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Cadenza 乙女心 ②
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王としての立場ってのは、そりゃぁ…わかるよ?
大見栄はってさ、この後は時間が必要で、その現場を見られたくないって意味を込めて侍女に休めと言ったんでしょ?
たぶん、だけどさ、侍女は休めと言われたとしても、そういった声や音が聞こえたとしても我関せずに王の傍で何時呼ばれても良い様に近くで待機してるんだろうね。
他にも理由がある、こんな夜更けにこっそりと足を運んで(夜間と言えど、王が席を外すということは当然、多くの方が目撃している可能性が高い)手土産も相手が喜ぶものをしっかりと用意して持ってきて、わざわざ、呼びつけることなく王が足を運んだというのに、相手の機嫌を損ねて直ぐに帰らされたとあっては、ね?
恥ということになる。
漢の見栄と、王としての見栄ってやつね…それ、私に関係ないんだけど?
ああもう、めんどくせぇなぁ、なんで私がそんなのに付き合わないといけないの?早く帰れよ!
帰れつっても帰らないのであれば
「わかった!私から何も言わん!共に過ごしたいのなら、其方が私を持て成してくれてもいいんじゃない?」
「っふ、酔狂な女よ、王に持て成せと?」
出来るわけがない条件を付きつければ、嫌気がさして帰るでしょ?傲慢で我儘でプライドの高い王様はね!
「では、暫しの間、語ってやろう」
予想と反して穏やかな口調で了承されてしまう。
瞬時に察してしまう、この流れがめんどくさい事に。
っげ!?自分語り!?一番興味ねぇってそれ!!
「とは、言ったものだが何を語ってやろうか」
ふぅむと顎を触りながら目線を天井へと向けている。
む?てっきり、直ぐにでも始まると思ったんだけど?
武勇伝でも自分のプライドを誇らしげに語るのかと思ってたら、お前…さては奥様とも普段まともに会話してねぇだろ?
目を細め、天井を見つめている世間話が苦手な世間知らずに助け舟でも出してやるかと、心の中でやれやれだぜっと呆れたポーズをとってしまう。
仕方ねぇなぁ…どうせ、時間が過ぎるまで居るのなら、答えにくい話題でもぶつけてやるか!
「知ってると思うけれどさ、私ってさ、長生きできないじゃん?」
「っふ、何を言う、子供が大きくなって巣立つほどに長生きしてるのは幻とでもいうのか?」
私も思ったよ!途中からね!私めっちゃ長生きしてんじゃんって思ったよ。
「訂正!私達の一族って長生きできないでしょ?」
「食が豊かになり医療も育った、その様な憂いなにを」
違う!私が言いたい本題なのはこの先!途中で口を挟むない!
静かに聞いて!っと視線を向けると意に介することなく優雅にカップに口づけをしている。
「だからさ、お母様とは早くに…月の裏側へと旅立たれてしまったんだけど、君は違うでしょ?」
「君っか…良いな、良い、今後俺の事はそう親しみを込めて呼ぶがよい」
うんうんっと首を縦に緩やかに振って穏やかな表情しちゃって!しまったなぁ…馴れ馴れしくしすぎたかも!
「今宵の俺は口が滑るだろう、未来を共に歩む伴侶が傍にいるのだからな、故に、口止めをするつもりは無い、お前はもう俺の身内だ、他言無用の内容を語ってやろう」
はい!自ら地雷を踏んでいくぅ!!
しまった!!
答えにくい話題ってのは外に漏らしてはいけない内容じゃん!!初手からやらかした!!
「王家はな、早い段階で母上との接触は絶たれるのが習わしだ、理由なぞ至極当然、想像するが易し…愛から、純粋な願いからでは、王家という一族は子を宿らせない。全ては血の繋がり、王家の秘宝を継ぐこと、その一点のみだ、それゆえに王家の継承は才を示したものが自然と席を継ぐ」
うん、それは知ってる。貴族であれば知らない人はいない。これが他言無用なの?
ってか、接触を断たれたところで?今何をしているのかくらい、知ってるでしょ?
