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とある人物達が歩んできた道 ~ 封印術式2 ~

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何時もの時刻に目が覚める、姫ちゃんは丸くなって寝ている、胎児の姿勢ね。
寝ぼけながらベッドから降りて紅茶を淹れる為にお湯を沸かしていると〈こんこん〉とドアをノックする音が聞こえるので最近の寝不足状況で頭がスッキリしない状況、そんな状態でドアを開けると目の下に大きなクマをこさえてきた奥様がドアの前で笑顔で立ち尽くしている…

目がきまってない?なんか薬物投与したの?という冗談を言うと鏡を見たら?っと言われたので私も似たような状況みたいなのね…

中に招き入れて、念のために来訪者が来る可能性を考えて過去に購入しておいた椅子、終ぞ、使用したのはほんの数回、ようやく出番が来た椅子に座ってもらい、お客様が来たのだから最低限お茶位は用意しないとね。
お湯が沸いたので、紅茶を淹れてテーブルに置くとゆっくりと優雅な手つきで香りを楽しんだ後、受け取った紅茶をゆっくりと口をつけて一口飲んだ後、袋を渡される
「徹夜して作ったよ」はい、その目を見て一睡もしていないのがわかります。ありがとうございます、いつもいつも、無理難題ばかり押し付けてしまい申し訳ないです。

袋から取り出すと、ネグリジェのような透けた肌着、地味にデザインも凝って細部まで拘りが感じ取れる可愛らしいデザインなのが、奥様の趣味ってところかしら?…いい趣味してるじゃない。

さっそくどのような構造になって言うのか実験がしたいので、魔力を通すと、どの様な反応があるのか試させてもらった。
服の中で魔力を放出する、魔力が見える魔道具を起動しながら確認すると、服の中から魔力が漏れ出てこない?
っていうか、魔力が吸われている?いや、吸われていない?不思議な感覚…

服の中で魔力はどのように反応しているのか見てみたいが両手が塞がっているので、奥様にお願いして魔道具を持ってもらう。

服の中を見てみると、魔力の渦が出来上がっていた。

私が放出した魔力が服の中で反射して、行き場を無くしてうろうろとしている、指向性を持たせれば、放出した魔力を再度、吸収できるのではと、右手で魔力を放出し、反射して渦巻く様に蠢く魔力を左手に流れるように指向性を持たせると左手に返ってくる、かえってくるがなにこれ…きもちわる…

奥様が真っ青な顔になっている私を見かねて紅茶を渡してくれるので一口飲むが、吐き気が収まらず、トイレに駆け込んでしまった…

戻ってくると奥様が睡魔に負けて椅子でうたた寝をしている。
感謝の気持ちを込めてひざ掛けをかけてあげると姫ちゃんも一連の騒ぎで起きてきたみたいで紅茶を飲んでいる。

飲んでいるけれど寝ぼけているのか奥様の顔をじっとみて、不思議そうな顔をしているので、どうしたの?っと声を掛けると、珍しい人がいるけど、何かあったの?っと消え入りそうな程、小さな声で返事が返ってくる、寝起きだから声が出ないのだろう、可愛いなぁ…

暫くは各々が紅茶を飲んだりとまったりとした時間を過ごす、研究者としての本音を言うと完成した奥様印の肌着を直ぐにでも着て欲しいけれど、寝ぼけながらちびちびと紅茶を飲んでいる姫ちゃんを眺めるという幸せを噛み締めたいという、母性が勝ってしまっている。

ついつい、寝ぼけながら紅茶を飲んでいる姫ちゃんの乱れた髪の毛を櫛を使って丁寧に綺麗に整えていく、この子の髪の毛は本当に綺麗、真っ白で透き通るような髪の毛っていうイメージがぴったり、始祖様もこの髪の毛に惚れたんじゃないの?って、思うくらい、凄く綺麗。

