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迷宮ダンジョン
しおりを挟む「本当にありがとうございます。助かりました」
自宅につき、送ってくれた二人にお礼を言う。
「いえ、気にしないでください。それより早く風呂に入って温まってください」
若桜は実に風邪でも引かれたら困ると思い早く家の中に入るよう促す。
「はい。そうします。あと……あとで請求書送ってください。きちんと弁償しますので」
「「……」」
二人は一瞬、実が何を言っているのかわからず固まる。
すぐに自分のせいで濡れた椅子のことを言っているのだと気づく。
天下のハンター協会に弁償するという実の言葉に二人はつい大声を出して笑いそうになる。
協会は朝霧のお陰で出資者が沢山いるのでお金の心配をしたことが一度もない。
ハンターなら誰もが知っていることなのに、それでも払うと言う実の馬鹿なところが二人にはおかしくて仕方なかった。
「お気持ちだけで大丈夫です」
若桜は笑いそうになるのを必死に耐えながら言う。
そのせいで少しだけさっきよりもキツイ口調になってしまう。
'しまった。もしかして、怒らせたか?'
自分のようなE級ハンターが、協会に対して金の心配をしていると勘違いさせたのかと思い、やらかしたと嘆く。
「そうですか」
「では、私達はこれで失礼します」
「はい。今日は本当に色々と助けてもらいありがとうございました」
最後にもう一度二人にお礼を言う。
実は二人の車が見えなくなるまでお見送りをした。
「……まだ、家に入りませんね」
斑目はバックミラーで実の姿を確認する。
「仕方ないですね。一周しましょう。ついでに車も変えましょう」
実がいる以上引き返せない。
このまま去ったと見せかけないといけない。
「そうだな。ついでに飯も買ってきてもらおう」
「ええ。そうしましょう」
まだ手を振ってお見送りする実を二人は確認してため息を吐く。
いつまでこんなことをしなければならないのかと。
「それにしても斑目さんもかっこよかったな。課長クラスだとオーラが全然違うな。俺もいつかあんな風になりたいな」
二人のかっこよさと優しさを思い出す。
強いからと言って弱いものを見下したりせずに、普通に接してくれる二人に実は感謝する。
E級ハンターという肩書きのせいで実のハンターとして過ごした時間はあまりいいものではなかった。
最近は声の主のお陰で強くなった。
強くなったからといって自分がされて嫌だったことは絶対にしないと誓い、二人みたいに誰に対しても同じようにこれからも接していきたいと改めて思った。
「とりあえず風呂入ろう。このままじゃあ、風邪引く」
急いで風呂場までいく。
着ていた服を全て脱ぎ、お湯が溜まるまで川で汚れた体を洗う。
※※※
「今日は最近頑張ったご褒美に少しいい肉を食べよう」
スーパーで牛肉を買う。
一年ぶりの牛肉に実は今から食べるのが楽しみで仕方ない。
最近はミッションが何日も続き町中走り回った。
最初のミッションと同じのもあれば、意味不明のものもあった。
どれもクリアをし報酬は貰えたが、最初とは違いスキルは貰えなかった。
貰えたのは筋力、魔力、体力、スピードのポイントだけ。
結構な数のミッションをこなしたが、レベルアップはしなかった。
それでも前より強くなった感じはする。
体格も良くなったし、町中を走り回っても前ほど疲れなくなった。
「でも今は、この牛肉を何の料理で食べるか。それが問題だな」
牛肉を使った料理は沢山あり、その中から一つだけ選ぶのに実は悩む。
一時間近く悩みようやく何の料理にするか決めた、そのとき最悪な音が実の耳に届いた。
ピロンッ!
[クエスト発生!]
迷宮ダンジョンを攻略せよ!