「そこからわかるであろう?現王の子を生した後は、好きな人と結ばれようが王は知らぬ存ぜぬだ。王妃?そんな席はない。我々はな…才を示さなければ、王家の秘宝と呼ぶにふさわしいと周囲を認めさせなければな、実の母で在ろうと、敵となる、愛ゆえに殺しに来ることだってあるのだ。そして、その逆も然り、恐怖故に己の肉親で在ろうと手にかける」
ここが他言無用の部分ってことか…王家ってそんなに酷い世界なんだ。
「君はさ、殺されそうになったの?」
「あるわけなかろう?この我が死を覚悟したのは…最初で最後、お前だけだ、何時なん時思い返したとしても…あの一件、本当に死を覚悟したぞ」
…私自身も殺すつもりだったしなぁ、だって、恨み辛みあるからってのもあるけれど、お前を生かしておくと危険だって思っていたんだもん。
あの時にさ、君が王という名の傀儡になる、その決断をしなかったら殺していたよ、容赦なくね。
誇り高きプライドを捨ててでも生にしがみつき、その場に残ったからこそお前は生きている…
叔母様にしたことは断罪すべきだけど…君は知らないからね、そこだけが温情かな?
プライドによってその席を捨て外に逃げたら、何をしでかすかわからないからね、容赦なく殺すつもりだったもん、最悪、お爺ちゃんが敵になったとしても、私は殺すつもりだったんだけど、最終局面でお爺ちゃんの方から介錯するようなことがあれば、俺に声を掛けて欲しいって頭を下げられちゃったりもしたっけな。
「それじゃぁさ、君はお母様にお会いしようと思えばお会いできるんじゃないの?」
「っふ、この年齢で顔を逢わせて何とする?世継ぎも問題なく母上は腕に抱いたことがある。俺には用なぞ無い。今頃は、王宮の何処かで誰かの傍に居るだろう、その傍には、俺がいる必要性は皆無だ、生きているのか死んでいるのか知らぬ、俺の中に母という存在は要らぬ、故に死んでいる」
価値観が違うんだろうなぁ。私だったら毎日だって逢いに行くのに。
「寂しがりのくせに」
「・・・否定はせん、全ての責務を終え、最後の試練に望むべく、あの空虚な椅子に座り月へ問うた。だが、月は答えを示さない、示したのは黄金の太陽、始祖よりも前、王家を導いた神聖なる神の御使い、それを模した甲冑が俺に答えを示してくれた」
ぉ、おう、っとしか言えねぇ、比喩表現が多いんだっての!!
「どうして寂しがりなんて言われたのに否定しないの?」
「はは、お前とこうやって席を設けている時点で察するがよい」
察しれねぇよ!!爽やかな笑顔で笑うんじゃねぇよ!邪悪な顔つきの癖に!
…少年みたいでちょっと、可愛いって思っちまったじゃねぇかよ。王家の血筋は美形ぞろいだからなぁ!
「誰もな、俺の孤独を紛らせてくれる存在なぞ無かった、産まれ我を得た時からずっとだ。だがな、その孤独も終わりを告げるのだと、苦悩の思いで王の席に座らされたのだがな。玉座に座り、俺にどの様な難題を押し付けてくるのかとこめかみが震え続ける日々だったさ、されど、お前は俺に何も言わない。故にだ、寂しがりの俺は、お前に悪戯を仕掛けたのさ、これくらいの自問自答くらい出来てこそ王の器よ」
寂しいからって、下手すると命を落としかねない悪戯はやめろよ…
「はいはい、王の器として過激な悪戯は控えてよね」
「若い頃はともかく、今となっては、お前が王城に来ない限り何もしなかっただろう?」
確かにそうだわ、今代の記憶だとそういう感じだわ…だから、行きたくなかったんだった。
僅かな笑みを浮かべながら、此方を流し目で見てくる余裕の態度
その余裕の態度がさ、ちょっと、気になってくるじゃん
だって、私の時は、お前ってやつは、完全に王城に引きこもっていたのにね。
今にして思う、何であんなにも弱々しかったんだ?
…私が相手をしなかったから?鬱にでもなった?とか?
っは、自分で思っておきながら笑ってしまうよ、そんなやわな精神構造してないだろこいつ。
っま、どうでもいいか…滅んだ世界だし…
胸がチクリと痛み、泥の奥からも悲しみが伝わってくる。
その胸の痛みを直視することなく会話を続ける。
「君はさ、月の信仰じゃないの?っていうか王族は聖女でもなく始祖様でもなく、王家振興が一番なの?」
「当たり前で在ろう?始祖?あのような血…愚かにばら撒いてどれ程の被害、どれ程の死者をだした?崇めたてるわけがない、だが、力こそ王家の象徴、利用させてはもらってはいる。その点だけは、認めている、わかりやすい象徴故に他も御しやすくなる、聖女という脇役より利用価値が高い、それだけだ」
その軽率な発言に泥の奥から火が灯ろうとする
ほぉん?それを私に言っちゃうんだ?
