1 / 1
一話
しおりを挟む自分の性的趣向が男だと知ったとき、俺はなんとなくこの先”フツウ”の恋ってやつはできないんだろうなと思った。お父さんお母さんごめんなさい。BLでよくある男性妊娠は科学技術がかなーーーーり進まないと不可能なので、孫の顔はどうやら見せてあげられそうにありません。でもだからって俺は自分が男を好きになったことに後悔はないんです。堂々と学校のプールの時間に好きな人の上裸が見れるし、なんならトイレの中ではちんこが拝めます。これほどまで自分が男に産まれ、同性を愛したことに感激したことはないでしょう。思えば初恋の幼稚園の先生は男だった気がするので、気づいたところで今更ショックはあまり受けませんでした。
そんな俺ももう高校生になります。ここまでこんなにも元気に育ててくれてありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。
『零れ落ちる心情は下唇を食んで
~本気になれない僕たちは~』
俺が受験した男子校には、同じ中学出身のやつらが一人もいなかった。クラスが違ってもつるむことはできるだろうと校門で渡された紙には見覚えのある名前がなく、なんとなくああこれからスタートライン切って友達ってやつをまっさらな状態から作り直さなきゃいけないんだと曇天になった。
クラスは一年三組。教室に入るとすでに何人か固まってグループを作っていた。入る前にSNS上でつながったとか言うのだろうが、どうにも俺は疎かった。そもそもどうすればそんなことができるんだよ教えろ程度にはスマホは家族・友達との連絡、動画や漫画にしか使うことがなかった。たまにXも推しの絵師様の生存確認用に見るけども。基本は家にいる間は虚構の世界に浸っていたかったから。
…まあその話はこれぐらいにして、俺はさてどうするかと気まずい思いで辺りを見回した。ファーストコンタクトはこの箱庭の中では重要である。後から部活・委員会やらイベントやらで「お前、こんなに面白かったんだな」みたいに意気投合することはあるが、それまでの繋ぎがなければ二人一組でペアにとかいう冷水を浴びることになる。
(とりあえず自分の席に座って、周りのやつらを確認しておくか。)
出席番号は...二十二。左から三、後ろからも三で時に味気のない席になってしまったと腰掛ける。一息ついて顔を上げると、さっき固まっていた集団の中でも一番大きいグループの中心にいた男が俺を見下げていた。ドキリとして緊張が走る。
「ねえ君」
「...うん」
「この席なの?」
「そう、だけど...」
(なんかしたっけ俺)
「そうなんだ! あ、俺は秋宮柚季。あっきーでもゆずでもなんでも呼んで」
「...よろしく。俺は七草璃桜」
「へえ! どんな字書くの?」
「えっと...、ななくさは七草で、りおうは瑠璃に桜」
「そうなんだ。なんかカッコいいね。あ、璃桜もこっち来て一緒に話そうよ」
秋宮に少し強引に押されて大きな輪の中に入っていく。心底ホッとした。これで自分からこのグループのやつらに話しかけてれば少なくとも余ることはない。流れさえ掴んでしまえば後は身を任せるだけで十分だった。
秋宮は思ってたよりもずっと気遣いで明るい性格をしていた。話に入れていない人を見つけてはそれとなくサポートし、見ていてこの人の周りに人が集まるコアを知った。傍観側からはリーダーシップのある元気な子に感じるが、例えそれが本来の性格だとしても疲れるだろう。だから俺はせめてもの礼として彼を隣で支えることに決めた。
そんなこんなで話していると時間は過ぎるもので、先生が入ってきたため一度皆席に戻った。秋宮は三番で席は離れてしまったが。彼が近くにいない以上、一応自分の席の周りとも挨拶しようと思った。
「はいじゃあこれプリントなー。保護者の方に忘れずに渡し組んだぞー」
間延びを含んだ声と共に順に回されてきたプリントが俺の手に届いた。十字の中で今見れていないのは後ろだけだとプリントついでに振り向くと、______
この入学を機に染めたであろうダークブラウンのマッシュスタイルに、すでに首元を開け腕をまくるという着崩しを見せた端正な顔立ちの男がそこにはいた。
さざめく淡いピンクの風が吹き抜けて、春の訪れを告げる。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
聞いてた話と何か違う!
きのこのこのこ
BL
春、新しい出会いに胸が高鳴る中、千紘はすべてを思い出した。俺様生徒会長、腹黒副会長、チャラ男会計にワンコな書記、庶務は双子の愉快な生徒会メンバーと送るドキドキな日常――前世で大人気だったBLゲームを。そしてそのゲームの舞台こそ、千紘が今日入学した名門鷹耀学院であった。
生徒会メンバーは変態ばかり!?ゲームには登場しない人気グループ!?
聞いてた話と何か違うんですけど!
※主人公総受けで過激な描写もありますが、固定カプで着地します。
他のサイトにも投稿しています。
Q.親友のブラコン兄弟から敵意を向けられています。どうすれば助かりますか?
書鈴 夏(ショベルカー)
BL
平々凡々な高校生、茂部正人«もぶまさと»にはひとつの悩みがある。
それは、親友である八乙女楓真«やおとめふうま»の兄と弟から、尋常でない敵意を向けられることであった。ブラコンである彼らは、大切な彼と仲良くしている茂部を警戒しているのだ──そう考える茂部は悩みつつも、楓真と仲を深めていく。
友達関係を続けるため、たまに折れそうにもなるけど圧には負けない!!頑張れ、茂部!!
なお、兄弟は三人とも好意を茂部に向けているものとする。
7/28
一度完結しました。小ネタなど書けたら追加していきたいと思います。
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き
toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった!
※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。
pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/100148872
ミリしら作品の悪役令息に転生した。BL作品なんて聞いてない!
宵のうさぎ
BL
転生したけど、オタク御用達の青い店でポスターか店頭販促動画か何かで見たことがあるだけのミリしら作品の世界だった。
記憶が確かならば、ポスターの立ち位置からしてたぶん自分は悪役キャラっぽい。
内容は全然知らないけど、死んだりするのも嫌なので目立たないように生きていたのに、パーティーでなぜか断罪が始まった。
え、ここBL作品の世界なの!?
もしかしたら続けるかも
続いたら、原作受け(スパダリ/ソフトヤンデレ)×原作悪役(主人公)です
BL習作なのであたたかい目で見てください
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる