ウィンドウと共にレベルアップ

アリス

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ミッションクリア!

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「それは私が花王ハンターのことを気に入ったからです」

「気に入ったからですか……?」

「納得できませんか?」

「はい……」 

そんな理由で助けてくれるほどハンター協会の会長が甘いはずはない。

助けてもらって疑うのは心苦しいが、あとで大変になるのは実なので今のうちに確認しておきたい。

「花王ハンター。難しく考えすぎです。簡単に考えてください。例えば、困っている人がそこにいたらどうしますか?」

「もちろん助けます」

質問の意図はわからないが、きっぱりと答える。

「では、助けた人のことをどう思いますか?」

「優しい人だと思います」

「その優しい人が助けを求めたらどうしますか?」

「もちろん、助けます」

実がそう答えると朝霧は微笑みながらこう言った。

「つまりはそういうことです」

'どういうことだ……?'

実は首を傾げる。

朝霧が何を言いたいのか理解できない。

「私にとって花王ハンターは優しい人だということです。優しい人から助けを求められたら助ける。ただそれだけですよ」

「なるほど……?」

何か違う気がする。

そう思うもどう違うのかわからず何も言えない。

「そう難しく考えることではないです。人付き合いは合うか、合わないか、好きか嫌いかの相性です。私は花王ハンターのような人は好きです。だから力になりたい。そう思っただけです」

朝霧がそう言うと後ろで聞いていた若桜は「何を言っているんだ!?この人は?」とツッコミそうになる。

若桜が心を落ち着かせようと精神統一をするが、実によってせっかく落ち着いたのにまたやる羽目になる。

「俺も朝霧会長のこと好きです。きっと、日本のハンターは皆会長のこと好きです。尊敬していますし、憧れています」

実は演技のことなど忘れ、素で想いを伝える。

「そう言って貰えると嬉しいよ。ありがとう」

言うのはいいが、言われるのは恥ずかしい。

でも、面と向かって言われたのは初めてで嬉しくて満たされる。

いつの間にか実のペースになっていた。

駆け引きは苦手なのか真正面からぶつかってくる。

ハンターにしては珍しい。

だが、朝霧はそんな実が好きだった。

'できる限りのことは助けてあげたいと思わせる不思議な青年だ'

話せば話すほど実に大して好感をもつ。

「すみません。最後にやることがまだ残っているのでこれで失礼します」

実は壁についている時計をチラッと見ると、さっきより30分も進んでいた。

まずい!

焦る気持ちを隠し席を立つ。

「では、また明日お待ちしてます」

「はい」

朝霧と若桜に頭を下げて部屋から出ていく。

「斑目(まだらめ)課長。もういい。出てきなさい」

あの声をかけられ斑目はスッと部屋の中に姿を現す。

斑目はハンター協会の特殊部隊の一つ隠密課の課長。

「君の目から見て彼はどう映った?」

「危ういかと。ああいった人間は遅かれ早かれ死ぬかと。もし、死ななかったとしても壊れてしまうかと」

斑目は実のような人間が世の中の残酷さに耐えられず死んでいくのをたくさんみた。

善人であるが故悪人を見捨てることができず利用されて殺されたり、人を助けて代わりに死んだりする。

斑目は会話を聞いていただけだが、それでも実が誠実で優しい人間だと思った。

だからこそ、実が近い内に死ぬと思った。

何より自身を守る力がない。

どれだけ善人だろうとE級ではこの世界では強くなければ我を通すことはできない。

もし通せば死ぬ。

弱者は強者に従わなければならない。

それがハンターの世界での暗黙のルールだ。

「私も同じ意見だ。それで、任務は引き受けてもらえるかな?」

'任務?なんのことだ?'

若桜は二人が何の話をしているのかわからない。

自分の知らないところで話をしていたのか、と二人を見つめる。

「はい」

「そうか。助かる」

斑目が承諾すると小さく微笑む。

「会長。差し支えなければ任務の内容が何か聞いてもよろしいでしょうか?」

若桜は我慢できず任務の内部を尋ねる。

協会に所属して十年近くなるが、他人の任務を聞いたのは初めてで若桜自身、自分の行動に驚いた。

「もちろんだ。それにこの任務は若桜課長にもやってもらうつもりだったからな」

「私もですか?」

「ああ」

監視課兼討伐課の課長と隠密課の課長の合同任務など普通あり得ない。

それほど特殊な任務なのか?

