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王位継承戦 Side-S 最終フェーズ

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壇上の方から大きな声が聞こえてくるから劇が終わったのかな?大きな声がする中、ドアを叩いて出番だとシスターが教えてくれるので、末席と共に壇上へと向かって歩いていく。
自然と心は落ち着いている、やっぱり、人前で何かをするのに緊張とかしないタイプなのかも、寧ろ、ちょっとワクワクしちゃう。

程よい緊張感に包まれながら私たち二人が壇上に上がるとひと際大きな声援が聞こえてくる。

広場に集まった人達は前回の1000人以上を軽く超えていて、何処を見回しても人しか見えない、王都ってこんなにも人が居たんだね。

末席の人がマントを広げて大きな声で
「此度はこのような場所で、皆と顔を合わせれる機会をいただき誠に感謝いたします」
挨拶をして頭を下げると、あまり声援は湧き上がらなかった、王族がこの場にいることに困惑している人もいれば、歓迎していない人も居るのだろう。
多くの民衆がいる中、私は見逃さなかった、溶け込むようにしているけれど、一人だけ明確な敵意と殺気と、昨夜に感じたねっとりとした悪意を向けてくる人がいる。

アレが王族らしからぬ恰好で此方を見ている。

そうだよね、アレからすれば、王の座に座らせてあげると言っておきながら実は、末席を王の座に据える為に自身を油断させるための甘言だと思っているのでしょうね。
一度痛い目を見て反省してくれれば幸いなんだけどね、しないだろうな、あの手のタイプは。

末席の挨拶が終わったので私も一歩前に出て挨拶をする、優雅に貴族流の挨拶をして顔を上げると大きな歓声が沸き上がる
聞こえてくる声は、【開発の姫、魔道具の姫、俺らを導く白色の聖女、我らが王】不敬に当たる内容まで叫ぶ声が聞こえてくる、こらこら、王族が傍にいるのにその発言は危ないよ?
「このような場を設けて頂き、誠に感謝を申し上げたいと思います」
一言、たったの一行を言うだけで歓声が沸き上がる、それも前よりもより強く、明確に声に熱が籠っていてこの状況に心酔している感じが伝わってくる。
「私は以前にも言いました、回りくどいのは苦手だと、この様な、私のようなものに仰々しい服まで用意してくださったことには大変感謝しております」
スカートの両端を掴んでクルリと一回転してスカートを広げるようにして用意してもらった服を優雅に披露すると、黄色い声援も飛んでくる。
「だからといって!こんな格好しているからってお淑やかにはしないよ!私は私!何処に行ってもどんな格好をしても私は私で行くからね!どんなに着飾ろうと私は変わらない!みんなの味方だからね!」
壇上の前に居る全員を指さす様に腕を前に突き出し人差し指を真っすぐ伸ばしウィンクをしながらポーズを決めると、大きな歓声が更に湧き上がる、この瞬間だけは王都中の心が揃ったんじゃないかって思ってしまう。
指を下ろして、真っすぐに姿勢を正して声を出す
「王様が次の王を決めるために始めた次代の王を決める選挙戦、きっと、私の知らない場所で色んな演説が繰り広げられてきたと思います、本来であれば私のような一般人であり平民となる人物が選挙に関わるなんて誰も、想像だにしていなかったと思います。これに乗じて私は色んな事を裏でも表でもしてきました。どうして、王都が騒がしくなるこのタイミングなのか、それは、こんな状況だからこそ、私が動けたのだと感じております。色んな方面に動けたのは、ある人たちから後方から支援していただいたお陰もあり、不自由なく、大空を羽ばたく鳥のように羽を広げ自由に動き続けてこれました。私が動きつつけた結果、きっと、皆さんの周りでも色々と変化があったと思います、好ましい変化が起きた人もいれば、後ろ盾が無くなって不安になっている人もいると思います」