「お母さん」
あら、急に声を掛けてくるなんて痛かったかしら?
「これなぁ~に?」
テーブルの上に置かれた見慣れぬネグリジェが気になるのね、本当にこの子は好奇心が強いわね、どこからどう見ても普通の可愛らしいネグリジェがテーブルの上に置かれている、
普通に考えればただのネグリジェがテーブルの上に置かれているだけ、特別な物ではない、なのに、現場での特異性に直ぐに気が付いて、これが普通のネグリジェではないという思考に到達する。

「貴女の為に作った特別製よ、これからはこれを着てね」
手に取ってまじまじとみると
「肌着?うーん、この上に服を着るの?ごわごわしてやだなぁ…あと、これ見た目に反して重い…」
文句をいわないのー、それ作るのに奥様が徹夜してるのよー?
「それに、これを着ちゃうと合わせれる服って全部スカートにならない?スカートって作業がしづらいから、ん~…まぁお母さんが用意してくれたものだから何かあるんだよね?着てみるね」
っふ、子供としての無邪気で容赦のない意見、だけど、最後は大人としての意見、姫ちゃんらしい正直な意見ね…奥様が起きてたら悲しそうな顔をするところよ?

立ち上がってぱぱっと服を脱ぎ始め可愛らしい下着姿になると直ぐにネグリジェを着る、ネグリジェの特異性に気が付いたのか驚いた顔をしている
「ぇ!?なにこれ!?魔力が体の中に返ってくる!!!」
着ただけでわかるなんて、本当に、この子は魔力や術式に関して鋭すぎるわね
ネグリジェの姿のまま、私の机から紙とペンを取り出して何か書き始めている?陣の様なもの?
「起動するかなっと」
陣に魔力を流し始めようとしているのか、魔力を込めようとするが陣からは何も反応がない
「ぁ、駄目だ、指先に魔力を集めようとしていてもネグリジェに触れている部分から魔力の流れが阻害されちゃってる、う~ぅ~、これやだ!!不便!!」
姫ちゃんから陣が描かれている紙を受け取り、魔力を込めるとそよ風が生まれる、はぁ…風を生み出す術式を速攻で作り上げちゃうなんて凄い子ね…

ちらりと姫ちゃんの方を見てみると、物凄く不満そうな顔をしてる、頬を膨らませながらこちらを見ている、いいえ、あれは抗議の瞳で睨んでいるのね、きっと、脱いだら駄目だと分かっているから無言の文句ってことね、聞き分けのいい子ね、お母様の教育の賜物かしら?

はぁ、一発目から完全に文句なしの物が出来るなんて思ってもいなかったからね、しょうがないわね。リテイクはくるよね。

改良しないといけないわね、それに肌着だからいざ、魔力が必要な時にそれが邪魔して発動できないのは辛いだろうけれど、貴女の体内から自身の生命を維持するために必要な最低限の魔力すら放出しかねない体質を調整するまでは着てもらった方がいいわね。

「むーむー!!むーーー!!」
頬を膨らませながら唸らないの、涙を浮かべて無言の圧力をかけてこないのー、声に出さないだけ偉いねって思ったけれど、えらくない!我儘さんねー。
それにしても、どう改良すればいいのかしら?魔力を封じ込めて尚且つ、自動で体内に反射して戻るなんて素晴らしい出来だと思うけれど?

ネグリジェにそっと触れる

手触りもかなりの上物を使ってくれているのがわかるクラスの手触りだし、見た目も凄く可愛らしく丁寧な作り、機能だけじゃなく、見た目も一流に仕上げてくれている、貴族に夜這いに行くとしても問題ないくらいのエロさも兼ねた逸品じゃない。
文句の付け所が無いと、私は感じているのにねぇ…

「やだー!これやだー!」

考え込んでいると、とうとう口に出し始めたうえに、ポカポカと私のお腹を叩かないの、この子は、本当にもう…

「これだと、術式、つかえないー!やだー!けんきゅーできないー!やだぁ、これ、やぁだぁ!!」
お腹に顔を埋めてぐりぐりと頭を擦り付けないの、くすぐったいわねー…可愛らしいから許すけどー…それは脱いじゃ駄目よ?

