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三時間目
遊び場
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一時四十分。通学路にいるのは今日だけでも二回目。前回と違い今回は制服ではなく、私服で座っている。車内には、俺自身を含めて三人の男子が椅子に座って話している。
「なぁ、女子を誘おうぜ」
蒼午は男子屈指の人気生徒だろうから、女子の連絡先を持ってそんなことを言えるのだろう。
「今更無理だろ」
「そうだよ。今更なんて無謀だろ」
「そうか?」
「「そうだろ」」
俺たちの言い合いは終わりを迎えることなく目的の駅に着く。そこには蒼午の言ってたことが現実となっていた。
「辰矢!」
後ろから響空の声がした。
「おお、どうしたと?」
駅のホーム内、同じ出口に向かう響空とその友達の未山、申良、丑尾の三人が一緒だった。
「ウチら四人で今から遊び行くんだ!」
「マジ!?俺らもっちゃん!一緒遊ぼうぜ」
響空と俺の会話に入り込んできた蒼午は声高らかに彼女たちを誘う。彼は人の壁を余裕で越えてくる。大学や社会からすれば、とても望ましい才能と言えるだろう。しかし、個人的にはそれとこれはまた別の話。それを受ける人によっては、蒼午を強く拒む人もいるだろう。
「ええぇ、それは」
「いいよ!そうしよ!」
響空も拒もうとしていると、その横から話を聞いていた申良さんが了承した。
「・・・っね?」
突然、響空の耳に手を当てて、俺たち男子に対して聞こえない声で言った言葉で彼女は女子を響空を黙らせた。
「でもさ、三対四じゃちょっと切れ悪くない?」
丑尾さんが言ったとき、俺たちもそう思った。でも、今から呼んで来るような都合のいい男子は存在するということは知るはずがない。
「大丈夫。男もあと一人いるから」
男子の間でもその話は聞いていない。そして、聞き覚えのある声が聞こえた。
「おい?!遅いぞ蒼午」
駅の改札口を前にして聞こえたのは毎時間の授業中に聞くクラス委員の声、総務委員の『松本 寅丸』だった。
「いや、時間通りに来ただろ」
その時、男女四人ずつの八人になった。まるで合コンにでも行くかのような状況に面倒臭さを感じた。
『グゥゥ・・・』
「ごめん」
突然未山さんのお腹の音がなった。その腹の音のおかげで緊張感が漂っていた場が和んだ。
「確かに、お腹すいたよな・・・」
俺はお昼ご飯を抜いて来たから空腹になるのがもしかしたら、他の人よりも早いのかもしれない。
「ならまず、お昼食いに行くか」
そう言って蒼午はやはり全体を指揮し始めた。
駅を抜けると、光が想像を絶する強さをもって俺たちの身体中を刺激する。
「暑っ・・・」
その言葉が次々と出てくる。さっきまで曇に曇っていた太陽なんて見えなくて、上着などを着ていた全員が口ずさんでいた。
次の瞬間、いつも通り体中に激痛が走り出す。そして、視界が一瞬赤く染まる。一、二ヶ月も一度、体内で爆弾が爆発したようになり、他の時よりも激痛に感じて苦しみ出す。思わず、俺は声が出てしまう。
「辰矢くん、大丈夫?」
俺の後ろで聞こえた声に、名前は当てはまらない。知らない人というわけではない。そこまで頭が回らない。
「うん。大丈夫だよ」
だからどうってことはない。そんなことを考えるよりも先に、薬をポケットからこっそりと取り出し、口に入れる。痛みは急になくなることはないが、徐々に楽になっていく。後ろを見て、さっき聞こえた声の主を確認する。
「・・・確か、未山さん?でよかったよね?」
声をかけて来たのはクラスが唯一違う未山さんだった。でも、初対面のはずの彼女に目立っていない俺の名前をよく知っているものだ。蒼午に連れられてデパートに向かう中、俺たち二人は最後尾で初対面らしい挨拶を交わす。
「初めましてだよね?私は『未山 悠凛』です。他の人からは『ユウリ』って呼んでるから、出来たらそう呼んでほしいな」
彼女は俺の名前を知っている理由を言わなかった。まだ目立つ事をしていないのに名前を知っている理由が俺はとても気になる。想像することすら俺には難しい。
