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とある人物が歩んできた道 ~新しい若き風~

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新しい生贄が街に届いた、もとい、新しくこの街に人類を守るために志願した勇敢な戦士が集った。

その数はなんと10名!

一人は、結構ご高齢で、完全に引退寸前のロートルですけれど!
人類の繁栄のために!人類の未来のために各国から集いし!生贄!・・・・違った、集い死!愚者たち!お前には血しぶきがお似合いじゃぃ!何処のどいつだちくしょうが!私の騎士様に色目を使いにきやがった色ボケ戦士はどこじゃい!


ダメだ、あの会議の後から情緒が不安定すぎる。

気が付くと包丁砥いでたり、
気が付くと毒物の本を開いてたり、
気が付くと、柄にもなくお月様に祈りを捧げたりしているの。

祈りの内容はなんだとおもう?…うふふ秘密♪
知ってる?人ってね、殆ど水分で出来てるから迂闊な方法で殺すと色々と体液が大変なことになるから、きちんと処理しないと現場にガッツリと後が残っちゃうんだよ?

まぁ、私がやるとすれば毒殺しかないけどね。
だってさぁ、真正面からどころか、攻撃しようものならコンマ数秒で返り討ちで、私の命が無い。それくらい武家の出自ってのは強いの!特に対人戦が凄く強いの!
学生の時に、指南してもらったから嫌と言うほど体に染みついちゃってるのよ、武家のやつらの鍛錬された対人を想定した攻撃の数々、明確な殺意を持って確実に殺しに来る容赦のない次から次へと繋がっていく殺意の斬撃、あの時はしっかりと寸止めでしたけれど、あれが真剣だったと考えると背筋が凍り付くわね。

暗殺しか勝ち目がない!

ここ数日、ひたすら怪しい動きをしていて怪しまれないのかって?
毒ってのは180度見方を回転させると薬になるので、普段から毒物は研究対象だから何も言われないし、敵が毒を持っていることなんて結構多いし、その毒の成分を分析して次回に備えるのも大事。

二足歩行タイプでなんだっけ?えっと、あっと、そうそうこれこれ、この資料によると、ロストマジックウェポンって分類だっけ?始祖様がこの世界を救済するよりも前の古の時代にあったのではないかと言われている、今の技術では実現不可能の魔道具を所持している奴がいるときがあるんだけど、その時に毒を生成する魔道具で攻めてくることがある。

その毒は唯一無二でその魔道具でしか生み出せないから対策を練る必要性は皆無。

でもね、その毒を分析するとかして応用する事で有効活用できる毒もあるの。
代表例が麻酔に使われる水薬が出来たの、先輩の世代よりも、もう少し上かな?敵がこちらの動きを制限するっていうか、動けなくする毒を使ってきて、それの成分を分析して弱毒かさせたり、部分的に使用することでその投与した部分だけを麻痺させたりできる応用力の高い麻酔薬を生み出したのよね。

なので、猿に魔道具つってね!要は使いようさ。

まぁそんなわけで研究塔、含め、医療班が同時に研究開発していることが多いのよ薬って、治験?…そんなのないけど?

まぁ、冗談はさておき、実際問題、敵からの解毒方法はかなり深刻な問題なので、たまたまよ?本当に偶然だけどね?毒の研究をここ数日缶詰状態でしてたから、徹夜明けなのよ、世界が青いのよ、朝日が黄色いのよ、その中で飲む紅茶がたまんねぇのよ

かはーうんめぇ、砂糖が脳に染みる、ぁ、はちみつだっけ?シロップだっけ?この甘味、どうでもいいか

広場の椅子でぼーっと紅茶ポッドから紅茶を出しては飲んでを繰り返していると、馬車が次々と離れていくのが遠目に見える。
そうだそうだ、今日だよ今日、新兵達がやってくるのは、騎士様の様な心の器がビッグな人はそうそういなだろうし、巨躯の女性みたいな天然記念物なんて二人といてたまるかだしね。

新人達が自分の部屋に荷物を置いて来ようと寮に向かって歩いていく、何人かがこちらに気が付いた人が居るので深窓の令嬢よろしく、微笑んで手を振ってあげる。
目の下とお肌を近くで見られない限り私は綺麗よ。

その中にペコリと頭を下げて歩いていくあからさまに他の有象無象とは一線を画す程の美貌を持ち合わせた人がいた、こんな場所に似つかわしくない綺麗な服装だった…
あれか、騎士様に色目をつかう不届き者、神をも恐れぬ愚者は、くくくくく、少しでも騎士様に近づこうものなら贓物から腐られてくれる…


だめだ、寝てないと気持ちが暗い方向にいく、寝よう


ふらふらと紅茶の入ったポッドをささっと洗って食堂に返して、自室で寝ることに、目が覚めたら日も傾いていて暗くなってきている。医療班に新人が来ないからってちょっと新人達と関りが無さ過ぎるのは宜しくないので、どうしようかと歩いていると、見知らぬ坊やがいるわね、年もかなり若いじゃないの、まさか、そんな年齢できたの!?