実際問題、私達が壊滅した組織に関連する商家は山ほどいる、商品を王都以外の村へと輸送時に盗賊たちに襲われないように売り上げの一部を上納金として渡していたり、盗賊たちに表立って取引はしていないが、商品を卸している貴族や商家もいた。

闇の実験施設に貧困層の人達を拉致するモラルを失った人達もいた。

平民でも、他者の命を商売道具として扱うような非道を行う人達も居れば、貧困層を陰ながら支援できないかと模索する人もいた。
私が起こしたバタフライエフェクトによって多くの人に影響を与えたのは認識している、その流れを良きものへと変えれるように導いて行けると私は信じている。

「私は、この先に必ず人類が一丸となって行動を起こさないといけない日が来ると考えています、その為には不必要だと感じた、王都に蔓延る悪を、闇を、人知れず殲滅し、力を削ぎ落し壊滅してきました」
この発言に騒めく人もいれば、既に知っている人もいるみたいで頷く人もいる。

人の口に戸は建てられない、うわさは広がっていく

私達に与する私の騎士や王都騎士団が、近隣でも噂になっている何かしら曰く付きの人物達を検挙しているのを見ている人もいれば、数か月前から最前線の街から発進する馬車を狙った山賊や盗賊たちを片っ端から捕まえては騎士団に運んでたりする姿を見ている人もいただろう。

「これによって、数多くの商人達から感謝されました、護衛を付けていても商品を根こそぎ奪われ、時には命を奪われた人達も数多くおり、騎士団達も調査に出てくれはしましたが解決の糸口すらつかめなかった事件は数多くあります、それを憂いて調査を密かに進めていた人物がいます」

腕を広げると、末席の王子が一歩前に出てくる

「それが彼です」

末席の王子が腕を上げて名乗り上げ、今まで殲滅して来た盗賊団の名前を上げていくと、盗賊たちが自分達の縄張りだと主張する為に掲げていた旗をシスター達が次々と広げていく

「彼が秘密裏に盗賊団を壊滅するように力添えをしてくれました、それだけじゃありません、彼の手腕によって今、王都に蔓延る人道の道から外れた悪の組織達は壊滅されました」
先ほどと同じように、王都のあちこちに蔓延る治安を悪くしていた組織の名前とそれらのシンボルとなるものを次々と、シスター達が広げて壊滅したのだとアピールしていく。

もう街は安全なのだと。暴力が支配するエリアが消えたのだと。

そう、ここだけで終えれば、彼が私の後ろ盾となり、成果を収めたようになるでしょうけれど、ここで終えてはいけない。ここで終えてしまうと、末席の王子が次の王になるから。

「そして!末席の王子である彼だけではこの偉業は成し遂げられません、悪の組織が何処に居るのかその全てを把握し、この機会をずっと待ち続けてきた賢者がいます!その人とは!」

大きな声でアレの名前を叫ぶと全員が嘘だと叫ぶように驚いていた。
うーん、民衆にまで黒い噂が広がる程、悪名高過ぎでしょ…

「信じられないと思いますが、真実です、彼は表立って動けないので、密かにこの様な機会を探し続けていました、きっと、彼だったらこの先も私達に歩み寄って、無謀な政治はしないと宣言もしてくれました、その証として、彼が王位についた際には隣に居る彼を右腕となる宰相というポジションに着任して貰うと、正式に契約書も交わしました!」
私の声と共に、末席がアレと契約を交わした公式の書類を天高く掲げると、しっかりとアレのサインと拇印が書かれているのを見て、集まった人達がどよめいている。

「私達では絶対に成しえなかったことです、今回の選挙という世間が浮つくタイミングで彼は動き出しました、自分の悪名を知っていても、行動を起こすのは今だと、私達に協力して欲しいと打診してくれたのです、これにより、悪は彼の策略によって滅せられたのです!!」
かなり強引で辻褄が会わないだろうけれど、こういうのでいいんだよね、民衆からしたら、真実を知る術なんて無いもの、一部の信者はどうして、アレを持ち上げるのか知ってるけどね。

