させるも、着弾が近く飛散した燃え盛るオイルが本体とタケノコドンに届き誘爆、巨大な爆発が起こり2体は黒煙に包まれた。
煙の中からゆっくり後退るタケノコドン。触毛から解放されたが、全身の表皮は全て剥がれ落ち露わになった緑の甲殻の全身は煤汚れ傷付きヒビ割れていた。相当なダメージを受け深刻な状態と思われたが、これが意外な結果をも生んでいた。
ガアアアッッ‼︎ ゴォンン‼︎
先程まで見られなかった強烈な力を発揮し、タケノコドンの拳が宇宙コーンを殴り飛ばし地に叩き伏せたのだ。タケノコドンのあの硬く重なった表皮は身を守る鎧であったと共に動きを阻害する枷にもなっていたのだった。枷から解き放たれた今、野性をも増し宇宙コーンに襲い掛かり容赦無く踏み付ける。再び聴こえるバキバキという音と金切音。脚を退いたタケノコドンは全身を発光させ、猛烈な熱線を浴びせた。二度三度と照射される高温の熱線はコーンの外殻を焦がし、熱は次第に内部へと浸透していく。この光景を見た中には勝利を確信した者も居ただろう……が。
ギイイイイイ‼︎‼︎
一際大きな金切音が響き渡ったかと思うと、勢いよく飛び出した触毛が再びタケノコドンを絡み始めた。しかもその触毛は赤く発光し赤熱化している風にも見えた。蠢く触毛は巨獣の動きを封じながら全身に這い渡り、甲殻の関節部やビビ割れた傷口から体内へと浸食し始める。苦悶の様な鳴き声を上げるタケノコドン。すると宇宙コーンは巨獣を捕縛したまま空へと上昇し始めた。地表数百メートル上空に静止し尚も巨獣を攻め続ける光景を前に、地上部隊は為す術も無い。これを受け米軍旗艦空母艦長は――
「補給中断! 全機発艦させろ! 何としてもアレを撃ち落とせ‼︎」
何度目かの再発進する艦載機は燃料も弾丸も残り少なく、ミサイルはとうに尽きていた。それでもこの難局を打開すべく、全ての残弾をタケノコドンを縛る触毛の束と発生源のコーン先端部に集中させた。だがその目論見も徒労に終わり、残弾を撃ち尽くしたとあるパイロットは決死の行動に出る。
『地球からいなくなれえええっ‼︎』
一機の戦闘機が触毛の根元目掛け特攻を仕掛けたのだ。だが無慈悲にも赤い触毛に弾かれ、機体は大破しながら地上へと降って行った。それを見たヘイヤー艦長は拳を握り締め呟く。
「馬鹿者が……神風など、通じるのは映画だけだ……命を無駄にしおって」
「しかし艦長、もう打つ手が無いのは事実です。あの怪獣が敗れれば……」
「うむ……大統領は躊躇わずスイッチを押されるだろう。それでも倒せるかは判らんが」
「っ、艦長! 目標の外殻開きます!」
「奴め、蟲体の塊にして地上投下と共にトドメを刺す気か」
もし再び特攻を試みる者があっても触毛により防がれるのは目に見えている。コーンの外殻が十分に開いた。完全に詰んだ……誰もがそう思った。だが次の瞬間、一筋刹那の閃光が疾り2体を大爆発が呑み込んだ。それらは黒煙に包まれながら墜落。その場で目撃した者の目には突然外殻内で誘爆が起きた様に見えたが、遅れて来た轟音と衝撃波に艦長は何かを察した様だった。
「な……何が起きたのでしょうか?」
「日本め、とんでもない隠し玉を取っておいたものだ」
「隠し玉? 何かご存知で……?」
「噂には聞いていただろう。自衛隊が開発していた、超長距離超電磁誘導砲台だ。まだ試作段階だと思っていたが……無理をしたものだ。それより目標は? 状況を確認せよ」
「ハッ。哨戒機、状況確認急げ」
『目標…………確認! 外殻損壊。内部も損傷し動きは有りません。あっ、タケノコドン健在! 動きが有ります』
黒煙が薄れ出した頃、力無くのそりと起き上がったタケノコドンの身体は甲殻までもが欠落ち、体中から赤い血を垂れ流しとても痛々しく見えた。緑の体を染める鮮血を見て上條は思わず口に出していた。
「奴にも、赤い血が流れていたんだな……」
