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Cadenza 戦士達 ⑯
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明るい表情で!さっきの血の気の引いた顔はどこいったんだってーの
抱きしめていた奥様を離し手を繋いだまま凛々しい顔つきで晴れ晴れとした表情、吹っ切れたのかな?
ふぅっと鼻から小さな溜息が零れる、No2が彼の事を坊やって呼ぶのもちょっとわかっちゃったかも。
坊やの顔を眺めていると唇が動き始める、まだ何か言う事があるの?
「そもそもである!吾輩は気が付いたのである、全てが終わった後に、姫様と同じのを施してもらえばよいのである!」
自信満々に唇を動かして語ってくれるけど、ぇ?何を施すの?
「封印術式を全員に、ですよね」
後ろからわかってる様な空気を纏った声と内容にその手もあるっと、納得してしまう、いや、違う。
ベテランさんも団長も、その先を見据えている。
そうだよ、ね、貴方達は私と違って、この先を見据えてもいい時間がある。
「そっか、全ての元凶を倒してしまえば、魔力を放出する必要性はないってことか」
ボスを潰した後に待っている獣の残党共であれば、魔力を放出しなくても彼らなら対処できる。
問題があるとすれば、これを施すことによって日常で些細な魔道具が使えないのと、何処まで寿命を取り戻すことが出来るのが未知数ってのと、施す為に必要な触媒、魔力濃度の高い血液、それもかなりの量が必要ってことくらいか。
団長に関しては私と同じ内容で術を施したとしてもある程度は魔道具を扱えれるんじゃないかな?
他のメンバーは無理だろうね。
触媒の問題、血液だったら培養できるんだけど、それに魔力を込めるってのは出来るのかなぁ?
No2だけじゃ絶対に足りないよなぁ…
「そうである!リミットが2週間というのであれば、1週間で終わらせれば万事解決っということである!!一週間もあれば姫様が我々を救ってくれるのである!!」
確かにそうだけど…一週間で魔力を込めた血液なんて出来るのかなぁ?
…うん、出来るのか出来ないのかじゃない、やるんだ。
やるしかないんだよね。
きっと、長やNo2、それに団長であればやってのけてくれるよね?
ベテランさんには申し訳ないけれど、私の命が何処まで持つのかわからないから、確約なんて出来やしない、それでも
「うん、出来る限りやってみせるけれど、間に合う保証はないよ?」
一週間で触媒を用意しきる何て出来やしない、今からでもNo2に頼めば…うん、一人分は作れる。女将に関してはちょっとぎりたらないかも?
「たぶんだけど、今から準備すれば一週間後には一人分は用出来るかも?」
「命の順番を選べというのであれば、吾輩は一番最後で良いのである」
「あにいってんだい!最後はあたいでいいよ!」
「そうですよ!師匠が…ベテランさんよりも僕が一番最後です」
「私です!」
真実をうっかりとこぼしてしまうと謙虚な命の譲り合いが始まる。
この手の討論は終わりを迎える事なんて無い!なので早々に断ち切る
「はい!ストップ、その辺りに関しては各々の症状や段階によって医療班が生命危機に陥っている順番で決めさせてもらうからね」
手を叩きながら宣言すると後ろから小さく押し付けられた?っという呟きが聞こえてくる。
っふ、妹め勘が鋭いじゃん、もろに押し付けたよ?にしし。
この流れで更に伝えておく、本当な音として外に出したくないんだけど。
「後!皆の心意気は凄く助かるんだけど、問題があって、この改造手術が出来るのは5名迄なんだよね」
私は背中に魔道具を取り付けるだけだから簡単なんだけど
他の4名達は浸透水式で行わないといけないからね。
そもそも用意されている魔道具が五つまでしかないんだよね
「そうで、あるか?」「あたいはてっきり」「主戦力となる人物全員分用意されているのとばかり」
各々が私に寄せている期待がどれ程、大きいのか伝わってくる。
今代の私は常にこの期待を背負い全て応えてきたんだろうなぁ。
「ごめんね、材料的に五つまでしか用意できなかったの」
こう言っておけば技術的に知り得ない人達は納得せざるを得ない!
