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とある人物が歩んできた道 ~ランクアップ~

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あの地獄の様な、不安で心臓が止まりそうになるほどの出来事から、数カ月経った、私がこの街に来て、もう少ししたら、一年が経過する。
この土地に来てから、厳しい冬も厳しい夏もない、穏やかな気温がずっと続く、理由は知らんけど、この土地は気候が非常に穏やかだ。

それのせいもあって、時の流れがわかりにくい。四季を感じれないのは王都出身からすると不思議な感覚。

あれから、何かしらの伸展があったのかって?気になるよね?ふっふぅん、ありありのアーリーよ!!

研鑽の努力が実り、医療班、研究塔、共に私の評価は天に竜が昇るが如く!って言うのは言い過ぎで、順調に評価が上がっています、医療班の先輩が任期を終えたら、後釜に私を押すと言っていた。

つまり、この医療班のNo1に私が座るという事になる!権力者に成れる!!

何処にでもいる有象無象、それが私だと、本人も思っていたし、周りの評価もそうだった、けど!今は違う!誰もが成れない絶対的な立場に成れるのかと思うと、思うと、これはこれで純粋に凄く嬉しい。

死の街でのトップよ?実質この大陸で一番だって言っても過言ではないのよ?実際に、この街で学んだことは王都では絶対に得ることが出来ない程の経験を積めたと自負している。

目をつむっても、全ての内臓の位置がわかるくらい、目に焼き付いている、それくらい、切って繋いでを繰り返してきたのだもの。

神経も、血管も、皮膚の縫合なんて、お手の物よ!爪楊枝で髪の毛を掴むなんてお茶の子さいさい!それをしながら空いた片方の手で、本のページをめくるくらい余裕でできちゃうね!

術後のリハビリも完璧のぺっきぺきよ。私の右に出る物なんていないくらい先輩に教わってきたのよ?実際に行ってきたのよ?かなりの数をしてきたのよ?誰にも負けないわ。
他にも!薬物の知識だって、研究塔の重鎮と薬物で談話が出来るくらいの薬物トークだってとくもりとっくとくに出来るくらいの知識量を得たわ!

人ってね、目標があれば出来るの、その代わり犠牲はつきもので、美容が壊滅的。お肌も荒れに荒れてて、荒野の砂漠よ、私の皮膚は!!!こんなんで騎士様に会いたくないよぉ、女性として見てくれないよぉ、ただでさえあんな、格上の奥様がいるのに、アレに勝たないといけないなんて美では無理だ!であれば、知なら勝てると思う!


…勝ったとして、選んでもらえるわけではないのはもちろん知ってるわよ。でも、ゼロではないでしょ?


そう、この私という存在の地位を向上させることで!!各トップ同士が集まって開かれる会議に参加する許可がついこの間、下りたのよ!!
これってさ、当然、騎士様も参加されるわけでしょ!?お近づきになれるのよ!同じ密室で過ごす許可が下りたって事なのよ?わかる?あの人が吐いた吐息を吸う権利を貰ったのよ!?結婚してるのと変わらなくない?同棲しているのと同位じゃない?ぇ?それはいきすぎだって?んなこたぁねぇ!一緒なの!

本当に、やっとよ!?やっと少し報われたと思わない!?一年近くも、この死の現場で働き続けたのよ?そりゃ、直接闘っている人達と比べたら、危険性は、低いけれど、それでも何が起こるかわからないのよ?死の街で一年も頑張ってきたのだからそろそろ仲を伸展させたいの!!役得が欲しいの!頑張ったご褒美が欲しいの!…吐息を保存できる容器とかないのかしら?

本当にね、今までの事を振り返ると、騎士様との接点が無さ過ぎるのよ、怪我しない人って!医療班の施設とか病棟に来ないの!!くる必要が無いの!
一応ね、健康診断とかをね、各々が個人的に来るのだけど!来ない人はこないの!騎士様はこないの!!食堂とか、廊下ですれ違って会釈したり、挨拶しかできてないの!!…伸展してないじゃんって思ってるかい?っふっふっふぅ~ん

この間、すれ違ったときに名前で呼んでいただけたの!これって私の名前を覚えるに値するってことよね!?その日の夜はもう盛り上がったわよ!!!


そして、今日が!その!肝心の!会議なわけ!名前も認知してもらっている!後はもう、近づくチャンスを確実に増やして!チャンスをモノにしていくってことよぉ!