暫しの静寂が流れる。黒煙が晴れると、宇宙コーンの哀れな惨状が見て取れた。砕けて大きく欠けた外殻、内部は焼け爛れズタズタに裂け白い液体が溢れ出ていた。誰もが「やったか」とお決まりの台詞を心に思ったものの、タケノコドンは追撃を止めようとはせず脚を振り上げた。だがその脚が落とされる直前、予兆も無く突然宇宙コーンの体が向こうから起き上がりタケノコドンにぶつかって跳ね飛ばした。その状態でまだ生きている事にも驚いたが、更に驚くべき事に宇宙コーンは逆さに立っていたのだ。しかもこれまで攻撃に使っていた触毛の束を地面に突き立て、自身の重力を軽くし風船の様に浮かんでいる状態に見える。そんな新たな形態に皆戸惑いを隠せなかった。
再び立ち上がるタケノコドン。宇宙コーンはそれを待たず、触毛で本体を力任せに振り回し始めたかと思うと、その勢いのまま体を激しくタケノコドンに叩き付けた。それはさながら中世西洋のフレイルの如く、巧みな重力調整で遠心力を蓄え何度も何度も敵を打ち据えた。当然、コーンの方も無事では済まない。既に致命傷なのかそれとも怒りに我を忘れての事なのか、その身を削りながら文字通り肉弾戦を以って最大の敵を打破すべく残る全てをぶつけているのだ。
対するタケノコドンも反撃すべく熱線を吐こうとするも、エネルギー蓄積の段階で傷付いた体から暴発した熱線が漏れ更に傷口を広げてしまい発射出来ず。止む無くタックルの要領でぶつかり合うが、互いのダメージは兎も角衝突力は負けていた。目に見えてタケノコドンに分が悪く、このまま倒れてしまうのかと思われた矢先、先に倒れたのは意外な事にコーンの方だった。傷付き限界を超えた触毛が次々にブチブチと千切れ、衝突の勢いに負けたまま地に堕ちてしまった。
両者満身創痍。これで遂に決着が付く筈と流石にもう誰もが疑わなかった。……が! またも思わぬ事が起きた。倒れた宇宙コーンが黄色く発光し始めたのだ。その輝きは段々と強まり、その身体自体も黄色く染まっていく。それを見た上條は――
「いかん! 総員退避いい‼︎」
イイイイーーー‼︎‼︎
これまでで最も強く甲高い音を鳴り響かせ、輝きを放ったまま宙に浮き上がった宇宙コーンはタケノコドンに向け猛然と突っ込んで行った。ドシッと受け止めたその数秒後、臨界を迎えた宇宙コーンは自らを爆弾に変えタケノコドン諸共自爆。猛烈な大爆発は大雪山を飲み込み、深夜の北海道の空を真昼の様に照らし出した。
朝になり、辛くも爆発から生き延びた上條以下自衛隊員の面々はその壮絶な光景に絶句し言葉を失った。雄大な景観を誇った大雪山の山々は無残なクレーターと化し、巨大なタケノコドンと宇宙コーンはその増殖体共々一片も残さず跡形無く消え去ったのだ。その事実は彼らの胸中に、勝利の余韻よりも虚しさに似た喪失感を刻み付けたのだった。
「1匹でも多く叩き落とせ。何としてもタケノコドンを目標の前に立たせるんだ!」
延々と湧き続ける黄色い群れは、さながら巣を突かれ怒り狂った鉢の様に塊となってタケノコドン目掛け飛んで行く。薄くなった弾幕を擦り抜けた蟲体がタケノコドンに接触し、体の彼方此方で絶えず爆発が起きる。体を覆う重なった茶色い表皮が焼け焦げ剥がれ落ち、内側の緑の体が剥き出しになりながらも巨獣は脚を止めず、敵に向かって猛進して行く。コーンは更に新たな蟲体を飛ばそうとしていた。が、ここで既に奴の間合いに入っていた。歩を緩めたタケノコドンの緑の体が光を発し、大きく開けた口腔から緑の熱線が撃ち放たれた。逸早く察知したコーンはすんでのところで外殻を閉じ内部への直撃を免れる。増援が止まった間に更に距離を詰めるタケノコドン。もう疲れ果て立つのもやっとな歩兵の1人1人までもが震える足を踏ん張り、自動小銃やライフルを撃ち尽くし拳銃の最後の1発まで懸命に銃口を天に向け戦い抜いた。かくして、怪獣タケノコドンは宇宙コーンと対峙した。
