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Dead End ユ キ・サクラ (19)

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私達の寮と言う名の建物から、外に出てから、しっかりと靴を履いて、神経を使う様に緊張しながら急ぎ足だった影響もあり、呼吸が落ち着かないので、一旦、深呼吸などをして呼吸を整え、ある程度、落ち着いたらやや気持ち早歩きで広場に駆け足で向かう。

駆け足っというか、早歩きぐらいの速度で歩きながらも、姿勢を正した弾みでつい、顔を上げて上空を見つめしまう。
星々が輝く夜空、でも、お月様のお顔はお見えにならない。うんうん、今日こそ完全に新月

っとなると、やっぱり、彼が出没するのは新月限定なのだろう、1日とてズレないって感じかな?

そんな推察をしながら早歩きが段々とスキップに変化していっているのかわからないような気分で広場に向かって進む。

前に向かって進めば進むほど、気分は、無我夢中、気分高揚、絶好調!!
ふんふんっと自然と鼻息が荒くなっているのは急ぎ足で動いている影響からだよね?きっとそうだよね?楽しみで興奮しているわけじゃないよ?

無我夢中、一心不乱の域に到達する手前くらいに広場に到着する。
到着して、一瞬だけ目を瞑って術式を探ってみる…やっぱり不可思議、どういう風に術式を組み上げ展開しているのか仕様がわからない。
どうやって構築し展開しているのか、全然、まったく、一ミリも理解できない術式によって特殊な空間が形成されている。

こんな意味不明摩訶不思議奇天烈な空間、未来からの声が無い状態だったら全力で敵の攻撃などを警戒するのだけれど、今回は完全に初見じゃない、既知の物なので、躊躇うことなく、この空間を作り出している相手に遠慮なんてしないで堂々と優雅に!空間の中に入り広場の中央に向かって歩いていく。


広場の中央には、空を見上げるように顔を上げている人物の背中が見えた。ついつい、彼が何を見ているのか視線の先を私も探してしまう。
視線の先は…見えないお月様だろうか?それとも、眩く輝き夜空を埋め尽くしている星々の輝きだろうか?それとも…彼はいったいなにをみているのだろうか?

私も、彼がみつめている世界をみれるのかな?一緒の世界を共有できるのかな?


遠くを見つめている彼の背中を見つめるだけで、どうしてだろうか、私の胸が締め付けられる様な、そんな不思議な感覚が内側から溢れ出てくるような気がする。
それにしても、どうしてだろうか?彼の後ろ姿を見ていると、伝わってくる、儚くて、脆くて、繊細なイメージ…彼の背中は男らしく堂々としているの…どうしてそんなイメージが伝わってくるのだろうか?

湧き上がるイメージを噛み締めるように暫く、傍から見たら惚けるような感じで、ずっと、静かに彼の後ろ姿を見つめていると、しびれを切らしたのか向こうから声を掛けてくれる。
「遠慮しないで声を掛けてくれてもいいんだがな?姫様」
声を掛けてくれたと思ったら、その場で、くるっと華麗にターンをするように回れ右をし、私の方に体を向けると、彼と私の視線が交差するだけ。
たった、たったそれだけで、私の頬が熱くなるのを感じる、彼の声が耳に届くだけで耳も熱を帯びてしまう。
「また、今夜も遊びに来るなんてね」
近くまでゆっくりと歩いて来る…柔らかな微笑み、だけど、少々呆れたような感じでゆっくりと歩いてい来る。
そんな彼になんて、どういう風に、どんな言葉で声を掛けたらいいのだろうか?直ぐに思い浮かぶことが無い、だって、私の頭の中は真っ白になってしまったから。
「子供は寝る時間だよっていうのは野暮な話だな、一度だけじゃなく二度目っとなれば、偶然なわけがない、前回も何か言いたそうにしていたしね。さぁ、要件があるのだろう?今宵も俺たちの出会いは闇の中、誰かに見られる事も無し、遠慮せずに語り明かそう、っとなるとだ、長話になるのであれば、立ち話っていうのも優雅ではない、さぁ、おいで、こっちのベンチで座って話そう」
優しく頭をぽんぽんっと撫でられたと思ったら、手を前に差し出してくれるので、差し出された手にそっと、優しく振れるように添えると、ゆっくりと丁寧に優しく指先をつまんでくれる。