技術屋だからこそできる逃げ方だぜぃ!にしし。
「姫ちゃんが謝ることじゃねぇよ、きっと何時もみたいに表にださねぇで奮闘してくれたんだろぉ?」
「そうであるな、吾輩も夢で見て姫様が如何に我々を支えてくれていたのか知ったのである」
分厚くて何重にも重ねられる信頼が心を締め付けてくるや
視線を逸らしたくなる衝動に駆られてしまうが、姫様として受け止め続けないとね。
っさ、話の続きをしよう。
「数に限りがあるから、対象者として今のところ、決まっているのが私と、団長は決まり、かな?あと、その、枠が三つあるんだけど」
「一つ、席が足りないっというわけですね」
此方が言い淀んだ言葉を的確に突いてくる。流石はティーチャーくんだね。
「っそ、女将、ティーチャー、ベテラン、閃光姫だと合計で6個居るんだよね」
この四名のうち誰を候補から外すのか、それが難しい。
私と団長が確定なのには明確な理由がある。
全体を見て、無限の魔力によってありとあらゆる術式を使って補佐するのであれば、私って必須でしょ?
っで、怪我した人たちを瞬時に回復したりする為にかなりの魔力が必要だから、それらを扱いきれて知識があって、敵と戦えれる人ってなると団長しかいないじゃん?
この二つが要だから、私と団長は絶対に必要だしなぁ
「質問である!姫様と団長は絶対なのであるか?理由を聞いても良いであるか?」
作戦に関して疑問があれば直ぐに聞く、私の教えを実行できるくらいベテランさんのやる気が満ちているのがわかる、伝わってくるよ、決意を。
普段だったら、姫様の言うとおりにしていればいいのであるって感じだもんね。
先の質問に答えを提示すると
「むぅ、確かに、彼のような理由、吾輩も納得である、二人は必須であるな」
「そうさぁね、でもよぉ。司令官が前に出るってのは良くないんじゃねぇのかい?全体を見渡す役目はしなくてもいいのかい?」
そのご意見はごもっとも、本来、司令官が前へ出るなんて愚の骨頂だけど、今回に関しては敵の頭を仕留める事こそが絶対的勝利条件だからね、長期戦は不利にある、懸念点もあるから、あいつの言葉、思い出したくない反吐が出る記憶と共に思い起こされてしまう…
あの糞ドラゴンをぶち殺すのは私の役目だから…
っという、私情を挟むつもりはない。
冷静の心を落ち着かせる、司令官として私情は挟まない、今回のミッションは殲滅じゃない、頭を潰す事。
人類の最も最大である脅威を潰す事。
現実的に考え直しても長期戦はダメ。
今回の作戦は長期戦を想定していないからこの街で指揮を飛ばしてたら対処に追い付かなくなる、司令官も常に戦場を見渡せる位置、最前線で的確に指示を飛ばし続けないといけない、彼らのサポートをしたほうが、うん、成功確率が高くなる。
守るだけなら、この砦は一週間くらいなら持ちこたえてくれる、はず。
守るのは今代の私が鍛えぬいたであろう騎士部隊や術式部隊に任せればいい。
でも、これ以上、幾ら大地から離れているとはいえ、ここで音として出し続けるのは良くない、かな?
「えっとね、作戦の全容を伝えるのは、今は、ちょ~っと、待って欲しいかな」
何処で誰が聞き耳を立てているかわかったもんじゃないからね
「そうであるな、ここは嫌な視線を感じるのである」
うんうんっと腕を組んで戦士達全員が頷いている、さすがだね。
「みんなの決意は受け取ったから、今日の、夜にでも報告するから、えっと、会議室で、良いかな?号令を出すから集まってもらっても良いかな?」
「ああ!」「わかったのである」「はい!」「・・・!」
各々が力強く返事をして女将から順番に階段を下りていく。
ティーチャーくんが一礼してから下りていき、次はベテランさんの番となったとき「ぁ」唐突な閃きがベテランさんに舞い降りたのか小さな声を出し
「うっかり忘れるところだったのである、聞きたいことがあるのである」
回れ右よろしく、此方へと向きを戻すと奥様も彼の隣に立ち不思議そうな顔でベテランさんの顔を見上げながらベテランさんの手を握っている。
「して、戦士長と、二人のお子は何処にいるのであるか?戦士長がそもそも候補に居ないのはどういうことであるか?あと、あの強靭な力を持つお子が居れば…情けないと幾らでも罵ってもらっても構わないのである、先に待ち受ける途方もない戦場に、子供を戦場へと向かわせ死の大地を経験させるのは良くないという姫様の想いも解るのである!が!この状況であるお子らのメンタルであれば吾輩達が全力でケアをするのである、戦力があるのであれば四の五の言ってられないのではないのであるか?」
言葉の内容で思い出してしまう、彼は間が悪いのだと。
…ぁ、戦士長との対話、ベテランさんだけやってないのか
もう一度、愛する旦那に向けて泥の奥へと呼びかけてみるが返ってくる様子が無い…
後ろを振り返ると団長も小さく首を横に振る。
どうやら、魔力的に厳しいって感じかな?
