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浄化
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初代に会ってから心身共に疲れていたが、今日はヘリオトロープと約束した日なので会いに行かないといけない。
回復薬は完璧だし問題はないと思うが、もしかしたらと想像すると行きたくなくなる。
いつもならこんなこと思わないのに……
初代に会ってから調子がおかしくなった。
そのせいか急に不安になる。
「はぁ。行きたくない……でも、行かないわけにも行かないしな……はぁ」
私は何回もため息を吐きながら、魔法を発動させグライナー家へと移動する。
少し前のグライナー家。
「ウェルナー。この格好はおかしくないだろうか。やっぱり、こっちの方がいいだろうか」
ヘリオトロープは服をどれにするかで悩んでいた。
執事のウェルナーに何度も確認するが、やっぱり他の方がいいかもしれないと思い、服を着替えるのを二時間以上も繰り返している。
最初こそウェルナーも付き合っていたが、一時間経った頃には疲れきって、いい加減解放してくれと泣いていた。
「ヘリオ様。もうそろそろカメリア公女様が来られるかと」
だから早く決めてくれ、と遠回しに伝える。
散らかった服も片付けないといけない。
「もうそんな時間か!」
ヘリオトロープは急いで髪を整え、いつきてもいいように準備をする。
その姿を見たウェルナーはようやく解放されたことに喜びを感じて、急いで服を片していく。
ウェルナーが片付け終え、部屋から出ていってすぐ、扉の隙間から光が見えた。
レイシーがきたのだとわかる。
ウェルナーは急いでその場から離れ、父親の部屋へと向かい彼女がきたことを知らせる。
「カメリア嬢。お待ちしておりました」
ヘリオトロープは私を見るやいな満面の笑みを浮かべる。
私は声をかけようと口を開くが、彼の胸のハートを見て固まってしまう。
前回は疲れすぎていて確認できなかったが、最後に確認したときは濃い黄色だった。
なのに、今はオレンジと水色のボーダーに変わっている。
'何で二種類……?'
一体これが何を表しているのか理解できない。
ハートに夢中になっていたため、何も言わない私を公爵は心配になり声をかける。
「カメリア嬢?どうかしましたか?」
その声で私はハッと我に返る。
「いえ、何でもありません。あれからお父上のご容態はどうですか?」
問題ないと思うが、状態次第では浄化作業は今度になる。
「カメリア嬢のお陰で目を覚ました。体力も回復していき、昨日は歩くことができました。あの回復薬を作ってくださり、本当に感謝しています。ありがとうございます」
ヘリオトロープがそう言った瞬間、ハートの色が濃くなる。
二種類共だ。
それを見た私は少なくとも好感度は下がっていないとわかり安堵する。
どんな意味があるかわからないが、それは家に帰ってから考えることにした。
「本当ですか。お役に立てて良かったです。今日から浄化作業に入りたいのですが、体調を確認してから決めたいのですが、今から会えるでしょうか?」
寝ている状態なら勝手に入っても問題ないが、起きているなら話は別だ。
本人の許可がいる。
「はい。もちろんです。ご案内します」
「父上。カメリア嬢をお連れしました。入ってもよろしいですか」
扉を軽く叩き声をかける。
すると中から「ああ」と弱々しい声が返ってくる。
今まで眠っていて、呪いは最終段階まできているとなればそんな声になるのは当然だ。
「入りましょう」
ヘリオトロープが安心させるように笑いかけてくる。
「はい」
私も、大丈夫ですという意味を込めて笑い返す。
ギィィィー。
ゆっくりと扉が開く。
「君がレイシー・カメリア公女か」
父親の顔は優しく、本当にカメリア家を嫌っているのかと疑いたくなる。
「はい」
「そうか。君のお陰でもう一度歩くことができた。感謝する。本当にありがとう」
父親はベットの上で頭を下げる。
「だが、私の治療はもうしなくていい」
「父上!?」
父親の宣言にヘリオトロープは信じられず叫ぶ。
助かる可能性があるのにそれを捨てるなんて。
