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4.鬼畜と菩薩と楽天家Ⅱ
「問答無用で子供を追い出した罪悪感くらいはお前の中にもあるらしいな」
「ゴチャゴチャうるせえ。どうなんだよあのガキの様子は」
「本格的な風邪だ。回復にはもう少し時間がかかる」
ヤブ医者、と。口悪く吐き出したその人の声。それは廊下から俺の耳にまで届いてきた。
どうしよう怖い。怖い怖い怖い。この部屋へと近付く足音は地獄へのカウントダウンだ。
「おい。入るぞ」
「っす、ミマセン……」
「あ?」
いまだベッドに横たわった状態。開いたままのドアから入ってくるその人に向けて発した第一声は謝罪だった。
近づいてきたその人、比内さんの顔。ビクビクと布団を握りしめて恐怖に慄く俺を見下し、怪訝に眉をひそめた比内さんは機嫌悪そうに舌打ちを。
「迎えに来た。つもりだったがまだしばらくはここにいろ。熱が引くまでは平治の世話になれ」
「へ、平……?」
聞き慣れない名前に困惑しつつ口を挟むと、さらに重苦しく不機嫌な目つきが一直線に突き刺さってきた。
そのあまりの威圧感。反射でビクッと肩が跳ね上がり、それを見たこの人はあからさまに嫌そうな顔をした。
「……あのクソ医者のことだ。せめて熱が引くまではここにいた方がいいだろう」
「え、あ、あのでも、俺……」
「不満があるなら言ってみろ」
「…………」
熱は一瞬で冷めた気がする。
朝になって目覚めた俺のところに朝比奈先生がやって来た。気分はどうだいと穏やかに言われ、もう大丈夫ですと答えると同時に額に手を当てられていた。
真夜中か明け方か、もしかしたらほんの少し前か、寝ている間に変な夢を見た気がする。誰かがいたように感じたが、あれは夢だったのか、そうではないのか。眠気が強くてまともな判断はとてもじゃないができなかった。
結局はここで一日世話になってしまったけれど、さすがにこれ以上のご厄介になる訳にはいかないだろう。俺がここにいると病室を一部屋占領してしまう。だからすぐにでも出て行こう。そう考えていたところだった。
朝比奈先生はずっと優しい。中川さんも力になると言ってくれた。とは言え初対面の人達に世話ばかりかけるのも憚られる。
それに何より俺には金がない。ほとんど無一文の子供に、この大人達だっていつまでも付き合っていたくないだろう。
そう思っていた矢先だ。俺の診察が終わった頃、受け付け開始前の朝の診療所に誰かが訪ねて来た。
それを予期していたかのように朝比奈先生はこの部屋を出て行った。そうしてエントランスから聞こえてきたのが、比内さんの不機嫌な声だ。
確かに迎えに来るような事を中川さんが昨日言っていたけど。何もこの人が来る事ないじゃないか。比内法律事務所の比内弁護士と言うからには、比内さんはきっとあの事務所の一番偉い人であるはず。
外見は若そうに見えるが、おそらく優秀な弁護士なのだろう。若くして個人事務所を持っている人。そんな人を俺一人ための迎えに赴かせてしまったなんて。
蹴られるかも。落ち込む前に体が硬直し、そして今に至ると言う訳で。
「ど、どうもご迷惑おかけしまして……」
「…………」
チッ、と。どんよりとした重苦しい眼差しを俺に向けながらの舌打ち。ほんの一分も経たないうちに二度も舌打ちされた。
見れば見るほどますます怖い。目ヂカラだけで射殺されそう。俺が言葉を発する度にどんどん機嫌が悪くなっていく。
この人も本格的に竦み上がる俺にはいい加減うんざりしてきたようだ。ふいっと顔の向きを逸らし、きつい視線も俺から外れた。
「あの……」
「後のことは平治に言っておく。お前は大人しくあいつの言うこと聞いて寝てろ。話はそれからだ」
「比内さ…」
「今日中に治せ」
そんな無茶な。
比内さんはそれだけを言い置き背を向けて出て行った。俺は布団を握りしめたまま呆然とその後ろ姿を見送り、バタンと閉じられたドアを目にしてようやく肩の力が抜ける。
話って、なんだろう。昨日のことを全て洗いざらい、説明でもさせられるのか。
それは嫌だな。惨めすぎる。これはあまり人に話したいものじゃない。
溜め息交じりに天井を見上げた。診療所と言われていたここは、通常なら入院患者の受け入れはしていないのだろう。
室内には薬品や医療器具の入った棚が並び、その反対側の壁際には洗い場が設置されている。俺が寝ているこのベッドと、部屋の中にあるベッドはもう一台だけだった。
