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46.疲れた大人の癒し方Ⅱ
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少し遅くなるかもしれない。律儀な恋人は夕方になってそう連絡を入れてきた。
帰ってきたのは予告通り、普段より一時間ほど遅い時刻。本人は何も言わなかったが今朝の様子とは打って変わって顔には明らかに疲れが出ていた。
それでもこの人はルーティーンを変えない。疲れている大人に夕食に出したロールキャベツを褒めちぎられて、疲れている大人に髪を乾かしてもらい、疲れている大人にハンドマッサージまでしてもらおうとしている今この時。
あの夜からハンドマッサージは花屋バイト後の恒例になった。おかげで俺の手はスベスベのツヤツヤ。
一緒に花屋で働いている女性陣からは羨ましがられる。婚活歴は三年目だけど草花が恋人の店長からは特にしばしば質問攻めにあう。
普段の保湿はどうやっているのと女子トークに巻き込まれる事もここのところ増えてきた。彼氏がオイルマッサージしてくれますとは言えないから適当にごまかしている。
「今日は俺がやりましょうか?」
「うん?」
「ハンドマッサージ。なんかすげえ疲れてますよね?」
「いいや?」
「……あなたこそマッサージでも必要そうな顔してますよ」
「気のせいだろ」
「…………」
向かい合うこの人の手元からふわっと香るゼラニウム。リラックスしたいときには最適な匂いなのに疑心暗鬼に眉間が寄った。
変態気質な男に感化されてきた訳では決してないが、通常モードの瀬名さんならここで、ぜひともやってくれと食い気味に要望してくるような気がする。気持ち良くしてくれとか優しめに頼むとか三十分コースオプション付きでとか、セクハラ紛いのつまらない下ネタを意気揚々と返してきたはず。
瀬名さんは意外とそういう男だ。もっと品行方正なタイプかと思いきやとんでもない。うっかりするとこの顔に騙されるが、一貫してふしだらだ。
しかしそれが今はなかった。今朝まではあの調子だったのに。ふっつーの、なんてことのない、当たり障りのない返答だった。
変だ。普段から頭のおかしい男がセクハラ発言の絶好のチャンスをみすみす逃すなんてあり得ない。
俺が疑惑でいっぱいになっているうちに瀬名さんはマッサージを開始していた。技術の向上が異様にはやいから今じゃ極上に気持ちいい。
プロみたいだ。サロンの一つでも開けそう。なんでこんなに気持ちいいのかと言えばそれはおそらく、わざわざ本まで買ってきたこの人がちょこちょこ勉強しているからだ。このまま放っておいたらそのうち、ついでにオンライン講座を受講して資格を取るとか言い出しかねない。
熱心で腕も良くてその上にさらにイケメンとくれば、もしも本当に店なんか開いたら女性客がわんさか集まってくる。
これ以上は勉強させないようにしよう。この人の手は俺専用だ。
「……もういいですよ」
「はじめたばっかだろ」
「大丈夫……?」
「大丈夫」
しっかりした大人が大丈夫と言うときほど大丈夫ではなかったりする。あんなに疲れた顔をして帰ってきたくせして一体何が大丈夫か。
瀬名さんは仕事の話を家の中ですることがない。俺が聞けば答えてくれるが、それ以上のことは何も言わない。
俺がこの先就職をして同じく働く大人になったら、話してくれるようになるのかな。ちょっとは頼ってくれるだろうか。少しでも頼ってもらいたいからこの人に追いつこうと必死になるけど、背伸びくらいしか俺にはできない。
指の間をくちゅっと撫でられて顔を上げた。同じタイミングで瀬名さんの視線も上がる。そうやって指先で繋がったまま、とても静かにキスされた。
俺も瀬名さんも手がオイルまみれだから家具やカーペットには触らないように。触れるのはお互いの両手だけ。
手を繋ぎながらゆっくりキスして、指が絡んできたから握り返した。卑猥さほとんどゼロパーセント。すぐにまた何事もなかったかのようにマッサージが再開されている。
「遥希とこうしてる時が一番落ち着く」
「…………」
どうしよう。この人だいぶ弱ってる。
「……じゃあ明日もしてください」
「ん。……明日もバイトあるって言ってたか?」
「休みです」
「そうか。ならゆっくりできるな」
「…………」
休みかよ。みたいに言ってくれるのを、ちょっとだけ期待したんだけど。