まぁ、しょうがないわよね、この子からしたら術式が人生の全てって感じだもの、術式が使えない状態は羽をもがれた鳥、牙を抜かれた獣、口を塞いだ人ってことよね…

どうやって説得すればいいのか、答えの糸口を探して視線を彷徨わせていると、奥様が持ってきた袋の中に、他に何か入ってるわね

手に取って袋の中を覗き込むと、未来姫ちゃんが書いた封印術式の紙が入っている…嗚呼、そうじゃない、本人に改良してもらえばいいじゃないの
「はい、姫ちゃん、これ、設計図、これを見てどういう風に改良すればいいのか意見を頂戴、私達で完成させましょう」

お腹に顔を埋めている姫ちゃんの肩を叩いて設計図を見せると術式に関するものであり、自分の体から自由を奪われている元凶の中身と察した瞬間に手に取り、目を輝かせて一心不乱に読み解いていく…立ちながら読もうとしたので、テーブルの前にある椅子に座らせて、私も隣に座って姫ちゃんからの答えが出るのをゆったりと待ちましょう。待つのは得意ですもの。

ゆったりとしているとお腹が空いてきたので、寝巻から着替えて、食堂に行ってくるわねと声を掛けると頷いて返事をする姫ちゃん、術式に関することになると本当に、周りが見えなくなる節があるわね。
寝ている奥様は放置しておいても問題は無いだろうし、起きてきたら何かしら食べるものがあると嬉しいだろうし、遅めの朝ご飯、早めのお昼ご飯っと行きましょう。

食堂に到着すると、微妙な時間帯なので誰もいなかった、食堂のおばちゃ…お姉さんも仕込みをしているみたいで忙しそうだった。
声を掛けると、パンに適当に具を挟んで持っていきな、それくらい出来るでしょ?と言われてしまったが料理なんてしたことがない…

その事を伝えると、特大の溜息をつきながら、三人分の軽食を用意してくれた。

料理を受け取り、自室に戻ってくると、奥様と姫ちゃんが設計図を片手に、話し合っている、テーブルには多くの紙が散乱している辺り、そうとう、話し合いに熱がこもっているのだと現場状況からでも伝わってくるし、二人の意見が熱を帯びているのが伝わってくる。

水を差す様に、熱い討論がヒートアップしすぎないように、食事にしましょうと声を掛けるが、水を差した意味はなく、軽食だったために、お互い食べながら、これはこうするべき、そうすると効果が落ちる、材料費が高い、予算の都合だとか、ちょいとずれた意見が飛び交うのもしょうがないしょうがない。

奥様が珍しく興奮しているのを様子見ながら食堂のおばちゃんから用意してもらった食事を食べていく、卵に塩だけで味付けし焼いただけの卵焼き、トマトに、レタスを挟んだシンプルな食事を黙々と食べていく。

全員が食事を食べ終えた後も、話し合いは続いていく、この会話に私は付いて行くことが出来そうもないので、姫ちゃんの手記を読んでいく。

未来姫ちゃんが勧めるのだから何かしらヒントになるものが多くあると思う、姫ちゃんが研究している内容は時空に関するもの以外も数多くあるので、非情に興味深い、人体の構造とかも独自に調べているし、何よりも私が知りえない眉唾物の情報も書かれている。

何処で、知識を得ているのか不思議で仕方がない、情報源は何処なのだろうか?全部、未来姫ちゃんからの情報と言われたら納得してしまう。

姫ちゃんが長生きして、研鑽に次ぐ研鑽に術式への理解度を重ねていけば、私達では絶対に到達できない領域に姫ちゃんなら必ず到達するはず…
不敬かもしれないが姫ちゃんなら、遠い未来、始祖様を超えるほどの術式の理解度や応用、開発に関しては、凌駕するのだと感じている。

昼を過ぎても二人の会話は留まることが無かった、時折、聞こえてくる会話の内容が明らかに、封印術式から逸脱した内容になっている時もある、普通に魔道具談義に発展してたりするので、これはこれで、研究塔で行う業務内容と変わらないので、仕事場が私の部屋に変わっただけねっと、思いながら何杯目かわからない紅茶を淹れなおして二人に砂糖いる?っと確認して、多め!っと、言われたので多めに砂糖を入れて渡すと熱いのも気にせずにゴクゴクと飲み干す。

