人生ゲーム

アリス

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レベル1

脱出ゲーム 3

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「嘘。何で行き止まり」

チューベローズの花がある場所を通り花壇の所までたどり着いたのに、矢印の向こう側は壁で行き止まりだった。

藍の推理は正しいはずなのにどうして出口がないんだ。

いや、そもそも思い出すべきだった。

入って真っ直ぐに進むことはできなかったことを。

変な建物だと思ったのに、大量の花と紙に書かれてある矢印に沿って会場に向かうことで頭が埋め尽くされ忘れていた。

花壇にはチューベローズの花で出口と記されているのに、これでは出られない。

藍の推理が間違っているのなら自分達の負けは確定。

蒼太一人が絶望に打ちひしがれて諦めようとしたそのとき、藤爾が「こっからどうすんだ」と声をかける。

その言葉に蒼太は今日何度目かわからない程「え?」と間抜けな声をだす。

どうするもどうにもできない。

負けは確定しているのに何を言ってんだと言う顔で藤爾を見る。

「勿論脱出するよ」

「え?どうやってですか。もしかして壁を壊すんですか?」

自分にはできないが、藤爾ならできそうだと思いそう言った。

「まさか。いくら藤爾が強いっていっても壁を壊すなんて無理だよ」

笑いながら否定するも最後まで言い終わらずに大きな音に遮られる。

ドンッ!!

何の音だと二人が音のした方に視線を向けると壁が破壊されていた。

破壊された壁の穴から隣に部屋があるのがわかる。

「……」

藤爾は無言で二人を睨みつけ、もう一度同じことを言ってみろと目で訴える。

「勿論、藤爾なら壁を壊すことなんて朝飯前だけどそれじゃあ、正しいルートで出たことにならないから失格になるよ」

ハハッと乾いた笑い声をあげ急いで訂正する。

「そ、そうですよね。藤爾さん程強い人だったら余裕で壁なんていくらでも破壊できそうですよね」 

蒼太も藤爾の機嫌を取ろうと必死に持ち上げる。

「……」

藤爾は二人に何も言わなかったが、その代わり凶悪な笑みをむける。

ゾクッ。

二人はその笑みを見た瞬間体中に悪寒が走り二度と藤爾を怒らせないと誓う。

「……あの、それでどうやって脱出するんですか?」

重い空気に耐え切れず震える声で藍に話しかける。

「ああ、それはね。ここからだよ」

矢印の指す方向は壁。

藍はその壁を叩く。

「え?でも、そこは壁で通れないんじゃ……」

さっきもしたやり取りをもう一度する。

「よーく見て。この絵には何が書かれてある」

藍に言われ蒼太は目を凝らしその絵を見る。

「……あ、もしかしてこの花ですか」

絵に描かれてあるのが白い花だとはわかったが、同じ花なのかと少し疑ってしまう。

「うん。この絵を取り外すと……やっぱり」

絵の下にはボタンがあった。

藍は躊躇うことなくそのボタンを押す。

すると、ギイイイッー壁が動く音がする。

「嘘。道ができた」

矢印の指す場所に道ができた。

隠し通路があった。

蒼太は藍の冷静さに感心した。

普通隠し通路があるなんて思うわけがない。

蒼太一人だったら見つけられず痺れを切らして入り口から出てしまっていた。

「さあ、行こうか」

藍は躊躇うことなく隠し通路に足を踏み入れどんどん先へと進んでいく。

藤爾もその後に続いていく。

蒼太も二人の後を追うように小走りで追いかける。

隠し通路は一本道で複雑な道ではなく、ほんの数分歩いただけで外へ出た。

そこには東雲が待機しており三人の顔を見ると頭を下げ「おめでとうございます。クリアでございます」と言う。

「はぁ、助かった」

東雲のクリア宣言で力が抜けその場に座り込む。

借金とペナルティーが回避され安堵する。

心の中で何度も藍に頭を下げお礼を言う。

本当は直接言いたかったが、そんな気力は残っていない。

「それでは、お三方を今から別のゲーム会場にご案内しますのであちらの車にお乗りください」

「え!?これで終わりじゃないんですか」

もう家に帰れると思っていたのに、またゲームをしろと言われ無理だと泣きそうになる。

「申し訳ありませんが、今日は後もう一つゲームをしていただきます」

悪いと思っていないのは態度で丸わかりだが、東雲はバレても問題ないといった感じだ。

「そんな……」

せっかく助かったと思ったのに……。

蒼太は今度はどんなゲームをしなければいけないのか、と考えただけで頭が痛くなり逃げ出しなくなる。

「まぁまぁ、白ちゃん落ち着いて。俺がどんなゲームもクリアするから大丈夫。心配しないで、ね」

手を伸ばし蒼太を立ち上がらせようとする。

「はい。よろしくお願いします」

藍の手を掴み立ち上がる。

今この瞬間、蒼太は人物の運命を藍に託した。

「準備はできましたら行きましょうか」

蒼太の覚悟が決まると車に全員を乗せ次の会場へと連れていく。



「次の会場はこちらになります」

三人が連れてこられたのは廃神社。

「なんか、出てきそうですね」

藍の後ろに隠れる。

建物から出たときはまだ空はオレンジ色だったが、今は暗くなっている。

そのせいか雰囲気があり幽霊や邪神がいると言われたら信じてしまうほど異様な空間だった。

「出ますよ、ここ」

蒼太の呟きに東雲がニッコリと胡散臭い笑みを貼り付け答える。

「ハハッ、またまた……冗談でよね」

蒼太は笑って誤魔化そうとするも東雲の顔見て本当なのだと信じてしまい、急いでこの場から逃げ出そうとする。

「あああああーーーー」

叫びながら逃げ出した蒼太は振り向いてすぐ何かにぶつかり、その反動で後ろに倒れてしまう。

「大丈夫?……って鼻血出てるよ」

大声を出したと思ったらいつのまにか自分より前にいて倒れている。

何が起きたんだと驚くも、とりあえず蒼太を起こそうと近づくと暗くてよく見えなかったが鼻から何か出てると思いスマホの光で照らすと血が流れているのに気づく。

「え?本当ですか」

「ちょっと待って……これ使って」

服で拭おうとする蒼太をとめ、ハンカチを使うよう手渡す。

「ありがとうござい……」

ハンカチを受け取ろうとすると、右手に物凄い痛みが走り泣きそうになる。

「どうしたの?」

光を手元に当てると右手が腫れていた。

「今すぐ病院に行った方がいい」

「それは出来ません」

藍が蒼太を病院に連れて行こうとこの場から立ち去ろうとすると東雲が止める。

「もうお三方はゲーム会場に足を踏み入れました。ゲームを終えるまでは立ち去ることはできません。それでも立ち去るというのなら負けとさせていただきます」

東雲の部下達が廃神社から出さないよう道を塞ぐ。

蒼太は部下達の姿を見て自分がぶつかったのは彼らの誰かだと理解した。

「僕は大丈夫です。やりましょう」

「……わかった。すぐ終わらそう」
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