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王位継承戦 Side-S 最終フェーズに向けて①
しおりを挟む午後には何とか体を起こして、病院で美容以外にも普通に不治の病とかも相談してくる人がいたので、それらに必要な素材などを用意してくれたら此方で薬を調合するのでとレシピを渡したりと、だんだん、医療学者としても認識される様になってきていることに驚きながら、根回しも続けていく。
後はもう消化試合だから、そこまでガッツリと根回しをする必要ないけど、念のためって感じかなー?
昨夜の出来事と、末席が交渉を完了した影響か、帰り際の報告では何処にも暗部の者や隠者が見当たらなかったみたい。
うん、他の王族も勝敗を決してしまったのだと理解したのか動かなくなったってことか、後、考えられるのが~、私がアレの派閥であると知れ渡ったってことだね、正確には与してないけれどね!
全てが決したのだと分かると肩の荷が下りるような感じがした。
後は、今の状況を続けていくためにも定期的に王都で何かしらの活動をしないといけないんだろうなぁ。めんどくせぇ…乗り掛かった舟だから、最後まで頑張らないといけないってわかってるから、避けたかったんだけどなぁ、しょうがないよね。
帰ってきてから、もうやる気がゼロ、馬ちゃんが心配そうにしていたけれど、遊んであげる余裕が無いのだ!
ソファーに座って溶けるしか私にできることはありませんってくらい、ソファーで微睡む…
昨夜は寝てなかったから、つっらぁ、ねっむぅ…
なんだろう、話し声がきこえる…
ゆっくりと瞼を開けてぼんやりと焦点の合わない視線を彷徨わせると複数の人達がいる?
目をこすりながら大きく背筋を伸ばすと
「おはようございます姫様」
懐かしい声が聞こえる、ぼやけた視界が徐々に鮮明になり、焦点が合う。
今回の作戦にとって一番の立役者である末席が紅茶を飲みながら、MMさんと将棋を楽しんでいた。
ルールブックも置いといたからこれなんだろうって感じで楽しんでいたのかな?戦局を呆けた頭で覗き込んでみると、うん、呆けた状況でも末席が圧勝しているのだとわかる、MMさんはこの手のゲームは苦手っぽいね。
若干、相手側がミスをしたら勝ち筋が残っている辺り、MMさんは逃げるのが上手いのかも。
「ゲームしながらで申し訳ありませんが報告してもよろしいですか?」
うん、いいよ~、たぶんだけどMMさんが途中下車を許してくれないからでしょ?MMさんの性格を考えると、勝負の途中で放棄するのを許してくれないだろうからね~。
勝負をしながらでも報告する余裕があるのは単純にMMさんが待った有というルールの性質上、永遠と待ったループに入ってるっぽいね。
待ったは回数制限しておかないとー、まぁ、暇つぶしでやってるからいいのかな?
将棋を指しながらの報告内容は知ってる内容だった。
私が集めた署名によって投票先がアレに流れる様にしてあり、現時点で確実に1000名近くの票が獲得できる、それも殆どが王族が切り捨てた票。
それプラス、始まる前からアレに与している派閥からの票をもってすれば、ほぼ間違いなく、アレが次の王に決まる、褒美にその票を集めたことにより宰相の道を確約してもらえたってことだよね。
後は、アレが私の命をまだ狙っていそうな件についてだけれど、こればっかりはどうしようもなさそうだし黙っておこう。
王位継承戦においては、ある程度ひと段落しているので、これから暫くは裏で蠢いている闇の組織達の解体作業って感じだね。
その闇の組織って言うのも、アレが一枚噛んでいるどころか、育んだ組織だけどね!それらが機能していると思っているから余裕綽々なんだろうな、その余裕を削ぎ落してやるよ。
それについては、私も参戦したほうがいいのか、確認をすると、今まで通り作戦を強固なものにするために民衆の支持を得る方がいいか、まぁそりゃそうだよね、
闇の組織達を解体していくのは良いんだけど、それの裏にいる奴らは誰か判明しているのか確認すると、アレはわかりきってるとして、他の支援者は、そうか、よその大陸の人達か。
概ね、予想通りかな、それにしても王都に蔓延る闇はたどれば最終的にアレに辿り着くっていう読みは大当たりってことだね。捕まえて吐かせた奴らを辿っていくと全部アレに辿り着いちゃったんだよなぁ…
報告会もあっさりと終わりをつげ、将棋の結末を紅茶でも飲みながら見守っていると筆頭騎士様がいつの間にか家に帰ってきており、ワイン片手に勝負を見守っていた。
ちらりと視線を向けると、何か憑き物が落ちたような顔をしていたので声を掛けてみるとやっぱり色々とあったみたい。
現王が退任されたら、この席を次代の騎士に譲ることが決まった、つまり、引退が決まったんだって。
長年の任務から解放された歓びからなのか、本当に一気に老けた?ってくらい、表情が穏やかになっている。
きっと、その選択肢が彼にとって幸いだったのかもしれないね、念のためにこっちの街に来る?って誘ってみたけれど、今は何も考えたくないと心の活力がなくなってしまったように静かに断られちゃった。
対局を見守りながら、末席が用意していた資料を手に取り内容を読んでは鼻で笑っている辺り、筆頭騎士様も王都に住まう闇たちに気が付いていたけれど手を出せていなかったって感じかな?