たった、たった、それだけ、ほんの少し、頭を撫でられ、指先が触れ、指先が掴まれただけで、私の心臓が勢いよく跳ねるように脈打ち、心の水面が激しく波を産み出す。
産み出された衝動に翻弄されてしまったのか、私の足が力が抜けてしまったのか、小さくふらついてしまう。
「ん?今日は、調子が悪いのか?もっと、此方に体を預けてエスコートは任せてくれたまへ」
ふらついた瞬間に、舞踏会でダンスを踊る様に自然に、優雅に、さも当然のように、すっと腰に手を添えられる。添えられたと思ったら力強く体を引き寄せられ全身を支えられてしまう、貴族の女性たちが舞踏会で恋に落ちる理由が分かったかもしれない…彼の体温…吐息が…視線が…彼の存在全てが間近で感じられる。
「これでよしっと、大丈夫かい?あるけるかい?新月の夜だから、足元が見えにくいから、それもあって、ふらついただけかい?それとも、本当に体調が悪いのなら無理をしないいほうがいいぞ?」
心配そうに声を掛けてくれるのだが、此方としてはもうどうしたらいいのかわからないくらいまっしろだから、言葉を選べれない。
なので、こくこくと頷いて返事を返すだけしか出来ない。

私の心は真っ白…何も考えれない、彼の体から伝わってくる体温を、息吹を、鼓動を、力強さを感じるだけで…
私の全てが…満たされている気がする…

彼の腕に絡みつく様にしがみ付き、彼の細いにもかかわらず力強い腕に抱きしめられるような形でベンチの前に到着すると以前のようにハンカチを広げ、ベンチに敷いてくれる。
その一連の流れで、ハンカチをまだ返してないことを思い出し、ポケットに手を入れるが…準備不足だったぁ、部屋に置いてきちゃってる。この場に持ってきていなかった。

借りたものを返す機会があったのに逃してしまった事への懺悔の感情を噛み締めていると
「さぁ、レディ、席の準備は整いましたよ、どうぞ、お掛けになってください」
じっと佇んでいるのを、彼が座る準備が整ったのだという合図を待っているのだと勘違いしたのか、優しくベンチの前に誘導され、流される様にベンチに座らせてもらう。
すると、彼もまた、ベンチに座るのだが、一連の動作が非常に優雅だった…やっぱり、所作の全てに気品がある。

本当の本当に別人なのだろう。看病してくれたユキさんとは違い過ぎる。所作も雰囲気も仕草も、何もかもが別人だ。

お互いベンチに座ったからと言って直ぐに会話が始まるわけでもなかった。
彼は私が会話を切り出すのを待ってくれているのか顔を上げて星を眺め始める、つい、私もそれに倣って遠い遠い星々を見ながら、見えないはずの照れてしまって顔を隠している月を探す様に眺めていると、静かな時間に彼から視線を外した影響なのか、次第に、私の心も落ち着きを取り戻してく