始祖様に感謝し感謝し感謝し続けている私に対して始祖様に対して不敬で不遜な態度…
それだけじゃなく、聖女たちが脇役だぁ!?
彼女…達がどれだけ、虐げられていたのか!どれだけ…自由が無かったのか!って言ってやりたいけれど。
灯ろうとした火も直ぐに宥められてしまう、王族の境遇を知っているから。
王族も似たような境遇、ってことだよね。強く言えねぇや。
「白き黄金の太陽は、王家としては特別ってこと?」
「白き?…英雄譚ではそう表現していたのだったか?王家としては王都を興す際に聖女と共に深く関わっている力の象徴だ、戦慄するような強大な力、恋焦がれる乙女のように熱い想いを抱くのは至極当然、極めて単純、その象徴を忘れないために熱い血潮を失わないために、玉座の近くに金色の鎧が飾られているであろう?」
…ぁったよぅな?正直、覚えて…ないなぁ…
「っふは、お前もその様な顔をするのだな、よいよい、今宵は良い夜だ、今宵ばかりは月の導きとやらに感謝だな」
眉間に皺を寄せて唇を尖がらせて思い出そうとしてただけだい!っく、何なの?今日は偉い、ご機嫌じゃん。
楽しそうにわらっちゃってさ…
そうやってさ、眉間に皺を寄せないで自然体で居れば、もう少し君の周りに人が居たんじゃないの?
…出来なかったんだろうなぁ、王家ってやつは、一度解体するべきなんだろうね。闇が深そう。
「はは、あるのだよ。彼の鎧を模して…故に我ら王族は戦場に出る時は目立とうが何だろうが、黄金の鎧を身に纏うのが仕来り…ではないが、彼の力を少しでも分けてもらう為に纏う」
金なんて王族からすればすぐ手に入る素材だから重宝なんてしやしない、そういった特別な意味、想いがあるから金色にしてるってことかな?鎧としては金なんて錆びないくらいしか利点無くない?
「金で出来てるの?厚みは?重くない?」
「機能性の事を考えているのであれば、安心しろ、純金製ではないわ、金色に見える様に細工しているのでな、当然、我が着る鎧は最新式の合金で造られている、地上最強の彼の剣ですら切り裂けぬであろうな」
自慢げに語ってるその表情を曇らせる一言が思い浮かんでしまうが、黙っておく。
女将の事を引き合いに出さない辺り、女将の剛腕から繰り出される全てを粉砕する鉄槌には耐えられないんだろうね。
大見栄はってさ、この後は時間が必要で、その現場を見られたくないって意味を込めて侍女に休めと言ったんでしょ?
たぶん、だけどさ、侍女は休めと言われたとしても、そういった声や音が聞こえたとしても我関せずに王の傍で何時呼ばれても良い様に近くで待機してるんだろうね。
他にも理由がある、こんな夜更けにこっそりと足を運んで(夜間と言えど、王が席を外すということは当然、多くの方が目撃している可能性が高い)手土産も相手が喜ぶものをしっかりと用意して持ってきて、わざわざ、呼びつけることなく王が足を運んだというのに、相手の機嫌を損ねて直ぐに帰らされたとあっては、ね?
恥ということになる。
漢の見栄と、王としての見栄ってやつね…それ、私に関係ないんだけど?
ああもう、めんどくせぇなぁ、なんで私がそんなのに付き合わないといけないの?早く帰れよ!
帰れつっても帰らないのであれば
「わかった!私から何も言わん!共に過ごしたいのなら、其方が私を持て成してくれてもいいんじゃない?」
「っふ、酔狂な女よ、王に持て成せと?」
出来るわけがない条件を付きつければ、嫌気がさして帰るでしょ?傲慢で我儘でプライドの高い王様はね!
「では、暫しの間、語ってやろう」
予想と反して穏やかな口調で了承されてしまう。
瞬時に察してしまう、この流れがめんどくさい事に。
っげ!?自分語り!?一番興味ねぇってそれ!!
「とは、言ったものだが何を語ってやろうか」
ふぅむと顎を触りながら目線を天井へと向けている。
む?てっきり、直ぐにでも始まると思ったんだけど?
武勇伝でも自分のプライドを誇らしげに語るのかと思ってたら、お前…さては奥様とも普段まともに会話してねぇだろ?
目を細め、天井を見つめている世間話が苦手な世間知らずに助け舟でも出してやるかと、心の中でやれやれだぜっと呆れたポーズをとってしまう。
仕方ねぇなぁ…どうせ、時間が過ぎるまで居るのなら、答えにくい話題でもぶつけてやるか!