「俺は『稲垣 辰矢』、『タツヤ』でいいよ」
「あのさ、辰矢くんって何か・・・」
俺は彼女を見た。他の物や人を見る目とは違う見方で。
「あ、ごめん。何でもない」
何かを察されたらしい。今後の彼女との距離感を考えた方が良さそうだ。そう思っていると前から響空の声がした。個人的には早く無事に一日が終わってほしい。
そう思っても時間の流れを早くするなんてことは出来っこない。デパートのフードコートで食事を取り終えた頃、松本が小さな荷物の中から一つの箱を取り出した。
「トランプ?」「ババ抜きでもやるん?」
見慣れている自分のものとは違い、よく見るトランプだった。
「そうじゃなくて、来週ある研修のどっかでやりたいんだよね、マジック」
「へぇ、マジック出来るの?!」
女子はいつもよりもやや大きく目を開き、松本を見る。マジックを披露しようとする松本、まぁいい。それはいい。ただ、マジックは俺もするからキャラが丸かぶりじゃねえか。それが気に触る。
「うん、ほんの少しだけど、こう見えてできるんだぜ。まぁ、人前でやったことはないから、先に少しでも慣れときたくてな」
彼はそう言ってトランプの箱からカードを取り出し、デックをきり始めた。座席は俺と同じ列に男子、向かいの座席には女子が座って、完全に合コン体制になっている。俺に松本、蒼午、聖馬。女子は俺の前から響空、悠凛、申良、丑尾。
「それじゃあ、はい。申良、どれか一枚選んで」
そう言われた申良は真ん中あたりのカードを選んでそれを引き抜いた。
「そのカードを覚えてくれる?俺は見ないように後ろ向いてるから」
手にしていたのはハートの七。しかし、このてのマジックにはとってもらったカードには特に細工はしない。
「覚えたよ」
「OK!なら戻してくれる?」
そう言って元の場所に戻す。そこからは上手くシャッフルしているように見せかける。と思うと、一度トランプの表を見て、二枚のカードをテーブルに乗せる。
「この二枚のジョーカーを使います」
そう言ってみんなにジョーカーを見せている間にデックに仕掛けをする。
「そしたら、この二枚で残りを挟んで・・・」
『パチン』
指を鳴らし、右手にあったデックを左手に投げた。すると、右手に残ったジョーカーの間に一枚のカードが挟まっている。それを表にすると、そこにはハートの七があった。
「すごーい!」
女子たちは感激し、拍手をする。
「ヤバっ、どうやったん?」
蒼午や聖馬も見入っていた。
「さあ?」
マジックのタネは教えない。まあ普通にしても何か他に言えよ、そう思うのは恐らく同じ趣味を持つ俺だからだろうか。
「他にもやってよ」
聖馬の正面にいる丑﨑が言うと松本が待ってましたと言わんばかりの笑顔で饒舌に口を開く。
「いや、他はまた来週にしようかな」
そういうと松本がゲームコーナーに行こうとまた同じ口を開き、全員の足を動かす。
松本の指揮下での移動中、隣に響空が来た。
「・・・辰矢?」
隣に来てもしばらく何も言わないからどうしようもなく思っていると、彼女の方から声をかけて来た。
「何?」
「いや、どこか具合でも悪いんかな?って」
彼女からの言葉に少し背筋がゾッとした。昔から俺の病気のことを知るとほとんどが態度を変える。そんな態度の人とは個人的に接したくはないから俺は自分のことを話し込まないようにしている。
「ううん。別に?いつも通りだよ」
その後、何とか無事に一日を乗り切った。
「ただいま」
「お帰り!どうだった?」
今日みたいな高校の友達と遊びに行くなんてことは、以前の俺からすれば想像出来ない。中々遊びに行かなかった中学生時代とは打って変わっているから、興味が湧いてくるのがわかるが、少し控えてほしい。
「普通だよ。特に変わったこともないし・・・」
「あなたが言う普通が気になるんでしょ?」
母の喜びに満ちている顔はソファに座り、携帯を見ていても分かる。
「お兄ちゃんお帰り」
妹の雪菜は俺を見るや否や俺の隣に座る。
「ねぇ、明日の昼ごはんはお兄ちゃんが作ってよ」
「えっ?母さんは?」