「ヘリオ。もういいだ。自分の体のことは私が誰よりもわかっている。この状態では絶対に助からん。それに、治療中に万が一私の血が彼女に触れでもしたらどうする。それだけは避けねばならない。それに、私はもう充分生きた。もう一度自分の足で歩けた。それだけ充分だ」
それは間違いなく父親の本心なのだろうが、私には無理矢理自分に言い聞かせているように感じた。
何故がそれが無性に腹が立ち、私は父親に近づきこう言った。
「旦那様。私は治すと公爵様にお約束しました。私はできないことをできるという愚か者ではありません。私を信じられないのは当然です。ですが、私は大陸一の魔法使いです。そのプライドに懸けて必ず治します!」
最後の方は脅しに近い口調になる。
父親は私の勢いに押され「はい」と返事をする。
私はニッコリと笑い、わかればいいですよと言葉にはしなかったが態度にだす。
「では始めましょう。まずは今日から浄化しても大丈夫か確認しますので、少し体に触ってもいいですか?」
「ああ。構わん」
父親の許可を得て、私は体に触れようとしたそのとき、父親が咳き込み血が口から出る。
父親は慌てて手を押さえるが間に合わず、血は私はと向かってくる。
ヘリオトロープも父親も「まずい」と思い私を守ろうとするが一歩遅かった。
「は……?」
ヘリオトロープは今目の前で起きていることが信じられず瞬きを何度もする。
血が空中で止まっている。
「これはカメリア嬢が……?」
この場にいるものでこんな芸当ができるのは彼女しかいない。
そう思って父親は尋ねる。
「はい。魔法で血を止めました。まぁ、もちろん触れても防御魔法をかけているので問題はないですが、念の為他の人が触れたら困るので……」
血がシーツや服につけば、それに触れても死ぬ。
だからそうならないよう空中で止めた。
そして魔法でその血を消した。
「なっ!」
一瞬で血が消えヘリオトロープは驚きを隠せない。
「大丈夫です。ゆっくり深呼吸してください」
私は父親の背中をさすり落ち着かせる。
「……ありがとう。もう大丈夫だ」
暫くすると父親は落ち着きを取り戻す。
ヘリオトロープからタオルを受け取ると口元の周りの血を拭う。
「わかりました。では、確認しますね」
私は父親の体を触っていく。
少しするとまたあの音がしてウィンドウが表示された。
ピコン。
[ノエル・グライナー。体調回復。浄化魔法使っても問題ありません]
私はウィンドウの内容を確認すると、顔がニヤケそうになるのを必死に耐え父親にこう言った。
「体調は回復しましたので、これなら浄化魔法が使えます。今からかけてもよろしいでしょうか」
「よろしく頼む」
「わかりました。では、手に触れてもいいですか」
触れなくても問題ないが、浄化は肌に触れた方が効果が上がり、その分早く呪いから解放される。
「ああ」
父親はそういうと右手をだす。
「失礼します」
私はそう言うと右手に触れて魔法を発動させる。
「……今日はこれで一旦終えます」
私は魔法を解く。
「お体はどうですか?どこか変なところはありますか?」
「体が軽くなった。錘が体に乗っている感じが消えた。一体何をしたんだ?」
父親は子供のように目を輝かせて私に何をしたのか尋ねる。
「血を浄化しました」
呪いで血が毒となり体を蝕んでいた。
それを浄化したから体が軽くなったのだ。
肌の色は黒いままなので見た目では何が変わったのかわからない。
「血を?それってつまり……!」
「はい。もうその血で人が死ぬことはありません」
その言葉を聞いた瞬間、父親はひどく安堵し目頭が熱くなる。
もうこれで誰かが死ぬことはないのだ、と恐怖と罪悪感から解放される。
「っ!ありがとう!本当にありがとう」
父親は私の手をにぎり何度もお礼を言う。
「これから一緒に頑張りましょう。一気に浄化すると体がもたないので一週間に一度になりますが」
ヘリオトロープと違い父親の体は回復薬を使って歩けるようになった。
そんな体に一気に浄化すれば死んでしまう。
焦らずゆっくりやっていくしかない。
「ああ。わかった。君の言う通りにする」
父親は完全に私のことを信じきっている。
それもそうだ。