これも、私が描いた策略だってね…

続けざまに末席が大きな声で

「俺は王には成らない、王に成ってしまっては皆との距離が開く!俺は、ある人に命を助けられた!その人はある闘いで命を落としてしまった!俺は、助けられたその人の心高き意志を継ぎたい!王という道ではなく、皆と共に歩めれるような人としてありたい、この街に住む全員と距離を作りたくない、皆の傍にいて声を聞き届けたい!なので、俺を王にするな!俺よりも…」

一瞬言葉に詰まりながらも、アレの名前を叫び、アレを支持するようにこの場にいる全員に呼びかける

視力を強化して、私にねっとりとした殺意を飛ばしてきた、亡命寸前の愚者がどう動くのか見定めてもらおうかな。
引き返せば、王に成れる、でも、この状態で王に成れば民意に背く様な事は出来ないし、力も削ぎ落とされて監視の目もついてしまう、飼い殺しの王になる。
引き返さず、他国にでも亡命すれば、末席を王に据えるだけ、そして、お前は殺す。

究極の2択

何方を選ぶ?
既に隠者はお前の背中を捉えているぞ…

悔しそうな顔をして、拳を握りしめ明確な殺気を私に全力で飛ばしてきて元来た道を戻る…飼い殺しがご所望ね、いいわ、後は末席がお前をコントロールしきれるかって問題になるから、巻き込まないでよ?


嗚呼、お母さん、やっと終わった、疲れたなぁ…


空を見上げると、快晴で雲一つない、空が私を祝福してくれるような気分になる。


その後はひたすら、末席の演説、というか力説?を何処か遠い世界のように聞きながら、姿勢を正して、気配を殺す様にしながらも時折、民衆に笑顔で手を振ってご機嫌取りをしながら演説が終わるのを待ち続ける。




そして、気が付けば大宴会だよ…

末席に与する為に集まった各派閥の代表、私が連れてきたメンバー全員、教会に属して関わってきた人達全員、病院でお世話になった人達全員、騎士団に属する偉いさんたちが一堂に集まっている、この人数を収容できる場所なんて決まっているよね、筆頭騎士様のご家族の皆様、ご協力感謝します。
庭が広くて良かったと、これ程はなく実感できたと嬉しそうにしていたけれど、迷惑じゃないなら、甘えてしまってもいいのかな?考えすぎも良くないし、家主が喜んでいるのなら問題なし!そうしよう。使用人の方達が忙しそうに走り回って顔が引きつっているけれど、見なかったことにしよう。

お孫さん達もお母さん連合もこの状況を楽しんでいるみたいで問題ないかな、うん、後方で使用人が駆け回る音が凄まじいけれど、聞かなかったことにしよう!!

周りをぐるりと見まわすと、医療班のメンバーが給仕の手伝いとか、MMさんが肉を焼いたりとかシチューを作ったりとか、手伝いもしているし問題ないかな?
忙しそうにしている人達に倣って私も仕事をしましょうかねっと、お集まりいただいた他所の人達に一人一人挨拶をしにいく。

各派閥の代表もこんな事態になるとは想定しておらず、末席に取り入ろうと必死みたいだけど、会話内容を聞いてみる限り、あっさりと受け入れてくれたことに安堵してたから、どうぞどうぞとお酒を勧めれば勧めるほど飲んでくれるから楽しかった。終盤はふっらふらになって呂律も回ってなかったけれど、粗相もなく酔いつぶれたので放置!

教会のシスターたちは私の騎士達と楽しそうにトークをしているので、近寄らないようにしました、流石にそこは、空気読むよ?

