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37.恋の悩みⅠ
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ベッドの上にちょこんと座らせたクマの頭をポフポフ撫でた。レースカーテンだけ閉めてある窓からは朝日の明るさが部屋に入ってくる。今日も一日綺麗に晴れそう。
手にしたのはカバンとキーケース。玄関に戻れば、瀬名さんが待っている。
「クマ雄をわざわざ行き来させる必要あるのか?」
「留守番です。あいつがいれば空き巣の侵入も防げるので」
「セキュリティシステムついてたのかクマ雄」
俺のテディベアは有能だ。
安心してトントンとスニーカーを履いた。
「なんでウソ子は俺の部屋に置いとくんだ?」
「彼女はあなたの部屋を守ってます」
「そうか。それは知らなかった」
先に廊下に出た瀬名さんは、当然のようにドア押さえて俺が出るのを待っていてくれる。
相変わらずの気の利いた行動。これをやれる日本人男性はなかなか存在しないと思うが、瀬名さんの場合はこれがデフォ。いつもながら恐ろしい。
「クマ雄はずっとそっち置いておけばいいんじゃねえのか。ウチに持ってきたりこっち戻したりめんどくせえだろ」
「なんですか、あいつらを永遠に引き離す気ですか。可哀想じゃないですか。あんた外道ですか」
「すまん。考えが足りてなかった」
異様に気の利く俺の恋人はノリのいい大人でもある。
ガチャリとドアの鍵を閉め、瀬名さんと二人で向かうのは階段。瀬名さんの部屋を出て隣のウチに入って、クマをベッドに座らせてから用意済みのカバンを手に持ち、それからようやくマンションを出発。
瀬名さんの言う通り面倒でまどろっこしい一連の流れでしかないのだが、これが定着してしまっているからなんとなく毎朝の習慣になっている。
「今日で試験終わりだろ?」
「ええ。でも最後が六時限目なんですよ」
マンション前の通りを並んで歩きながら、恒例の今日の連絡事項。決まっている予定があるときはいつもこのタイミングで話しておく。
「家着くの瀬名さんと同じくらいの時間になると思います。なので晩メシちょっと手抜きでも許してください」
「新婚っぽいセリフにグッときた」
「グッときてねえでちゃんと会話して」
今年度に俺が履修した科目は、前期も後期も四時限目までだった。講義と同じ曜日と時間で試験も行われるのが原則だが、今日は担当教授の都合で一つだけ時間変更になった科目がある。
六時限目が終わるのは十九時半過ぎ。テストの答案が早めに埋まって先に退出できたとしても、帰宅は二十時前くらいだろう。
「なんならどっか食いに行くか?」
「いえ、作ります。豆腐の賞味期限が今日までなんです」
「グッときた」
「普通の人と普通に話したい」
これは贅沢な望みではないはず。
***
試験期間中とその前の週の辺りは、図書館の利用率が通常よりも若干上がる。
普段より少しばかり人の多い図書館で、棚から棚へと歩きながら一人時間を潰していた。好みの分類の棚で足を止めては適当に本を手に取り、その場でパラパラ立ち読みしてから元の位置に戻してまた移動する。
それをしばらく繰り返したのち、列から列へとゆっくり歩き、奥の方の棚に差し掛かったところで見知った女の子の姿を捉えた。
ミキちゃんだ。めちゃくちゃ頑張って背伸びしながら、高いところに置いてある本に向かって限界まで腕を伸ばしている。
列の入り口からやや観察。三秒で気づいた。無理だろ、取れねえよ。
目当ての本を指先でちょいちょい引っ張り出そうとしているが、足元も手元もフルフルと不安定。本を引っ張り出せたとしても、あの様子だと降ってきた本を顔面に食らいかねない。
見ていられない。ミキちゃんの方に行く。その横から腕を伸ばした。
俺に気づいたミキちゃんも、そこでふっとこっちを見上げた。目当てと思しき分厚い本を棚から取って手渡してやる。