「戦士長については女将とティーチャーくんに聞いてもらっても良いかな?」
「ふむ、そうであるか、わかったのである。して、二人のお子は?」
二人のお子って誰?誰の事を言ってるんだろう?
子供ってなると、スピカと長のとこに産まれた子供?戦力にならないよね?赤ちゃんだもん。
私が気が付いていないだけで、王都で神童とか産まれたりしてたっとか?
分からないのは聞いてみるのが一番ってね。
「それって誰のこと?」
「っむ?…そうか、あの場に姫様はいなかったのであったな、かいつまんで説明するのである」
ある夢の一節で、ベテランさんが街を守るために門の前で戦い続け、事切れる最後の最後、死の間際に見た、鮮烈なる光景
襲い掛かってくる獣の軍全を瞬時に滅ぼした少年
その少年の後ろを付いていく一人の幼げな、恐らく少女、それだけではなく見たことのない槍を持っていた。
この少ない情報だけで、わかってしまう。
少年は、名も無き弟…スピカだ。
そして、槍を持った少女、団長だ。
二人が私亡きあとに試験管から出て戦いに出たのだろう。
困ったことに、これは私ならわかるけど、ベテランさんに伝えるとなると途方もない時間が必要となる。
っであれば!簡潔にいく!
「えっと、夢とこっちでは色々と違うってのは覚えておいてね?この前提大事だから」
「もちろんである」
頷いてくれるのは良いんだけど、本当に信じてくれるのかな?
一抹の不安を感じながらも彼らの素性を説明すると
「…ぇ?あのお子は、神へと思えてしまう程の力を持つ人物がNo2のお子で、もう一人の少女が団長、っで、ある、っか?」
驚くのも無理が無いよね、ベテランさんが見た年齢と今代では不一致すぎるからね。
「っそ、私が秘密裏に彼らの体を培養してたんだよ。長い時間をかけてね。戦いの無い平和な日が訪れたら二人は二人の人生を歩んでもらいたくてね」
つい視線を逸らして俯いてしまう、彼らに戦いの無い人生を贈りたかったのに出来なかったことが悔い悔やまれてしまう。
「では、戦士長…いや、失言である。あいわかったのである、その疑問だけでも、そうで、あるか、あの二人の内一人は此方に、一人はまだ赤子であるか、そう」
そうであるかぁっと吐息と共に漏れた音が空へと昇っていく。
ベテランさんとしては一縷の望み、スピカの存在は救いの光だったのかもしれない、希望を壊してしまったかもしれないと心配そうに見つめていると
「そうであるな!あのお子が尊敬する戦士長とNo2のお子であるのであれば!守るが弟子としての務めである!!うむ!戦士長のお子であれば、我ら戦士一同、総意である!あのお子は我らが誇りである!ここで恩師に恩を返せずどう返せというのであるか!」
「・・・!!」
手を繋いだ奥さんが激しく頷いている。
「…はぁ、こんな気持ちになるのは初めてである。吾輩が抱えていた全ての憂いは無くなったのである、この境地こそ、っであるか」
晴れやかにその表情から伝わってくる未来を真っすぐに見つめているのだと。
「話せてよかったのである、では、失礼するのである」
大きく頭を下げてから、奥さんの手を握りしめながら階段を下りていく。
奥様も去り際に小さく一礼を送ってくれる。
別にお礼を言われるような事なんてしてないんだけどね。
抱きしめていた奥様を離し手を繋いだまま凛々しい顔つきで晴れ晴れとした表情、吹っ切れたのかな?