[報酬]
臣下を手に入れられる。
※注意:クエストに失敗するとスキルが一つ没収されます。なお、これが表示されてから30秒後にダンジョンの入り口まで転送されます。
「……はぁ?あのクソヤロー!何でよりによって今なんだよ!せっかく久しぶりの牛肉を食べれると喜んでいたのに……これはあまりにも酷いぞ!」
実は声の主に向かって叫ぶも30秒経てば容赦なくダンジョンの前に飛ばされた。
今回は普通に地面の上に転送された。
いつもは地面の上でなく、地面から何メートルも離れたところに転送され落ちるのが当たり前だった。
今回の転送が完璧すぎて実は何故か嫌な予感がして帰りたくなる。
「……いかにも幽霊が出てきそうなダンジョンだな」
早速嫌な予感が当たる。
ダンジョンのところだけ空気が違う。
実がいるところは太陽の日も当たり空気も澄んでいるのに対し、ダンジョンは暗く不気味で見ただけで空気が汚れているとわかる。
実はこれまでの経験からこのダンジョンに入れば死は免れないと思う。
だが、それは今までの実だったらの話だ。
今の実は昔より遥かに強くなったし、レベルアップすることもできる。
ダンジョンにいるモンスターを倒すことができればレベルアップする。
今の実ではボスを倒すのは難しいかもしれないが、ボスの部屋に辿り着くまでにモンスターを倒しまくってレベルアップできれば可能性はある。
「……行くか」
実は覚悟を決めてダンジョンの中へと入る。
「やっぱり怖いな。こんなダンジョン初めて入る。さっきから水が落ちるような音が聞こえるせいか余計に雰囲気がでて怖いんだよな……」
ピチャッ、ピチャッ。
ダンジョンに入ってから水が落ちる音がずっと聞こえる。
地面にも所々水溜まりがある。
「それにしても水が多いな」
ダンジョンの中で水をみかけるのはよくあることが、ずっと水があるのはおかしいと感じる。
川や湖があるならまだしも、狭い道や階段にまで水がついているのはおかしい。
実は立ち止まりダンジョンに入る前からここにくるまでのことを思い出す。
どんな道だったか、壁には何が描かれてあったか、歩いている時に見た全てのことを順に思い出していく。
そして実はある一つの可能性に辿りつく。
「最悪だ。ここにいたら確実に死ぬ。今すぐ引き返さないと……」
実はさっきの別れ道のところまで全力疾走をする。
一個前の別れ道は今までと別れ道とは違い上と下になっていた。
実は罠がない方の下を選んだが、実(じつ)はそれこそが罠であると気づいた。
後もう少しでさっきの別れ道に着くというときに大きな音がした。
ドォォォン!
「もう始まったのか!」
実は音が聞こえ走るスピードを上げる。
足がもつれそうになりながら走り続け、あと少しというところで、目の前からものすごい勢いで大量の水がこちらに向かってくるのが見えた。
やばい!やばい!やばい!
頭の中で警報が鳴り響く。
もっと早く走れ、と。
このままでは水に呑まれて死ぬことになる。
嫌な想像をしたせいで体が重くなり、スピードが落ちる。
あと少し……
そんなところで水が10メートル手前まで迫ってきていた。
実は一か八かに賭け別れ道の壁を掴み、遠心力を使って水に襲われる一歩手前で階段へと倒れ込む。
「ギリギリセー……フ!?じゃない!!」
安心したのも束の間、罠に引っかかりトラップが発動した。
階段の隙間から剣が何個も出てきた。
実は座っていたので足をこれでもかというくらい広げて回避したが、今座っている場所からもう少し前に出ていたら男として大事なものが失われていたかもしれない。
「……」
実は顔を真っ青にして剣をみる。
だが、そんな悠長にしている時間はない。
トラップを回避するために足を広げたことで別の罠が作動した。
それを避けるために体を動かすも、そのせいまた別の罠が発動する。
10分くらいそれを繰り返し、ようやく最悪な悪循環から抜け出せたが、実の体力は限界をむかえボロボロだ。
それでもミッションをクリアするまではこのダンジョンからは出られないとわかっているので、先に進むしかない。
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