天井にはレーンが張られてカーテンでの仕切りはあるが、入院患者が入る部屋でない事は一目で分かる。点滴やら注射やら、それらの医療処置を行うために設けられた部屋だ。
迷惑をかけている。なんの義理もない子供を、こうして助けてくれている。そう言えば俺は、まだ誰にも名前を明かしてさえいない。
なんて礼儀知らずなガキだろう。ふっと浮かぶのは比内さんの凍てつくようなあの眼差しだ。点滴のおかげか熱も大分下がったし、このまま甘えている訳にはいかない。
目元を腕で覆い隠した。これからの事を考えると溜め息しか出てこな。やらなければならない事は山ほどある。けれど何から手を付ければいいのか。がんじがらめになっている思考に眉間が徐々に寄っていった。
「だるい……」
帰らなきゃ。帰って荷物をまとめないと。その前に部屋を探さないと。あの家にはもういられない。未成年に部屋を貸してくれる所なんて、奇跡的に見つかったとしても悪徳業者くらいかな。
勝手に出て行く深い溜め息に気分はどんどん落ちていく。溜め息を溜め息で打ち消していると、コンコンコンとノックされた後に再び部屋のドアが開いた。
入ってきた朝比奈先生はこっちに向かって歩み寄ってくる。
「大丈夫かい。すまないね、あいつは昔から口が悪いんだ。誰にでもあの態度だからそう気にする事はないよ」
「ああ……いえ……」
「朝食を持って来るよ。少しでも食べないと治るものも治らないからね」
そう言って踵を返した先生を慌てて呼び止めた。軋むような上体を起こし、振り返った先生の目は見ずに俯き加減で口を開く。
「……あの俺、帰ります。ご迷惑をおかけしてすみませんでした。本当にもう大丈夫なので……色々ありがとうございました」
頭を下げ、ベッドから降りようと布団の下で体を動かした。しかしその前に先生の手が両肩に置かれている。
「まあちょっと待ちなさい。何があったか知らないが一人で抱え込むのは良くないな。あれでも冬弥は腕のいい弁護士だ。あの通り性格はキツくて口も悪いけど、もしも君が助けを求めるなら絶対に見放す事はしないよ。俺達にもできる事があるなら協力する」
「…………」
穏やかな声に諭され、情けない形に眉根が寄っていく。優しさのこもった目を見続けているのはむしろつらいい。黙ったまま俯いた。
そんな俺の頭をポンと、大きな手のひらを乗せたこの人。
「出て行くのはそれからでもいいんじゃないかな」
「…………」
「とにかく今は休みなさい」
「でも俺……」
手を放した先生に向かって口を開いた。途中まで言いかけてすぐにやめるも、先生は静かに俺が喋るのを待っていてくれる
「……俺……金、持ってないんで……」
「ん?」
「……弁護士なんて……その……費用とか払えないですし……」
情けなさやら恥ずかしさやらでどんどん小さくなっていく声。すぐに返事がなかったためにチラッと先生を窺うと、呆気に取られた様子で俺の顔を見下ろしていた。
そして不意に、はっと気づいた。ここがどこで、俺は誰の世話になっていたか。
「あッ、あの、ちゃんと払うんでっ……今はちょっと手持ちないんですけどここで先生から受けた治療の分くらいはなんとか……っ」
「よしよし分かった大丈夫だから一度少し落ち着いてみようか。キミは一度にいろんなことを心配し過ぎだ」
食い逃げならぬ入院逃げなんて思われたら堪らない。一人で焦って弁解していたら宥めるように肩を叩かれた。
一日が経過して、今さらながらに自覚する。着の身着のままあいつらから逃げ出したせいで、今の俺は無一文どころか何一つとして所持品がなかった。
財布はないから金がない。身分証になるものもない。最近はあまり行けていない高校の生徒手帳だって持っていない。この人達からしてみれば俺は身元不明の文無しだ。
ここまで怪しい奴も珍しい。自分の状態に頭を抱えて嘆きたくなった。
ぐるぐると考えを巡らせる俺を朝比奈先生は見つめている。不審がるでもなくにこやかに、もう一度俺の肩にポンと手を置いた。
「何も心配する事はないよ。とりあえずお金の話は一旦忘れよう」
「でも……」
「キミが今しなくちゃいけないのは風邪を治す事だ。ほら横になって」
もう一方の肩にも手を置かれ、押されるままシーツに肘をついた。先生の顔を見上げて窺う。穏やかに微笑まれれば反論の余地もなく、うっと詰まってその手に従い後ろへと身を倒すことになった。