つまんねえ俺の小ボケにツッコみで返してくるわけでもなく。小ボケ返しをしてくることもなく。とにかく言動がさっきからことごとく、心配になるくらいにただのイケメンだ。
疲れてるな。これは完全に疲れている。しょうもないこと言う余裕もないんだ。重症だ。疲れきってんじゃねえか。俺の両手のマッサージなんかしている場合では少なくともない。
だと言うのにこの懇切丁寧なプロ級のハンドマッサージは、その後たっぷり二十分かけて入念に仕上げられた。
***
疲れている原因の何割かは寝不足もあるかもしれない。それはつまりトランプでムキになって挑み続けた俺のせい。十回戦目くらいでやめておくんだった。
だから今夜は余計なことはせず早々に二人でベッドに入った。布団の中で向かい合うこの人の見慣れた男前な顔は、心なしか普段よりも険しい。若干、分からない程度ではあるが、眉間にしわが寄っている。
「……やっぱ疲れてる?」
「そうでもねえよ」
「なんでそこだけ強がるんですか」
こんなに弱っているくせして疲れていないはずがない。瀬名さんはどんな時でもこうだ。疲れたとか忙しいとか、そういうのは絶対に言わない。
「平気……?」
「ん」
「……俺に何かしてほしい事ありますか?」
会社で何があったかは知らない。社会人には急なトラブルもつきものだろう。毎日頑張っているのだからたまには弱音くらい吐けばいいのに、この人はそれを吐き出しそうにないから別の聞き方をした。
視線で俺を捉えてくる。冗談はやっぱり言ってくれない。緩く動いたこの人の手が、ぴとっと俺の右頬を包んだ。
「言ったらしてくれるのか」
「ええ」
「何をしてくれるんだ」
キツさのない、やわらかい口調に、頷くでもなくただ目を見返す。
「なんでもしますよ……俺にできる事なら」
「なんでもするなんてそう軽々しく言うもんじゃねえ。下心に溢れた男と二人でベッドにいるときは特にな」
「…………」
同じような忠告は前にも聞いた。なんでもするなんて軽々しく言うなと。よく覚えている。だからこそだ。今のはひとつも、軽々しくない。
頬に触れる瀬名さんの手を、自分の手で上から覆った。押し付けるように重ねた唇。疲れから回復させたいのであればさっさと寝てもらった方がいい。これで元気になれると思うほど俺の頭はお花畑じゃないが、一瞬だけうぬぼれた俺を、この人は当然のように受け入れた。
抱き合ってキスするのはいつもの事でも今はいつもとは少し違った。ちゅっと舌が絡むのと一緒に、服の裾から手が入ってくる。
確かめるように肌を撫でられた。素肌にこの人の手が触れている。指先で。手のひら全体で。腰をやんわり撫でてまさぐり、次第にその手は背骨に沿ってスルスル上へと向かっていく。
ほんの軽く爪でカリッと皮ふを引っかかれ、ぴくリと揺れた。息を詰める。反射でビクついた俺の体は、気づかうみたいに抱きしめられている。
「ダメか」
聞くんだ。わざわざそんなこと。なんでもするとまで言われても。
俺が十八だろうと十九だろうとこの人はどの道待った。うっかり寝込みを襲ってくるような素振りさえ見せてこなかった。
今もまた俺の答えを待っている。俺の答えはもう決まってる。この人がしたい事なら、俺だってしたい事だ。
「…………ダメじゃない」
ダメなはずがない。最初からずっとダメじゃなかった。この人が俺を見てどんな顔をするか、それを思うと怖かっただけで。
失望されるのが怖かった。ガッカリされたら立ち直れない。そうやって俺は自分のことばかり。この人は俺のことばっかりなのに。
「……ダメじゃないです」
「…………」
布団の中で瀬名さんが動いた。ギシッと小さく、ベッドが鳴った。組み敷かれて下から見上げる。瀬名さんの服を控えめに握りしめると何も言わずにキスで返された。
性急さはどこにもない。優しくされている実感だけがある。服の中に入り込んできた手は腹の上をゆっくりと撫でている。柔らかみなんて欠片もないのに、それでも労わるような手つきで体をさすり上げてくる。たったそれだけの事で。
「んっ……」
全身の神経が瀬名さんの触れる箇所にその都度集まってくるみたいだった。指先の動きを意識が勝手に追いかけている。感覚は余計に過敏になって、ぞわぞわする。頼りなくシーツを握った。
ちゅっと上からされたのはキス。右手では体をまさぐったまま、その唇は肌の上を伝いながら首元に下りてきた。
そこに口付けられている。舌先の濡れた感触。ちゅくっと軽く吸い付かれ、目を閉じた。直後。
「ッ……」