「ごめん。ありがとう」
「見てて危なっかしいよ。脚立使ったらいいのに、そこにあるんだから」
「あれちょっと重いんだよね。運ぶのもめんどくさいし」
この子は意外とこういう子だった。さっぱりした中身は見た目を裏切る。
今しがた手渡した本のタイトルと、書式と装丁もめちゃくちゃ厳つい。漢字ばっかり十文字くらいが縦にビシッと入っている。なんの本だよ。読経でもすんのか。
左腕に抱えている二冊の本も分厚くてとっつきにくいタイトルだ。十代の女の子が自ら手を伸ばしそうな内容の本にはとても思えない。
「……それ全部読むの?」
「うん。春休み長いし」
「趣味シブすぎない?」
「読んでみると面白いんだよ。暇潰しにもなるしオススメ」
「へえ……」
この子とこうやって話すようになって、いかに自分が偏見に満ちた人間だったか思い知った。ふわふわラテ系の権化かと思いきや全然そんな事はない。中身は見た目よりも小ざっぱりとして、自分をフッた男が相手だろうとよそよそしくなる訳でもなく、特に気にする素振りもなく。
そのためあれ以降もミキちゃんと気まずくなるような事は一切なかった。元は名前さえ知らなかったのに、むしろ今じゃいい友達だ。
あのあと学校で話しかけてきたのもミキちゃんの方からだったが、もしかしたら俺より男らしいかも。頭がよくて回転も速いし、話してみると面白い。
けれどもやっぱり、小さな女の子という事実に変わりはなくて。この見た目にそぐわない言動に少々びっくりさせられる事もしばしば。
図書館を出る頃にはミキちゃんが読みたい分厚い本は五冊になっていた。それをトートバッグに入れて、右腕一本で持っている。さらに左手にもデカいバッグが。女子は荷物が多くて大変だ。
「……大丈夫? 本持とうか?」
「ううん、平気平気」
ふわふわラテ系なら持ってもらいそうだけどミキちゃんはここで大丈夫って言う。でも見た感じ、あんまり大丈夫そうじゃない。
講義室の白い扉だったら重くないからすぐに開く。しかし図書館のガラス扉は重い。本とバッグを抱えている女の子には不親切設計だ。
だから先に俺がドアに手を伸ばした。押し開いたまま、ミキちゃんを外に通す。
「ありがと」
にっこり。
たとえ中身はふわラテじゃなくても、この笑顔に大半の男はコロッといっちゃうんだろうな。
エレベーターまで歩きながらミキちゃんはふふっと笑った。チラリとその顔に視線を落とすと、面白そうに見上げてくる。
「赤川くんって普通にああいう事しちゃう人だよね」
「なにが?」
「ドアとかよく押さえててくれるでしょ?」
それは普通に誰でもやるだろ。目の前にいるのが両手の塞がった女の子ならばなおさらだ。
ところがそこで、ふと気づいた。今朝の俺は自宅の玄関を出ながら、スマートな恋人の行動をどう思って、どう感じたか。
「…………お手本が……」
「え?」
「なんでもない」
しまった。またしてもあの男のせいだ。気づくんじゃなかった。原因は瀬名さんだ。いつもさり気なくドアを押さえておくサラリーマンを見慣れているからだ。
俺の両手が塞がっていようと、仮に手ぶらのときだろうと、ドアを押さえて待っている男が身近にいるせいでそれがうつった。その行動をとれる日本人男性はそんなに多くは存在しない。今朝思ったばかりじゃないか。何が誰でもやるだ、やらねえよ。
もしも瀬名さんと付き合っていなければ、俺だってそれができない男のうちの一人だったはず。実家にいた頃に母さんからしょっちゅう投げられていた三大小言は、暇なら買い物くらい行ってきて、ボンヤリしてるならお風呂でも洗って、いつもいつもあんたはほんとに気が利かないんだから全くもう、だ。
縁側でガーくんを観察しながら昼間からゴロゴロしていると、手伝いくらいしてくれたっていいじゃないのとよく怒られた。おかげで料理も掃除も洗濯も人並みにできるようにはなったが、基本的には気が利かない。誰かのために何かをするという意識はめちゃくちゃ底辺だった。