首元まで布団を掛けてくれたその手が頭をポンポンと撫でてくる。昨日もそうだったが、こうして頭を撫でられるなんてチビッ子時代以来のことだ。慣れないせいで恥ずかしい。
朝食を用意してくる。もう一度そう言い置いて朝比奈先生は部屋を出て行った。
この診療所の二階は先生の自宅になっているそうだ。病室のベッドで眠りづらければ上で寝るかいと聞かれたけれどさすがにそれは断った。人のプライベートまでは侵せない。
昨日の晩からここと二階とを先生は行ったり来たりしている。俺のためにそうしてくれた。頭なんて上がるはずがない。
再び見上げた天井はやはり白い。閉じたまぶたの上を右腕で覆う。霞のかかった頭は今にも考える事を放棄しそうで、ゆっくり深く息をついて自分の今を整理した。
これから俺はどうするのが正しいのだろう。ここの人達は皆いい人だ。比内さんは底冷えしそうなくらい怖いけど、それでも俺を助けてくれた。
あの三人の大人を信じていない訳でも信じられない訳でもない。だけど俺はあともう少しだけ、たった一人の家族を待ちたい。信じたかった。信じて待ちたい。あともう少しだけ待てっていれば、きっと戻って来てくれる。
「……バカだな……」
なんて愚かなガキだろう。滑稽だと分かっている。敢えてそれを声に出せば無様な自分が浮き彫りになった。
目の奥が熱いのは気のせいだ。そう言い聞かせ、ベッドに沈んだ。
「おいクソガキ」
「ッ……!」
ビクッと肩が揺れた。昨日からこんなのばっかりだ。
バタンと荒っぽく開けられたドアの音。それと同時に耳にしたのは、朝比奈先生の穏やかな声とは正反対の冷たい声色。比内さんがなぜか戻ってきた。
慌ててがばっと起き上がったせいでズキリと腹に痛みが走る。うっと思わず小さく呻いて苦痛に顔を歪めると、ツカツカとやって来た比内さんが俺の肩に手を置いた。
「バカか、寝てろ。いきなり起きるな」
「…………」
どうしてこの人がまたしてもここに。ついさっき帰ったはずじゃ。
気遣いの見られない手が俺の上体を強引な動作でベッドへと押し戻してくる。心臓をバクバクさせながらも大人しくそれに従った。布団を握りしめて比内さんの顔を見上げていると、今度は何が気に障ったのか目元をよりきつくさせて短い舌打ちを聞かされる。泣きたい。
「……あの」
「言い忘れたことがあった」
淡々と言葉を落とされ、今度は何を言われるのだろうかと強張っていく俺の顔。だいぶ情けない事になっているのは予想もつく。この目に睨まれると途端に行き場はなくなった。
綺麗だから。余計に怖い。どこかの腕のいい職人が、寸分の狂いもなく作り上げた人形みたいだ。
表情もなく睨み落とされ、恐怖心に苛まれながらそんな感想さえ持った。こんなに整っているのに、いや整っているからこそ。
すっごく怖い。やめてくれ。眉間寄せないで。なんでそんなガン見してくんの。
そうやって怯む俺に、この人はやはり淡々と言ってくる。
「なあ。お前を助けたのは俺だな」
「え……あ……はい」
瞬きを繰り返して比内さんを見上げた。伸びてきたその手がクイッと、俺の顎を捕えている。
なぜ掴まれた。力も強いし。俺はアゴを砕かれるのか。
「最初にお前を拾ってやったのは俺だ。あのゲス野郎どもからお前を助けてやったのも俺だ。分かるな?」
「あ、は、はい」
「俺は暇な訳じゃない。本来ならなんの義理もねえガキに割いてやる時間は一秒もねえが、現に俺はお前のために仕事の手を止めてここに来てる。わざわざここまでしてやってんだ。俺にだってお前にモノ言う権利くらいあると思わねえか」
「え、と……」
ヤクザより怖い。この人びっくりするほど怖い。そして何が言いたいのかも俺にはさっぱり分からない。
シーツに張り付きながら硬直する俺。相変わらず顎に手を掛けたまま、無理やりに目を合わせて俺を見下ろしてくるこの人。
「いいかクソガキ良く聞けよ。勝手な真似はするんじゃねえぞ。お前はおとなしくここにいろ。もしも俺の許可なく黙って帰りやがったら見つけ出して蹴り倒すからな。死んだ方がマシだと思う目に遭いたくなけりゃ俺の言う通りにすることだ」
「…………」
「返事」
「ッは、はい!」
凄くいい声が出た。比内さんはフンと鼻を鳴らし、俺の顎にかけていた手をそこで雑にパッと放した。
先を読まれたかのような的確すぎるこの忠告。顔面からは血の気が引いた。背筋はもちろん凍り付いている。
俺はそこまで分かり易いのか。それともこの人が異常に鋭いのか。どちらだろうと早まって帰ってしまわないで良かった。ここにはいない朝比奈先生に感謝の気持ちが湧き起こる。
