背後の弾丸

浅村 英字

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一騎打ち

再会

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 ここ最近、面白そうなことがちょいちょい起き始めている。暇な時間が無くなってきた。

「ツムくぅん?なんか君、最近楽しそうだね」

「どうせ、今日も彼女とイチャイチャするんでしょぉ」

 和樹と話すのは、学校の帰りがメイン。それ以外の時は、むさくるしい感じの『川崎 幸大』と幸大の幼馴染で幸大とは正反対の印象を持つ『若坂 翔太』の二人。

「今日は、来ないはずだよ。・・・俺も知らんけど」

「お前、彼女最初に出来たやつは、するって話覚えてるか?」

 腕をポキポキと鳴らし、俺の背後に立つ幸大が、占め技をかけまいとオーラを出して熱気が増す。

「いやぁ、そんなこと言ったっけ?」

 確かに、専門学校に来てできた友達の一部の中でそんな話をしたのは覚えている。でも今の俺には関係ない。どうにかしてこの場から逃げないと。

「言ったよね。な?だろ?」

 この未成年の目は、正直少しだけ怖く思えた。

「だったらなんだよ」

「ボコボコにされるか、女の人を紹介するかどっちか選びな」

 何かの漫画のマネのように俺を指す。

「変な立ち方辞めろ」

「変とか言うな。有名だろ、お前だって名前くらいは知ってるだろ」

 確かにその名前も知ってるし、その立ち方がどのキャラなのかも分かる。ともかく、教室からコンビニでも行こうかと扉を開ける。

「どこ行くん?」

「腹減らねえの?」

「減った」

 淡白な会話を終え、俺たちはコンビニに向かう。そんな中、届いた一通のメールが俺たちに鳥肌を立たせた。

『明日、お昼ごはん一緒に食べない?』

「おい、お前めっちゃモテてんな」

 確かにこのメッセージは愛されている感じがある。しかし、俺からすると特に何もしていないのに、ここまで好かれているのが少し怖い。

「いや、ここまでくるとちょっと怖い・・・」

「それだけのことをしたんじゃないの?それだけとか」

 彼女とのことを思い出すが、俺は何もしていない。初めて会った時も二回目も、話しかけたのは向こうからだし。初めての時に関しては、俺は何一つ彼女の言うことを聞いていなかった。そんな俺にここまでの熱い想いを送る気が知れない。

「まだしてないし。何もしてないんだけど」

 どういうことか自分でも理解できない。何がいいのか自分でもわからない。確かに、面白い人生を歩みたいと言ってはいたが、こういう感じの面白さを求めていたわけじゃないんだよな。

