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悪役令嬢に憑依した!?
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ああ、なんでこんなことに……
いや、原因はわかってる。
でも、いくらなんでもここからスタートするのはどうかと思う。
もう少しやりやすいところからスタートさせてくれてもよかったのではないか?
私は目の前にいる小説のヒロインを見つめながら、自分自身に憑依させるためにこの世界に連れてきた悪女に心の中で文句を言う。
私が何故小説の中の人物に憑依する羽目になったかというと、その原因は数時間前に遡る。
仕事を終え、家でビールを飲みながらテレビを見ていると、いま女性達の間で大人気乙女ゲームのCMが流れた。
そのCMは何回か見たことがあった。
そのときは興味もなく「へぇー、こういうのが流行ってるのか」くらいにしか思っていなかった。
だが何故か今日は気になり、気づけばそのゲームをダウンロードしていた。
「運命の相手はあなた!ドキドキ、ラブタイム……これがタイトル。めちゃくちゃダサいわね」
イラストはとても綺麗で人気になるのも納得できるが、タイトルは子供っぽく引いてしまう。
タイトルが違えば更に人気になっていたと思う。
「まぁ、とりあえずやってみよう」
タイトルのせいでプレイするのをやめようかと思ったが、ビールを一気飲みしてお酒の力を借りてゲームを始める。
ゲームの攻略キャラは5人いて、途中までは同じ内容だが選んだ相手によって話が変わってくる。
だが、全ての攻略キャラの好感度を100にすると全員と付き合えるという隠しエンディングもあった。
一人のイケメンに好かれるだけでも嬉しいことなのに、全員と付き合えるなんて現実では絶対に有り得ない。
だからこそ、それが叶うこのゲームが女性達の間で大人気になったのだとゲームをして気づいた。
「内容は面白いけど、私は好きになれないわね」
全ての攻略キャラを4時間かけてクリアした。
実際にやってみるとなぜ人気なのかはわかったが、ヒロインだけが簡単に愛されるという設定がムカつきどうしても好きになれなかった。
そういう設定だから仕方ないことだとわかっていても、悪役に設定された子が不憫で可哀想だった。
いや、それだけじゃない。
悪役の子が自分と似ていると思ったからだ。
周りに勝手に「悪女」だと言われ、嫌われる姿が重なった。
ただ一つ違うとすれば、私は悪女として生きることを決めてそういう人生を選んだこと。
だけど、本当はそんな人生など送りたくなかった。
周りの人達のせいでそういう人生を送るしかなかったから仕方なくそうしただけ。
イラストを見る限りヒロインより悪役の子は美人。
それに、何より攻略キャラ達よりも強い魔力を持っている。
もしその力を正しく使っていれば、歴代最強の大魔法使いにもなれた。
まぁ、設定のせいでラスボスとしてヒロインと攻略キャラ達の手によって殺されるという運命になるのだが。
「もっと上手く生きればよかったのに。そうすれば、あなたはヒロインよりも……いや、誰よりも好かれる人になれたのに……」
悪女の設定を思い出し、私は気づけばそう呟いていた。
悪女はヒロインや攻略キャラ達以上のチート設定があったが、育った環境のせいで性格が歪み、それを活かすことが出来ずに死んだ。
そう思うと残念で仕方ない。
ゲームのキャラに同情するなんて馬鹿げている。
わかっているのにそう思わずにはいられなかった。
「もし、私がその世界にいたら貴方を守れたのに……」
その言葉を最後に私は意識を手放した。
次に目を開けるとそこは真っ暗な世界だった。
すぐにこれは夢だとわかった。
目を覚まそうと頬をつねったり、叩いたりするが無駄だった。
諦めて夢から覚めるのをまとうと床に座って待つ。
すると、少し遠いところから光が見えた。
急に光るので何なんだと不審に思いながら近づいた。
夢だから傷つくことも死ぬこともないので大丈夫だろうと思い。
「……やっぱり夢ね」
光に近づき、そこにいる人物を見て確信する。
「レイシー・カメリア」
さっきまでゲームしていたキャラの悪女がいた。
寝る直前までゲームをしていたからレイシーが夢に現れたのだと思った。
暫くレイシーを見ていると彼女は私に気づき話しかけてきた。
「あなた、さっき言ったことは本当?」
今にも泣き出しそうな顔でレイシーは私に尋ねる。
'さっき言ったこと?何も言ってないけど……?'