ブーブーッ、と耳に入った振動音。瀬名さんのスマホのバイブ音だ。ヘッドボードの上にある。
視線をチラッと頭上へと。俺の気がそっちに向くともう一度唇にキスしてくる。頬には手を添えられて、集中しろとでも言いたげに正面に戻された顔の向き。そうしているうちにしばらく鳴っていたスマホの振動もピタリと止まった。
邪魔な音が室内から消え、舐め合いに近いキスだけは続く。シーツの上に投げ出した右手に瀬名さんの手が触れてきて、キュッと握られる。しかしその時、またしても。ブーブーッと。
「…………」
「…………」
さっき鳴り止んだばかりなのにスマホが再び音を立てた。しかもしつこさが上回っている。振動はなかなか止まらない。
「…………」
「…………」
「…………クソが」
クソがって言ったか。聞き間違いか。
俺の上で何を呟いたのかはっきりとは聞き取れなかったがさすがの瀬名さんもそこで手を止めた。一方で鳴り続けるスマホ。メッセージの類ではなくて電話なのは見ずとも明らか。
露骨に嫌な顔をしながらスマホをジトッと睨みつけつつ、ヘッドボードへと手を伸ばしたこの人。画面を見た瞬間にその眉間はさらにグッと縦筋を刻んだ。そして同時に、チッと。
「…………」
すっげえ顔で舌打ちした。今度こそはっきり見たし聞いた。
割とこの人こっちが素だよな。時々急にガラが悪い。
「すまん」
「あ、いえ。どうぞ。出てください」
苛立ち百パーの溜め息とともに、瀬名さんはスマホを持って隣のダイニングに行った。そっちで電気がパッとつけられる。
中途半端に乱れた服をなんとも言えない気分で直す。向こうで着信に応じるその声は知っている通りの音であるのだが、耳に入ってくるのは聞き慣れない言葉。というか、言語。
人の電話に聞き耳を立てるのは良くない。しかもあれはおそらく仕事の電話だ。
分かっちゃいるけど聞こえてきちゃうし。たとえすべてを聞き取ったとしても、その意味を俺は理解できない。
日本語じゃなかった。知らない言葉だ。何語だそれは。電話越しにいる相手はどうやらこの国の人ではないようだ。
「…………」
分からないけど、たぶん、ドイツ語。だろうか。心なしか語尾が強い。そういうイントネーションなのか、もしくは瀬名さんが苛立ちを言葉に表しながら喋っているのか、それすら俺には分からない。
勤め先が外資とは言え、日本で暮らしていてそんな普通にドイツ語って話せるもんなのか。イケメンでスペックまで高いときたらそれはもうただの嫌味でしかない。
どうせ英語もペラペラなんだろ。社内メールなんか当たり前のように英語使ってやりとりするんだろ。どうやって生きていればその状況に辿り着くのだか教えてほしい。
よその世界の言葉を話す声も少しすると聞こえなくなり、今にもスマホをブン投げそうな顔をして瀬名さんが戻って来た。
幸いにも投げつけられなかったスマホ。ベッドに腰掛けた持ち主によって画面を操作されている。覗くつもりはなかったけれど、アラームの設定表示が一瞬だけチラリと見えた。
「仕事……?」
「ああ」
「……俺いない方がよければ部屋戻りますけど」
「なんでだよ、行くな。こんな時間に働かされてたまるか」
最後の一言は俺ではなくてスマホを睨みつけながら言った。さっきの通話相手がドイツにいるとするなら日本との時差は八時間。向こうは十六時ちょい前くらいだろうが、こっちはもうすぐ日付が変わる。
瀬名さんはスマホをヘッドボードに置くと俺の隣に戻ってきた。行くなとの言葉は行動で示してぎゅっと強く抱きしめてくる。だから俺も布団の中でもぞっと動いてくっついた。
「明日は早起きですか?」
「そうなった。たった今」
「何時に出るんです?」
「いつもの一時間前ってとこだな」
休日でも同じ時間に起きる大人が寝坊したところは見たことがない。さっきもアラームをセットし直していた。瀬名さんはちゃんと起床するだろうが、問題なのは俺の方。
「じゃあもう寝ないと」
「タイミングがクソ悪い。今の電話さえなければ間違いなく一発ヤレてた」
言い方。
「……もうちょっとオブラートに包むとかできないんですか」
「できるけどしない」
ここまで来るといっそ清々しいな。恥を捨てた人間はこうなるのか。
「お前にその気があるなら睡眠時間くらいいくらでも削る」
「俺はちゃんと眠りたいのでまた今度にしてください」
「今どきの十代どうなってんだ。なんでそんなサッパリしてんだよ」
そう言われてもすでにそんな気分じゃない。これ以上言い合う気もない。だから枕のちょうどいい位置に頭をぼふっと埋め直した。
