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第1話 晴レ後雨
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クリスマスイブ、大学生の巴菜は命を絶とうとしていた。
世界では未知なる感染症が広まっていた。
その感染症は、人々に不安と孤独をもたらした。
孤独は人のこころを蝕んでいく。
孤独と辛さが重なると人は命を絶とうとする。
巴菜もそのうちの一人だった。
半年前、感染症が広まらないようにと国は外出の自粛を呼びかけた。
会いたい人とも気軽に会えなくなり、大切な人の最後を直接見届けられない世の中になった。
人々は互いに監視し合い、次第に日常の楽しみを見つけられなくなっていく。
こんなことを誰が予想できただろうか。
巴菜はコンビニでアルバイトをしている。
忙しないコンビニの仕事は自分には合わないなと感じつつ、辞めるのも面倒くさかったので、だらだらと続けていた。
ある日、新人が入ってきた。彼は「光希」と名乗り、髪はブルーで背は高く、少し猫背であったがチャラそうな見た目をしている。
この人と上手くやっていけるのか心配になったが、とりあえず無難に挨拶をして仕事に戻った。
彼を観察していると、今日入ったとは思えないような仕事ぶりである。驚き話を聞いてみると、ここに入る前に同じコンビニの他店舗で働いていたらしい。
なんとかピークを乗り越え、今日の仕事も終わりというところで、光希は
「LINE交換しませんか?」
と話しかけてきた。ずっと出会いのなかった巴菜は、そう言われた瞬間胸が高鳴り、不覚にもときめいてしまった。
実際は連絡先を聞かれただけで、まだ彼がどんな人なのかを全く知らない状態だった。しかし、過去まともな恋愛をしてこなかった巴菜にとっては、絶好のチャンスだったのだ。この一言だけで、その先のイメージがどんどん膨れ上がっていった。
「もちろん、良いですよ。」
変な期待をしていることを悟られないように、高まる気持ちを抑えつつ、巴菜は落ち着いてそう答えた。
「じゃあ、お疲れ様です。」
退勤後LINEを交換し、二人はそれぞれ帰宅した。
家に着き、スマホを見てみると、早速光希からメッセージが届いていた。
「これからよろしくお願いします!同い年なのでタメ口でいいですよ!
ちなみに、趣味ってありますか?」
質問付きでメッセージが届いていることに、巴菜はシフト交代のためだけにLINEを交換してきたのではなかったとひとまず安心した。
当たり障りのない会話が続き、仲良くなってきた頃、
「良かったら今度、ご飯に行かない?」
と光希からメッセージがあった。
急展開過ぎない!?と思いつつも、真面目な性格だった巴菜はテスト前だしと思い、
「勉強したいし、テスト終わったら行こう!」
と返事をした。
しかし、光希から届いた返事はこうだった。
「じゃあ、ネカフェで一緒にやろうよ」
ネカフェでデートなんてあるのか?と巴菜は一瞬戸惑ったが、まともに恋愛を経験していない巴菜は最近のデートはそんなものなのかと納得し、結局、3日後にネットカフェで待ち合わせすることになった。
3日後の13:00、待ち合わせ時間から5分遅れで光希が来た。
「遅れてごめん、じゃあ行こうか。」
そう言うと光希は特に会話をすることもなくスタスタとお店に入っていった。この様子に不満を感じつつも巴菜はその後に続いた。
個室の部屋に入り、巴菜はパソコンを取り出し早速課題を始めようとした。
すると、光希が後ろから抱きついてきた。
「光希・・・?どうした・・・?」
ネットカフェでこういう状況になる可能性があることは知っていたが、それは極稀なケースであり、ましてや初デートでは起こり得ないことだと思いこんでいた。巴菜は、突然の出来事に動揺が隠せなかった。
しかし巴菜は「好きならしたくなるのは当たり前」と都合の良い解釈をし、抵抗することはなかった。
「大人の恋愛は体の関係が先に来てしまうこともある。後で光希の想いをちゃんと言葉で聞こう」と思いながら身を任せた。
終わったあと、巴菜は
「私たち、これから付き合う…?」
と恐る恐る聞いた。しかし、光希は
「いや、付き合うとかは今はちょっと・・・ね」
と言った。
「なんで・・・?」
「いや、親にも今は勉強に専念しなさいって言われているし・・・。それに、過去のトラウマがあって付き合うのはちょっと・・・」
「トラウマって?大丈夫?何があったか教えて欲しい」
「過去に遠距離になった彼女が別の男とやったっていう噂を聞いたことがあって、それで誰かと付き合うのが怖くなって・・・」
巴菜は頭が混乱していた。
恋愛でトラウマがあって付き合いたくないのに、普通異性とこういうことする?トラウマって言葉を盾に良いように言ってるだけじゃ?