女子のためにドアを押さえておく紳士気取りのサムい行動を、気の利かない俺が取るなんて。
あり得ない。あの野郎。人のアイデンティティまでズカズカ侵食してくんな。
「赤川くんはもっと冷たい人かと思ってた」
この子もこの子でかなりズカズカ言ってくる。
「まあ優しくはないよね」
「うん。私のこともバッサリ斬ったし」
「ミキちゃんそれずっと言う気?」
あははと軽く笑うミキちゃんは、根には持つような事はないもののしばしば俺をからかって遊ぶ。
見た目とは違ってしたたかな子だ。カフェで急に泣きだしたのと、玄関前で俺に抱きついたのは、その時ハマっていた韓国ドラマで主役の女がやっていたことだそうだ。
緊張してたのは本当だけど、ドラマのシーンと状況似てたからなんだかテンション上がっちゃってつい。私を見た時の赤川くんのあの面倒くさそうな態度がね、主人公が片想いしてるクールで素っ気ない御曹司に似てたの。
ミキちゃんに笑いながら白状された時、この子はふわラテじゃないと確信した。
ちなみに韓国ドラマを見始めたのは韓国語を覚えたかったからだとか。御曹司モノが特に好きらしい。
「ねえそう言えばさ、相手の人とはどうなったの?」
「え?」
「あの時言ってた人。その人以外は考えられないって熱烈に語ってたでしょ?」
「…………」
言ったな。そういや、そんな事も。言うんじゃなかった。もう二度と言わない。
「年上の人なんだよね?」
「え……なんで……」
「話聞いてるとそんな感じだったから。違った?」
「……合ってる」
ふふんと笑われる。女子って怖い。こういうところホントに怖い。
「で、どうなったの?」
「……それ聞いてどうすんの」
「だいたいの女の子はこういう話が好きなの。で?」
「…………」
エレベーターはまだ来ない。適当にはぐらかそうにも、ミキちゃんが相手じゃそれは無理。
「……付き合ってるよ」
「ふーん」
「……なに」
「うまくいかなければいいのにって実はちょっと思ってた」
「思ってても普通言わないからねそういうの」
悪気なく笑うミキちゃんを、ふわラテと思った俺は未熟だ。
人は見た目じゃ分からない。
手にしたのはカバンとキーケース。玄関に戻れば、瀬名さんが待っている。
「クマ雄をわざわざ行き来させる必要あるのか?」
「留守番です。あいつがいれば空き巣の侵入も防げるので」
「セキュリティシステムついてたのかクマ雄」
俺のテディベアは有能だ。
安心してトントンとスニーカーを履いた。
「なんでウソ子は俺の部屋に置いとくんだ?」
「彼女はあなたの部屋を守ってます」
「そうか。それは知らなかった」
先に廊下に出た瀬名さんは、当然のようにドア押さえて俺が出るのを待っていてくれる。
相変わらずの気の利いた行動。これをやれる日本人男性はなかなか存在しないと思うが、瀬名さんの場合はこれがデフォ。いつもながら恐ろしい。
「クマ雄はずっとそっち置いておけばいいんじゃねえのか。ウチに持ってきたりこっち戻したりめんどくせえだろ」
「なんですか、あいつらを永遠に引き離す気ですか。可哀想じゃないですか。あんた外道ですか」
「すまん。考えが足りてなかった」
異様に気の利く俺の恋人はノリのいい大人でもある。
ガチャリとドアの鍵を閉め、瀬名さんと二人で向かうのは階段。瀬名さんの部屋を出て隣のウチに入って、クマをベッドに座らせてから用意済みのカバンを手に持ち、それからようやくマンションを出発。
瀬名さんの言う通り面倒でまどろっこしい一連の流れでしかないのだが、これが定着してしまっているからなんとなく毎朝の習慣になっている。
「今日で試験終わりだろ?」
「ええ。でも最後が六時限目なんですよ」
マンション前の通りを並んで歩きながら、恒例の今日の連絡事項。決まっている予定があるときはいつもこのタイミングで話しておく。
「家着くの瀬名さんと同じくらいの時間になると思います。なので晩メシちょっと手抜きでも許してください」