ふぅっと鼻から小さな溜息が零れる、No2が彼の事を坊やって呼ぶのもちょっとわかっちゃったかも。
坊やの顔を眺めていると唇が動き始める、まだ何か言う事があるの?
「そもそもである!吾輩は気が付いたのである、全てが終わった後に、姫様と同じのを施してもらえばよいのである!」
自信満々に唇を動かして語ってくれるけど、ぇ?何を施すの?
「封印術式を全員に、ですよね」
後ろからわかってる様な空気を纏った声と内容にその手もあるっと、納得してしまう、いや、違う。
ベテランさんも団長も、その先を見据えている。
そうだよ、ね、貴方達は私と違って、この先を見据えてもいい時間がある。
「そっか、全ての元凶を倒してしまえば、魔力を放出する必要性はないってことか」
ボスを潰した後に待っている獣の残党共であれば、魔力を放出しなくても彼らなら対処できる。
問題があるとすれば、これを施すことによって日常で些細な魔道具が使えないのと、何処まで寿命を取り戻すことが出来るのが未知数ってのと、施す為に必要な触媒、魔力濃度の高い血液、それもかなりの量が必要ってことくらいか。
団長に関しては私と同じ内容で術を施したとしてもある程度は魔道具を扱えれるんじゃないかな?
他のメンバーは無理だろうね。
触媒の問題、血液だったら培養できるんだけど、それに魔力を込めるってのは出来るのかなぁ?
No2だけじゃ絶対に足りないよなぁ…
「そうである!リミットが2週間というのであれば、1週間で終わらせれば万事解決っということである!!一週間もあれば姫様が我々を救ってくれるのである!!」
確かにそうだけど…一週間で魔力を込めた血液なんて出来るのかなぁ?
…うん、出来るのか出来ないのかじゃない、やるんだ。
やるしかないんだよね。
きっと、長やNo2、それに団長であればやってのけてくれるよね?
ベテランさんには申し訳ないけれど、私の命が何処まで持つのかわからないから、確約なんて出来やしない、それでも
「うん、出来る限りやってみせるけれど、間に合う保証はないよ?」
一週間で触媒を用意しきる何て出来やしない、今からでもNo2に頼めば…うん、一人分は作れる。女将に関してはちょっとぎりたらないかも?
「たぶんだけど、今から準備すれば一週間後には一人分は用出来るかも?」
「命の順番を選べというのであれば、吾輩は一番最後で良いのである」
「あにいってんだい!最後はあたいでいいよ!」
「そうですよ!師匠が…ベテランさんよりも僕が一番最後です」
「私です!」
真実をうっかりとこぼしてしまうと謙虚な命の譲り合いが始まる。
この手の討論は終わりを迎える事なんて無い!なので早々に断ち切る
「はい!ストップ、その辺りに関しては各々の症状や段階によって医療班が生命危機に陥っている順番で決めさせてもらうからね」
手を叩きながら宣言すると後ろから小さく押し付けられた?っという呟きが聞こえてくる。
っふ、妹め勘が鋭いじゃん、もろに押し付けたよ?にしし。
この流れで更に伝えておく、本当な音として外に出したくないんだけど。
「後!皆の心意気は凄く助かるんだけど、問題があって、この改造手術が出来るのは5名迄なんだよね」
私は背中に魔道具を取り付けるだけだから簡単なんだけど
他の4名達は浸透水式で行わないといけないからね。
そもそも用意されている魔道具が五つまでしかないんだよね
「そうで、あるか?」「あたいはてっきり」「主戦力となる人物全員分用意されているのとばかり」
各々が私に寄せている期待がどれ程、大きいのか伝わってくる。
今代の私は常にこの期待を背負い全て応えてきたんだろうなぁ。
「ごめんね、材料的に五つまでしか用意できなかったの」
こう言っておけば技術的に知り得ない人達は納得せざるを得ない!