私はレイシーの言っていることがわからず返事に困る。
「……えっと、私は今ここにきたばかりなのよ……誰かと勘違いしていない?」
「それはないわ!」
レイシーはきっぱりと言い放つ。
「……どうしてそう言いきれるの?」
「だってここは私が作った魔法の世界なの。ここは私を心配してくれる人以外来れないよになっているの。だから、さっきの言葉はあなたが言ったはずよ」
そうでしょう、と縋るような目でレイシーは私を見る。
'そう言われても記憶にないんだけど……'
どうしたものかと困り果てていると、寝る前に言ったことのことを思い出し、そのことを言っているのではないかと気づく。
もしそうなら、レイシーの最初の質問に答えは私ということになる。
「ねぇ、質問に答える前に一つ聞かせて欲しい」
「なに?」
「あなたが聞いた言葉は何だったの?」
私の問いにレイシーはゆっくりと口を開きこう言った。
「あなたはヒロインよりも誰よりも好かれることができたって、私を守ってくれるって……そう言ってたわ」
その言葉を聞いて「確かにそれは私が言ったわね」と認める。
例え夢でも本人に面と向かって聞かれると恥ずかしくて何と言えばいいかわからず困っていると、何も言わない私に焦ったのかレイシーは「嘘ではないわよね!?本当にそう思っているのよね!?」と叫ぶ。
「勿論よ。嘘じゃないわ。本当にそう思ってる」
「そう。その言葉が聞きたかったの」
私の言葉を聞くとレイシーは安心したような、今にも泣き出しそうな何とも言えない顔で笑う。
「なら、もしあなたが私だったら……レイシーだったら彼らに勝てる?私のような結末にはならない自信はある?」
レイシーが何でこんなことを尋ねるのかと疑問に思うも、すぐに夢だから大した意味はないだろうと決めつけ私は考えるのをやめる。
「あるわ。それとこれまでしてきたことを償わせ、生まれてきたことを後悔させてやるくらいできるわ」
本当に自分がレイシーだったらそうしている。
そう思ったからそう言った。
夢だとしても少しでもレイシーの心が軽くなればいいと思って。
「もしそれが本当にできるのなら、私の代わりにあいつらに復讐して。私は生まれてきてもよかったんだって証明して……お願い」
レイシーは目から大量の涙を流しながら目の前の名前も知らない女性に頼む。
私はそんなレイシーを優しく抱きしめ、彼女の苦しみを少しでも和らげようとこう言った。
「わかったわ。あなたの代わりに私が復讐してあげる。大丈夫。あなたの無念は私が必ず晴らすわ」
実際にそんなことできるわけないとわかっている。
わかってはいるが、レイシーの気持ちが痛いほどわかり気づけばそう言っていた。
無責任だと、そう言われても仕方ない。
それでも彼女のために、いや自分のためにそう言わずにはいられなかった。
「ありがとう。あとはあなたに任せるわ。もし復讐できなければ貴方は死ぬことになる。忘れないでね。今から貴方は……」
私は彼女の言葉を最後まで聞くことができずに、意識が遠くなっていくのを感じた。
目が覚めるのだと何となく思った。
目覚める前にもう一度レイシーの方に視線を向けると、彼女はどこか吹っ切れたように笑い、光に包まれながら消えていった。
彼女が消えたのを確認すると、今度は自分の周りが輝き出す。
眩しくて目を瞑る。
暫くそのまま目を瞑っていたが、急に光が消え目を開けると、そこには寝る前にしていたゲームのキャラ、ヒロインのロベリア・ミューアがいた。
いや、原因はわかってる。
でも、いくらなんでもここからスタートするのはどうかと思う。
もう少しやりやすいところからスタートさせてくれてもよかったのではないか?