「知ってると思うけれどさ、私ってさ、長生きできないじゃん?」
「っふ、何を言う、子供が大きくなって巣立つほどに長生きしてるのは幻とでもいうのか?」
私も思ったよ!途中からね!私めっちゃ長生きしてんじゃんって思ったよ。
「訂正!私達の一族って長生きできないでしょ?」
「食が豊かになり医療も育った、その様な憂いなにを」
違う!私が言いたい本題なのはこの先!途中で口を挟むない!
静かに聞いて!っと視線を向けると意に介することなく優雅にカップに口づけをしている。
「だからさ、お母様とは早くに…月の裏側へと旅立たれてしまったんだけど、君は違うでしょ?」
「君っか…良いな、良い、今後俺の事はそう親しみを込めて呼ぶがよい」
うんうんっと首を縦に緩やかに振って穏やかな表情しちゃって!しまったなぁ…馴れ馴れしくしすぎたかも!
「今宵の俺は口が滑るだろう、未来を共に歩む伴侶が傍にいるのだからな、故に、口止めをするつもりは無い、お前はもう俺の身内だ、他言無用の内容を語ってやろう」
はい!自ら地雷を踏んでいくぅ!!
しまった!!
答えにくい話題ってのは外に漏らしてはいけない内容じゃん!!初手からやらかした!!
「王家はな、早い段階で母上との接触は絶たれるのが習わしだ、理由なぞ至極当然、想像するが易し…愛から、純粋な願いからでは、王家という一族は子を宿らせない。全ては血の繋がり、王家の秘宝を継ぐこと、その一点のみだ、それゆえに王家の継承は才を示したものが自然と席を継ぐ」
うん、それは知ってる。貴族であれば知らない人はいない。これが他言無用なの?
ってか、接触を断たれたところで?今何をしているのかくらい、知ってるでしょ?
「そこからわかるであろう?現王の子を生した後は、好きな人と結ばれようが王は知らぬ存ぜぬだ。王妃?そんな席はない。我々はな…才を示さなければ、王家の秘宝と呼ぶにふさわしいと周囲を認めさせなければな、実の母で在ろうと、敵となる、愛ゆえに殺しに来ることだってあるのだ。そして、その逆も然り、恐怖故に己の肉親で在ろうと手にかける」
ここが他言無用の部分ってことか…王家ってそんなに酷い世界なんだ。
「君はさ、殺されそうになったの?」
「あるわけなかろう?この我が死を覚悟したのは…最初で最後、お前だけだ、何時なん時思い返したとしても…あの一件、本当に死を覚悟したぞ」
…私自身も殺すつもりだったしなぁ、だって、恨み辛みあるからってのもあるけれど、お前を生かしておくと危険だって思っていたんだもん。
あの時にさ、君が王という名の傀儡になる、その決断をしなかったら殺していたよ、容赦なくね。
誇り高きプライドを捨ててでも生にしがみつき、その場に残ったからこそお前は生きている…
叔母様にしたことは断罪すべきだけど…君は知らないからね、そこだけが温情かな?
プライドによってその席を捨て外に逃げたら、何をしでかすかわからないからね、容赦なく殺すつもりだったもん、最悪、お爺ちゃんが敵になったとしても、私は殺すつもりだったんだけど、最終局面でお爺ちゃんの方から介錯するようなことがあれば、俺に声を掛けて欲しいって頭を下げられちゃったりもしたっけな。
「それじゃぁさ、君はお母様にお会いしようと思えばお会いできるんじゃないの?」
「っふ、この年齢で顔を逢わせて何とする?世継ぎも問題なく母上は腕に抱いたことがある。俺には用なぞ無い。今頃は、王宮の何処かで誰かの傍に居るだろう、その傍には、俺がいる必要性は皆無だ、生きているのか死んでいるのか知らぬ、俺の中に母という存在は要らぬ、故に死んでいる」
価値観が違うんだろうなぁ。私だったら毎日だって逢いに行くのに。
「寂しがりのくせに」
「・・・否定はせん、全ての責務を終え、最後の試練に望むべく、あの空虚な椅子に座り月へ問うた。だが、月は答えを示さない、示したのは黄金の太陽、始祖よりも前、王家を導いた神聖なる神の御使い、それを模した甲冑が俺に答えを示してくれた」
ぉ、おう、っとしか言えねぇ、比喩表現が多いんだっての!!
「どうして寂しがりなんて言われたのに否定しないの?」
「はは、お前とこうやって席を設けている時点で察するがよい」
察しれねぇよ!!爽やかな笑顔で笑うんじゃねぇよ!邪悪な顔つきの癖に!
