俺らの日常

黒崎星愛

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第一章

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「ねぇねぇ、あの子可愛いー!!」
「ほんとだー!隣の人もイケメーン!」

 もう聞き慣れた。世間では俺ら双子は顔がいいらしい。そのせいで毎日「可愛い」「美人」「かっこいい」「イケメン」等と言われ続け、言われ慣れてしまったのだ。
 そんな俺らには誰にも言えない秘密がある。俺らは人間ではないのだ。正確には人とヴァンパイアのハーフである。
 特に妹の彩華はヴァンパイアの血を多く受け継いでしまい、運動能力や学習能力が尋常じゃない。
 ちなみに俺は人間の血を多く受け継いだのでほぼ人間と変わらない。少し運動が得意なくらいだ。

「お兄ちゃん、そろそろ血が足んない…」
「もう一ヶ月経つからな。そろそろか」

 さっきも言ったとおり、彩華はヴァンパイアの血を多く受け継いだから月一で血を飲まないと飢えてしまうのだ。ただし、俺の血でも満足するので人を襲う必要は無いのだ。

「帰ったらくれてやるからあと少し我慢しろ」
「は~い…」

 彩華の顔が死にそうだ。これはちょっと間をあけすぎたな。さっさっと帰ってくれてやらないと彩華がぶっ倒れちまう…。

ーガチャ

「ただいま~」

ーダッダッダッダッ

「お兄ちゃん早くー!」
「着替えるからちょっと待て。お前も着替えろよー」
「はーい…」

「準備いー?」
「いいぞ。」
「それじゃ、いただきます!」

ーガブッ

「っつぅ…」

ーゴクッゴクッゴクッ…

「ぷはぁっ!あー、元気出たー!!ごちそうさまでした!」
「お粗末さまでした。飯は食うか?」
「もちろん食べる!」
「はいよ。」

 昔は妹が羨ましかった。俺より運動できるし勉強もできてたし。何よりかっこよくて憧れだった。
でも今は人間でよかったとつくづく思う。月一で血を飲まないと倒れるし、運動ができすぎると怪しまれるから調節しなきゃなんないし…。
まあ、彩華はそんなこと思ってないかもしれないけど…。

「彩華ー、ご飯できたぞー」
「はーい。今行くー」

「わー!今日はハンバーグだ!やっぱお兄ちゃんは分かってるね!」
「今月は無理させたからな。お詫びだ。」
「お詫びとか別にいいのに。ギリギリまで言わなかったあたしも悪いし…」
「いや、お前無理するから俺が気づいてやらないとギリギリまで我慢するじゃん」
「だってお兄ちゃんだって血飲まれるの辛いでしょ?」
「いや、そうだけど…。お前が倒れたほうが大変なんだから辛くなったらすぐ言えよ?」
「うん。」

 ヴァンパイアの父さんは人が多いところにはいられない。だから父さんと母さんは人がいない山に二人で暮らしている。
 俺達は人間の血も混じっているし大丈夫だろうということで学校のためにも人が多いところで暮らしている。
 母さんや父さんがいない分、家事を二人でやらなきゃいけないのだが…。なんでもできるはずの妹は家事だけは苦手としているのだ。だから俺が料理、洗濯、片付け等家事を全て行っている。
 そのせいで毎日が忙しい…

「彩華ー、風呂できたぞー。」
「あーい。」

 彩華が風呂に入っている時間は一時間。その間俺は勉強をしなくてはならない。その後風呂に入り、寝る。俺に暇な時間などないのだ。ほんと毎日疲れる。家政婦でも雇いたいものだ…。




 
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