心音も落ち着いて、脈もたぶん、落ち着いてきている、ふぅっと軽く吐息を漏らした後、視線をゆっくりと隣にいる人物に向けると、表情が穏やかと言うか、何だろう?星々を見ている様で見ていない?何処か遠い場所を見ているような気がする
「…貴方はどこからきたの?」
その哀愁漂う、悲し気な表情を見て居たら、自然と声が出てしまった
「…どこからっか、俺は何処からきたのだろうな、始まりっというか、生まれは西方の小さな小さな国…この街の規模を見てしまうと恥ずかしくなるほどに小さな国…君の視点からすれば小さな村といったほうがいいだろうな」
切なそうな表情?哀愁?郷愁?…貴方は王族だと言っていた、だとしたら、王都出身じゃないの?
「この世界の地図を見たわけではないから、正確な位置まではわからないんだけどな」
そう言いながら、すっと立ち上がって、近くに落ちていた小枝を拾い、此方に戻ってきて、優雅に此方に振動が伝わってこない様に丁寧にベンチに座った後、先ほど拾ってきた小枝を使って地面に線を描いていく?…話の流れからしてきっと、地図なのだろう
「ここが、王都で…ここが、君の街だ、っで、俺が生まれ育ち治めていた村は、ここだ」
示された場所は、王都から見て西の方角、私が生まれたのは王都から見て東の方角…
確かに、その方角には今も街がある、一つの街じゃなく複数の街っとうか集落と言うか、村というか、とにかく、人が住む場所があるけれど、具体的に何処の街だろう?
色街って言うと失礼だけど、そういった事に力を入れている街が一番近いのかな?それとも、小さいけれど、素朴な街、主な産業は豚や鶏を育成している畜産街の方かな?
「国としての産業、主な収入は、漁が主だったな、漁をして自分達が食べない多くとれた魚は干したりと日持ちする様にしたりして、それでも余りそうなら次の日に近隣の国に干した魚を売りにいったりしていた。漁だけでは鉄を購入するだけで国が傾く、当然、魚以外の収穫物もあったさ、木になる固い実があってな、昔は床に落とすとコロコロとした音がなることから、コロの実って呼んでいたよ。今はどういう風な名前なのか、知らないんだが、それが良く取れてな」
固い木の実、ってことは、ドングリとかだろうか?…あれを収穫していたの?
「地面に落ちている木の実を暫く水に浸してから、木臼や木槌で叩いて叩いて、粉にして、それも売ったりしたし、自分達で食べたりもした。食べ方はな、粉と水を一緒に手でこねてから暫く寝かせたやつを焼いて食べるんだよ」
トントンっと当時の仕草を見せてくれる。
木でできた道具を主に使用していたってことは当時は、鉱石の類は貴重だったのかもしれない。
私の知る限りでは、西の方は鉱石が採れないことは無いけれど、少ない。産出量っと言うか、採取のしやすさはダントツで東の方がしやすい。
地面を掘れば出てくるくらい、簡単によく取れるから採取するなら東の方が楽なんだよね。
「味付けは、好みがわかれるかな~。海が近いって言うのもあってな、各々どうやって食べるのか、好みが分かれていたよ。普通に焼いて食べる人もいれば、焼く前に海水を少量エッセンスとして表面に塗ってから焼いて食べたりする人もいたな、まぁ、基本的に主食は魚だよ、木の実はしっかりと下処理をしないとえぐい味わいで食べれた物じゃないから、念入りに加工しないといけないから、どうしても時間が必要になってくる。まぁ、逆に言えば、時間がある時に仕込んで、食べるっという流れが主だったかな。目を閉じれば今でも思出せる色褪せない思いで、懐かしい日々さ…」
遠い遠い目をしている…西の方でそういった食文化があるなんて、聞いたことが無い。
単純に伝わっていないだけだろうか?それに、西の海って漁に適していないと思うんだけど?
浜辺なんて殆ど無いし、海に面している箇所の殆どが、断崖絶壁となっているし、漁をしようにも海は荒れている、大きな船を停留させる場所がない…
小さな浜辺があることはあるから、そこで、投網とかで地引網に近い形で漁をすれば出来ない事も無い?…うーん、どうなんだろう?
「畑作もしていたぞ?主に日持ちする加工が出来る作物がメインでな、暖かい時期に収穫しては干したり、潰して粉にしたりしていたよ。そうやってマメに働いて働いて…来る寒い時期に向けて皆で手を取り合って、子供も大人も頑張って寒くなる時期に備えて、保存食を作って倉庫に備蓄もしていた。そうしないとな、寒い時期は海なんて入れたものじゃないから漁獲量が大きく減ってしまうんだよ」