何百年もの間、誰一人呪いを解くことができなかったのに解ける者が現れたのだ。
父親には私が今、聖女、いや神のように見えていだろう。
私はニコッと父親に笑いかけてから、ヘリオトロープの方を向く。
「では、次は公爵様ですね」
私はスッと立ち上がり彼の前までいく。
「待ってください!今私にまで力を使えば貴方の体に負担がかかります。私の呪いはそこまで進んでいませんので、また後日でも大丈夫です」
ヘリオトロープは私の体が心配でそう言うが、当の本人の魔力量は膨大なので、この程度では全く疲れない。
私は彼の言葉を無視して手に触れ体を浄化していく。
ヘリオトロープの呪いは父親とは違ってそこまでいってなかったので、今ので体の色は本来の色へと戻る。
だが、まだ呪いが解けたわけではない。
大変なのはこっからだ。
まぁ、今日はこれ以上するつもりはないが。
そもそもできない。
この呪いの正体を知り、思った以上に厄介な案件だとわかったからだ。
「どうですか?多分ですが、全身元の色に戻っているはずです」
私は浄化を終えると一応確認してくれと頼む。
「え……?すみません。少し席を外します」
ヘリオトロープはそう言うと部屋から出ていき自身の体を確認する。
「嘘だろ……!信じられない」
ヘリオトロープは黒から白へと変わった自身の肌を見て感動し涙を流す。
肌の感触を確かめようと自身の体に触れる。
今までのザラザラとした気持ち悪く硬い感触ではなく、筋肉の柔らかさとサラッとした肌の感触に変わっていた。
ヘリオトロープは急いで服を着てさっきいた部屋へと戻る。
「カメリア嬢。ありがとう。本当にありがとう」
嬉しすぎて、その勢いのまま抱きしめてしまう。
さすがにこれには私も驚きを隠せず上手く対応できずにテンパってしまう。
そのとき父親が「ヘリオ。カメリア嬢に失礼だ。離れなさい」と助け船を出してくれたので助かった。
彼は父親にそう言われ我に返りバッと勢いよく私から離れる。
「申し訳なありません。嬉しさのあまり無礼を働いてしまいました」
ヘリオトロープは頭を下げて謝罪をする。
「いえ。大丈夫です。それより公爵様が戻ったのでお伝えしたいことがあります」
私は真剣な顔つきで二人をみる。
そんな私の変化に二人すぐに呪いのことだと察し顔つきが変わる。
「グライナー家にかけられた呪いが何かわかりました」
回復薬は完璧だし問題はないと思うが、もしかしたらと想像すると行きたくなくなる。
いつもならこんなこと思わないのに……
初代に会ってから調子がおかしくなった。
そのせいか急に不安になる。
「はぁ。行きたくない……でも、行かないわけにも行かないしな……はぁ」
私は何回もため息を吐きながら、魔法を発動させグライナー家へと移動する。
少し前のグライナー家。
「ウェルナー。この格好はおかしくないだろうか。やっぱり、こっちの方がいいだろうか」
ヘリオトロープは服をどれにするかで悩んでいた。
執事のウェルナーに何度も確認するが、やっぱり他の方がいいかもしれないと思い、服を着替えるのを二時間以上も繰り返している。
最初こそウェルナーも付き合っていたが、一時間経った頃には疲れきって、いい加減解放してくれと泣いていた。
「ヘリオ様。もうそろそろカメリア公女様が来られるかと」
だから早く決めてくれ、と遠回しに伝える。
散らかった服も片付けないといけない。
「もうそんな時間か!」
ヘリオトロープは急いで髪を整え、いつきてもいいように準備をする。
その姿を見たウェルナーはようやく解放されたことに喜びを感じて、急いで服を片していく。
ウェルナーが片付け終え、部屋から出ていってすぐ、扉の隙間から光が見えた。
レイシーがきたのだとわかる。
ウェルナーは急いでその場から離れ、父親の部屋へと向かい彼女がきたことを知らせる。
「カメリア嬢。お待ちしておりました」
ヘリオトロープは私を見るやいな満面の笑みを浮かべる。
私は声をかけようと口を開くが、彼の胸のハートを見て固まってしまう。
前回は疲れすぎていて確認できなかったが、最後に確認したときは濃い黄色だった。
なのに、今はオレンジと水色のボーダーに変わっている。
'何で二種類……?'