「……ほんとに寝る気か」
「もちろん。夕べもあんま寝てないですし」
「さっきのダメじゃないはなんだったんだ」
「気の迷いです」
「一生迷っとけ」
分かりやすくイライラしている。寸止めを食らったおじさんは必死。右手ではさわっと腰を撫でてきたからすぐに引き剥がしてやった。
「……なあ、頼む。あと二十五分だけ頑張って起きてろ」
「嫌です。もう眠い」
「分かった。なら二十分でいい」
「ヤダ」
「十五分」
「ヤ」
「十四分」
「やだって」
「十三分でどうだ」
「しつこい」
「……十二分三十秒」
「刻むな」
秒単位で減らしていけばハイどうぞってなるシステムとかじゃない。食い下がってくる男の胸板をぐいっと押しのけて拒否を体現。
何が十二分三十秒だ。ふざけんな。人をなんだと思ってんだ。
「……そんな適当にサクッと済ませるみたいなのは嫌ですよ」
初めてなのに。
ボソッと吐き捨てるように付け足してから、瀬名さんにはクルリと背を向けて首まですっぽり布団をかぶった。
最初の数秒は無音だった背後。少しするとひとり言のように瀬名さんが呟いた。
「意外とかわいいこと考えてた……」
「さっさと寝たらどうですか」
余計なことを言ってしまったせいで案の定調子に乗ったこの男。後ろから抱き寄せられても、振り返りはしないが拒みもしない。
「次はちゃんと時間取ってじっくり愛を育もうな」
「あなたとは何も育みません」
「すでにダメじゃないのは知ってる」
「だんだんダメになってきました」
調子づいた男が口だけの拒否で簡単にめげるはずもなく、こっちはもう寝ると言っているのに聞きやしねえでベタベタしてくる。後ろ頭やうなじにしつこくキスしてくるから眠れない。
クマ雄とウソ子の方に限界まで寄ってもなかなか解放されなかった。ふくらはぎの間にはスリッと足を突っ込んでくる。鬱陶しいなと思いながらも無言を貫いてシカトしていたら、しまいには耳たぶをカプッと噛まれた。
「ッ……寝ろっての!」
「さっきの今で寝られると思うか」
「寝られんだろっ。気合が足りてないんですよあんたは」
「ここで気合い入れちまったら襲い掛かる自信しかない」
入れてほしい気合いの種類が違う。
いい年こいたおっさんがいつまでもベタベタしてくる。今度はカプッと首の後ろに噛みついてきた。鬱陶しい。
イラッと振り返り睨みつけた。体ごと向き直ってガシッと掴みかかった胸ぐら。無駄に整ったその顔面に頭突きの一発でも食らわせてやろうかと一瞬本気で思ったが、それだと俺までデコが痛いから仕方なくキスで黙らせた。
学んだことは実践せねば。不意打ちでこっちからキスするとこの人はちょっとおとなしくなる。口の中をゆっくり舐めて、返り討ちにあわされる前に軽く音を立てて唇を離した。
「……今日はもうこれでお終いです。おとなしく寝てください」
「お前のせいで局部が痛い」
「うるせえ寝ろ」
逆効果だった。
「なんて残酷なお預けだ」
「代わりに明日の弁当はリクエスト聞いてあげますよ」
「遥希」
「そういうの以外で」
「遥希がいい」
「却下」
俺はお弁当のおかずじゃない。
「あんたが自分で食うもんなんですからこれくらいは真面目に答えてください。何詰めてあったら嬉しいですか?」
「遥希」
「それはもういいです」
しょうもない事を言う元気は出たみたいだけど疲労からの救出は全然できていないだろうからせめて昼ゴハンに好きなものを食ってもらおうと思ったのに。戯言を重ねるこのおっさんはポンと俺の頭を撫でた。
「寝てていい。バイトないならゆっくりしとけ」
「なに遠慮してるんですか。バイトなくても起きられます」
「無理すんな。寝てるお前をカバンに詰めてそのまま持ってくから大丈夫だ。昼に食う」
「通報されますよ」
ホラーの域だ。発想がやっぱり疲れてる。
腕を伸ばして俺も自分のスマホを取った。一時間早めたアラームの設定。何がなんでも起きてやる。じゃないと俺がカバンに詰められる。
ちょうどマカロニを昨日買ってきたからミニグラタンは入れてやろう。ミニハンバーグもぶち込んでやる。ミニオムレツもドンと付ければ遠足仕様のお子様弁当だ。
五歳児が喜ぶ弁当を持って行ってせいぜい会社で恥をかけ。お子様ランチで笑われろ。
にゃんこが描いてある可愛い弁当箱もバイト帰りに買ってきた。カラーはクリーム寄りの黄色だ。めちゃくちゃ可愛い弁当箱だ。
「明日も絶対に弁当持ってってもらいますから」