「じゃあなんで、こういうことをするの?付き合う気が無いなら、こういうことはしないで欲しいな・・・。」
「ごめん、それは俺が悪かった。好きって気持ちに逆らえなかった。」
光希の目からは涙が流れていた。涙を流すほどなら、本気なんだな。巴菜はそう思い、トラウマは少しずつ直していけば良いんだからと、その日は解散することになった。
世界では未知なる感染症が広まっていた。
その感染症は、人々に不安と孤独をもたらした。
孤独は人のこころを蝕んでいく。
孤独と辛さが重なると人は命を絶とうとする。
巴菜もそのうちの一人だった。
半年前、感染症が広まらないようにと国は外出の自粛を呼びかけた。
会いたい人とも気軽に会えなくなり、大切な人の最後を直接見届けられない世の中になった。
人々は互いに監視し合い、次第に日常の楽しみを見つけられなくなっていく。
こんなことを誰が予想できただろうか。
巴菜はコンビニでアルバイトをしている。
忙しないコンビニの仕事は自分には合わないなと感じつつ、辞めるのも面倒くさかったので、だらだらと続けていた。
ある日、新人が入ってきた。彼は「光希」と名乗り、髪はブルーで背は高く、少し猫背であったがチャラそうな見た目をしている。
この人と上手くやっていけるのか心配になったが、とりあえず無難に挨拶をして仕事に戻った。
彼を観察していると、今日入ったとは思えないような仕事ぶりである。驚き話を聞いてみると、ここに入る前に同じコンビニの他店舗で働いていたらしい。
なんとかピークを乗り越え、今日の仕事も終わりというところで、光希は
「LINE交換しませんか?」
と話しかけてきた。ずっと出会いのなかった巴菜は、そう言われた瞬間胸が高鳴り、不覚にもときめいてしまった。
実際は連絡先を聞かれただけで、まだ彼がどんな人なのかを全く知らない状態だった。しかし、過去まともな恋愛をしてこなかった巴菜にとっては、絶好のチャンスだったのだ。この一言だけで、その先のイメージがどんどん膨れ上がっていった。
「もちろん、良いですよ。」
変な期待をしていることを悟られないように、高まる気持ちを抑えつつ、巴菜は落ち着いてそう答えた。
「じゃあ、お疲れ様です。」
退勤後LINEを交換し、二人はそれぞれ帰宅した。
家に着き、スマホを見てみると、早速光希からメッセージが届いていた。
「これからよろしくお願いします!同い年なのでタメ口でいいですよ!
ちなみに、趣味ってありますか?」
質問付きでメッセージが届いていることに、巴菜はシフト交代のためだけにLINEを交換してきたのではなかったとひとまず安心した。
当たり障りのない会話が続き、仲良くなってきた頃、
「良かったら今度、ご飯に行かない?」
と光希からメッセージがあった。
急展開過ぎない!?と思いつつも、真面目な性格だった巴菜はテスト前だしと思い、
「勉強したいし、テスト終わったら行こう!」
と返事をした。
しかし、光希から届いた返事はこうだった。
「じゃあ、ネカフェで一緒にやろうよ」
ネカフェでデートなんてあるのか?と巴菜は一瞬戸惑ったが、まともに恋愛を経験していない巴菜は最近のデートはそんなものなのかと納得し、結局、3日後にネットカフェで待ち合わせすることになった。
3日後の13:00、待ち合わせ時間から5分遅れで光希が来た。
「遅れてごめん、じゃあ行こうか。」
そう言うと光希は特に会話をすることもなくスタスタとお店に入っていった。この様子に不満を感じつつも巴菜はその後に続いた。
個室の部屋に入り、巴菜はパソコンを取り出し早速課題を始めようとした。
すると、光希が後ろから抱きついてきた。
「光希・・・?どうした・・・?」
ネットカフェでこういう状況になる可能性があることは知っていたが、それは極稀なケースであり、ましてや初デートでは起こり得ないことだと思いこんでいた。巴菜は、突然の出来事に動揺が隠せなかった。
しかし巴菜は「好きならしたくなるのは当たり前」と都合の良い解釈をし、抵抗することはなかった。
「大人の恋愛は体の関係が先に来てしまうこともある。後で光希の想いをちゃんと言葉で聞こう」と思いながら身を任せた。
終わったあと、巴菜は
「私たち、これから付き合う…?」
と恐る恐る聞いた。しかし、光希は
「いや、付き合うとかは今はちょっと・・・ね」
と言った。
「なんで・・・?」
「いや、親にも今は勉強に専念しなさいって言われているし・・・。それに、過去のトラウマがあって付き合うのはちょっと・・・」
「トラウマって?大丈夫?何があったか教えて欲しい」
「過去に遠距離になった彼女が別の男とやったっていう噂を聞いたことがあって、それで誰かと付き合うのが怖くなって・・・」
巴菜は頭が混乱していた。
恋愛でトラウマがあって付き合いたくないのに、普通異性とこういうことする?トラウマって言葉を盾に良いように言ってるだけじゃ?
「じゃあなんで、こういうことをするの?付き合う気が無いなら、こういうことはしないで欲しいな・・・。」
「ごめん、それは俺が悪かった。好きって気持ちに逆らえなかった。」
光希の目からは涙が流れていた。涙を流すほどなら、本気なんだな。巴菜はそう思い、トラウマは少しずつ直していけば良いんだからと、その日は解散することになった。
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