声をかけようか悩んでいると
「あ!!お姉さん初めまして!、おっと、先に挨拶が普通だよな、こんばんはです!」
ニカっと少年?らしく爽やかな笑顔で挨拶してくれるじゃないの、初々しいなぁいいなぁ、騎士様のこんな時期があったのかな?

「こんばんは、君は、朝に来た新兵達の一人だよね?」
軽く挨拶をしたあと、立ち話もあれだし、食堂で話そうよと誘い、いいんすか!?っと目をキラキラ輝かせてくついてきてくれる、はは~んさては少年、女好きだな。

取り合えず、寝起きってのもあるので、食堂のおばちゃん、もとい、お姉様に紅茶と何か軽食を頼んで、少年は何か食うかい?って聞くと実は訓練終わりでお腹が空いててどうしようかと悩んでたとこでっす!と元気にいうものだから、おばちゃんに、もとい、お姉様に若い子が腹いっぱいになる飯を頼んだ。

あいよ!たんとお食べ!っと豪快に出されたお互いの食事を持ってテーブルに座ろうかと思ったら、目に留まっちゃったんだよね、少し離れた場所で一人でモソモソとパンをかじっているお行儀の良い見慣れない娘がいることに気が付いてしまった。

直ぐに察するあんな、綺麗でお嬢様な雰囲気がある見慣れないヤツ=色目遣いの!…あれ?めちゃくちゃ若くない?てっきり、18とか20過ぎてると思っていたけれど、少年と同じか少し上くらいじゃないの?

…そんな若い娘が一人でポツンとご飯なんて良くない!お姉さん人肌脱いじゃおっかな!

一応、先約である少年に話を聞かないとね、実は道中で仲が悪い関係に陥っている可能性もさもありなん

「少年、彼女との面識は?」
少年に軽く話を聞くと、同世代ってことで、訓練を一緒にしてたようだけど、ボッコボコにやられてライバルですって言ってるけど、一緒にご飯は嫌かな?って聞くと、いえいえ飯食うなら大勢の方が楽しいっす!ってカラっとした笑顔で言うじゃない…おめぇから天然のたらし成分を検知してる気がするぞこれ

…少年と少女のラブロマンス…っふ、そうやってライバルが勝手に消えてくれたら楽なんだけど、そういうのって上手くいかないから別プランを考えないとね

少女の向かい側に行くと、「???」なんでそこに来るのだろうと不思議そうに見てくる、そりゃそうだよね、ガラガラの食堂で席もあちこち空いてるのになんで目の前に来るのだろう?って思うよね自己紹介もかねてっと

「こんばんは、お姉さんはね、医療班で仕事をしているしがない医者です。良ければご飯ご一緒してもいいかな?」営業スマイルで話しかけるとガバっと立ち上がって
「ぉ、お医者様でしたか!す、すいません、気が付かなくて!どどど、どうぞ!です、…はい」ペコペコとお辞儀する、あれ?なんだろうこの擦れていない感じ社交界とかにあまり顔を出していない貴族って感じ。。。年齢もしかして思っていた以上に低い?箱入り娘っとか?

取り合えず、立っているのもあれなので座らせて、少女の隣に少年を座らせる、少年は少女に「ども」っと軽く挨拶をして椅子に座る、少女も「ぁ、はい」っと初々しい反応するじゃないの、なんだろうこの学院性の若い子達みたいで、甘酸っぱい香りがする。若いっていいなぁ。…私だってまだ若いもん!!

席に座るって軽く自己紹介をもう一度して、ご飯が冷めちゃうから先に食べようってことでご飯を食べていく

少女はもう貴族って感じで綺麗な食べ方、少年は、ガサツなテーブルマナーなんて関係なしの食べ方、うん、出自が直ぐにわかるね。

口元にソースが付いている少年の口を拭う何かが欲しいな。
白衣のポケットに手を入れると、あれ?ポケットにハンカチがあったよね?ぁ、あるある、えっと、これを術式でちょこっと湿らせて手拭き代わりに使いなさいっと渡してあげる。
少年は「いや!こんな綺麗なの!申し訳ないっすよ!」っと拒否するけど、これ別に上等な品物ってわけじゃないしなぁ、気にしなくていいよっと強引に渡してあげる。
「う、うす」って言いながら口を拭っている。