「お前俺のこと大好きだよな」
「起きたまま寝言言う奴は大嫌いです」
頭突きにしておくんだった。
帰ってきたのは予告通り、普段より一時間ほど遅い時刻。本人は何も言わなかったが今朝の様子とは打って変わって顔には明らかに疲れが出ていた。
それでもこの人はルーティーンを変えない。疲れている大人に夕食に出したロールキャベツを褒めちぎられて、疲れている大人に髪を乾かしてもらい、疲れている大人にハンドマッサージまでしてもらおうとしている今この時。
あの夜からハンドマッサージは花屋バイト後の恒例になった。おかげで俺の手はスベスベのツヤツヤ。
一緒に花屋で働いている女性陣からは羨ましがられる。婚活歴は三年目だけど草花が恋人の店長からは特にしばしば質問攻めにあう。
普段の保湿はどうやっているのと女子トークに巻き込まれる事もここのところ増えてきた。彼氏がオイルマッサージしてくれますとは言えないから適当にごまかしている。
「今日は俺がやりましょうか?」
「うん?」
「ハンドマッサージ。なんかすげえ疲れてますよね?」
「いいや?」
「……あなたこそマッサージでも必要そうな顔してますよ」
「気のせいだろ」
「…………」
向かい合うこの人の手元からふわっと香るゼラニウム。リラックスしたいときには最適な匂いなのに疑心暗鬼に眉間が寄った。
変態気質な男に感化されてきた訳では決してないが、通常モードの瀬名さんならここで、ぜひともやってくれと食い気味に要望してくるような気がする。気持ち良くしてくれとか優しめに頼むとか三十分コースオプション付きでとか、セクハラ紛いのつまらない下ネタを意気揚々と返してきたはず。
瀬名さんは意外とそういう男だ。もっと品行方正なタイプかと思いきやとんでもない。うっかりするとこの顔に騙されるが、一貫してふしだらだ。
しかしそれが今はなかった。今朝まではあの調子だったのに。ふっつーの、なんてことのない、当たり障りのない返答だった。
変だ。普段から頭のおかしい男がセクハラ発言の絶好のチャンスをみすみす逃すなんてあり得ない。
俺が疑惑でいっぱいになっているうちに瀬名さんはマッサージを開始していた。技術の向上が異様にはやいから今じゃ極上に気持ちいい。
プロみたいだ。サロンの一つでも開けそう。なんでこんなに気持ちいいのかと言えばそれはおそらく、わざわざ本まで買ってきたこの人がちょこちょこ勉強しているからだ。このまま放っておいたらそのうち、ついでにオンライン講座を受講して資格を取るとか言い出しかねない。
熱心で腕も良くてその上にさらにイケメンとくれば、もしも本当に店なんか開いたら女性客がわんさか集まってくる。
これ以上は勉強させないようにしよう。この人の手は俺専用だ。
「……もういいですよ」
「はじめたばっかだろ」
「大丈夫……?」
「大丈夫」
しっかりした大人が大丈夫と言うときほど大丈夫ではなかったりする。あんなに疲れた顔をして帰ってきたくせして一体何が大丈夫か。
瀬名さんは仕事の話を家の中ですることがない。俺が聞けば答えてくれるが、それ以上のことは何も言わない。
俺がこの先就職をして同じく働く大人になったら、話してくれるようになるのかな。ちょっとは頼ってくれるだろうか。少しでも頼ってもらいたいからこの人に追いつこうと必死になるけど、背伸びくらいしか俺にはできない。
指の間をくちゅっと撫でられて顔を上げた。同じタイミングで瀬名さんの視線も上がる。そうやって指先で繋がったまま、とても静かにキスされた。
俺も瀬名さんも手がオイルまみれだから家具やカーペットには触らないように。触れるのはお互いの両手だけ。
手を繋ぎながらゆっくりキスして、指が絡んできたから握り返した。卑猥さほとんどゼロパーセント。すぐにまた何事もなかったかのようにマッサージが再開されている。
「遥希とこうしてる時が一番落ち着く」
「…………」
どうしよう。この人だいぶ弱ってる。
「……じゃあ明日もしてください」
「ん。……明日もバイトあるって言ってたか?」
「休みです」
「そうか。ならゆっくりできるな」
「…………」
休みかよ。みたいに言ってくれるのを、ちょっとだけ期待したんだけど。
つまんねえ俺の小ボケにツッコみで返してくるわけでもなく。小ボケ返しをしてくることもなく。とにかく言動がさっきからことごとく、心配になるくらいにただのイケメンだ。