「それだけだ。腹出して寝るなよ」
本当に用件はそれ以外になかったようだ。比内さんはそう言ってさっさと俺に背を向けた。
皺ひとつないスーツをキッチリ着込み、その真っ直ぐに伸びた背筋からは威圧感をひしひしと感じる。顔は向こうを向いているのにいまだに睨まれているような錯覚を起こした。
ツカツカと足早に歩き、ドアに手を掛けるのを眺める。しかし比内さんが出て行く間際、思い出して呼び止めた。
「ぁ、比内さんっ」
半開きのドアに手を付きながら、比内さんがチラっと振り返った。横目で視線だけを寄越される。怖気づきそうなのは堪えた。
「……なんだ」
「あの俺、藤波って言いますっ。藤波陽向です!」
今度こそ、せめて名前くらい名乗っておかないと。その思いが先行したせいでほとんど叫びながら上体を起こした。
腹を押さえつつ比内さんを見つめる。けれど返ってくる表情にはまるで感情が込められていない。尻込みしそうになっていると、無表情だった比内さんがフイっと俺から目を逸らした。
「それなりに元気なのは分かったから寝とけ。明日悪化させてたら窓から放るぞ」
「え……」
冷静に投げられたのは脅し。呆然としている俺を残して比内さんはスタスタ出て行った。小学生みたいな自己紹介が今更ながら恥ずかしい。
ドアの外では人の話し声が聞こえた。すぐ後に入ってきたのは、困ったように笑っている朝比奈先生だ。
「全く本当に素直じゃないなあいつは。嫌な思いばかりさせてすまないね、ヒナタ君」
「あ……」
どこから聞いていたのか。名前を呼ばれて先生を見上げた。比内さんも背が高いけど、この人の場合はさらに視線が上に行く。
「いえ。ずっと名乗りもしないですみませんでした。比内さんにも呆れられちゃって……」
「そうかな。あれは満更でもないって顔だったよ。わざわざあんなことを言いに来るくらいだからキミのことは気にかけているのだろう」
にこにこと微笑む先生に曖昧に頷いた。
「冬弥が怖い?」
「え、あ……いや、でも……」
睨まれると身がすくむ。言葉も綺麗なものではないが、遠まわしに助けてやると言われている事には気づいた。
「嘘は、なさそうな人かなって……」
「ほう。なるほど」
「……すみません……なんか」
「いいや。キミはいい子だね」
いい子と言われて嬉しい年じゃない。気恥しさから俯いた。ポンポンと頭を撫でられてしまって余計に居た堪れなくなってくる。
「……あの……」
「うん? ああ、すまない。つい」
目で訴えると通じたようで先生は俺の頭から手を放した。
ついってどういう事だろう。
「ゴチャゴチャうるせえ。どうなんだよあのガキの様子は」
「本格的な風邪だ。回復にはもう少し時間がかかる」
ヤブ医者、と。口悪く吐き出したその人の声。それは廊下から俺の耳にまで届いてきた。
どうしよう怖い。怖い怖い怖い。この部屋へと近付く足音は地獄へのカウントダウンだ。
「おい。入るぞ」
「っす、ミマセン……」
「あ?」
いまだベッドに横たわった状態。開いたままのドアから入ってくるその人に向けて発した第一声は謝罪だった。
近づいてきたその人、比内さんの顔。ビクビクと布団を握りしめて恐怖に慄く俺を見下し、怪訝に眉をひそめた比内さんは機嫌悪そうに舌打ちを。
「迎えに来た。つもりだったがまだしばらくはここにいろ。熱が引くまでは平治の世話になれ」
「へ、平……?」
聞き慣れない名前に困惑しつつ口を挟むと、さらに重苦しく不機嫌な目つきが一直線に突き刺さってきた。
そのあまりの威圧感。反射でビクッと肩が跳ね上がり、それを見たこの人はあからさまに嫌そうな顔をした。
「……あのクソ医者のことだ。せめて熱が引くまではここにいた方がいいだろう」
「え、あ、あのでも、俺……」
「不満があるなら言ってみろ」
「…………」
熱は一瞬で冷めた気がする。
朝になって目覚めた俺のところに朝比奈先生がやって来た。気分はどうだいと穏やかに言われ、もう大丈夫ですと答えると同時に額に手を当てられていた。
真夜中か明け方か、もしかしたらほんの少し前か、寝ている間に変な夢を見た気がする。誰かがいたように感じたが、あれは夢だったのか、そうではないのか。眠気が強くてまともな判断はとてもじゃないができなかった。
結局はここで一日世話になってしまったけれど、さすがにこれ以上のご厄介になる訳にはいかないだろう。俺がここにいると病室を一部屋占領してしまう。だからすぐにでも出て行こう。そう考えていたところだった。