一体これが何を表しているのか理解できない。
ハートに夢中になっていたため、何も言わない私を公爵は心配になり声をかける。
「カメリア嬢?どうかしましたか?」
その声で私はハッと我に返る。
「いえ、何でもありません。あれからお父上のご容態はどうですか?」
問題ないと思うが、状態次第では浄化作業は今度になる。
「カメリア嬢のお陰で目を覚ました。体力も回復していき、昨日は歩くことができました。あの回復薬を作ってくださり、本当に感謝しています。ありがとうございます」
ヘリオトロープがそう言った瞬間、ハートの色が濃くなる。
二種類共だ。
それを見た私は少なくとも好感度は下がっていないとわかり安堵する。
どんな意味があるかわからないが、それは家に帰ってから考えることにした。
「本当ですか。お役に立てて良かったです。今日から浄化作業に入りたいのですが、体調を確認してから決めたいのですが、今から会えるでしょうか?」
寝ている状態なら勝手に入っても問題ないが、起きているなら話は別だ。
本人の許可がいる。
「はい。もちろんです。ご案内します」
「父上。カメリア嬢をお連れしました。入ってもよろしいですか」
扉を軽く叩き声をかける。
すると中から「ああ」と弱々しい声が返ってくる。
今まで眠っていて、呪いは最終段階まできているとなればそんな声になるのは当然だ。
「入りましょう」
ヘリオトロープが安心させるように笑いかけてくる。
「はい」
私も、大丈夫ですという意味を込めて笑い返す。
ギィィィー。
ゆっくりと扉が開く。
「君がレイシー・カメリア公女か」
父親の顔は優しく、本当にカメリア家を嫌っているのかと疑いたくなる。
「はい」
「そうか。君のお陰でもう一度歩くことができた。感謝する。本当にありがとう」
父親はベットの上で頭を下げる。
「だが、私の治療はもうしなくていい」
「父上!?」
父親の宣言にヘリオトロープは信じられず叫ぶ。
助かる可能性があるのにそれを捨てるなんて。
「ヘリオ。もういいだ。自分の体のことは私が誰よりもわかっている。この状態では絶対に助からん。それに、治療中に万が一私の血が彼女に触れでもしたらどうする。それだけは避けねばならない。それに、私はもう充分生きた。もう一度自分の足で歩けた。それだけ充分だ」
それは間違いなく父親の本心なのだろうが、私には無理矢理自分に言い聞かせているように感じた。
何故がそれが無性に腹が立ち、私は父親に近づきこう言った。
「旦那様。私は治すと公爵様にお約束しました。私はできないことをできるという愚か者ではありません。私を信じられないのは当然です。ですが、私は大陸一の魔法使いです。そのプライドに懸けて必ず治します!」
最後の方は脅しに近い口調になる。
父親は私の勢いに押され「はい」と返事をする。
私はニッコリと笑い、わかればいいですよと言葉にはしなかったが態度にだす。
「では始めましょう。まずは今日から浄化しても大丈夫か確認しますので、少し体に触ってもいいですか?」
「ああ。構わん」
父親の許可を得て、私は体に触れようとしたそのとき、父親が咳き込み血が口から出る。
父親は慌てて手を押さえるが間に合わず、血は私はと向かってくる。
ヘリオトロープも父親も「まずい」と思い私を守ろうとするが一歩遅かった。
「は……?」
ヘリオトロープは今目の前で起きていることが信じられず瞬きを何度もする。
血が空中で止まっている。
「これはカメリア嬢が……?」
この場にいるものでこんな芸当ができるのは彼女しかいない。
そう思って父親は尋ねる。
「はい。魔法で血を止めました。まぁ、もちろん触れても防御魔法をかけているので問題はないですが、念の為他の人が触れたら困るので……」
血がシーツや服につけば、それに触れても死ぬ。
だからそうならないよう空中で止めた。
そして魔法でその血を消した。
「なっ!」
一瞬で血が消えヘリオトロープは驚きを隠せない。
「大丈夫です。ゆっくり深呼吸してください」
私は父親の背中をさすり落ち着かせる。
「……ありがとう。もう大丈夫だ」
暫くすると父親は落ち着きを取り戻す。
ヘリオトロープからタオルを受け取ると口元の周りの血を拭う。
「わかりました。では、確認しますね」
私は父親の体を触っていく。
少しするとまたあの音がしてウィンドウが表示された。