疲れてるな。これは完全に疲れている。しょうもないこと言う余裕もないんだ。重症だ。疲れきってんじゃねえか。俺の両手のマッサージなんかしている場合では少なくともない。
だと言うのにこの懇切丁寧なプロ級のハンドマッサージは、その後たっぷり二十分かけて入念に仕上げられた。
***
疲れている原因の何割かは寝不足もあるかもしれない。それはつまりトランプでムキになって挑み続けた俺のせい。十回戦目くらいでやめておくんだった。
だから今夜は余計なことはせず早々に二人でベッドに入った。布団の中で向かい合うこの人の見慣れた男前な顔は、心なしか普段よりも険しい。若干、分からない程度ではあるが、眉間にしわが寄っている。
「……やっぱ疲れてる?」
「そうでもねえよ」
「なんでそこだけ強がるんですか」
こんなに弱っているくせして疲れていないはずがない。瀬名さんはどんな時でもこうだ。疲れたとか忙しいとか、そういうのは絶対に言わない。
「平気……?」
「ん」
「……俺に何かしてほしい事ありますか?」
会社で何があったかは知らない。社会人には急なトラブルもつきものだろう。毎日頑張っているのだからたまには弱音くらい吐けばいいのに、この人はそれを吐き出しそうにないから別の聞き方をした。
視線で俺を捉えてくる。冗談はやっぱり言ってくれない。緩く動いたこの人の手が、ぴとっと俺の右頬を包んだ。
「言ったらしてくれるのか」
「ええ」
「何をしてくれるんだ」
キツさのない、やわらかい口調に、頷くでもなくただ目を見返す。
「なんでもしますよ……俺にできる事なら」
「なんでもするなんてそう軽々しく言うもんじゃねえ。下心に溢れた男と二人でベッドにいるときは特にな」
「…………」
同じような忠告は前にも聞いた。なんでもするなんて軽々しく言うなと。よく覚えている。だからこそだ。今のはひとつも、軽々しくない。
頬に触れる瀬名さんの手を、自分の手で上から覆った。押し付けるように重ねた唇。疲れから回復させたいのであればさっさと寝てもらった方がいい。これで元気になれると思うほど俺の頭はお花畑じゃないが、一瞬だけうぬぼれた俺を、この人は当然のように受け入れた。
抱き合ってキスするのはいつもの事でも今はいつもとは少し違った。ちゅっと舌が絡むのと一緒に、服の裾から手が入ってくる。
確かめるように肌を撫でられた。素肌にこの人の手が触れている。指先で。手のひら全体で。腰をやんわり撫でてまさぐり、次第にその手は背骨に沿ってスルスル上へと向かっていく。
ほんの軽く爪でカリッと皮ふを引っかかれ、ぴくリと揺れた。息を詰める。反射でビクついた俺の体は、気づかうみたいに抱きしめられている。
「ダメか」
聞くんだ。わざわざそんなこと。なんでもするとまで言われても。
俺が十八だろうと十九だろうとこの人はどの道待った。うっかり寝込みを襲ってくるような素振りさえ見せてこなかった。
今もまた俺の答えを待っている。俺の答えはもう決まってる。この人がしたい事なら、俺だってしたい事だ。
「…………ダメじゃない」
ダメなはずがない。最初からずっとダメじゃなかった。この人が俺を見てどんな顔をするか、それを思うと怖かっただけで。
失望されるのが怖かった。ガッカリされたら立ち直れない。そうやって俺は自分のことばかり。この人は俺のことばっかりなのに。
「……ダメじゃないです」
「…………」
布団の中で瀬名さんが動いた。ギシッと小さく、ベッドが鳴った。組み敷かれて下から見上げる。瀬名さんの服を控えめに握りしめると何も言わずにキスで返された。
性急さはどこにもない。優しくされている実感だけがある。服の中に入り込んできた手は腹の上をゆっくりと撫でている。柔らかみなんて欠片もないのに、それでも労わるような手つきで体をさすり上げてくる。たったそれだけの事で。
「んっ……」
全身の神経が瀬名さんの触れる箇所にその都度集まってくるみたいだった。指先の動きを意識が勝手に追いかけている。感覚は余計に過敏になって、ぞわぞわする。頼りなくシーツを握った。
ちゅっと上からされたのはキス。右手では体をまさぐったまま、その唇は肌の上を伝いながら首元に下りてきた。
そこに口付けられている。舌先の濡れた感触。ちゅくっと軽く吸い付かれ、目を閉じた。直後。
「ッ……」
ブーブーッ、と耳に入った振動音。瀬名さんのスマホのバイブ音だ。ヘッドボードの上にある。
視線をチラッと頭上へと。俺の気がそっちに向くともう一度唇にキスしてくる。頬には手を添えられて、集中しろとでも言いたげに正面に戻された顔の向き。そうしているうちにしばらく鳴っていたスマホの振動もピタリと止まった。
邪魔な音が室内から消え、舐め合いに近いキスだけは続く。シーツの上に投げ出した右手に瀬名さんの手が触れてきて、キュッと握られる。しかしその時、またしても。ブーブーッと。
「…………」
「…………」
さっき鳴り止んだばかりなのにスマホが再び音を立てた。しかもしつこさが上回っている。振動はなかなか止まらない。
「…………」
「…………」
「…………クソが」
クソがって言ったか。聞き間違いか。
俺の上で何を呟いたのかはっきりとは聞き取れなかったがさすがの瀬名さんもそこで手を止めた。一方で鳴り続けるスマホ。メッセージの類ではなくて電話なのは見ずとも明らか。
露骨に嫌な顔をしながらスマホをジトッと睨みつけつつ、ヘッドボードへと手を伸ばしたこの人。画面を見た瞬間にその眉間はさらにグッと縦筋を刻んだ。そして同時に、チッと。
「…………」
すっげえ顔で舌打ちした。今度こそはっきり見たし聞いた。
割とこの人こっちが素だよな。時々急にガラが悪い。
「すまん」
「あ、いえ。どうぞ。出てください」
苛立ち百パーの溜め息とともに、瀬名さんはスマホを持って隣のダイニングに行った。そっちで電気がパッとつけられる。
中途半端に乱れた服をなんとも言えない気分で直す。向こうで着信に応じるその声は知っている通りの音であるのだが、耳に入ってくるのは聞き慣れない言葉。というか、言語。
人の電話に聞き耳を立てるのは良くない。しかもあれはおそらく仕事の電話だ。
分かっちゃいるけど聞こえてきちゃうし。たとえすべてを聞き取ったとしても、その意味を俺は理解できない。
日本語じゃなかった。知らない言葉だ。何語だそれは。電話越しにいる相手はどうやらこの国の人ではないようだ。
「…………」
分からないけど、たぶん、ドイツ語。だろうか。心なしか語尾が強い。そういうイントネーションなのか、もしくは瀬名さんが苛立ちを言葉に表しながら喋っているのか、それすら俺には分からない。
勤め先が外資とは言え、日本で暮らしていてそんな普通にドイツ語って話せるもんなのか。イケメンでスペックまで高いときたらそれはもうただの嫌味でしかない。
どうせ英語もペラペラなんだろ。社内メールなんか当たり前のように英語使ってやりとりするんだろ。どうやって生きていればその状況に辿り着くのだか教えてほしい。
よその世界の言葉を話す声も少しすると聞こえなくなり、今にもスマホをブン投げそうな顔をして瀬名さんが戻って来た。
幸いにも投げつけられなかったスマホ。ベッドに腰掛けた持ち主によって画面を操作されている。覗くつもりはなかったけれど、アラームの設定表示が一瞬だけチラリと見えた。
「仕事……?」
「ああ」
「……俺いない方がよければ部屋戻りますけど」
「なんでだよ、行くな。こんな時間に働かされてたまるか」
最後の一言は俺ではなくてスマホを睨みつけながら言った。さっきの通話相手がドイツにいるとするなら日本との時差は八時間。向こうは十六時ちょい前くらいだろうが、こっちはもうすぐ日付が変わる。
瀬名さんはスマホをヘッドボードに置くと俺の隣に戻ってきた。行くなとの言葉は行動で示してぎゅっと強く抱きしめてくる。だから俺も布団の中でもぞっと動いてくっついた。
「明日は早起きですか?」
「そうなった。たった今」
「何時に出るんです?」
「いつもの一時間前ってとこだな」
休日でも同じ時間に起きる大人が寝坊したところは見たことがない。さっきもアラームをセットし直していた。瀬名さんはちゃんと起床するだろうが、問題なのは俺の方。
「じゃあもう寝ないと」
「タイミングがクソ悪い。今の電話さえなければ間違いなく一発ヤレてた」
言い方。
「……もうちょっとオブラートに包むとかできないんですか」
「できるけどしない」
ここまで来るといっそ清々しいな。恥を捨てた人間はこうなるのか。
「お前にその気があるなら睡眠時間くらいいくらでも削る」
「俺はちゃんと眠りたいのでまた今度にしてください」
「今どきの十代どうなってんだ。なんでそんなサッパリしてんだよ」
そう言われてもすでにそんな気分じゃない。これ以上言い合う気もない。だから枕のちょうどいい位置に頭をぼふっと埋め直した。
「……ほんとに寝る気か」
「もちろん。夕べもあんま寝てないですし」
「さっきのダメじゃないはなんだったんだ」
「気の迷いです」
「一生迷っとけ」
