マジックカースト 〜苦しい魔法世界〜

浅村 英字

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第壱章 アルカトラズ

実現

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 僕は走りだし、食堂の天井が高いところまで開けているところまで着いたところで、魔法を使う。

「風魔法 走翼の上風」

 僕の周りに、上に向かう風が巻き起こり、体が宙に浮く。天井付近に着いたら、壊してある壁からさらに奥に進む。
 奥に進むに連れて、感じる嫌な感覚の魔力は濃くなっていく。

「永和!待って」

 光の塊のようなものが僕の方に寄ってくる。声や、魔力からその塊の中にいるが、悠夏だと話と早くに分かった。
 僕らは使っていた魔法を解いて、歩き始める。彼女は僕が隣に来るまで待って、一緒になったところで同じテンポで歩き出す。

「悠夏、よくここまで来れたな」

 彼女が、今までに見せてきた魔力の使い方とは違っていた。攻撃や、軽い移動には使うところは見ていたが、今回のように長時間の移動や空中移動には使っていた記憶がない。

「なんか空飛びたいって思ったらこうなっちゃった」

 彼女の感覚が狂ったような天才肌で驚く。

「そんな簡単に手慣れた魔力コントロール出来るのか?」

「え?そんなに難しいっけ?私はそんなにコントロールするのに苦労したことないけど?」

 新しい魔法を使おうとするところを全く見せ合うことのない僕たちは、慣れない感覚の新しい魔法を使うのにどれくらい苦戦するのかを知らない。
 僕が雷属性の魔法を使う時の魔力コントロールなんて、最初はかなり苦戦した。ほとんどの属性の魔力コントロールは一時間あれば習得できたものでも、普通はそんなに出来ないのが普通って義政くんにきいていた。

「悠夏ってもしかしたら天才なのかもな」

 僕の言葉に彼女はうなずき、喜んだ姿を見せた。

「そうかな。私はいざって時に使えそうな能力を持ってるかもしれない永和の方が天才だと思うよ?」

「あれは自由にコントロール出来ないからあんまり、意味ないよ」

 今現在、あの時に感じた嫌な予感も、魔力も感じない。義政くんは基本的にいつでも感知できる。僕にはそんな器用さはない。

「今のところはね。それなら、今からの進路はどうするの?」

 僕の唯一の考え事を彼女はいとも簡単についてくる。

「時間をかけていいかなって感じだよ。そんなに急いでなかったから」

 今までは悠夏が安全であると確信していたから時間をかけても、問題はなかった。でも、彼女がここにきた時点で僕が見た未来が現実になりかけている。そう思うと、遠回りしてもう一度あの感覚を呼び戻すしかない。そう思って、目の前の曲がり角を右に曲がる。

「あ、そっちじゃないよ。こっちこっち」

 右に曲がった僕を止めて、そのまま壁のほうに直進する。その壁は魔法で作られた幻想だったようで、その先に道があった。

「本当にまだコントロール出来てないんだね」

 強力な力ほど自由にコントロール出来るのには苦労するものだ。

「当たり前だろ。そんな簡単に自分のものに出来てたら、俺はここにはいないだろ。悠夏を置いて先に行くよ」

「何それ。ひどいよぉ、せっかくの幼なじみじゃん?ここじゃ珍しいよ?」

 確かに、このアルカトラスで知り合いがいること自体がかなり珍しい。ほとんどが知らない人だらけっていう環境で、過ごすのはこの当たり前。僕らは運がいい。

「それだから僕は余計に、君が安全でいられることを第一に考えちゃうんだろ」

 彼女は急に赤くなり、僕の肩を叩く。

「なんだよ」

「そんなこと言ったって、うちはなんも出来んよ?」

 彼女は一体、何を言っているのだろう。僕はただ、無事に返したいだけなのに。

「あれ?君はさっき上に行ったのに、降りてきてたんだ」

 そこにいたのは一人の男性、どこかで見覚えのある印象を持たせてくる。

「どうして、あなたがここに?莉皇さんがやっつけたはずなんじゃ・・・」

 悠夏が彼のことを知っているようだ。その声はどこか恐怖心を抱いていた。

「あぁ、彼女たちは僕が死んでると思ってるだろうね。でも、心配するのは今の君たちじゃないかな?」

 彼は手に隠し持っていた短剣を出す。その短剣からは人に鳥肌を立たせるような邪悪な魔力を感じる。

「植物魔法 天花の正来」

 植物魔法で、彼との間に壁を作り、元々あった壁を壊して、後ろに戻る。

「何で戻るの?せっかく壁を壊したのに。意味ないじゃん」

「あの光景見たら悠夏ならどっち行く?」

 彼女が疑問に思うことを利用して今の行動をしている。

「確かに、壊した壁のほうに行くかも」

 すぐさま、曲がり壁に隠れる。

「なかなか頭いいんだね。こっちから逃げようなんて、工夫出来てるね。さすがの加稲くんの弟子だね」

 彼の言葉で何となく、思い出した。見た場所は、いつもの例の時間で行く先々。確か、研究の責任者だっただろうか。僕には確信ことは言えないが、恐らくはそうなのだろう。

「僕はね、君がここで一番のお気に入りなんだよ。殺したりはしないから、出てきな」

 そう言って、彼は壊した壁の方に歩いて行く。

「行こっ」

「待って」

 僕は、彼の言葉に違和感を持つ。彼は、工夫したと言って素直にその中に入っていった。

「別の道を行こう。あそこはなんだかまずい気がする」

 そう言って僕らは回り道を選択する。

「こっちからじゃ、私は道分からないよ」

 彼女は最短距離と言えるさっきの道しか進んで来なかった。それが、今の僕らは欠点になっていた。こんな時に、僕の特殊能力が働いてくれたら助かるのに・・・。

「どうするの?道分からないんじゃあんまり行けないよ」

 口数の減らない悠夏に、何を言っても、面倒くさがられそう。

「道がないなら、作ろう」

 僕は大漁の魔力を使うことを覚悟して、魔法を使う。

「植物魔法 ジャックの静豪幹」

 床に現れた魔法陣から大きな幹が静かに育ち始める。

「もしかして。これを登るの?」

 幹は静かに天井を突き破り、人一人通れる穴を作る。

「それが一番早い。僕の魔力はほとんど取られたけど」

 現に僕の魔力はかなり減った。今の段階で攻撃魔法を打てるのは一回限り。もし、戦闘になったら、悪いけど悠夏に託すしかなさそうだ。
 僕の魔法のおかげでかなり上にまで登れた。そこには警備員が色んな姿で転がっていた。

「この上が最上階だよ」

 悠夏の説明に、僕の残った魔力量に安心する。

「こっち、早く行こ」

 そう言って、悠夏は壊された壁の向こう側にある隠し階段に進む。
 そして、久々に感じる邪悪な魔力の濃さが最大限になるところで、扉が開いてある。その先には僕たちが御世話になっている大人達だけがいた。彼らは僕の魔力を感じる間もなく、次々と倒れていく。
 僕と悠夏はその大人たちのもとに駆け寄り、その安否を確かめる。

「子どももここまで来たのか」

 聞くだけで鳥肌を立たせたその声は、一瞬の衝撃波を出して、僕らをボロボロにした。

「何で・・・?」

 行く苦しく、動きにくい体に鞭を打ち、僕は当たりを見渡す。そこで見えた姿は、食堂で感じ取った景色と同じものだった。
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