朝比奈先生はずっと優しい。中川さんも力になると言ってくれた。とは言え初対面の人達に世話ばかりかけるのも憚られる。
それに何より俺には金がない。ほとんど無一文の子供に、この大人達だっていつまでも付き合っていたくないだろう。
そう思っていた矢先だ。俺の診察が終わった頃、受け付け開始前の朝の診療所に誰かが訪ねて来た。
それを予期していたかのように朝比奈先生はこの部屋を出て行った。そうしてエントランスから聞こえてきたのが、比内さんの不機嫌な声だ。
確かに迎えに来るような事を中川さんが昨日言っていたけど。何もこの人が来る事ないじゃないか。比内法律事務所の比内弁護士と言うからには、比内さんはきっとあの事務所の一番偉い人であるはず。
外見は若そうに見えるが、おそらく優秀な弁護士なのだろう。若くして個人事務所を持っている人。そんな人を俺一人ための迎えに赴かせてしまったなんて。
蹴られるかも。落ち込む前に体が硬直し、そして今に至ると言う訳で。
「ど、どうもご迷惑おかけしまして……」
「…………」
チッ、と。どんよりとした重苦しい眼差しを俺に向けながらの舌打ち。ほんの一分も経たないうちに二度も舌打ちされた。
見れば見るほどますます怖い。目ヂカラだけで射殺されそう。俺が言葉を発する度にどんどん機嫌が悪くなっていく。
この人も本格的に竦み上がる俺にはいい加減うんざりしてきたようだ。ふいっと顔の向きを逸らし、きつい視線も俺から外れた。
「あの……」
「後のことは平治に言っておく。お前は大人しくあいつの言うこと聞いて寝てろ。話はそれからだ」
「比内さ…」
「今日中に治せ」
そんな無茶な。
比内さんはそれだけを言い置き背を向けて出て行った。俺は布団を握りしめたまま呆然とその後ろ姿を見送り、バタンと閉じられたドアを目にしてようやく肩の力が抜ける。
話って、なんだろう。昨日のことを全て洗いざらい、説明でもさせられるのか。
それは嫌だな。惨めすぎる。これはあまり人に話したいものじゃない。
溜め息交じりに天井を見上げた。診療所と言われていたここは、通常なら入院患者の受け入れはしていないのだろう。
室内には薬品や医療器具の入った棚が並び、その反対側の壁際には洗い場が設置されている。俺が寝ているこのベッドと、部屋の中にあるベッドはもう一台だけだった。
天井にはレーンが張られてカーテンでの仕切りはあるが、入院患者が入る部屋でない事は一目で分かる。点滴やら注射やら、それらの医療処置を行うために設けられた部屋だ。
迷惑をかけている。なんの義理もない子供を、こうして助けてくれている。そう言えば俺は、まだ誰にも名前を明かしてさえいない。
なんて礼儀知らずなガキだろう。ふっと浮かぶのは比内さんの凍てつくようなあの眼差しだ。点滴のおかげか熱も大分下がったし、このまま甘えている訳にはいかない。
目元を腕で覆い隠した。これからの事を考えると溜め息しか出てこな。やらなければならない事は山ほどある。けれど何から手を付ければいいのか。がんじがらめになっている思考に眉間が徐々に寄っていった。
「だるい……」
帰らなきゃ。帰って荷物をまとめないと。その前に部屋を探さないと。あの家にはもういられない。未成年に部屋を貸してくれる所なんて、奇跡的に見つかったとしても悪徳業者くらいかな。
勝手に出て行く深い溜め息に気分はどんどん落ちていく。溜め息を溜め息で打ち消していると、コンコンコンとノックされた後に再び部屋のドアが開いた。
入ってきた朝比奈先生はこっちに向かって歩み寄ってくる。
「大丈夫かい。すまないね、あいつは昔から口が悪いんだ。誰にでもあの態度だからそう気にする事はないよ」
「ああ……いえ……」
「朝食を持って来るよ。少しでも食べないと治るものも治らないからね」
そう言って踵を返した先生を慌てて呼び止めた。軋むような上体を起こし、振り返った先生の目は見ずに俯き加減で口を開く。
「……あの俺、帰ります。ご迷惑をおかけしてすみませんでした。本当にもう大丈夫なので……色々ありがとうございました」
頭を下げ、ベッドから降りようと布団の下で体を動かした。しかしその前に先生の手が両肩に置かれている。
「まあちょっと待ちなさい。何があったか知らないが一人で抱え込むのは良くないな。あれでも冬弥は腕のいい弁護士だ。あの通り性格はキツくて口も悪いけど、もしも君が助けを求めるなら絶対に見放す事はしないよ。俺達にもできる事があるなら協力する」