それとも、予想通り、現王も闇たちを束ねているのがアレだと把握しておきながら何もしてこなかった、当然、お付きの騎士である筆頭騎士様がそれを知らされてはいないわけがないよね…敵の多いアレを何度も何度も守らされてきたんだろうなぁ…
作戦も終盤に差し掛かると、特に大きな出来事もなさそうだし、後はゆったりと地道な活動だけかな…
それから数日の間は凄く平和だった、チャリテイーに来てくれたら人達の悩み相談をして、署名をしてもらって、何度も声を掛けてくれる熱心な信者の方にはこの後に開かれる小さな食事会という名の演説会場の場所を教える。
なので、チャリティーが終わった後は色んな場所で小さな演説を繰り返していた。
演説の際に邪魔されるんじゃないかなって思っていたけれど、闇の組織達が解体され続けているから、こちらにちょっかいをかける余裕がないみたいで、何事もなく平穏無事で、なおかつ順調に事が進んでいく。
夜には、普通に自分が王族だって言うのを気にせず、何食わぬ顔で屋敷に末席が顔を出せるくらい、周りからの干渉が無くむしろ、末席がここにいるというアピールにも繋がっているみたいで、方々から末席に取り入ろうと数多くの貴族がお忍びでやってくるって状況。
筆頭騎士様のお屋敷が完全に駆け込み寺って感じになっちゃった。
この光景も、お屋敷の主である筆頭騎士様はワイン片手に遠目で見るだけだった。でも、ほんのりと嬉しそうにしている様子だったから、今の状況を楽しんでいるのかな?
末席が言うには、アレが長きにわたって育て上げてきた膨れ上がった黒い部分は全てそぎ落としたかもしれないって嬉しそうにしていたから、末席を王の座に座らせても問題ないとは誰しもが思うだろうけれど、そうはいかないんだよね~。
アレを野放しにするのは、本当に危険なんだよね、ああ見えても、カリスマ性っていうのがアレにはあるから、下手に海を泳がせて隣国の大国にでも亡命されると厄介なんだよね、確実に力を蓄えて攻めてきそうな気がするから、この国が産んだ膿なんだから、この国で飼い殺しにするのが一番だよね?処刑出来たら一番なんだけど、王族を処刑するのは難しいからね。
それから二日後、私と末席が教会で話し合いをしていたら、予想外の出来事が発生する、まさかの襲撃にあってしまう。
敵の数は30名ほどで、恐らく、取りこぼした組織の人達が自暴自棄になって突っ込んできたって感じ。
襲撃に会うって言っても、武装した集団が各方面から集まっているって知らせも来ていたから、撃退は容易だったけどね。
全員捕まえて誰が仕掛けてきたのか念のために吐かせようとしたけれど、服毒して死んじゃったよ…
死んでまで相手に義理を通すなんてさよっぽどの忠誠心の高さだよね、そう考えると、組織の上層部とかで貴重な情報を持っているとか、だったのかな?
末席もこの状況を見て完全に王都に救う闇の部分は解体しきったのだと確信し、明日にはここで演説をしようと持ちかけてくる。
王都に蔓延る病は取り除いた、これによって正常化するだろう!やっと黒い部分の掃除はこれで終わり!!
後は、アレを逃さないように演説会場に誘導して足を止めれたら良し、止めれなかったら…申し訳ないけれど亡命をさせるわけにはいかないから王都から一定の距離、離れたら死んでもらう。
最後の恩情だよ?アレだって世界のどこかで必要な時があるはずだし、アレがいるからこそ、制御できる組織もある、調査の結果、海を越えた大陸にある大国との特殊な繋がりを唯一持っているのはアレだけなんだよね。
そのコネクションを奪いきるまでは失いたくはない。お母さんにその程度の理由で生かしているなんて知られたら、即座に殺しに行きそうだから言わないけどね!
世界は光だけじゃダメなんだよね、光の中に産まれる影も闇も、扱えれるようにならないと、この先、人類が生存するための闘いを生き延びていけない
光だけでいいのなら、アレは不要だから即座に殺すよ?今だったらやりようは幾らでもあるもの、アレを守る盾は機能していない、組織も解体された、長年、積み重ねてきたアレを支えるものは全て削ぎ落とした、暗殺なんて容易だもの、寧ろ、アレを恨んでるやつらがアレを殺そうと画策してるはずだから、アレも今の状況を理解していないわけがないから下手に動くと身の危険ってね、夜とか尚更、身動きが取れないでしょうしね。
さぁ、明日でふぃなーれ!