ピコン。
[ノエル・グライナー。体調回復。浄化魔法使っても問題ありません]
私はウィンドウの内容を確認すると、顔がニヤケそうになるのを必死に耐え父親にこう言った。
「体調は回復しましたので、これなら浄化魔法が使えます。今からかけてもよろしいでしょうか」
「よろしく頼む」
「わかりました。では、手に触れてもいいですか」
触れなくても問題ないが、浄化は肌に触れた方が効果が上がり、その分早く呪いから解放される。
「ああ」
父親はそういうと右手をだす。
「失礼します」
私はそう言うと右手に触れて魔法を発動させる。
「……今日はこれで一旦終えます」
私は魔法を解く。
「お体はどうですか?どこか変なところはありますか?」
「体が軽くなった。錘が体に乗っている感じが消えた。一体何をしたんだ?」
父親は子供のように目を輝かせて私に何をしたのか尋ねる。
「血を浄化しました」
呪いで血が毒となり体を蝕んでいた。
それを浄化したから体が軽くなったのだ。
肌の色は黒いままなので見た目では何が変わったのかわからない。
「血を?それってつまり……!」
「はい。もうその血で人が死ぬことはありません」
その言葉を聞いた瞬間、父親はひどく安堵し目頭が熱くなる。
もうこれで誰かが死ぬことはないのだ、と恐怖と罪悪感から解放される。
「っ!ありがとう!本当にありがとう」
父親は私の手をにぎり何度もお礼を言う。
「これから一緒に頑張りましょう。一気に浄化すると体がもたないので一週間に一度になりますが」
ヘリオトロープと違い父親の体は回復薬を使って歩けるようになった。
そんな体に一気に浄化すれば死んでしまう。
焦らずゆっくりやっていくしかない。
「ああ。わかった。君の言う通りにする」
父親は完全に私のことを信じきっている。
それもそうだ。
何百年もの間、誰一人呪いを解くことができなかったのに解ける者が現れたのだ。
父親には私が今、聖女、いや神のように見えていだろう。
私はニコッと父親に笑いかけてから、ヘリオトロープの方を向く。
「では、次は公爵様ですね」
私はスッと立ち上がり彼の前までいく。
「待ってください!今私にまで力を使えば貴方の体に負担がかかります。私の呪いはそこまで進んでいませんので、また後日でも大丈夫です」
ヘリオトロープは私の体が心配でそう言うが、当の本人の魔力量は膨大なので、この程度では全く疲れない。
私は彼の言葉を無視して手に触れ体を浄化していく。
ヘリオトロープの呪いは父親とは違ってそこまでいってなかったので、今ので体の色は本来の色へと戻る。
だが、まだ呪いが解けたわけではない。
大変なのはこっからだ。
まぁ、今日はこれ以上するつもりはないが。
そもそもできない。
この呪いの正体を知り、思った以上に厄介な案件だとわかったからだ。
「どうですか?多分ですが、全身元の色に戻っているはずです」
私は浄化を終えると一応確認してくれと頼む。
「え……?すみません。少し席を外します」
ヘリオトロープはそう言うと部屋から出ていき自身の体を確認する。
「嘘だろ……!信じられない」
ヘリオトロープは黒から白へと変わった自身の肌を見て感動し涙を流す。
肌の感触を確かめようと自身の体に触れる。
今までのザラザラとした気持ち悪く硬い感触ではなく、筋肉の柔らかさとサラッとした肌の感触に変わっていた。
ヘリオトロープは急いで服を着てさっきいた部屋へと戻る。
「カメリア嬢。ありがとう。本当にありがとう」
嬉しすぎて、その勢いのまま抱きしめてしまう。
さすがにこれには私も驚きを隠せず上手く対応できずにテンパってしまう。
そのとき父親が「ヘリオ。カメリア嬢に失礼だ。離れなさい」と助け船を出してくれたので助かった。
彼は父親にそう言われ我に返りバッと勢いよく私から離れる。
「申し訳なありません。嬉しさのあまり無礼を働いてしまいました」
ヘリオトロープは頭を下げて謝罪をする。
「いえ。大丈夫です。それより公爵様が戻ったのでお伝えしたいことがあります」
私は真剣な顔つきで二人をみる。
そんな私の変化に二人すぐに呪いのことだと察し顔つきが変わる。
「グライナー家にかけられた呪いが何かわかりました」
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