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Dead End ユUキ・サクラ (1)

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だからね、やろうと思えば、個々のパーツを精製して、組み立てる方式も可能ではある。
可能ではあるが、組み立てるのが私独りだとすると、何日かかるんだって話…
そこが問題なんだよなぁ、複数人が一つの体を組み立てる為に集まって、浸透水式を同時で一気に組み立てれるのなら、問題無いと思うんだけど…
その複数人っていうのがネック!浸透水式ってさ、ほんっと、これってさぁって言いたくなるくらい難易度が高すぎて扱えれそうな人がいないんだよなぁ!!
現状、私とお母さん二人だけ!二人で全部の血管や神経、骨や筋肉を繋いでいくなんて出来るかっての!!何時間かかるんだっての!

なので~、この案は出来る可能性を秘めている、だけれど、それを成し遂げるには二人の人物の負担が途轍もなく…机上の空論だけど可能なんだよ?出来るんだよ?
でも、二人の精神力が耐えれるのかって話!!

机上の空論どまりって感じかな?浸透水式が出来る人が増えれば、何とかなる。
消費魔力に関しては、追々、それ用の陣を作って補助すればどうにでもなる、かな?

次の代案が、いっそのこと全身を精製してみるのはどうかって話
これはね、ぶっちゃけカエルでも出来たし、鶏でも出来た。
豚は試していない。

カエルの時も鶏の時も流れは同じ。
培養液の中で卵から、オタマジャクシに、そして、カエルへと変化していくのをしっかりと観察できた。
つっても、卵を拾ってきて培養液の中で育てたってだけなんだけどね、それでも、普通に孵化するよりもかなり早くカエルへと成長させることが出来た。
鶏も同じ要領かな、大人の鶏に成長させるのに、普通に育てるよりも段違いに早かった。

つまり、命の基さえあれば、成長を促進させて肉体を産み出す事は出来る。
記憶領域は常に混濁させておけば、自我が芽生える事も無いでしょ?いわば、強制的に胎児のままにするって感じかな?

…だからかな、カエルも、鶏も培養液から出したら、体の動かし方すらわからなくて、横になったまま動かなかったんだよね。産声すらなかったかも、知れない。

生きる為に必要な経験値がゼロだから、どうすればいいのか、わからないって状態だもんなぁ、そうなるのはわかっていたけどね。
目の当たりにすると、推察通り予測通りってことでにんまりしちゃったけれど、命を弄んでしまったかなっていう感想も出てくるわけ。
カエルも鶏も可食できそうな部位は美味しくいただきました!…ごめん、あんまり美味しくなかった。

だからね、人も同じ、精子と卵子を取り出して、培養液の中で着床すればいいだけ、後はそれが育つ環境を用意すればいいんだよ。
これを人を培養するっとなれば、子宮とか臓器を機能させればいいだけでしょ?ってなるわけ。
その部分だけを培養して、培養液の中で疑似的に神経と血管などを魔道具と繋いで、強引に稼働させてその中で赤ちゃんを産み出せばいい。
ある程度、大きくなったら取り出して、再度、培養液に放り込んで、加速させるように肉体を大きくすればいい。

問題があるとすれば、自我が芽生える間に、記憶を移すって事、かな?

これに関しては、魂の同調っという技を用いれば可能であると、私は考えているわけ!
…ただね、これには大きな問題があって、その肉体に記憶を移したい人が魂の同調を扱えれる、しかも達人の域にまで、到達してもらわないといけないってことかな?
邪法でいくのであれば、叔母様がお母さんの肉体に魂を移した術式、それを用いれば、やれないこともないはずなんだけど…

それを知る術が残されていないってことかな…残された資料を読み漁っても、具体的な術式は記載されていなかった…
魔道具を用いることしかわからなかった、その魔道具も発見した段階で危険な香りしかしないから二度と起動させないように融かす様にして破棄した。

危険な香りがしなかったら、徹底的に分解して、解析して!その技術を取り込みたかったなぁ!!

はー残念!残念だなぁ!…なーんてね、ふふり、渡りに舟って言葉がまさに今の状況!
勇気くんだったら、それに近しい術式、知ってるんじゃないの?つってね!
どんな時だって希望はある!つってね!

だからこそ、安受けあいも出来るってわーけ!完全に道が閉ざされているわけじゃない、可能性があるからこそ了承できるってもんだよ?
不可能じゃない、可能だから、それに向かって全力を尽くすだけ!ってね!