妹の言葉に反応して母の姿を見る。
「朝からちょっと、知り合いと出かけてくる」
母の仕事は病院のナース長。だから母の知り合いと言うと大体部下の人たちだろう。
「だからさぁ、辰矢が朝ごはんも作ってくれると嬉しいなって」
「分かったよ。明日のご飯は俺が作ればいいんやろ?やるよ」
「やった!」「ありがとね、辰矢」
俺は入退院を繰り返すうちに出来るだけ安く、とても美味しいものを作るのに熱中し始めた。病院の食べものって美味しくないから、家くらいは自分で作って作って美味しくしたいと思った。お母さんのご飯は職業柄栄養が重視される。
「ただいまぁ」
父が帰って来た。気づくと時間は九時を指していた。
「おかえり」「お帰りなさい」
「辰矢、これ買って来たからやるよ」
そう言って渡して来たのは、先日発売された最新版のタブレットだった。俺や雪菜は目が飛び出るほど驚いて父さんに聞く。
「何で!?」「どうしたと?」
「いや、なんか、今までろくなものをあげられた気がしないから。それだけだよ」
それだけと言った父の言葉には、なんとなくではあっても俺には響くものがあった。
「ありがとう・・・」
なんとなく、涙が出そうになった俺は恥ずかしくなって携帯しか見ていられなくなった。
「おん。それより、晩ご飯すぐに食べられる?」
「はいはい。すぐに準備しますね」
母は父と仲がいい。表面上の夫婦ではなく、本当に仲のいい夫婦だ。
午後十一時、月曜日に提出しなければいけない課題と向き終え、寝ようかと思い立ち上がると、携帯に一通のメッセージが届いた。
『明後日何か予定ある?』
ワボの個人トーク枠に響空から届いていた。今まで普通に話してはいたものの、こういった要件は俺も話したことがない。
「明後日か・・・」
そう一人で言って自分の予定を見返す。
「特に予定はないよ?」
送るとすぐに既読のマークが付いて、返信が来た。
『良かったら、映画見に行かない?』
「いいよ」
断る理由が思いつかなかったのもあるし、実際彼女と話してて苦だと思うことがない。恐怖のような感じはしたものの、苦はない。それに自分の感情が舞い踊っている感じがした。最後にスタンプを送ったあと、ベッドに身を預けた。
「なぁ、女子を誘おうぜ」
蒼午は男子屈指の人気生徒だろうから、女子の連絡先を持ってそんなことを言えるのだろう。
「今更無理だろ」
「そうだよ。今更なんて無謀だろ」
「そうか?」
「「そうだろ」」
俺たちの言い合いは終わりを迎えることなく目的の駅に着く。そこには蒼午の言ってたことが現実となっていた。
「辰矢!」
後ろから響空の声がした。
「おお、どうしたと?」
駅のホーム内、同じ出口に向かう響空とその友達の未山、申良、丑尾の三人が一緒だった。
「ウチら四人で今から遊び行くんだ!」
「マジ!?俺らもっちゃん!一緒遊ぼうぜ」
響空と俺の会話に入り込んできた蒼午は声高らかに彼女たちを誘う。彼は人の壁を余裕で越えてくる。大学や社会からすれば、とても望ましい才能と言えるだろう。しかし、個人的にはそれとこれはまた別の話。それを受ける人によっては、蒼午を強く拒む人もいるだろう。
「ええぇ、それは」
「いいよ!そうしよ!」
響空も拒もうとしていると、その横から話を聞いていた申良さんが了承した。
「・・・っね?」
突然、響空の耳に手を当てて、俺たち男子に対して聞こえない声で言った言葉で彼女は女子を響空を黙らせた。
「でもさ、三対四じゃちょっと切れ悪くない?」
丑尾さんが言ったとき、俺たちもそう思った。でも、今から呼んで来るような都合のいい男子は存在するということは知るはずがない。
「大丈夫。男もあと一人いるから」
男子の間でもその話は聞いていない。そして、聞き覚えのある声が聞こえた。
「おい?!遅いぞ蒼午」
駅の改札口を前にして聞こえたのは毎時間の授業中に聞くクラス委員の声、総務委員の『松本 寅丸』だった。
「いや、時間通りに来ただろ」
その時、男女四人ずつの八人になった。まるで合コンにでも行くかのような状況に面倒臭さを感じた。
『グゥゥ・・・』
「ごめん」
