きっと来世もまた姫で

桜巫女

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キオク

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突然ですが、私は今とても困っています。
スティヤ王子と名乗るこの方、
私の事をなかなか諦めてくれません

“冷徹姫”と言われるほど、
私は素晴らしい程の塩対応をしてきて、
どんな王子様も私を諦めていったのに…

王子「あぁ…姫はとても美しい!」

「よく言われます」

王子「貴方のその顔、その瞳…その全てに惹かれました!!」

「会って間もない人の全てに?」

王子「えぇ!そうです!」

「馬鹿ですか?」

王子「姫!是非我が妃に…!」

「なりませんね」

王子「姫の為なら私は死ぬ事もできます!
今すぐにでも!」
「なら、今すぐそうして下さい」

王子「即答!!」

(はぁ…もう何なの、この人…すごく迷惑)

王子「…わかりました、今から死にます。姫はそこで見ていて下さい」

「え?」

すると王子は腰にぶら下げていた剣を取り出し首に近づけ、残り数ミリのところで手を止めた。

王子「それでは、3つ数えてから逝きます」

「え、ちょっと…」
(…冗談、よね?)

王子「ひとーーつ」

「王子様、冗談はやめて下さい」

王子「ふたーーつ」

王子はまるで聞こえていないかのように
カウントを続ける

(待って、本当に死ぬ気なの??)



『ふたーーつ!』




ーーードクンッ!!
 



(…?   今のは、何?)



『俺、姫子の為なら何でもできる』



ドクンッ  ドクンッ



『3秒カウントする。だから…』

「早く…止めな、きゃ……」


ーーポタッポタタッ


王子「みーー……姫…?」

気づいたら私はその剣を素手で止めていた。

王子「…離してください、このままでは死ぬ事ができません」

「…」

王子「姫のその艶のある美しく白い手が、赤く染まってしまいます」

「…」

王子「こんなに血を流して…痛いでしょう、早く離してください」

「…」

王子は姫に何を言って手を離すことはないと判断し、剣を自分の首から遠ざけ、
姫も自分の手を離した。

王子「姫…」


ドクッ、ドクッ


『姫子…』


ズキッ!!!!


「お願っ…もう、死ななっ、…で……」

物凄い吐き気と目眩が一気に襲い、
力が体中から抜けていく感覚がした後、
その場に倒れ込んでしまった。

王子「姫!!」

薄れていく意識の中、聞こえてきたその叫び声に、私は妙な懐かしさを感じながら
そのまま意識を手放した…
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