「…………」
穏やかな声に諭され、情けない形に眉根が寄っていく。優しさのこもった目を見続けているのはむしろつらいい。黙ったまま俯いた。
そんな俺の頭をポンと、大きな手のひらを乗せたこの人。
「出て行くのはそれからでもいいんじゃないかな」
「…………」
「とにかく今は休みなさい」
「でも俺……」
手を放した先生に向かって口を開いた。途中まで言いかけてすぐにやめるも、先生は静かに俺が喋るのを待っていてくれる
「……俺……金、持ってないんで……」
「ん?」
「……弁護士なんて……その……費用とか払えないですし……」
情けなさやら恥ずかしさやらでどんどん小さくなっていく声。すぐに返事がなかったためにチラッと先生を窺うと、呆気に取られた様子で俺の顔を見下ろしていた。
そして不意に、はっと気づいた。ここがどこで、俺は誰の世話になっていたか。
「あッ、あの、ちゃんと払うんでっ……今はちょっと手持ちないんですけどここで先生から受けた治療の分くらいはなんとか……っ」
「よしよし分かった大丈夫だから一度少し落ち着いてみようか。キミは一度にいろんなことを心配し過ぎだ」
食い逃げならぬ入院逃げなんて思われたら堪らない。一人で焦って弁解していたら宥めるように肩を叩かれた。
一日が経過して、今さらながらに自覚する。着の身着のままあいつらから逃げ出したせいで、今の俺は無一文どころか何一つとして所持品がなかった。
財布はないから金がない。身分証になるものもない。最近はあまり行けていない高校の生徒手帳だって持っていない。この人達からしてみれば俺は身元不明の文無しだ。
ここまで怪しい奴も珍しい。自分の状態に頭を抱えて嘆きたくなった。
ぐるぐると考えを巡らせる俺を朝比奈先生は見つめている。不審がるでもなくにこやかに、もう一度俺の肩にポンと手を置いた。
「何も心配する事はないよ。とりあえずお金の話は一旦忘れよう」
「でも……」
「キミが今しなくちゃいけないのは風邪を治す事だ。ほら横になって」
もう一方の肩にも手を置かれ、押されるままシーツに肘をついた。先生の顔を見上げて窺う。穏やかに微笑まれれば反論の余地もなく、うっと詰まってその手に従い後ろへと身を倒すことになった。
首元まで布団を掛けてくれたその手が頭をポンポンと撫でてくる。昨日もそうだったが、こうして頭を撫でられるなんてチビッ子時代以来のことだ。慣れないせいで恥ずかしい。
朝食を用意してくる。もう一度そう言い置いて朝比奈先生は部屋を出て行った。
この診療所の二階は先生の自宅になっているそうだ。病室のベッドで眠りづらければ上で寝るかいと聞かれたけれどさすがにそれは断った。人のプライベートまでは侵せない。
昨日の晩からここと二階とを先生は行ったり来たりしている。俺のためにそうしてくれた。頭なんて上がるはずがない。
再び見上げた天井はやはり白い。閉じたまぶたの上を右腕で覆う。霞のかかった頭は今にも考える事を放棄しそうで、ゆっくり深く息をついて自分の今を整理した。
これから俺はどうするのが正しいのだろう。ここの人達は皆いい人だ。比内さんは底冷えしそうなくらい怖いけど、それでも俺を助けてくれた。
あの三人の大人を信じていない訳でも信じられない訳でもない。だけど俺はあともう少しだけ、たった一人の家族を待ちたい。信じたかった。信じて待ちたい。あともう少しだけ待てっていれば、きっと戻って来てくれる。
「……バカだな……」
なんて愚かなガキだろう。滑稽だと分かっている。敢えてそれを声に出せば無様な自分が浮き彫りになった。
目の奥が熱いのは気のせいだ。そう言い聞かせ、ベッドに沈んだ。
「おいクソガキ」
「ッ……!」
ビクッと肩が揺れた。昨日からこんなのばっかりだ。
バタンと荒っぽく開けられたドアの音。それと同時に耳にしたのは、朝比奈先生の穏やかな声とは正反対の冷たい声色。比内さんがなぜか戻ってきた。
慌ててがばっと起き上がったせいでズキリと腹に痛みが走る。うっと思わず小さく呻いて苦痛に顔を歪めると、ツカツカとやって来た比内さんが俺の肩に手を置いた。
「バカか、寝てろ。いきなり起きるな」
「…………」
どうしてこの人がまたしてもここに。ついさっき帰ったはずじゃ。