突然未山さんのお腹の音がなった。その腹の音のおかげで緊張感が漂っていた場が和んだ。
「確かに、お腹すいたよな・・・」
俺はお昼ご飯を抜いて来たから空腹になるのがもしかしたら、他の人よりも早いのかもしれない。
「ならまず、お昼食いに行くか」
そう言って蒼午はやはり全体を指揮し始めた。
駅を抜けると、光が想像を絶する強さをもって俺たちの身体中を刺激する。
「暑っ・・・」
その言葉が次々と出てくる。さっきまで曇に曇っていた太陽なんて見えなくて、上着などを着ていた全員が口ずさんでいた。
次の瞬間、いつも通り体中に激痛が走り出す。そして、視界が一瞬赤く染まる。一、二ヶ月も一度、体内で爆弾が爆発したようになり、他の時よりも激痛に感じて苦しみ出す。思わず、俺は声が出てしまう。
「辰矢くん、大丈夫?」
俺の後ろで聞こえた声に、名前は当てはまらない。知らない人というわけではない。そこまで頭が回らない。
「うん。大丈夫だよ」
だからどうってことはない。そんなことを考えるよりも先に、薬をポケットからこっそりと取り出し、口に入れる。痛みは急になくなることはないが、徐々に楽になっていく。後ろを見て、さっき聞こえた声の主を確認する。
「・・・確か、未山さん?でよかったよね?」
声をかけて来たのはクラスが唯一違う未山さんだった。でも、初対面のはずの彼女に目立っていない俺の名前をよく知っているものだ。蒼午に連れられてデパートに向かう中、俺たち二人は最後尾で初対面らしい挨拶を交わす。
「初めましてだよね?私は『未山 悠凛』です。他の人からは『ユウリ』って呼んでるから、出来たらそう呼んでほしいな」
彼女は俺の名前を知っている理由を言わなかった。まだ目立つ事をしていないのに名前を知っている理由が俺はとても気になる。想像することすら俺には難しい。
「俺は『稲垣 辰矢』、『タツヤ』でいいよ」
「あのさ、辰矢くんって何か・・・」
俺は彼女を見た。他の物や人を見る目とは違う見方で。
「あ、ごめん。何でもない」
何かを察されたらしい。今後の彼女との距離感を考えた方が良さそうだ。そう思っていると前から響空の声がした。個人的には早く無事に一日が終わってほしい。
そう思っても時間の流れを早くするなんてことは出来っこない。デパートのフードコートで食事を取り終えた頃、松本が小さな荷物の中から一つの箱を取り出した。
「トランプ?」「ババ抜きでもやるん?」
見慣れている自分のものとは違い、よく見るトランプだった。
「そうじゃなくて、来週ある研修のどっかでやりたいんだよね、マジック」
「へぇ、マジック出来るの?!」
女子はいつもよりもやや大きく目を開き、松本を見る。マジックを披露しようとする松本、まぁいい。それはいい。ただ、マジックは俺もするからキャラが丸かぶりじゃねえか。それが気に触る。
「うん、ほんの少しだけど、こう見えてできるんだぜ。まぁ、人前でやったことはないから、先に少しでも慣れときたくてな」
彼はそう言ってトランプの箱からカードを取り出し、デックをきり始めた。座席は俺と同じ列に男子、向かいの座席には女子が座って、完全に合コン体制になっている。俺に松本、蒼午、聖馬。女子は俺の前から響空、悠凛、申良、丑尾。
「それじゃあ、はい。申良、どれか一枚選んで」
そう言われた申良は真ん中あたりのカードを選んでそれを引き抜いた。
「そのカードを覚えてくれる?俺は見ないように後ろ向いてるから」
手にしていたのはハートの七。しかし、このてのマジックにはとってもらったカードには特に細工はしない。
「覚えたよ」
「OK!なら戻してくれる?」
そう言って元の場所に戻す。そこからは上手くシャッフルしているように見せかける。と思うと、一度トランプの表を見て、二枚のカードをテーブルに乗せる。
「この二枚のジョーカーを使います」
そう言ってみんなにジョーカーを見せている間にデックに仕掛けをする。
「そしたら、この二枚で残りを挟んで・・・」
『パチン』
指を鳴らし、右手にあったデックを左手に投げた。すると、右手に残ったジョーカーの間に一枚のカードが挟まっている。それを表にすると、そこにはハートの七があった。