海に入るっとうことは、素潜り漁ってことだろうか?あの大荒れの海を?
大荒れの海の中に飛び込み海中を泳いで漁をする人達を想像してみるが、溺れて死ぬイメージしか湧いてこない。
…どうやってだろうか?卓越した泳ぎの技術があるのだろうか?それとも、私が知らない波が穏やかな場所があるのかもしれない。
「寒い時期は寒い時期で仕事が山積みだったりするんだよ、そうだな、例えば、俺の国から少し…そうだな、此方側だな、北側に移動すると寒い時期は雪がたくさん積もるんだ。その雪を蓄えないといけないんだよ、暖かい時期に備えてな。雪が積もる場所に雪を保存する為に掘った大きな洞窟?地下?なんて表現したらいいのだろうか?とにかく、俺たちの手で掘った穴、氷室に雪を詰め込んで暖かい季節に向かて雪や氷を備えたりするために寒い時期は寒い時期で大忙し、いつだって仕事は山積み…だったなぁ、あの作業は、指先が痛くて辛かったのを覚えているよ」
手をすりすりと擦り合わせた後、じっと手を見つめている…
悲しいのか、当時を懐かしんでいるのか、不思議な表情をしながらじっと、自身の手を眺めるように傍観するような感じで見つめている…
「この手は、本当に、綺麗だ…当時と大違いだ。俺の手はな、力仕事が主だったし、国を守るために暇があれば剣を振っていたから…ゴツゴツと岩のように硬くて、手のひらはマメだらけだった…それなのに、この手はとても、ツルツルとしていてすべすべとしていて、綺麗だ、女性でもこんなに綺麗な手はいなかった…そういうモノとは縁が遠いっということになる、良い時代になったものだ…」
王様なのに、力仕事ばっかりしていたの?当時は、人の数が少なかったとか?
「そうだぞ、王様っていってもな、俺の村には150人しかいなかったからな…人手が常に足らなかったさ、王って言ってもな、他所の国、今の時代からすれば集落って呼ばれても差しさわりのない規模の村だな…でな、当時は一つ所に人が集まり、合計で100人を越えたらその人たちを統べる人ってのが自然と生まれるんだよ、統べるという事は国が生まれたってことになる。そして、その村に名前が生まれるって流れさ、そんな小さな集落が山ほどあったんだよ、当時はな」
私の知らない歴史の話、考古学とか、歴史学に興味が薄かったから知らないだけかもしれない…
王都に保管されている書物にはもっと詳しく書かれているかもしれない、それを期待するとしよう。誰に期待するのかって?宰相に一応、頼んでいるんだよね。
頼んでいることは、いるんだけど、未だに宰相からは調べてみますからの返事は無いんだよね、本当に調べているのかな?
それにね、私だって王都から見て西の街には取引で出向くことって、あるから、その周囲をある程度は知ってるんだけど、どうしても、彼が語るイメージと私が抱く西の街々が繋がらない…時の流れで変化したってことだよね…考えられるのが死の50年と言われる時代のせいかも。
「俺のような特に何かに秀でた才能があるわけでもないのに王と言う立場になったのも世襲制だからで特に他の意味は無いんだよ、何度も考えたことがあったよ、俺が王様にならずに、近隣諸国に統合されて王の座を明け渡していればってね、俺の祖先が開拓した場所ってだけで、病で亡くなった父上から王の椅子を受け継いだ、受け継いだときは、何も変わらない日々の仕事に追われて平和に何事も無く次の世代へと繋げていくのだと思っていたのに…運悪く、戦争が始まってしまってな…」
戦争?…確か、初代聖女様が王たちと共に戦争を止めて、人類をまとめ上げこの大陸の中央に王都を築いたっていうのが私の知ってる歴史だけど…
もしかして、王たちっていうのは、各地の小さな国々の王ってことだったの?私はてっきり、今の王都を築いた王族の一族たちが武力をもって各地を制圧して、大陸の中央に現王都を建国したのかと思っていたんだけど、史実は、違うっぽい?歴史に興味が無いからうろ覚えなんだよなぁ…
そんな事を考えていると、彼の目にはうっすらと涙が滲み出ていた…
「…やめよう、当時の戦争の話は思い出すのは辛い…違う質問はないのか、姫様」
今にも、声に出して泣きだしそうな程、張り詰めた表情で此方を見つめられる、瞳から涙が零れ落ちそう…
涙が零れ落ちそうな、その瞳から様々な感情が伝わってきて、私も悲しい気持ちになってしまう。
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