アレは熱すぎるだろうと、胃や食道を守るために、常温の水も出すと直ぐに飲み干した。やっぱり、熱かったのだろう…
これからは、周りが見えていない程、集中しているときは少し冷ましてから渡してあげよう、気が使える女として母親としての優しさをこういうところで伝えていかないとね。

そんなやり取りを続けていくとドアがノックされるので鍵は開けてますよーっと声を出すと、珍しく先輩が飲み物とか色々と両手に持って入ってきながら
「研究塔にもいねぇから、どこ行ったと思ったらよぉ、食堂の人が教えてくれてな、どうせなら差し入れも持ってきたってわけだ」
困ったやつだと言いながらテーブルの上に持ってきたものを置いていく。
大きな瓶になみなみと入った果実の香りがする飲み物をテーブルに置いて、珍しく紙袋に包まれているモノを取り出して、紙袋をお皿の上に広げると中身は、焼き菓子だった。
うん、悔しいけれど、女子力の高さはダントツで先輩が一番高い気がする。

先輩が椅子に座って二人の会話に耳を傾け始めると、会話の内容がどう見ても、姫ちゃんの体の事じゃなく、まったく違う魔道具の話や術式の話をしていることに驚きこちらを見て「俺の耳が遠いのか?二人はいつからこの会話を続けてんだ?」
声を掛けてくれるのですが、私もいつから会話が変わっているのか知らないのよね
「気が付くとって感じですよ先輩」
呆れた表情と仕草で返事を返すと「しゃぁねぇなぁ」頭をぼりぼりとかいた後、大きく手を叩く。その音で二人がびくっと反応し、何事かと先輩の方を見つめる
「議論がずれてんぞ、大元であるコレについての意見交換は終わったのか?」
テーブルの上に置かれた空っぽの袋を指さす、っていうか、うっかりしていたけれど、姫ちゃんまだネグリジェの恰好のままじゃない、下着が透けて見えているけれど…まぁ、先輩もいいお年ですし、気にしないのかしら?

…いや、気にするべきね

二人が、何処まで会話をしたのか思い出す様に首をひねっている間に、ささっと姫ちゃんにネグリジェの上から服を着せていく。
はい、これで人前に出しても問題なしっと

それからは、先輩が司会進行宜しく、会話がずれることなく、話が進んでいく、結論的に、ネグリジェは寝るとき様に7着作ることに、普段使い用7着、術式を発動するために機能をON、OFFできるタイプを作れないか研究する方針が決まった。

予算については、私が幾らか出すというと、なら、俺らも出すっと先輩と奥様も個人的に出してくれることになるのだが、姫ちゃんがいつか絶対に皆に返すから貸しにして欲しいと言われたので、いつかでいいからなっと、流すことにした。
まだまだ、甘えていい年齢なのだから、ここはね?大人に任せて欲しいってものよ!…私も決して裕福ってわけじゃないし、この街も予算が豊富にあるわけじゃないもの、むしろ…今の財政ってどういう状況なのか知らないけれど、確実に、何時もの如くカツカツよね?

それでも、この子の為なら何も惜しくはないわ

今後、実験や研究時に魔力が必要な場合は自身の魔力を使わないで、近くのスタッフ、もしくは、私や奥様を頼る方針となった。

その事を奥様と先輩が研究塔にいる全員に伝えるために、私の部屋から離れ、研究塔へ足を運んでくれるという申し出に甘える形となった。

二人っきりになった後は、未来姫ちゃんから受け取った陣を姫ちゃんの体に施すかどうかを話し合う、触媒となる血液がどれ程の魔力濃度や魔力因子を保有しているのかがわからないし、不完全である術式を刻むのは抵抗があるので、ある程度、実験してから行いたいという方針が決まる。

問題は実験をどうやって行うのかって部分である、人に施すのが一番、確実だけれど、人体実験になるし、失敗した後、成功した後のリスクが高すぎるので、誰かの体を使うわけにはいかない。