あーやっと、お母さんに会える~長かったー、医療班の協力のおかげで魔力も何とか持ってるし、死線ってほどの脅威も無かったけれど、人前で何かしらするのってやっぱり疲れるー。
貴族からね、美容関連とかで、新しい商売について話を持って来た人もいたけれどさー、商談とかそういうのはやっぱり苦手だな~、腹の探り合いなんてほんっと無意味!ぱぱっと取引とか終わらせたい!別に私は儲けたいわけじゃないから、もうたくさんあるし今後も自動的に儲け続けていくことになるから寧ろ、何処かでお金を使わないといけないくらいだから!悪意が無いのであれば、そっちが利益をとっていいから!もう、ぴゃぴゃっと商談を終えたい!!格式のある挨拶とか無駄!いらねぇ!
はぁ~あの人を王都から返してもらえないかなー?そんなに大臣になりたいのかなー?今に思えばめちゃくちゃ優秀だったんだろうなぁ財務の人ー!!給料めっちゃ出すからこっちで仕事してよーー!!
末席とは教会で解れて、真っすぐに屋敷に向かうんだけど、教会を出て馬車に乗るまでの間にねちっこい視線を感じたなぁ、たぶん、アレだろうね。
あの感じからして、確実に私の事を恨んでるんだろうな、格下として見ていた末席がここまで順調に功績を上げるとは想定していなかっただろうし、自分が育てた暗部たち、闇の組織達、他の大陸と繋がりがある隠者達…その全てを解体され、掌握され、挙句の果てに自分の派閥に着こうとしていた貴族達を丸々と囲みつつあるわけで…
自分が持つ全てを失い、今の立場から大きく失墜してしまったわけなんだからね。
格下である何もできない、何も成せない、死んでも構わない様な道端の石がここまで手際よく動けるはずが無いし、精鋭達に最新の装備を用意できるはずがない、裏に何がいる?探したら。私がいた、アレからすると私は全てを奪った女ってことだよね。
そりゃぁ、恨まれるか。そりゃぁ、殺したいわなぁ…まぁ、私もお前を殺したいがな…
当分は、命を虎視眈々と狙ってくるでしょうね、仕方がないよね、永遠に憎まれるだろう、それ程の事をしたのだと私も自覚しているから、恨まれる覚悟が無ければ手を上げてこんなことを提案して率先して実行しないよ。
何度でもかかってきな、その都度、鼻をへし折ってあげるから、私は全てを知らないけれど、貴方は私の大事な人を穢した、その罪は万死に値する。
上空から見下ろしてないで偶には地面に膝でもついてみて上を見上げてみたらいいんじゃない?そこでしか見えない世界を見て考え直せば助けてあげないことも無いけどね。
亡命しようとしたら問答無用で殺すけどね~、逃げられるのが一番厄介だから。
屋敷に帰ってくるとねちっこい視線が怖かったのか、それとも、その視線を一身に浴びている私を心配してくれたのか馬ちゃんが通せんぼまでしてきて顔を擦り付けてくるから櫛を借りて大丈夫だよと撫でてあげても、なかなか、開放してくれない。
使用人の方もこんな状況になるとは思ってもいなかったので、困惑しながらも一緒に馬ちゃんを宥めてあげた。
夜になると、ワイン片手に将棋を独りで刺している心労が祟って、やつれていて哀愁漂う筆頭騎士様がいたので一緒に将棋で遊んであげると嬉しそうにしている辺り、誰でも良いから傍にいて欲しい時期っぽいね、愚痴も何も言わず、お酒だけに慰めてもらっていたら心が病んじゃうよ?
だからといって手加減なんてしてあげないんだから!初心者だからって手は抜かない!アナグマ戦法じゃい!!私も詳しくないけれど、初心者キラーって名高い戦法なんでしょ?
完膚なきまで叩きのめしてあげるとすっきりとした顔でまた、遊ぼうなと笑顔で寝室に行く辺り、気持ちの切り替えは出来たのかな?
そうだったらいいな、王都には心が沈んだときに囁く何かが蠢ているからね、何度も解析しようとするんだけど、その都度、逃げられているから、確実に何かがいるんだろうけれど、対処しようがないかなー、いつか尻尾を掴んでやるからな!!
頭も使って、体も程よく疲れている、お風呂も気持ちよかった!これは、気持ちよく寝れそうだと私も使用人の部屋に向かおうとするとお母さん連合に捕まってしまう。
どうやら、お母さん連合も愛する旦那が心労の末に覇気が無くなってしまっているのが気になっているみたいでどういう状況になっているのか知りたいそうなので、全てを教えるわけにはいかないから、かいつまんで仕事の任を私のせいで解かれると教えてあげると、私は何も悪くないから気に病まないでと逆に心配されてしまった。
何となく事情を察したお母さん連合は、おめかしして寝室に突撃しに行ってる辺り、やっぱり愛がなせる業なんだろうなぁ、ちょっと羨ましいな、そこまで愛せる人に出会えるなんてね。
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