私は目の前にいる小説のヒロインを見つめながら、自分自身に憑依させるためにこの世界に連れてきた悪女に心の中で文句を言う。
私が何故小説の中の人物に憑依する羽目になったかというと、その原因は数時間前に遡る。
仕事を終え、家でビールを飲みながらテレビを見ていると、いま女性達の間で大人気乙女ゲームのCMが流れた。
そのCMは何回か見たことがあった。
そのときは興味もなく「へぇー、こういうのが流行ってるのか」くらいにしか思っていなかった。
だが何故か今日は気になり、気づけばそのゲームをダウンロードしていた。
「運命の相手はあなた!ドキドキ、ラブタイム……これがタイトル。めちゃくちゃダサいわね」
イラストはとても綺麗で人気になるのも納得できるが、タイトルは子供っぽく引いてしまう。
タイトルが違えば更に人気になっていたと思う。
「まぁ、とりあえずやってみよう」
タイトルのせいでプレイするのをやめようかと思ったが、ビールを一気飲みしてお酒の力を借りてゲームを始める。
ゲームの攻略キャラは5人いて、途中までは同じ内容だが選んだ相手によって話が変わってくる。
だが、全ての攻略キャラの好感度を100にすると全員と付き合えるという隠しエンディングもあった。
一人のイケメンに好かれるだけでも嬉しいことなのに、全員と付き合えるなんて現実では絶対に有り得ない。
だからこそ、それが叶うこのゲームが女性達の間で大人気になったのだとゲームをして気づいた。
「内容は面白いけど、私は好きになれないわね」
全ての攻略キャラを4時間かけてクリアした。
実際にやってみるとなぜ人気なのかはわかったが、ヒロインだけが簡単に愛されるという設定がムカつきどうしても好きになれなかった。
そういう設定だから仕方ないことだとわかっていても、悪役に設定された子が不憫で可哀想だった。
いや、それだけじゃない。
悪役の子が自分と似ていると思ったからだ。
周りに勝手に「悪女」だと言われ、嫌われる姿が重なった。
ただ一つ違うとすれば、私は悪女として生きることを決めてそういう人生を選んだこと。
だけど、本当はそんな人生など送りたくなかった。
周りの人達のせいでそういう人生を送るしかなかったから仕方なくそうしただけ。
イラストを見る限りヒロインより悪役の子は美人。
それに、何より攻略キャラ達よりも強い魔力を持っている。
もしその力を正しく使っていれば、歴代最強の大魔法使いにもなれた。
まぁ、設定のせいでラスボスとしてヒロインと攻略キャラ達の手によって殺されるという運命になるのだが。
「もっと上手く生きればよかったのに。そうすれば、あなたはヒロインよりも……いや、誰よりも好かれる人になれたのに……」
悪女の設定を思い出し、私は気づけばそう呟いていた。
悪女はヒロインや攻略キャラ達以上のチート設定があったが、育った環境のせいで性格が歪み、それを活かすことが出来ずに死んだ。
そう思うと残念で仕方ない。
ゲームのキャラに同情するなんて馬鹿げている。
わかっているのにそう思わずにはいられなかった。
「もし、私がその世界にいたら貴方を守れたのに……」
その言葉を最後に私は意識を手放した。
次に目を開けるとそこは真っ暗な世界だった。
すぐにこれは夢だとわかった。
目を覚まそうと頬をつねったり、叩いたりするが無駄だった。
諦めて夢から覚めるのをまとうと床に座って待つ。
すると、少し遠いところから光が見えた。
急に光るので何なんだと不審に思いながら近づいた。
夢だから傷つくことも死ぬこともないので大丈夫だろうと思い。
「……やっぱり夢ね」
光に近づき、そこにいる人物を見て確信する。
「レイシー・カメリア」
さっきまでゲームしていたキャラの悪女がいた。
寝る直前までゲームをしていたからレイシーが夢に現れたのだと思った。
暫くレイシーを見ていると彼女は私に気づき話しかけてきた。
「あなた、さっき言ったことは本当?」
今にも泣き出しそうな顔でレイシーは私に尋ねる。
'さっき言ったこと?何も言ってないけど……?'