技術屋だからこそできる逃げ方だぜぃ!にしし。
「姫ちゃんが謝ることじゃねぇよ、きっと何時もみたいに表にださねぇで奮闘してくれたんだろぉ?」
「そうであるな、吾輩も夢で見て姫様が如何に我々を支えてくれていたのか知ったのである」
分厚くて何重にも重ねられる信頼が心を締め付けてくるや
視線を逸らしたくなる衝動に駆られてしまうが、姫様として受け止め続けないとね。
っさ、話の続きをしよう。
「数に限りがあるから、対象者として今のところ、決まっているのが私と、団長は決まり、かな?あと、その、枠が三つあるんだけど」
「一つ、席が足りないっというわけですね」
此方が言い淀んだ言葉を的確に突いてくる。流石はティーチャーくんだね。
「っそ、女将、ティーチャー、ベテラン、閃光姫だと合計で6個居るんだよね」
この四名のうち誰を候補から外すのか、それが難しい。
私と団長が確定なのには明確な理由がある。
全体を見て、無限の魔力によってありとあらゆる術式を使って補佐するのであれば、私って必須でしょ?
っで、怪我した人たちを瞬時に回復したりする為にかなりの魔力が必要だから、それらを扱いきれて知識があって、敵と戦えれる人ってなると団長しかいないじゃん?
この二つが要だから、私と団長は絶対に必要だしなぁ
「質問である!姫様と団長は絶対なのであるか?理由を聞いても良いであるか?」
作戦に関して疑問があれば直ぐに聞く、私の教えを実行できるくらいベテランさんのやる気が満ちているのがわかる、伝わってくるよ、決意を。
普段だったら、姫様の言うとおりにしていればいいのであるって感じだもんね。
先の質問に答えを提示すると
「むぅ、確かに、彼のような理由、吾輩も納得である、二人は必須であるな」
「そうさぁね、でもよぉ。司令官が前に出るってのは良くないんじゃねぇのかい?全体を見渡す役目はしなくてもいいのかい?」
そのご意見はごもっとも、本来、司令官が前へ出るなんて愚の骨頂だけど、今回に関しては敵の頭を仕留める事こそが絶対的勝利条件だからね、長期戦は不利にある、懸念点もあるから、あいつの言葉、思い出したくない反吐が出る記憶と共に思い起こされてしまう…
あの糞ドラゴンをぶち殺すのは私の役目だから…
っという、私情を挟むつもりはない。
冷静の心を落ち着かせる、司令官として私情は挟まない、今回のミッションは殲滅じゃない、頭を潰す事。
人類の最も最大である脅威を潰す事。
現実的に考え直しても長期戦はダメ。
今回の作戦は長期戦を想定していないからこの街で指揮を飛ばしてたら対処に追い付かなくなる、司令官も常に戦場を見渡せる位置、最前線で的確に指示を飛ばし続けないといけない、彼らのサポートをしたほうが、うん、成功確率が高くなる。
守るだけなら、この砦は一週間くらいなら持ちこたえてくれる、はず。
守るのは今代の私が鍛えぬいたであろう騎士部隊や術式部隊に任せればいい。
でも、これ以上、幾ら大地から離れているとはいえ、ここで音として出し続けるのは良くない、かな?
「えっとね、作戦の全容を伝えるのは、今は、ちょ~っと、待って欲しいかな」
何処で誰が聞き耳を立てているかわかったもんじゃないからね
「そうであるな、ここは嫌な視線を感じるのである」
うんうんっと腕を組んで戦士達全員が頷いている、さすがだね。
「みんなの決意は受け取ったから、今日の、夜にでも報告するから、えっと、会議室で、良いかな?号令を出すから集まってもらっても良いかな?」
「ああ!」「わかったのである」「はい!」「・・・!」
各々が力強く返事をして女将から順番に階段を下りていく。
ティーチャーくんが一礼してから下りていき、次はベテランさんの番となったとき「ぁ」唐突な閃きがベテランさんに舞い降りたのか小さな声を出し
「うっかり忘れるところだったのである、聞きたいことがあるのである」
回れ右よろしく、此方へと向きを戻すと奥様も彼の隣に立ち不思議そうな顔でベテランさんの顔を見上げながらベテランさんの手を握っている。
「して、戦士長と、二人のお子は何処にいるのであるか?戦士長がそもそも候補に居ないのはどういうことであるか?あと、あの強靭な力を持つお子が居れば…情けないと幾らでも罵ってもらっても構わないのである、先に待ち受ける途方もない戦場に、子供を戦場へと向かわせ死の大地を経験させるのは良くないという姫様の想いも解るのである!が!この状況であるお子らのメンタルであれば吾輩達が全力でケアをするのである、戦力があるのであれば四の五の言ってられないのではないのであるか?」
言葉の内容で思い出してしまう、彼は間が悪いのだと。
…ぁ、戦士長との対話、ベテランさんだけやってないのか
もう一度、愛する旦那に向けて泥の奥へと呼びかけてみるが返ってくる様子が無い…
後ろを振り返ると団長も小さく首を横に振る。
どうやら、魔力的に厳しいって感じかな?