「新婚っぽいセリフにグッときた」
「グッときてねえでちゃんと会話して」
今年度に俺が履修した科目は、前期も後期も四時限目までだった。講義と同じ曜日と時間で試験も行われるのが原則だが、今日は担当教授の都合で一つだけ時間変更になった科目がある。
六時限目が終わるのは十九時半過ぎ。テストの答案が早めに埋まって先に退出できたとしても、帰宅は二十時前くらいだろう。
「なんならどっか食いに行くか?」
「いえ、作ります。豆腐の賞味期限が今日までなんです」
「グッときた」
「普通の人と普通に話したい」
これは贅沢な望みではないはず。
***
試験期間中とその前の週の辺りは、図書館の利用率が通常よりも若干上がる。
普段より少しばかり人の多い図書館で、棚から棚へと歩きながら一人時間を潰していた。好みの分類の棚で足を止めては適当に本を手に取り、その場でパラパラ立ち読みしてから元の位置に戻してまた移動する。
それをしばらく繰り返したのち、列から列へとゆっくり歩き、奥の方の棚に差し掛かったところで見知った女の子の姿を捉えた。
ミキちゃんだ。めちゃくちゃ頑張って背伸びしながら、高いところに置いてある本に向かって限界まで腕を伸ばしている。
列の入り口からやや観察。三秒で気づいた。無理だろ、取れねえよ。
目当ての本を指先でちょいちょい引っ張り出そうとしているが、足元も手元もフルフルと不安定。本を引っ張り出せたとしても、あの様子だと降ってきた本を顔面に食らいかねない。
見ていられない。ミキちゃんの方に行く。その横から腕を伸ばした。
俺に気づいたミキちゃんも、そこでふっとこっちを見上げた。目当てと思しき分厚い本を棚から取って手渡してやる。
「ごめん。ありがとう」
「見てて危なっかしいよ。脚立使ったらいいのに、そこにあるんだから」
「あれちょっと重いんだよね。運ぶのもめんどくさいし」
この子は意外とこういう子だった。さっぱりした中身は見た目を裏切る。
今しがた手渡した本のタイトルと、書式と装丁もめちゃくちゃ厳つい。漢字ばっかり十文字くらいが縦にビシッと入っている。なんの本だよ。読経でもすんのか。
左腕に抱えている二冊の本も分厚くてとっつきにくいタイトルだ。十代の女の子が自ら手を伸ばしそうな内容の本にはとても思えない。
「……それ全部読むの?」
「うん。春休み長いし」
「趣味シブすぎない?」
「読んでみると面白いんだよ。暇潰しにもなるしオススメ」
「へえ……」
この子とこうやって話すようになって、いかに自分が偏見に満ちた人間だったか思い知った。ふわふわラテ系の権化かと思いきや全然そんな事はない。中身は見た目よりも小ざっぱりとして、自分をフッた男が相手だろうとよそよそしくなる訳でもなく、特に気にする素振りもなく。
そのためあれ以降もミキちゃんと気まずくなるような事は一切なかった。元は名前さえ知らなかったのに、むしろ今じゃいい友達だ。
あのあと学校で話しかけてきたのもミキちゃんの方からだったが、もしかしたら俺より男らしいかも。頭がよくて回転も速いし、話してみると面白い。
けれどもやっぱり、小さな女の子という事実に変わりはなくて。この見た目にそぐわない言動に少々びっくりさせられる事もしばしば。
図書館を出る頃にはミキちゃんが読みたい分厚い本は五冊になっていた。それをトートバッグに入れて、右腕一本で持っている。さらに左手にもデカいバッグが。女子は荷物が多くて大変だ。
「……大丈夫? 本持とうか?」
「ううん、平気平気」
ふわふわラテ系なら持ってもらいそうだけどミキちゃんはここで大丈夫って言う。でも見た感じ、あんまり大丈夫そうじゃない。
講義室の白い扉だったら重くないからすぐに開く。しかし図書館のガラス扉は重い。本とバッグを抱えている女の子には不親切設計だ。
だから先に俺がドアに手を伸ばした。押し開いたまま、ミキちゃんを外に通す。
「ありがと」
にっこり。
たとえ中身はふわラテじゃなくても、この笑顔に大半の男はコロッといっちゃうんだろうな。