咆哮を上げなら突進をかけるタケノコドン。受け止めた宇宙コーンは一瞬堪えるも、その勢いを止めきれず倒れる事は無かったが数百メートル後退させられた。続けてタケノコドンは相手に掴みかかり外殻に噛み付く。如何程の力が有るのか、計り知れない強靭な顎によって硬いコーンの外殻がバキバキと音を立てる。その時――ギィィィィという金切音の様な不快な音が辺りに響いた。それは初めて耳にした宇宙コーンの鳴き声だったと皆は直感した。と、突然登頂部から触毛を伸ばしタケノコドンを絡め取った。阻害されたタケノコドンは牙を離し触毛を振り払おうと暴れるが、しなやかで見た目より力強い毛束の拘束は執拗に巨獣を締め付け離そうとはしない。触毛は更にタケノコドンの口を括り付け塞ぎ、熱線が吐けないと見るやコーンは僅かに外殻を開き、少しずつ這い出た蟲体共がタケノコドンの体を覆い始めた。尖った脚で攻撃をしている様だがダメージは無い様に見える……が、このまま数が増えれば一斉起爆で甚大なダメージを受ける――そう瞬時に判断した上條は残り少ない手札を切る。
「虎の子は残してあるな⁉︎」
「はい。特殊焼夷弾残弾5、いつでも発射可能です。しかし宜しいのですか? これではタケノコドンごと……」
「構わん。あの程度の炎で堪える様な奴でない事は、自分が一番よく知っている」
「照準よおーし!」
「外すなよ……てええっ‼︎」
曲射砲から放たれた焼夷弾が高く打ち上がり、放物線を描いて宇宙コーンへと迫る。それを察知した目標は素早く外殻を閉じ蟲体に迎撃させるも、着弾が近く飛散した燃え盛るオイルが本体とタケノコドンに届き誘爆、巨大な爆発が起こり2体は黒煙に包まれた。
煙の中からゆっくり後退るタケノコドン。触毛から解放されたが、全身の表皮は全て剥がれ落ち露わになった緑の甲殻の全身は煤汚れ傷付きヒビ割れていた。相当なダメージを受け深刻な状態と思われたが、これが意外な結果をも生んでいた。
ガアアアッッ‼︎ ゴォンン‼︎
先程まで見られなかった強烈な力を発揮し、タケノコドンの拳が宇宙コーンを殴り飛ばし地に叩き伏せたのだ。タケノコドンのあの硬く重なった表皮は身を守る鎧であったと共に動きを阻害する枷にもなっていたのだった。枷から解き放たれた今、野性をも増し宇宙コーンに襲い掛かり容赦無く踏み付ける。再び聴こえるバキバキという音と金切音。脚を退いたタケノコドンは全身を発光させ、猛烈な熱線を浴びせた。二度三度と照射される高温の熱線はコーンの外殻を焦がし、熱は次第に内部へと浸透していく。この光景を見た中には勝利を確信した者も居ただろう……が。
ギイイイイイ‼︎‼︎
一際大きな金切音が響き渡ったかと思うと、勢いよく飛び出した触毛が再びタケノコドンを絡み始めた。しかもその触毛は赤く発光し赤熱化している風にも見えた。蠢く触毛は巨獣の動きを封じながら全身に這い渡り、甲殻の関節部やビビ割れた傷口から体内へと浸食し始める。苦悶の様な鳴き声を上げるタケノコドン。すると宇宙コーンは巨獣を捕縛したまま空へと上昇し始めた。地表数百メートル上空に静止し尚も巨獣を攻め続ける光景を前に、地上部隊は為す術も無い。これを受け米軍旗艦空母艦長は――
「補給中断! 全機発艦させろ! 何としてもアレを撃ち落とせ‼︎」
何度目かの再発進する艦載機は燃料も弾丸も残り少なく、ミサイルはとうに尽きていた。それでもこの難局を打開すべく、全ての残弾をタケノコドンを縛る触毛の束と発生源のコーン先端部に集中させた。だがその目論見も徒労に終わり、残弾を撃ち尽くしたとあるパイロットは決死の行動に出る。
『地球からいなくなれえええっ‼︎』
一機の戦闘機が触毛の根元目掛け特攻を仕掛けたのだ。だが無慈悲にも赤い触毛に弾かれ、機体は大破しながら地上へと降って行った。それを見たヘイヤー艦長は拳を握り締め呟く。
「馬鹿者が……神風など、通じるのは映画だけだ……命を無駄にしおって」
「しかし艦長、もう打つ手が無いのは事実です。あの怪獣が敗れれば……」
「うむ……大統領は躊躇わずスイッチを押されるだろう。それでも倒せるかは判らんが」
「っ、艦長! 目標の外殻開きます!」
「奴め、蟲体の塊にして地上投下と共にトドメを刺す気か」