気遣いの見られない手が俺の上体を強引な動作でベッドへと押し戻してくる。心臓をバクバクさせながらも大人しくそれに従った。布団を握りしめて比内さんの顔を見上げていると、今度は何が気に障ったのか目元をよりきつくさせて短い舌打ちを聞かされる。泣きたい。
「……あの」
「言い忘れたことがあった」
淡々と言葉を落とされ、今度は何を言われるのだろうかと強張っていく俺の顔。だいぶ情けない事になっているのは予想もつく。この目に睨まれると途端に行き場はなくなった。
綺麗だから。余計に怖い。どこかの腕のいい職人が、寸分の狂いもなく作り上げた人形みたいだ。
表情もなく睨み落とされ、恐怖心に苛まれながらそんな感想さえ持った。こんなに整っているのに、いや整っているからこそ。
すっごく怖い。やめてくれ。眉間寄せないで。なんでそんなガン見してくんの。
そうやって怯む俺に、この人はやはり淡々と言ってくる。
「なあ。お前を助けたのは俺だな」
「え……あ……はい」
瞬きを繰り返して比内さんを見上げた。伸びてきたその手がクイッと、俺の顎を捕えている。
なぜ掴まれた。力も強いし。俺はアゴを砕かれるのか。
「最初にお前を拾ってやったのは俺だ。あのゲス野郎どもからお前を助けてやったのも俺だ。分かるな?」
「あ、は、はい」
「俺は暇な訳じゃない。本来ならなんの義理もねえガキに割いてやる時間は一秒もねえが、現に俺はお前のために仕事の手を止めてここに来てる。わざわざここまでしてやってんだ。俺にだってお前にモノ言う権利くらいあると思わねえか」
「え、と……」
ヤクザより怖い。この人びっくりするほど怖い。そして何が言いたいのかも俺にはさっぱり分からない。
シーツに張り付きながら硬直する俺。相変わらず顎に手を掛けたまま、無理やりに目を合わせて俺を見下ろしてくるこの人。
「いいかクソガキ良く聞けよ。勝手な真似はするんじゃねえぞ。お前はおとなしくここにいろ。もしも俺の許可なく黙って帰りやがったら見つけ出して蹴り倒すからな。死んだ方がマシだと思う目に遭いたくなけりゃ俺の言う通りにすることだ」
「…………」
「返事」
「ッは、はい!」
凄くいい声が出た。比内さんはフンと鼻を鳴らし、俺の顎にかけていた手をそこで雑にパッと放した。
先を読まれたかのような的確すぎるこの忠告。顔面からは血の気が引いた。背筋はもちろん凍り付いている。
俺はそこまで分かり易いのか。それともこの人が異常に鋭いのか。どちらだろうと早まって帰ってしまわないで良かった。ここにはいない朝比奈先生に感謝の気持ちが湧き起こる。
「それだけだ。腹出して寝るなよ」
本当に用件はそれ以外になかったようだ。比内さんはそう言ってさっさと俺に背を向けた。
皺ひとつないスーツをキッチリ着込み、その真っ直ぐに伸びた背筋からは威圧感をひしひしと感じる。顔は向こうを向いているのにいまだに睨まれているような錯覚を起こした。
ツカツカと足早に歩き、ドアに手を掛けるのを眺める。しかし比内さんが出て行く間際、思い出して呼び止めた。
「ぁ、比内さんっ」
半開きのドアに手を付きながら、比内さんがチラっと振り返った。横目で視線だけを寄越される。怖気づきそうなのは堪えた。
「……なんだ」
「あの俺、藤波って言いますっ。藤波陽向です!」
今度こそ、せめて名前くらい名乗っておかないと。その思いが先行したせいでほとんど叫びながら上体を起こした。
腹を押さえつつ比内さんを見つめる。けれど返ってくる表情にはまるで感情が込められていない。尻込みしそうになっていると、無表情だった比内さんがフイっと俺から目を逸らした。
「それなりに元気なのは分かったから寝とけ。明日悪化させてたら窓から放るぞ」
「え……」
冷静に投げられたのは脅し。呆然としている俺を残して比内さんはスタスタ出て行った。小学生みたいな自己紹介が今更ながら恥ずかしい。
ドアの外では人の話し声が聞こえた。すぐ後に入ってきたのは、困ったように笑っている朝比奈先生だ。
「全く本当に素直じゃないなあいつは。嫌な思いばかりさせてすまないね、ヒナタ君」
「あ……」
どこから聞いていたのか。名前を呼ばれて先生を見上げた。比内さんも背が高いけど、この人の場合はさらに視線が上に行く。
「いえ。ずっと名乗りもしないですみませんでした。比内さんにも呆れられちゃって……」
「そうかな。あれは満更でもないって顔だったよ。わざわざあんなことを言いに来るくらいだからキミのことは気にかけているのだろう」
にこにこと微笑む先生に曖昧に頷いた。