「お話終わったよ姫様!」
悪い顔をしている状態で後ろから声を掛けられてしまうので、顔をムニムニっと触って表情筋を一旦弛めてリセット。
こほんと咳払いをして振り返ると
「…ごめんね。何度も迷惑をかけちゃった」
淋しそうな笑顔が心臓を貫いた気がした…だって、私は、私達は…この顔を知っているから、嫌と言う程、知ってしまっているから。
…彼女は腹を括ったのだろう、表に出れなくなることを…つまり、うん。

この世界での消滅を受け入れたっという事だ。

勇気くんが表に出る限り、ユキさんが表に出ることは無い…
幸いにして、この街にユキさんの事を深く知る人物はいない、中身が入れ替わったとしても猫被っていたのをやめたのだろうくらいで受け止めてくれるだろう。
腹を括り、淋しそうな笑顔を見てしまったからか、私の心にも何かトゲみたいなのモノが刺さった状態だったのかちくちく?ううん、ズクズクと痛い。
数多くの死を体験し、絶望し、未来を幾度となく諦めざるをえなかった多くの私達が世界に残していった笑顔をする彼女を、彼女の心を淋しさで埋め尽くしてはいけないと、自然と、彼女に手を伸ばし、抱きしめてしまっていた。

「いいんだよ。何度でも迷惑かけて、そのたびに、私が頑張って抵抗してみせるから…」
彼女もまた私の中にある寂しさ、辛さを感じ取ったのか、お互いを慰めあう様に私の背に手を回し力を込めて抱きしめ返されてしまう
「…ううん、もう、大丈夫。私が表に出ない限り、もう…迷惑なんてかけないから」
悲痛な心の叫びだ、涙を流しているのが伝わってくる、意外と、責任感が強い子だったんだね。
ごめんね。私が…私達が、至らないばっかりに…君から一時的とはいえ自由を奪ってしまう形を選択させてしまった。
声無く鳴き声を流し突ける彼女の背中を優しく撫で、ぽんぽんっとあやしながら
「いつかね、今すぐは無理でも、貴女の体を創造してみせるからね、だから、心を強く持ってね」
「…姫様」
鼻声で呼ばれる、その声に宿した意味がどれ程までに重いのか受け止めて見せる。
「人は、人を作れないよ…作るとしたら赤ちゃんだけってことだけど、結婚するの?」
んおっと?斜め上の答えに辿り着いてない?勇気くん説明した?
『…』
おい!説明してないんかい!困ったらだんまりだよ、全く!
腰を掴んでべりっと引きはがして
「残念ながら、モテてモテて仕方がない私だけどー私に選ばれる栄誉ある男性はいないの」
…っち、反応なしか、多少なりとも反応があればなぁ。
「赤ちゃんは…ごめんなさい、不可能だけれど、私がね、ここで何を研究しているか、わかる?どうして、ユキさんをここに連れてきたのか、わかる、よね?」
言われたように周囲を見渡すと、培養液の中に浮かんでいる形が未形成の錬成途中の肉片を見て
「食糧問題の解決?お肉を大きくする…研究?」
…言わんとする意味がわかるけどぉ!この子って何?察しが悪い?鋭いようで鈍い?
…いや違う、そもそもが、こんな大それた研究なんて、並大抵の人が抱く内容じゃない、わかるわけがない、よね。
ユキさんから離れ、大きな大きな試験管の前に立ち。大きく腕を広げる。
「ここにあるのは、新しい医療の形!奇跡を私達の手で再現する!それは、奇跡ではなく技術として確立させる!!」
大きく声を出すと、目を輝かせてこちらを見ている、先ほどの曇った淋しそうな笑顔は消えて行こうとしている。
「私達は!奇跡を、その手で叶える!教会が教え伝えている伝説の人物、聖女様の奇跡を技術によって再現する!失った四肢や、病気で切除しなくてはいけなくなってしまった臓器、失った体のパーツ…欠損を余儀なくされてしまった未来を、可能性を消してしまった部位を!!私達は、拒絶反応という不可思議な現象を起こさせない、自分自身の細胞によって失った四肢を!臓器を!培養し!失った未来を取り戻す!!」
ばんっと、肉片が入っている大きな試験管を叩く。私程度の力じゃ、試験管を揺らす事も出来ないし、中に浮かんでる肉片が揺れる事すらない。
でも、私の意気込みがユキさんには伝わっていると信じ
「果ては!ユキさんのように魂と肉体の不一致を克服させる!神の手違い?過ち?それとも試練?…それを乗り越える!私達人類の知恵によって!!」
自然と輝きを取り戻しつつある綺麗な黒い瞳をした少女が手を前に出し小さな拍手を送ってくれる。
「私は!宣言する!!新たな肉体を創造する!そして!その肉体に魂を移す技術を確立させる!!これによって、性別の不一致と言う神様の手違いを私達の手によって正す!!」
小さな拍手が徐々に熱が籠っていくのを感じる、奏でるBeatsのテンポが上がっていくじゃん!
「未来を諦めるな!夢を諦めるな!私が貴女を救う!!救ってみせる!!この私に!!」
すぅぅっと息を吸い込んでいく、Beatsがどんどん早くなっている!私のテンションもアゲアゲだぁ!
「まっかせて!!」
うおおおおおおおっとユキさんが声を上げて一緒に手を突き上げてくれている。
不思議と、ユキさんの周りには色んな人の姿が見えた…小さな子供達が、一緒に楽しそうな笑顔で両手を天に向かって突き上げてくれている。


その姿を見て、私の瞳にも小さな輝きが宿り、零れ落ちようとしてしまう。
零れ落ちないように必死に上を向き、光を受け止めていく。


残滓の一人、その涙だろう。何処かの私が願った光景なのだろう。
この瞬間の為に、私は…自分の時間を捨ててでも頑張ったかいがあったのだと、今までの頑張りが報われたような気がした。

二人だけだと思われた、ライブ会場は数多くの大きな声援で幕を閉じた。

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