「戦士長については女将とティーチャーくんに聞いてもらっても良いかな?」
「ふむ、そうであるか、わかったのである。して、二人のお子は?」
二人のお子って誰?誰の事を言ってるんだろう?
子供ってなると、スピカと長のとこに産まれた子供?戦力にならないよね?赤ちゃんだもん。
私が気が付いていないだけで、王都で神童とか産まれたりしてたっとか?
分からないのは聞いてみるのが一番ってね。
「それって誰のこと?」
「っむ?…そうか、あの場に姫様はいなかったのであったな、かいつまんで説明するのである」
ある夢の一節で、ベテランさんが街を守るために門の前で戦い続け、事切れる最後の最後、死の間際に見た、鮮烈なる光景
襲い掛かってくる獣の軍全を瞬時に滅ぼした少年
その少年の後ろを付いていく一人の幼げな、恐らく少女、それだけではなく見たことのない槍を持っていた。
この少ない情報だけで、わかってしまう。
少年は、名も無き弟…スピカだ。
そして、槍を持った少女、団長だ。
二人が私亡きあとに試験管から出て戦いに出たのだろう。
困ったことに、これは私ならわかるけど、ベテランさんに伝えるとなると途方もない時間が必要となる。
っであれば!簡潔にいく!
「えっと、夢とこっちでは色々と違うってのは覚えておいてね?この前提大事だから」
「もちろんである」
頷いてくれるのは良いんだけど、本当に信じてくれるのかな?
一抹の不安を感じながらも彼らの素性を説明すると
「…ぇ?あのお子は、神へと思えてしまう程の力を持つ人物がNo2のお子で、もう一人の少女が団長、っで、ある、っか?」
驚くのも無理が無いよね、ベテランさんが見た年齢と今代では不一致すぎるからね。
「っそ、私が秘密裏に彼らの体を培養してたんだよ。長い時間をかけてね。戦いの無い平和な日が訪れたら二人は二人の人生を歩んでもらいたくてね」
つい視線を逸らして俯いてしまう、彼らに戦いの無い人生を贈りたかったのに出来なかったことが悔い悔やまれてしまう。
「では、戦士長…いや、失言である。あいわかったのである、その疑問だけでも、そうで、あるか、あの二人の内一人は此方に、一人はまだ赤子であるか、そう」
そうであるかぁっと吐息と共に漏れた音が空へと昇っていく。
ベテランさんとしては一縷の望み、スピカの存在は救いの光だったのかもしれない、希望を壊してしまったかもしれないと心配そうに見つめていると
「そうであるな!あのお子が尊敬する戦士長とNo2のお子であるのであれば!守るが弟子としての務めである!!うむ!戦士長のお子であれば、我ら戦士一同、総意である!あのお子は我らが誇りである!ここで恩師に恩を返せずどう返せというのであるか!」
「・・・!!」
手を繋いだ奥さんが激しく頷いている。
「…はぁ、こんな気持ちになるのは初めてである。吾輩が抱えていた全ての憂いは無くなったのである、この境地こそ、っであるか」
晴れやかにその表情から伝わってくる未来を真っすぐに見つめているのだと。
「話せてよかったのである、では、失礼するのである」
大きく頭を下げてから、奥さんの手を握りしめながら階段を下りていく。
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