王都騎士団のお偉いさんたちはMMさんに、いつかリベンジしますからと、上半身の肌色を露出しながら筋肉アピールをして楽しそうに筋肉トークに花を咲かせていたのでむさくる…花の乙女は近寄らないようにしよっと♪

病院の先生達も静かにこの場を楽しんでいるように見えて、虎視眈々と私の、ううん、お母さんと医療の父が手塩にかけて育てた医療班を口説くチャンスを伺ってるね、常に視線が医療班に向けられているんだが?…あ!それで給仕係をかって出てくれたんだ!逃げる為か!…賢いな。

念のために釘さしとこっと♪

先生方に、引き抜きしたら舌引っこ抜くぞっと一人一人釘をさしにいったら、具体的に何処まで舌を抜きますか?舌を抜いても、声門がある限り私達は声を出しますし、それ以外にも方法は山ほどあります、ひとまずは、筆談という手もありますよっと知的に返してくるし、一番引き抜きたいのは私だって全員から歩み寄られるのはやめてもらってもいいかな?うっかり、術式が暴発しちゃいそうだけど?

そうそう、研究所の皆は、幼い人が多いからこういった場所は居場所がないので、遠慮して参加してくれなかったので、後日、研究所に差し入れする形になっちゃった。
まぁ、集団行動とか苦手そうだし、それはそれでいいかな?個人の主張は尊重するよ?

全員に挨拶するのは、終わったかな?張り付いた笑顔のまま、庭からリビングに移動すると、珍しく司祭様と筆頭騎士様がサシで飲んでいる、二人って面識あったんだ。
普通に考えればあるか、年齢もそこまで離れていなさそうだし、面識くらいあるよね?

二人が静かにワインを飲みながら何も話さないのも大人の飲み方ってやつかな?

そんな二人の横を通り過ぎてジュースを貰いに向かおうとするんだけど、めっちゃ視線を感じる…何?二人して用事があるの?
視線を合わさないように過ぎ去ろうとすると
「姫様」
…声を掛けてくるか、このタイミングで、まぁ、だいぶ前から話したいことがあるみたいだったし、受け止めてあげましょ
「お母さんを私にください」
「あげれるかぼけがぁ!」…ぇ!?唐突すぎない!?いきなりすぎて、何も考えずに反射的に答えちゃったよ!?
「お前に娘はやれん」お爺ちゃんはお爺ちゃんで、ドヤ顔で偉そうに発言するけど、この事態を把握してたの!?
ぁ、静かにお酒を飲んでいたわけじゃなくて、義父さんにアピールする許可を、承諾を得るために接待とかしていたってこと!?そして、私が許可したらアプローチかける予定だったの!?
突然の流れを途切れさせないように困惑する私を逃がさないようにがしっと私の手を掴んできて
「お願いします、絶対に幸せにしてみせます」
うっわ、目が座ってるマジの目だ、本気じゃん…これは茶化せないよね?
「私から許可は出せないよ、ちゃんと本人にアピールしてね?」
お母さんごめん、この人は愛ゆえに狂ってしまった末に狂信者となった精神構造だから、私から何も言えないの、ごめん!瀬戸際で止めれないからお母さんが直接、圧し折って!罪づくりなお母さんが悪いんだからね!!
「ちょっとまたんかい!!怪しいと睨んでいたらやっぱりか!お前もか!!」
顔を真っ赤にした末席が叫びながらこっちに来るし!?そういうのは当事者だけで話し合ってよ!私を巻き込まないで!!お母さんはどんだけ罪づくりなんだよ、もう!!

逃げるようにMMさんの後ろに隠れてやり過ごすことにしたよ、もう、色恋なんて、やだ!めんどくさい!!他所でやって!!
MMさんの近くには誰も寄ってこないので、椅子を置いてMMさんが作ったご飯を適度にあ~んと口を開けて待っていると放り込んでくれる♪美味しい!

その後はずっと、雛鳥宜しく、鋼鉄の肉壁の前には誰も近寄ってこないので、ずっと傍にいた。



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