どうしたものかと悩んでいると「…かなり危険だけれど、人体を精製する?」…姫ちゃんからの意味不明な言葉に私の脳は思考が追い付かなかったし、理解できなかった。
これについてどの様に返事をすればいいのか、どんな風に返事を、どうやって返すべきか悩んでいた、研究者として応えるべきか、探求者として応えるべきか、母親として応えるべきか…

騎士様に恋い焦がれていた私として応えるべきか…

そう・・・姫ちゃんは私の研究ノートを読んだ、だからこそ、倫理に反するような提案もしてくれたのだろう、私がそれについて罪悪感や背徳感を覚えない人であると知っているから。

研究者として求めている答え
探求者として必須の技術として求めている答え
母親としては倫理に反する考えなので否定しないといけない答え
騎士様に恋い焦がれていた私としては喉から手が出るほど欲しい技術、悪魔がそれを囁いたら全てを捧げてもいい答え

全ての感情が拮抗し答えの出ない声にならない議論が私の脳内で活性化したため、動けないでいると姫ちゃんがあるページを捲り見せてくる

【使い魔の精製】

…ぁ、嗚呼、そ、そうよね、等身大の人体なんて精製できないわよね。
姫ちゃんが見せてくれた始祖様の技術の中に、魔力を糧にして一時的にこの世に肉体を持ち、意志は無くこちらの意のままに動かせる疑似的な肉体の精製と書かれている。
材料を見ても、人に近づけるだけでいいのなら、人の素体は要らない、爪とか髪の毛があるとコントロールがしやすい程度、後は豚などで代用が可能で、魔力に関しては魔石を体内に埋め込めば、魔石の中にある魔力分だけ稼働できる疑似的な肉体を精製できる。

つまり、それを用いて、疑似的に肉体を精製して、魔道具によって魔力の流れを観測して、術式によって疑似的に意識を繋いで動かして操作してみる。
その肉体に、封印術式を施してどの様に作用するのか確認すればいいってことね、へぇ~便利な技術があるものなのね。

脳裏に過った、内容を言葉にするのを躊躇ってよかった、本当に良かった…

その技術を用いれば疑似的に騎士様の肉体を復活させることが出来るんじゃないかってね、魂とか心とかの問題点があるから、騎士様をよみがえらせるなんてね、そんなこと、出来るわけ…できる わけ ない よね? ほんとうに そう かな?

しかい が ゆらめく いしきが とおい ばしょに ある いま わたしは どっちをみてどこをかんじどこをきいている

しかいのうらで くろい ほほえみが わたしを つつみこ
「お母さん?大丈夫?ねぇ?お母さん!?ねぇ!?だいじょうぶ!?」
視界に映る愛する娘の悲痛な叫びと表情で一瞬にして意識が肉体に戻ってくる、視界のゆらめきも無く、地に足がついている感覚もある、姫ちゃんの顔をみえるし、声も聞こえる、つい、縋る様に姫ちゃんを抱きしめると
「調子悪いの?だいじょうぶ?顔が真っ青だったよ?だいじょうぶ?ねぇ?」
今にも泣きそうな声で心配してくれる姫ちゃんの頭を撫でながら
「ちょっと、寝不足だったかしら?ごめんね、少し眩暈がしてたの、暫くの間、抱きしめてもいいかしら?」
華奢な姫ちゃんの体につい力を込めて抱きしめてしまう
「それくらい、いいよ。私も抱きしめられるの好きだもの」
頬を摺り寄せて甘えてくる姫ちゃんの仕草に私の心が満たされていくのがわかる、そうよ、何を馬鹿なことを考えるの、それは、もう、考えてはいけない禁忌、冒涜、騎士様の心を、生き様を踏みにじる行為よ、死者を弄んではいけないの、どんなに会いたくても縋りたくても、駄目なのよ、死者は死者、月の裏側に逝ってしまった人を呼び起こす行為はしてはいけないわ。



その考えに、姫ちゃんの願いに反しているということに私は気が付いていない、自然と私は姫ちゃんが求めてやまない生涯の研究テーマを否定していた…





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