もし再び特攻を試みる者があっても触毛により防がれるのは目に見えている。コーンの外殻が十分に開いた。完全に詰んだ……誰もがそう思った。だが次の瞬間、一筋刹那の閃光が疾り2体を大爆発が呑み込んだ。それらは黒煙に包まれながら墜落。その場で目撃した者の目には突然外殻内で誘爆が起きた様に見えたが、遅れて来た轟音と衝撃波に艦長は何かを察した様だった。
「な……何が起きたのでしょうか?」
「日本め、とんでもない隠し玉を取っておいたものだ」
「隠し玉? 何かご存知で……?」
「噂には聞いていただろう。自衛隊が開発していた、超長距離超電磁誘導砲台だ。まだ試作段階だと思っていたが……無理をしたものだ。それより目標は? 状況を確認せよ」
「ハッ。哨戒機、状況確認急げ」
『目標…………確認! 外殻損壊。内部も損傷し動きは有りません。あっ、タケノコドン健在! 動きが有ります』
黒煙が薄れ出した頃、力無くのそりと起き上がったタケノコドンの身体は甲殻までもが欠落ち、体中から赤い血を垂れ流しとても痛々しく見えた。緑の体を染める鮮血を見て上條は思わず口に出していた。
「奴にも、赤い血が流れていたんだな……」
暫しの静寂が流れる。黒煙が晴れると、宇宙コーンの哀れな惨状が見て取れた。砕けて大きく欠けた外殻、内部は焼け爛れズタズタに裂け白い液体が溢れ出ていた。誰もが「やったか」とお決まりの台詞を心に思ったものの、タケノコドンは追撃を止めようとはせず脚を振り上げた。だがその脚が落とされる直前、予兆も無く突然宇宙コーンの体が向こうから起き上がりタケノコドンにぶつかって跳ね飛ばした。その状態でまだ生きている事にも驚いたが、更に驚くべき事に宇宙コーンは逆さに立っていたのだ。しかもこれまで攻撃に使っていた触毛の束を地面に突き立て、自身の重力を軽くし風船の様に浮かんでいる状態に見える。そんな新たな形態に皆戸惑いを隠せなかった。
再び立ち上がるタケノコドン。宇宙コーンはそれを待たず、触毛で本体を力任せに振り回し始めたかと思うと、その勢いのまま体を激しくタケノコドンに叩き付けた。それはさながら中世西洋のフレイルの如く、巧みな重力調整で遠心力を蓄え何度も何度も敵を打ち据えた。当然、コーンの方も無事では済まない。既に致命傷なのかそれとも怒りに我を忘れての事なのか、その身を削りながら文字通り肉弾戦を以って最大の敵を打破すべく残る全てをぶつけているのだ。
対するタケノコドンも反撃すべく熱線を吐こうとするも、エネルギー蓄積の段階で傷付いた体から暴発した熱線が漏れ更に傷口を広げてしまい発射出来ず。止む無くタックルの要領でぶつかり合うが、互いのダメージは兎も角衝突力は負けていた。目に見えてタケノコドンに分が悪く、このまま倒れてしまうのかと思われた矢先、先に倒れたのは意外な事にコーンの方だった。傷付き限界を超えた触毛が次々にブチブチと千切れ、衝突の勢いに負けたまま地に堕ちてしまった。
両者満身創痍。これで遂に決着が付く筈と流石にもう誰もが疑わなかった。……が! またも思わぬ事が起きた。倒れた宇宙コーンが黄色く発光し始めたのだ。その輝きは段々と強まり、その身体自体も黄色く染まっていく。それを見た上條は――
「いかん! 総員退避いい‼︎」
イイイイーーー‼︎‼︎
これまでで最も強く甲高い音を鳴り響かせ、輝きを放ったまま宙に浮き上がった宇宙コーンはタケノコドンに向け猛然と突っ込んで行った。ドシッと受け止めたその数秒後、臨界を迎えた宇宙コーンは自らを爆弾に変えタケノコドン諸共自爆。猛烈な大爆発は大雪山を飲み込み、深夜の北海道の空を真昼の様に照らし出した。
朝になり、辛くも爆発から生き延びた上條以下自衛隊員の面々はその壮絶な光景に絶句し言葉を失った。雄大な景観を誇った大雪山の山々は無残なクレーターと化し、巨大なタケノコドンと宇宙コーンはその増殖体共々一片も残さず跡形無く消え去ったのだ。その事実は彼らの胸中に、勝利の余韻よりも虚しさに似た喪失感を刻み付けたのだった。
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