「冬弥が怖い?」
「え、あ……いや、でも……」
睨まれると身がすくむ。言葉も綺麗なものではないが、遠まわしに助けてやると言われている事には気づいた。
「嘘は、なさそうな人かなって……」
「ほう。なるほど」
「……すみません……なんか」
「いいや。キミはいい子だね」
いい子と言われて嬉しい年じゃない。気恥しさから俯いた。ポンポンと頭を撫でられてしまって余計に居た堪れなくなってくる。
「……あの……」
「うん? ああ、すまない。つい」
目で訴えると通じたようで先生は俺の頭から手を放した。
ついってどういう事だろう。
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竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
寂しいを分け与えた
こじらせた処女
BL
いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。
昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。
バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?
cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき)
ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。
「そうだ、バイトをしよう!」
一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。
教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった!
なんで元カレがここにいるんだよ!
俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。
「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」
「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」
なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ!
もう一度期待したら、また傷つく?
あの時、俺たちが別れた本当の理由は──?
「そろそろ我慢の限界かも」
貢がせて、ハニー!
わこ
BL
隣の部屋のサラリーマンがしょっちゅう貢ぎにやって来る。
隣人のストレートな求愛活動に困惑する男子学生の話。
社会人×大学生の日常系年の差ラブコメ。
※この物語はフィクションです。
※現時点で小説の公開対象範囲は全年齢となっております。しばらくはこのまま指定なしで更新を続ける予定ですが、アルファポリスさんのガイドラインに合わせて今後変更する場合があります。(2020.11.8)
■2025.12.14 285話のタイトルを「おみやげ何にする? Ⅲ」から変更しました。
■2025.11.29 294話のタイトルを「赤い川」から変更しました。
■2024.03.09 2月2日にわざわざサイトの方へ誤変換のお知らせをくださった方、どうもありがとうございました。瀬名さんの名前が僧侶みたいになっていたのに全く気付いていなかったので助かりました!
■2024.03.09 195話/196話のタイトルを変更しました。
■2020.10.25 25話目「帰り道」追加(差し込み)しました。話の流れに変更はありません。
病弱の花
雨水林檎
BL
痩せた身体の病弱な青年遠野空音は資産家の男、藤篠清月に望まれて単身東京に向かうことになる。清月は彼をぜひ跡継ぎにしたいのだと言う。明らかに怪しい話に乗ったのは空音が引き取られた遠縁の家に住んでいたからだった。できそこないとも言えるほど、寝込んでばかりいる空音を彼らは厄介払いしたのだ。そして空音は清月の家で同居生活を始めることになる。そんな空音の願いは一つ、誰よりも痩せていることだった。誰もが眉をひそめるようなそんな願いを、清月は何故か肯定する……。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。