心は戦国騎士のごとく、竜を飾りながら敵の城門を丸太で突撃するように、意気揚々と会議部屋に入っていくと、既に騎士様が席に座っていて私に向かって手を振ってくれた、その唐突なボディブロウはやめて私の子宮に効く。

血圧あがり過ぎて鼻血がでそうになるのを独自に編み出した呼吸法によって脈を正常に戻す。常に平静を装うのは貴族社会では必須の嗜み、これくらい余裕ですわ。

騎士様の隣には、嫌でも目に留まる巨躯の女性…貴女も会議に参加されてるなんて、やはりライバルになるの?立ちふさがるの?その巨躯の体躯が壁となって!

平静を装っていると、先輩が椅子に座る、先輩の隣に座ると、その隣が貴女なのね、狭い…本当に肉の壁にならなくてもいいじゃないの、私が狭そうにしているのに気が付いたのか
「お、おうわりぃな!先生、狭いよな」
巨躯の女性が、私から少し距離を離そうと椅子をずらすのだがやめろ!!貴女の隣は騎士様なの!!密着しないでお願いだから!私に親切しようして、騎士様に近づかないで!っは!?私を利用して騎士様に近づく考えなの!?ぐぬぬぬぬぬぬぅぅぅぅぅぅ貴女は敵認定よぉ!!!

「ほれ、師匠も、もう少しはじによってくれよ」
しっしっと騎士様に失礼な態度を取る巨躯の女!!!!ふっざけんなよ!てめぇ!騎士様になんって態度とってんだ!毒盛るぞ!

「ぁ、ああ、すまない気が回らなかったよ、よいしょっと」
椅子をずらして奥の方に行く、嗚呼、止めてよ、物理的に距離が遠のいちゃったじゃないの!ぁ、でも、円形のテーブルだから、ご尊顔が見えるから結果的に良し!貴女、やるじゃないの。褒めて遣わすわ。…あれ?貴女がいなければ、騎士様の隣ってもしかしなくても私だった?…たらればよくないよくない…コロス…

全員が集まったので会議が開始される、司会進行は先輩だった、意外、貴方って気だるいそうにいつもしているから、こういったまとめ役なんてしないものだと思っていた

…ぐるりと会議に集まった人たちを見ると、察した…年功序列じゃない?先輩って確かもう、四捨五入したら、40よね?…なるほど、一番の古株ってことなのね。

会議の内容は、近々、人員が補充される手筈になっていて各国から人が補充される予定だが、誰がどこの部隊に配置するのか人員のリストを前回の会議で渡しているので、希望を各々出してもらいたい。

成程、こうやって誰がどこの部隊に配属するのか決めていくのね、私が、こちらに来るときに医療班を志願していたので医療班に配属されたけれど、志願も無く、純粋に生贄の様に送られてくる人員も居る。

現に、この間の地獄で戦闘経験の浅い人達が大量に亡くなった、10名近くも亡くなった。補充人員なんて各同盟諸国から1名ずつだから、同盟諸国の数を考えると最低でも10名

結果的に人員が増えていないし、また、能力の低い人が来たら減る可能性の方が高い。

医療班も人手が足りないけれど、医療の心得が無い人が来たとしても足手まといだし、育てるのも厳しいのが現状。

研究塔の人員は足りているようで足りてない、研究するメンバーはいるけれど、下働きをする人が足りていない、薬の原材料を確保するための各国に使いに出す資材調達班も足りていない。

薬の原材料は種類の判別が非常に難しく専門知識が必須となっている、なので、何々が欲しいと言っても、よく間違えられて送られてくるので薬の知識がある人が直接買い付けに他国を訪問し、そのついでに研究を売り込んでお金を得たりもしている。

他にも、こちらで出くわした獣の情報をまとめた本を売ったりもしている、色んな事をしてこの街は食いつないでいる。寄付だけじゃ厳しいのが現実
食いつなぐで思い出したのが、研究塔の一人が食糧難を解決するために、街から少し離れた場所で農業を営んでいるのが長年の頑張りによって、漸く軌道にのったそうだ。

最近、ご飯が美味しいなって部分はその人のおかげ、新鮮なお肉に卵、これだけでも世界がかわるか~わるよーせーかいはかわるーぇ?会議に集中しろって?だってー騎士様の顔を眺めるしかすることがないだものーでもね、騎士様の方を長くは見れないの!騎士様が発言してるときだけ視線を向けるようにしないと

一瞬で視線に気づくから…騎士様は凄いの!ちらっと見ただけで視線に気がついてこっちを見るの!迂闊に眺めてたらばれちゃうのぉ!!