ご飯を食べた後は、訓練はどうだった?とか、きつくなかったとか、色々と訓練について話を聞くけど、二人とも騎士様の強さに驚いているみたいで、いつかはそれ以上に強くなってみせるとお互いをライバルとして意識している様子だった、それ以外の波動も若干あるんじゃないのこれ?あらぁ?こんな黒色な死の街でピュアピュアな桃色の世界が観れるなんて思わなかったわぁ。

お話も一段落したら後は若い子同士で会話してねっと立ち去る、っふ、これが大人の余裕っというやつよ!っていうか、仕事があるから、仕事しないとね。研究研究っと

寝る前にしていた研究の続きをする為に研究塔に向かって歩いていく、暫くは研究塔である研究をめどがつくまではしたいのよね。
そろそろ、朝にしかけといた毒の遠心分離が終わってる頃合いだと思うし、丁度いいちょうどいい。

他にも、メインともサブともいえる研究があるけれど、実現までは問題が山の様にある。
保存期間はどれくらいまでいけるのかとか、保存するために必要なエネルギー問題はどうするのかとか、既存の魔道具でなんとかなるのかっとか、問題は山積みだけど、確実に一つ一つ問題はクリアできていけているのが、如何に死の街にいる研究者が優秀なのかがわかる。

そういえば、畜産の研究の方がかなり順調で事が進んでいるみたいなので、後でお話を聞きに行こう。

仕事の事を考えながら歩いていくと、どうしても頭の片隅で先ほどの新人二人が気になってしまう。
二人とも新鮮でフレッシュな気持ちで見守りたくなるわね、騎士様が絡んでいなければな!

話を聞いて驚いたのがお互い同年齢の14歳!びっくりだよ!14で、この死の街に志願するなんて青春全てを捨ててきてるからね?学院とかよく許可だせたなぁって思うけれど、込み入った事情が二人ともありそうだし、たぶんだけど、少年は学院とか無関係の子供だったのだろうな。


それから、気が付いたら半年も過ぎていた、研究に没頭しすぎてて時間の感覚が狂ってる、ぇ?もう半年経ったの?騎士様と30回くらいしか言葉を交わしてないけど?どういうこと?

余りにもな疲労感と騎士様成分が枯渇しているせいでやる気がわかないので、研究塔名物、白衣の羽織を着たまま両手のポケットに手を突っ込んでベンチに座り両足をだばーっとだらしなく前に放り投げ、ベンチの縁に頭をのせて天を仰ぐ。

っべーわ、まじっべーわ、やる気でねぇーわ…


騎士様と20日も会っていない、日付の感覚は狂ってるけど、騎士様と会っていない期間は正確に把握してるのでそこはまかせて!
完全に騎士様成分が枯渇している、遠目だけでもみたいよぉ、声だけでも聴きたいよぉ、ぢぐじょぉぉ、やるぎでねぇよぉ…


太陽の角度が変わるくらいまで、ベンチの上で脳を停止させていると、とんとんっと肩を叩かれる、あんじゃらほいさのよほほい?
首をぐりんっと回して姿勢を変えずに肩を叩かれた方向にまわすと「っひ」っと小さな悲鳴と共に、14歳新人女性の子がいるじゃないの。

姿勢を正して「どうしたの?」っと聞いてみるとちょっと、モジモジとしている…ん?流石にトイレの場所は覚えてるでしょ?半年は経ったわよ?

「あのその、お姉さまにご相談したいことがある、あります。」
両手をそわそわとさせて視線を何処を見たらいいのかわからない、この感じ、これはぁ!この感じは!!貴族社会ではよく見る恋バナじゃねぇの!?


…相手が騎士様だったら毒盛って殺すか!!


「周りの人に聞かれたくない内容みたいだし、おいで、私専用の研究部屋あるから」
私クラスの人になるとね、私室がもらえるのよ、ふっふっふ…まぁ、この街って土地だけは山ほどあるから、全員、寮住まいだけど、相部屋なんて無くて、空き部屋も阿保ほど空いてるから個室なんて誰でも持ってるけどね!

自分専用の研究部屋が割り振られているのは、そこそこ、凄いんだからね?


部屋について、紅茶を入れて、この間、おばちゃん、もとい、食堂のお姉様が試作していたクッキーを頂いていたので、それをカップの脇に添えて出してあげる。
暫くは紅茶を飲んで、世間話に花を咲かせてあげて相手の緊張をほぐしてあげる、これくらいは学院でも貴族としても基本的な嗜みでしてよ?

暫くしてから、俯いてモジモジとし始めている、これは!この流れは!?…相手が勇気を出すまで待ちましょう、内容次第では毒てんこ盛り天元突破ぶち殺し確定ですけどね!
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