分かりやすくイライラしている。寸止めを食らったおじさんは必死。右手ではさわっと腰を撫でてきたからすぐに引き剥がしてやった。
「……なあ、頼む。あと二十五分だけ頑張って起きてろ」
「嫌です。もう眠い」
「分かった。なら二十分でいい」
「ヤダ」
「十五分」
「ヤ」
「十四分」
「やだって」
「十三分でどうだ」
「しつこい」
「……十二分三十秒」
「刻むな」
秒単位で減らしていけばハイどうぞってなるシステムとかじゃない。食い下がってくる男の胸板をぐいっと押しのけて拒否を体現。
何が十二分三十秒だ。ふざけんな。人をなんだと思ってんだ。
「……そんな適当にサクッと済ませるみたいなのは嫌ですよ」
初めてなのに。
ボソッと吐き捨てるように付け足してから、瀬名さんにはクルリと背を向けて首まですっぽり布団をかぶった。
最初の数秒は無音だった背後。少しするとひとり言のように瀬名さんが呟いた。
「意外とかわいいこと考えてた……」
「さっさと寝たらどうですか」
余計なことを言ってしまったせいで案の定調子に乗ったこの男。後ろから抱き寄せられても、振り返りはしないが拒みもしない。
「次はちゃんと時間取ってじっくり愛を育もうな」
「あなたとは何も育みません」
「すでにダメじゃないのは知ってる」
「だんだんダメになってきました」
調子づいた男が口だけの拒否で簡単にめげるはずもなく、こっちはもう寝ると言っているのに聞きやしねえでベタベタしてくる。後ろ頭やうなじにしつこくキスしてくるから眠れない。
クマ雄とウソ子の方に限界まで寄ってもなかなか解放されなかった。ふくらはぎの間にはスリッと足を突っ込んでくる。鬱陶しいなと思いながらも無言を貫いてシカトしていたら、しまいには耳たぶをカプッと噛まれた。
「ッ……寝ろっての!」
「さっきの今で寝られると思うか」
「寝られんだろっ。気合が足りてないんですよあんたは」
「ここで気合い入れちまったら襲い掛かる自信しかない」
入れてほしい気合いの種類が違う。
いい年こいたおっさんがいつまでもベタベタしてくる。今度はカプッと首の後ろに噛みついてきた。鬱陶しい。
イラッと振り返り睨みつけた。体ごと向き直ってガシッと掴みかかった胸ぐら。無駄に整ったその顔面に頭突きの一発でも食らわせてやろうかと一瞬本気で思ったが、それだと俺までデコが痛いから仕方なくキスで黙らせた。
学んだことは実践せねば。不意打ちでこっちからキスするとこの人はちょっとおとなしくなる。口の中をゆっくり舐めて、返り討ちにあわされる前に軽く音を立てて唇を離した。
「……今日はもうこれでお終いです。おとなしく寝てください」
「お前のせいで局部が痛い」
「うるせえ寝ろ」
逆効果だった。
「なんて残酷なお預けだ」
「代わりに明日の弁当はリクエスト聞いてあげますよ」
「遥希」
「そういうの以外で」
「遥希がいい」
「却下」
俺はお弁当のおかずじゃない。
「あんたが自分で食うもんなんですからこれくらいは真面目に答えてください。何詰めてあったら嬉しいですか?」
「遥希」
「それはもういいです」
しょうもない事を言う元気は出たみたいだけど疲労からの救出は全然できていないだろうからせめて昼ゴハンに好きなものを食ってもらおうと思ったのに。戯言を重ねるこのおっさんはポンと俺の頭を撫でた。
「寝てていい。バイトないならゆっくりしとけ」
「なに遠慮してるんですか。バイトなくても起きられます」
「無理すんな。寝てるお前をカバンに詰めてそのまま持ってくから大丈夫だ。昼に食う」
「通報されますよ」
ホラーの域だ。発想がやっぱり疲れてる。
腕を伸ばして俺も自分のスマホを取った。一時間早めたアラームの設定。何がなんでも起きてやる。じゃないと俺がカバンに詰められる。
ちょうどマカロニを昨日買ってきたからミニグラタンは入れてやろう。ミニハンバーグもぶち込んでやる。ミニオムレツもドンと付ければ遠足仕様のお子様弁当だ。
五歳児が喜ぶ弁当を持って行ってせいぜい会社で恥をかけ。お子様ランチで笑われろ。
にゃんこが描いてある可愛い弁当箱もバイト帰りに買ってきた。カラーはクリーム寄りの黄色だ。めちゃくちゃ可愛い弁当箱だ。
「明日も絶対に弁当持ってってもらいますから」
「お前俺のこと大好きだよな」
「起きたまま寝言言う奴は大嫌いです」
頭突きにしておくんだった。
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