今回10名の内、9名が戦士班に所属することに決定しました。1名は研究塔志望なので、研究塔に所属することにそこそこの年齢の人が来るなんて珍しいと思っていたら、過去に研究塔で働いていたけれど、子供が出来たので、自国に帰り子育ても一段落ついたので戻ってくることに…ん?気のせいかな?家名が何処かで見たことがあるぞ、ちらっと先輩の名札を見る


・・・・同じ家名だ・・・・そういうことね。成程、奥様かな?夫婦揃ってこの街で働きたいなんて酔狂にもほどがあるわ~。人類に対しての使命感もちすぎだろ~


リストを見ていた、騎士様がある女性の名前を挙げて自分の直下部下にしたいと嬉しそうに巨躯の女性と話をしてるけど‥‥どこのどいつよ!?私の騎士様に名前を憶えられてるなんて!!

どいつだ!っと心の鼻息は荒く、きっと目は血走っていたと思う。

リストを見ると、王都でも見たことがある有名な家名があるじゃないのぉ!!なんでこんな超ド級のお嬢様がくるのよぉ!生粋の武家の人がなんで志願なんてしちゃってんのよぉ!わかってるわよ!魂胆はぁ!私と絶対におなじじゃー!騎士様の子種目当てだろー!くそびっちがぁあ!!かえれ!!

ライバルが増えていくぅ、いやだぁ、ライバルが増えていくの嫌だぁ、いやよぉ、いやなのよぉ!!っくそう、私が運動神経良かったら、戦士の部に配属希望だせるのに!!

スタミナは人並みちょっとあるけれど、運動神経は並なのよぉ!並だと騎士様直下の部隊に入れないし、そもそも生き残れる自信が無いの!戦士部隊にいたら、死ぬ未来しかないのよぉ!お近づきになる前に、名前すら憶えてもらえずに死ぬのはいや!!


会議のその後は、前回の会議内容のおさらいと言うか、確認事項の再度確認って感じの簡単な内容だった、てっきり、予算がーっとか、敵の対策はーっとか、もっともっと複雑な難しい会議でもするのかと思ったら拍子抜けだった、ん?隣から豪快なイビキが聞こえたのでちらっと見ると巨躯の女性ががっつりと寝ていた。

だから、会議終わったんじゃないの?皆が席を立ち始めても起きそうにないので、騎士様が起こそうとしたので、騎士様に起こしてもらえるなんてそんな、人生で一度は体験できたら世界から解脱しても良いレベルの出来事をやらせるものですか!

ぺちーんと豪快に太腿を叩くと一瞬ビクっとしたので、間髪入れずぺちちーんと叩くと、んが!?っと目を覚ましたので
「おはよう、気持ちよさそうに寝てるところ悪いけど、会議は終わりましてよー」
騎士様の代わりに凄んでみたものの相手はまったく反省の色も無く

「ぁーやっと終わったのかい、あたいには関係がなさすぎて眠くなっちまってねぇ…」
くぁぁっと大きな欠伸をしながらぬっと椅子から立ち上がり
「それじゃ、師匠!お先でっす!」と騎士様に挨拶をしてからのっしのっしと会議室から出ていく。あの人に目上の人を敬うという心は無いの?

はぁっと、心の中で溜息を盛大に吐き捨て、私も巨躯の女性とは違ってゆっくりとお淑やかに、完璧なる織女の様にゆっくりと席を立ち
「先輩、私もお先に失礼いたします。」
先輩と騎士様に一礼をして、会議室を出ていくのだが、

会議室を出る直前にバレない範囲で思いっきり息を吸い込み、騎士様の濃い吐息が含んでいるであろう部屋の空気をお腹も、肺も満タンにしてから出て、息を止め乍らゆっくりと、自室に向かって歩いていく、息を止めているせいもあって、歩いている時の気分は天国に近かった。


自室に戻ってから、今後警戒するべき人物の名前をリストアップし、今後どうやって、騎士様に近づいていけばいいのか考えれば考える程、答えが出てこない、沼にはまっていく、愛という底なし沼に深く深く沈んでいく・・・・いや、とっくの昔に沈み切っているのか…
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