…少年みたいでちょっと、可愛いって思っちまったじゃねぇかよ。王家の血筋は美形ぞろいだからなぁ!
「誰もな、俺の孤独を紛らせてくれる存在なぞ無かった、産まれ我を得た時からずっとだ。だがな、その孤独も終わりを告げるのだと、苦悩の思いで王の席に座らされたのだがな。玉座に座り、俺にどの様な難題を押し付けてくるのかとこめかみが震え続ける日々だったさ、されど、お前は俺に何も言わない。故にだ、寂しがりの俺は、お前に悪戯を仕掛けたのさ、これくらいの自問自答くらい出来てこそ王の器よ」
寂しいからって、下手すると命を落としかねない悪戯はやめろよ…
「はいはい、王の器として過激な悪戯は控えてよね」
「若い頃はともかく、今となっては、お前が王城に来ない限り何もしなかっただろう?」
確かにそうだわ、今代の記憶だとそういう感じだわ…だから、行きたくなかったんだった。
僅かな笑みを浮かべながら、此方を流し目で見てくる余裕の態度
その余裕の態度がさ、ちょっと、気になってくるじゃん
だって、私の時は、お前ってやつは、完全に王城に引きこもっていたのにね。
今にして思う、何であんなにも弱々しかったんだ?
…私が相手をしなかったから?鬱にでもなった?とか?
っは、自分で思っておきながら笑ってしまうよ、そんなやわな精神構造してないだろこいつ。
っま、どうでもいいか…滅んだ世界だし…
胸がチクリと痛み、泥の奥からも悲しみが伝わってくる。
その胸の痛みを直視することなく会話を続ける。
「君はさ、月の信仰じゃないの?っていうか王族は聖女でもなく始祖様でもなく、王家振興が一番なの?」
「当たり前で在ろう?始祖?あのような血…愚かにばら撒いてどれ程の被害、どれ程の死者をだした?崇めたてるわけがない、だが、力こそ王家の象徴、利用させてはもらってはいる。その点だけは、認めている、わかりやすい象徴故に他も御しやすくなる、聖女という脇役より利用価値が高い、それだけだ」
その軽率な発言に泥の奥から火が灯ろうとする
ほぉん?それを私に言っちゃうんだ?
始祖様に感謝し感謝し感謝し続けている私に対して始祖様に対して不敬で不遜な態度…
それだけじゃなく、聖女たちが脇役だぁ!?
彼女…達がどれだけ、虐げられていたのか!どれだけ…自由が無かったのか!って言ってやりたいけれど。
灯ろうとした火も直ぐに宥められてしまう、王族の境遇を知っているから。
王族も似たような境遇、ってことだよね。強く言えねぇや。
「白き黄金の太陽は、王家としては特別ってこと?」
「白き?…英雄譚ではそう表現していたのだったか?王家としては王都を興す際に聖女と共に深く関わっている力の象徴だ、戦慄するような強大な力、恋焦がれる乙女のように熱い想いを抱くのは至極当然、極めて単純、その象徴を忘れないために熱い血潮を失わないために、玉座の近くに金色の鎧が飾られているであろう?」
…ぁったよぅな?正直、覚えて…ないなぁ…
「っふは、お前もその様な顔をするのだな、よいよい、今宵は良い夜だ、今宵ばかりは月の導きとやらに感謝だな」
眉間に皺を寄せて唇を尖がらせて思い出そうとしてただけだい!っく、何なの?今日は偉い、ご機嫌じゃん。
楽しそうにわらっちゃってさ…
そうやってさ、眉間に皺を寄せないで自然体で居れば、もう少し君の周りに人が居たんじゃないの?
…出来なかったんだろうなぁ、王家ってやつは、一度解体するべきなんだろうね。闇が深そう。
「はは、あるのだよ。彼の鎧を模して…故に我ら王族は戦場に出る時は目立とうが何だろうが、黄金の鎧を身に纏うのが仕来り…ではないが、彼の力を少しでも分けてもらう為に纏う」
金なんて王族からすればすぐ手に入る素材だから重宝なんてしやしない、そういった特別な意味、想いがあるから金色にしてるってことかな?鎧としては金なんて錆びないくらいしか利点無くない?
「金で出来てるの?厚みは?重くない?」
「機能性の事を考えているのであれば、安心しろ、純金製ではないわ、金色に見える様に細工しているのでな、当然、我が着る鎧は最新式の合金で造られている、地上最強の彼の剣ですら切り裂けぬであろうな」
自慢げに語ってるその表情を曇らせる一言が思い浮かんでしまうが、黙っておく。
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