「んなこと信じるかよ・・・。ってか、いい機会じゃん。ほかに女の子連れてきてもらえよ。俺のためにも」

 確かに、二人きりじゃなければ多少の回避ができるかもしれない。向こうの知り合いがいれば、あの子は八方美人になって面倒な態度をとる可能性も低いだろう。

「分かった、送ってみるわ」

『いいよ。でも、一人友達連れて行くから、そっちも呼んでもらえる?』

「杏奈は一つ上だから向こうが呼ぶ人も年上になると思うけど、いいの?」

「いらっしゃいませぇ」

「いや、出来れば年下か同い年がいい」

 贅沢な奴だな。

『出来たら、俺と同い年か年下がいいんだけど。無理よね?』

『友達がそういう子がいいってこと?』

 メールを見せて、俺たちはコンビニの弁当を選ぶ。その時、弁当の配列でちょっとため息が出る。

「そんなにため息するか?普通」

 いや、今回はそこじゃない。確かに、杏奈についてはため息がいつ止まるかなんて分からない。でも、ため息を吐いたのはお弁当コーナーの反射板から見える女性の姿。

「だって、意味の分からないメンヘラなんて、ため息止まらないだろ」

 とりあえず、俺は気が付いていないフリをして、大盛カルボナーラを手に取る。

「それか、それ好きだよね」

「だって安いし多いし、まあまあ美味いからな」

 とりあえず、いつも通り携帯を取り出して電子決済の準備に見せかけて、一通のメールを送る。前回と同じように。

『了解。ちょうど今近くにいるからすぐに向かう』

 どうしよう、帰ってきたメールを見て思った。これから面白くなる、とさらに俺の目的も達成される。ようやく暇な人生が終わってくれる。

「でも、今は、そうすべきじゃないのか・・・?」

 俺の小声が隣には聞こえたらしく、不思議そうな顔をしていた。俺には怪しまれずに生活し続ける義務がある。こういう場面でも例外ではない。

「会計済ませたら煙草吸ってくるから、先に教室戻ってて」

「お前、体に悪いぞ」

 俺は彼からの忠告を無視して、ポケットの煙草を確認する。

「まぁまぁ、とにかく先行ってて」

 俺は買い物を済ませて、裏の方に行き以前のように彼女に背中を見せて、出来るだけ距離を詰めさせる。でも、出来るだけ自然に相手の持つ殺意を流さなくてはいけない。そうしなくては、俺の腹に穴が開いてしまう。そんなのごめんだ。
 彼女を背に、携帯で彼に連絡し接触を図る。

「あれ?お姉さん!覚えてないですよね?」

 奇跡とでもいえるだろうか、以前に話しかけていたのは好都合だった。今回話しかける切っ掛けとして十分な理由になるし、違和感を感じさせることもない。だって以前もやったから偶然の出会いと引かせたのは、相手の行動だから。

「え?どこかでお会いしましたっけ?」

「ですよねぇ。以前、お姉さんを見かけて、声をかけさせてもらったんですけど」

 彼女はどこか驚いたような顔をしていた。そりゃ、そうだろう、俺目当てで来たのだろうからその人自身からアプローチがあるなんて思いもしなかっただろう。後々叱られないか不安だけど。

「ごめんなさい。覚えてないです」

 俺の顔をその時で覚えてなくても、別の理由で覚えているのだろう。大方俺の制裁か何かか。ちょっとショックそうな顔をして、俺は日陰に進む。

「もしかしたら、急いでいたのかもしれない・・・です。今時間があるなら、ちょっとお話しませんか?」

 喰い付いた。
 あの甘い顔が俺を殺そうとしているのは容易に分かった。まだ殺意を抑えるのが下手に思えた。

「あと五分程度でよければ」

 さすがに俺もおなかがすいた。休み時間はあと四十五分、この時間の中で残っているいくつかのことをすべてこなす必要がある。でも、今電柱の奥で気配を殺し切っている沢尻さんは、誰が俺の言っていた女性かわかったはずだ。

「良かった。じゃあ、五分、私にください」

 こっちは、異性を誘うのがそれほど得意じゃないみたいだ。年はどんなに上に見ても二十代前半、見た目通りに言えば二十三くらいか、にしても若いな。予測があってれば、この人が黒蛇の尻尾。

「え?!逆に良いんですか?」

 彼女と接近するには、彼女に一目惚れをしているという設定をしてた方が今後が楽になりそうだ。

「もちろんです」

 もしかして、彼女も俺と同じことを考えているのか。だとしたら、俺の命が目当てか。危険度高いなぁ。とりあえず、名前でも聞いて一つでも多くの彼女の情報を集めるとするか。

「おいくつなんですか?」

「二十三歳です」

 意外と若いんだな。黒蛇なんて物騒な組織に入っているのに、そんなに若いとは思ってもみなかった。行っても二十代後半だと思っていた。

「そっかぁ、三つも年上なんですね」

「三つ?ってことは二十歳はたち?」

「そうです。まぁ、まだ二十歳になって数日ですけど」

 自己開示を話して、相手の詳細を聞き出して繋げたままの電話相手に伝える。

「それじゃあ、そろそろ僕は行きますね。あ、良かったら連絡先教えてもらっていいですか?」

「いいですよ。私も気になってましたし」

 なるほど。彼女にとって、俺は殺害対象になったわけだ。この連絡先が俺を殺すための鍵にならないように気を付けないと。まぁ、これでそもそも彼女が黒蛇かそうでないかも確認できる。十中八九黒蛇なんだけど。

「それじゃあ、僕はこれで」

 携帯をロックして、学校に戻る。その途中で一言、沢尻さんに声をかける。

「おそらく黒です。逃がさないでくださいよ」

「うるさい。分かってる」

 彼とすれ違って、俺は講義室に戻る。

「なんか、疲れるなぁ」

 暇な人生も悪くないと今更思いつつ、俺は暑い日差しを避けながら元いた教室せかいに足を入れなおす。そしてつい、笑みがこぼれる。

「面白くなってきた」
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