若桜は柄にもなく緊張する。

「花王ハンターの監視を頼みたい。話してみてわかったが、彼は間違いなく何かをまだ隠している。言いたくても言えないのか、わざと言わないのか。それはわからないがな」

「わかりました」

若桜自身も実のことをもっと知る必要があると思っていたので断る理由はない。

それに朝霧の勘はよく当たる。

長年、朝霧に仕えていてそのことをよく知っている。

「では、今すぐ彼の元に行ってくれ。彼はさっき『あと一人か』と言っていた。まだ倉増ハンターの復讐は終わっていないのだろう。彼がどうするのか監視してくれ」

「手伝わなくて宜しいのですか?」

このままでは実が死ぬ。

そう思い若桜は尋ねたが、朝霧は首を横に振って「必要ないだろう」と言う。

「彼は我々にさらなる助けを求めなかった。自分でどうにかできるのか、それとも我々の力ではどうにもならないものなのか。少なくとも、あと一人は自分の手でどうにかするつもりなのだろう」

「では、監視だけで宜しいのですね」

斑目が最後の確認をする。

それで実が死んだとしても構わないのかと。

「ああ」

朝霧は斑目の言葉の意図を察した上で返事する。

「わかりました」

そう言うと斑目は軽く頭を下げこの場から去る。

「……私もこれで失礼します」

本当にいいのかと思うが朝霧の決定は絶対。

不満はあるが従う。

若桜も朝霧に軽く頭を下げてから、斑目の後を追う。

「君は我々を試した。今度は私が君を試させてもらう」

実がなぜ五十嵐達に罰を与えるよう協会に頼んだもう一つの理由に朝霧は気づいていた。





ピコンッ!


ウィンドウが表示される。


[制限時間]

残り1時間をきりました。

ミッションクリアまであと1人です。



「いちいち出さなくてもわかってる」

白石の婚約者が見つからなくて焦っているのに、ウィンドウに急かされ苛立つ。

何時間も町中を走り回って足がパンパンになっている。

実は毎日体を鍛えているが、どこにいるかもわからない人を何時間も走り回って探すのは初めてで限界をとっくに超えていた。

「どうすればいいんだ?」

疲れであたまも回らなくなり、このままでは失敗に終わる。

'倉増さんはどうなる?'

絶望的な状況に挫けそうになったとき女性の悲鳴が聞こえた。

「悲鳴……?」

急な悲鳴に一瞬思考が停止するも、すぐに我にかえる。

'まさか!モンスターが現れたのか!?'

九割のゲートは現れてから一週間はそのままでモンスターが出てくることはない。

ごく稀に現れたゲートからモンスターがすぐに出てくることがある。

実はミッションのことなど忘れ、全力疾走で女性の悲鳴が聞こえたところに向かう。

'どうか、間に合ってくれ!'

角を曲がりモンスターとの戦闘を覚悟し、状況を確認しようと周囲を見渡す。
 
'ん?これはいったい何が……?'

実はその光景を見て驚いて固まってしまう。

女性が顔をぐしゃぐしゃにして泣きながら男に縋りついていた。

'モンスターはいないな……'

見てはいけないものを見た。

そう思いその場から立ち去ろうとしたが、そのときウィンドウが表示された。

ピロンッ!


[ミッションクリア!]

おめでとうございます!復讐は完了しました!


「は?まさか……」

実は後ろを振り返る。

泣いているせいで女性の顔はわからない。

気のせいか?

そう思ったとき男性が「いい加減にしてくれ!君とはもう終わりだ!君のような人間と結婚したと思うとゾッとする!」と叫んだ。

男性の顔を見ると白石の婚約者だった。

ウィンドウのお陰で婚約者の顔を知ることができたので間違いない。

'じゃあ、やっぱり彼女が……'

実は白石の方に視線を向ける。

タイミングが良すぎる。

誰かが何かしたのか?

ずっと探していた婚約者がこのタイミングで見つかり、その上ミッションもクリアした。

どう考えてもタイミングが良すぎる。

'誰かが意図的に介入して倉増の結婚を無かったようにしたのでは?'

実は周囲を見渡す。

だが、ここには実を含め三人しかいない。

考えすぎか?

協会からハンターの資格を剥奪されたのだ。

そのとき婚約者もそこにいて剥奪された理由を聞いたのかもしれない。

実はこれ以上考えても仕方ない。

そう思い考えるのをやめる。

ミッションはクリアした。

倉増の復讐は終わった。

それでいい。

そう自分に言い聞かせ実はその場から離れようとしたとき、またウィンドウが表示された。

ピロンッ!


[報酬]

受け取りますか?

はい/いいえ


実は迷わず「はい」の方を押す。


[報酬]

氷魔法

[レベル]

C級


実は報酬を確認すると二人に気づかれない内にその場から離れる。



『花王さん。ありがとうございました』

倉増は全員に罰を与えることができたからか、悪霊みたいな姿から生前のときの姿になる。

「俺一人の力じゃ無理でしたこれは協会の力のお陰ですよ」

倉増にお礼を言われ申し訳なく感じる。

今回のミッションは、実一人では絶対にクリアできなかった。

素直に感謝の気持ちを受け取れない。

『それは違います。花王さんがいなければ、協会は彼らに罰をこんなに早く与えなかったし、もしかしたら罰すら与えなかったかもしれません。これは間違いなく花王さんの力で成し遂げたことです。本当にありがとうございます』

倉増は満面の笑みを浮かべ、もう一度実にお礼を言う。

'か、可愛い'

実は倉増の笑みをみてそう思った。

笑った顔は初めてみた。

状況が状況なだけに笑おうとも思わなかったのだろうが、倉増の笑みをみて実は「こんな顔をみれたんだ。きっと彼女にとってこれは正しいことだったんだ」と復讐を手伝ってよかったと思う。

「はい。力になれたのならよかったです」

今度は素直に感謝の気持ちを受け取る。
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