私はレイシーの言っていることがわからず返事に困る。
「……えっと、私は今ここにきたばかりなのよ……誰かと勘違いしていない?」
「それはないわ!」
レイシーはきっぱりと言い放つ。
「……どうしてそう言いきれるの?」
「だってここは私が作った魔法の世界なの。ここは私を心配してくれる人以外来れないよになっているの。だから、さっきの言葉はあなたが言ったはずよ」
そうでしょう、と縋るような目でレイシーは私を見る。
'そう言われても記憶にないんだけど……'
どうしたものかと困り果てていると、寝る前に言ったことのことを思い出し、そのことを言っているのではないかと気づく。
もしそうなら、レイシーの最初の質問に答えは私ということになる。
「ねぇ、質問に答える前に一つ聞かせて欲しい」
「なに?」
「あなたが聞いた言葉は何だったの?」
私の問いにレイシーはゆっくりと口を開きこう言った。
「あなたはヒロインよりも誰よりも好かれることができたって、私を守ってくれるって……そう言ってたわ」
その言葉を聞いて「確かにそれは私が言ったわね」と認める。
例え夢でも本人に面と向かって聞かれると恥ずかしくて何と言えばいいかわからず困っていると、何も言わない私に焦ったのかレイシーは「嘘ではないわよね!?本当にそう思っているのよね!?」と叫ぶ。
「勿論よ。嘘じゃないわ。本当にそう思ってる」
「そう。その言葉が聞きたかったの」
私の言葉を聞くとレイシーは安心したような、今にも泣き出しそうな何とも言えない顔で笑う。
「なら、もしあなたが私だったら……レイシーだったら彼らに勝てる?私のような結末にはならない自信はある?」
レイシーが何でこんなことを尋ねるのかと疑問に思うも、すぐに夢だから大した意味はないだろうと決めつけ私は考えるのをやめる。
「あるわ。それとこれまでしてきたことを償わせ、生まれてきたことを後悔させてやるくらいできるわ」
本当に自分がレイシーだったらそうしている。
そう思ったからそう言った。
夢だとしても少しでもレイシーの心が軽くなればいいと思って。
「もしそれが本当にできるのなら、私の代わりにあいつらに復讐して。私は生まれてきてもよかったんだって証明して……お願い」
レイシーは目から大量の涙を流しながら目の前の名前も知らない女性に頼む。
私はそんなレイシーを優しく抱きしめ、彼女の苦しみを少しでも和らげようとこう言った。
「わかったわ。あなたの代わりに私が復讐してあげる。大丈夫。あなたの無念は私が必ず晴らすわ」
実際にそんなことできるわけないとわかっている。
わかってはいるが、レイシーの気持ちが痛いほどわかり気づけばそう言っていた。
無責任だと、そう言われても仕方ない。
それでも彼女のために、いや自分のためにそう言わずにはいられなかった。
「ありがとう。あとはあなたに任せるわ。もし復讐できなければ貴方は死ぬことになる。忘れないでね。今から貴方は……」
私は彼女の言葉を最後まで聞くことができずに、意識が遠くなっていくのを感じた。
目が覚めるのだと何となく思った。
目覚める前にもう一度レイシーの方に視線を向けると、彼女はどこか吹っ切れたように笑い、光に包まれながら消えていった。
彼女が消えたのを確認すると、今度は自分の周りが輝き出す。
眩しくて目を瞑る。
暫くそのまま目を瞑っていたが、急に光が消え目を開けると、そこには寝る前にしていたゲームのキャラ、ヒロインのロベリア・ミューアがいた。
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