「すごーい!」
女子たちは感激し、拍手をする。
「ヤバっ、どうやったん?」
蒼午や聖馬も見入っていた。
「さあ?」
マジックのタネは教えない。まあ普通にしても何か他に言えよ、そう思うのは恐らく同じ趣味を持つ俺だからだろうか。
「他にもやってよ」
聖馬の正面にいる丑﨑が言うと松本が待ってましたと言わんばかりの笑顔で饒舌に口を開く。
「いや、他はまた来週にしようかな」
そういうと松本がゲームコーナーに行こうとまた同じ口を開き、全員の足を動かす。
松本の指揮下での移動中、隣に響空が来た。
「・・・辰矢?」
隣に来てもしばらく何も言わないからどうしようもなく思っていると、彼女の方から声をかけて来た。
「何?」
「いや、どこか具合でも悪いんかな?って」
彼女からの言葉に少し背筋がゾッとした。昔から俺の病気のことを知るとほとんどが態度を変える。そんな態度の人とは個人的に接したくはないから俺は自分のことを話し込まないようにしている。
「ううん。別に?いつも通りだよ」
その後、何とか無事に一日を乗り切った。
「ただいま」
「お帰り!どうだった?」
今日みたいな高校の友達と遊びに行くなんてことは、以前の俺からすれば想像出来ない。中々遊びに行かなかった中学生時代とは打って変わっているから、興味が湧いてくるのがわかるが、少し控えてほしい。
「普通だよ。特に変わったこともないし・・・」
「あなたが言う普通が気になるんでしょ?」
母の喜びに満ちている顔はソファに座り、携帯を見ていても分かる。
「お兄ちゃんお帰り」
妹の雪菜は俺を見るや否や俺の隣に座る。
「ねぇ、明日の昼ごはんはお兄ちゃんが作ってよ」
「えっ?母さんは?」
妹の言葉に反応して母の姿を見る。
「朝からちょっと、知り合いと出かけてくる」
母の仕事は病院のナース長。だから母の知り合いと言うと大体部下の人たちだろう。
「だからさぁ、辰矢が朝ごはんも作ってくれると嬉しいなって」
「分かったよ。明日のご飯は俺が作ればいいんやろ?やるよ」
「やった!」「ありがとね、辰矢」
俺は入退院を繰り返すうちに出来るだけ安く、とても美味しいものを作るのに熱中し始めた。病院の食べものって美味しくないから、家くらいは自分で作って作って美味しくしたいと思った。お母さんのご飯は職業柄栄養が重視される。
「ただいまぁ」
父が帰って来た。気づくと時間は九時を指していた。
「おかえり」「お帰りなさい」
「辰矢、これ買って来たからやるよ」
そう言って渡して来たのは、先日発売された最新版のタブレットだった。俺や雪菜は目が飛び出るほど驚いて父さんに聞く。
「何で!?」「どうしたと?」
「いや、なんか、今までろくなものをあげられた気がしないから。それだけだよ」
それだけと言った父の言葉には、なんとなくではあっても俺には響くものがあった。
「ありがとう・・・」
なんとなく、涙が出そうになった俺は恥ずかしくなって携帯しか見ていられなくなった。
「おん。それより、晩ご飯すぐに食べられる?」
「はいはい。すぐに準備しますね」
母は父と仲がいい。表面上の夫婦ではなく、本当に仲のいい夫婦だ。
午後十一時、月曜日に提出しなければいけない課題と向き終え、寝ようかと思い立ち上がると、携帯に一通のメッセージが届いた。
『明後日何か予定ある?』
ワボの個人トーク枠に響空から届いていた。今まで普通に話してはいたものの、こういった要件は俺も話したことがない。
「明後日か・・・」
そう一人で言って自分の予定を見返す。
「特に予定はないよ?」
送るとすぐに既読のマークが付いて、返信が来た。
『良かったら、映画見に行かない?』
「いいよ」
断る理由が思いつかなかったのもあるし、実際彼女と話してて苦だと思うことがない。恐怖のような感じはしたものの、苦はない。それに自分の感情が舞い踊っている感じがした。最後にスタンプを送ったあと、ベッドに身を預けた。
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