エレベーターまで歩きながらミキちゃんはふふっと笑った。チラリとその顔に視線を落とすと、面白そうに見上げてくる。
「赤川くんって普通にああいう事しちゃう人だよね」
「なにが?」
「ドアとかよく押さえててくれるでしょ?」
それは普通に誰でもやるだろ。目の前にいるのが両手の塞がった女の子ならばなおさらだ。
ところがそこで、ふと気づいた。今朝の俺は自宅の玄関を出ながら、スマートな恋人の行動をどう思って、どう感じたか。
「…………お手本が……」
「え?」
「なんでもない」
しまった。またしてもあの男のせいだ。気づくんじゃなかった。原因は瀬名さんだ。いつもさり気なくドアを押さえておくサラリーマンを見慣れているからだ。
俺の両手が塞がっていようと、仮に手ぶらのときだろうと、ドアを押さえて待っている男が身近にいるせいでそれがうつった。その行動をとれる日本人男性はそんなに多くは存在しない。今朝思ったばかりじゃないか。何が誰でもやるだ、やらねえよ。
もしも瀬名さんと付き合っていなければ、俺だってそれができない男のうちの一人だったはず。実家にいた頃に母さんからしょっちゅう投げられていた三大小言は、暇なら買い物くらい行ってきて、ボンヤリしてるならお風呂でも洗って、いつもいつもあんたはほんとに気が利かないんだから全くもう、だ。
縁側でガーくんを観察しながら昼間からゴロゴロしていると、手伝いくらいしてくれたっていいじゃないのとよく怒られた。おかげで料理も掃除も洗濯も人並みにできるようにはなったが、基本的には気が利かない。誰かのために何かをするという意識はめちゃくちゃ底辺だった。
女子のためにドアを押さえておく紳士気取りのサムい行動を、気の利かない俺が取るなんて。
あり得ない。あの野郎。人のアイデンティティまでズカズカ侵食してくんな。
「赤川くんはもっと冷たい人かと思ってた」
この子もこの子でかなりズカズカ言ってくる。
「まあ優しくはないよね」
「うん。私のこともバッサリ斬ったし」
「ミキちゃんそれずっと言う気?」
あははと軽く笑うミキちゃんは、根には持つような事はないもののしばしば俺をからかって遊ぶ。
見た目とは違ってしたたかな子だ。カフェで急に泣きだしたのと、玄関前で俺に抱きついたのは、その時ハマっていた韓国ドラマで主役の女がやっていたことだそうだ。
緊張してたのは本当だけど、ドラマのシーンと状況似てたからなんだかテンション上がっちゃってつい。私を見た時の赤川くんのあの面倒くさそうな態度がね、主人公が片想いしてるクールで素っ気ない御曹司に似てたの。
ミキちゃんに笑いながら白状された時、この子はふわラテじゃないと確信した。
ちなみに韓国ドラマを見始めたのは韓国語を覚えたかったからだとか。御曹司モノが特に好きらしい。
「ねえそう言えばさ、相手の人とはどうなったの?」
「え?」
「あの時言ってた人。その人以外は考えられないって熱烈に語ってたでしょ?」
「…………」
言ったな。そういや、そんな事も。言うんじゃなかった。もう二度と言わない。
「年上の人なんだよね?」
「え……なんで……」
「話聞いてるとそんな感じだったから。違った?」
「……合ってる」
ふふんと笑われる。女子って怖い。こういうところホントに怖い。
「で、どうなったの?」
「……それ聞いてどうすんの」
「だいたいの女の子はこういう話が好きなの。で?」
「…………」
エレベーターはまだ来ない。適当にはぐらかそうにも、ミキちゃんが相手じゃそれは無理。
「……付き合ってるよ」
「ふーん」
「……なに」
「うまくいかなければいいのにって実はちょっと思ってた」
「思ってても普通言わないからねそういうの」
悪気なく笑うミキちゃんを、ふわラテと思った俺は未熟だ。
人は見た目じゃ分からない。
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