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Dead End ユUキ・サクラ 妖闘桜散 (20)

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…さて、過去の私が口笛や指笛を吹いたり、外堀埋めるマンを称える様に叫んだりする声が私の体を通り抜けて喉から漏れてきそうだから、そうなる前に、彼の蛮行を止めてあげないとね。
それに、うざがらみをされている勇気くんを助けることが出来るのは私だけ…だよね。うん。この周囲にお爺ちゃんを注意できる人物はいない。
さぁ、今度は、私が助け舟にならないとね、だんだんと、うざがらみされている孫の視線が鋭くなっていっている、実のお爺ちゃんに向けていい視線じゃないよ?

余りそう言う発言ってのは、本人たちがいる場所で言うのはどうかと思うよ~っと、笑顔だけど目は笑うことなく軽く威圧を込めて釘を刺す。
おお、怖い怖いと勇気くんから体を離してからお道化て見せるが、勇気くんの冷ややかな視線に変化はなかった。
その瞳にお爺ちゃんは分が悪いと判断し、少しだけ距離を置く様に離れていく。
少し寂しそうな表情をしていても勇気くんの態度は変わることが無い辺り、こういったやり取りは昔からなのだろう

いいなぁ、私ってさ、実のお爺ちゃんと過ごしていないからこういう関係ってさ、ちょっと、ううん、結構あこがれちゃうかも。
一緒に遊んでくれる家族かぁ…いなかったなぁ。弟や妹は遊んであげていたからノーカンだよね?

お爺ちゃんが離れてから、何食わぬ顔で此方の様子を見ている姿を見て
「はぁ…まったく、困った爺さんだ」
困ったって言いながらも、表情は穏やかで、少し口角も上がっている。二人の関係性がよくわかる。
二人の関係性を理解しているけれども、一応ね、様式美みたいなもの。
そうかな?っと小さく彼にだけ聞こえる様に否定してから…自分はお爺ちゃんに振り回されていないのか?ストレスに感じていないのか?どうなのかと思い返してみると…うん、ノーコメント!困った爺さんだなぁ!否定しきれないや。

「サクラも同罪だ、この後に広がって伝わっていく爺さんの発言の余波を放置しているだろう?随所で否定しないってのは、いけない。と、俺は思うぞ?」
うん、勇気くんの言い分は勿論わかる。色恋の部分を注意したのではなく偉い立場の人として振舞い方を間違えるなって事でしょ?
この街を統括している幹部の一人が、個に肩入れしているのではないかって思われるのが良くないって言いたいんでしょ?

でもなぁー、ほら?私ってさ、昔から気に入った人物を優先する様に動いているし、個にがっつりと肩入れしまくってきているから、今更じゃない?古くからこの街にいる人達は何も思わないよ?有象無象よりも、私は大事な人を優先する。
これって当たり前じゃない?そりゃぁ、大事な人がこの世全てを滅ぼすって言い始めて凶行に及んだら、ちょっと考えるけど。

それにね、お爺ちゃんが発言する頻度を考えて欲しい。
「何度も何度も、方々に向けて訂正してくのってさ、どう考えても面倒じゃん?人の口に戸は立てられぬっていうじゃん?だからさ、放置でいいかなって?」
思い当たる節が多いのか深く頷いている。王様ってのは大変だよね。
「それにね、悪い事ばっかりじゃないんだよ?お陰様で、取引先にほぼ確実にいる変な虫が寄ってこなくなったから私としては便利だよ?」
王族を守ってきたっていう威光は貴族の隅々にまで届いている、お爺ちゃんの影響力はとても高い。

そんなお爺ちゃんが暇をしている時があったからさ、おじいちゃ~んって甘えるように声をかけてからかな?
貴族との取引に行くときに護衛でついて来てくれることになったの。

護衛だから当然、行動は共にしないといけないよね?
だからと言って、我が物顔でスタスタと私の横に並んで率先して取引するための客間に入って、堂々とソファータイプの長椅子にどかっと座って、何をしている?ここだぞ?っと、ポンポンっと椅子を叩いてからこっちにおいでっと、手招きされた私の心境を考えてよ、完全にお爺ちゃんの仕事場に遊びにきた孫だったよ…

呼ばれて座るとね、第一声が私よりも先なんだよね~…
毎度のことながら、毎回さらっと、俺の孫になる人だから下手なことするなよ、ってかる~く圧を飛ばすんだよね。
…毎度毎度、二回目合う人にも同じように堂々と宣言するから、冗談ではなく本気なのだと貴族達も気圧されて何もしてこなくなった。

貴族達も、王国最強の剣にして盾が目の前にいて耳に胼胝ができるくらいに、圧を込めて宣言されるとね~手を出す事なんてね、出来るわけも無いって考えるわけだ。
貴族からすれば、私の前にどう考えても超えることが出来ない壁が瞬間的に生まれちゃったわけになる。
そんな壁を乗り越えてまで私が持つ財力に手を出そうという不届きな考えに至ることが無くなり、お爺ちゃんの行動によって私を懐柔しようなんて野心を抱いている人達の心を次々と圧し折ってくれたんだよね。

過去の私達が色んな場所で経験してきた悪辣な所業達が一切合切なくなった。
ああ、守られているんだなぁって、大事に抱きしめられる様な感覚にね、惚れそうになっちゃったのは内緒。

具体的に何が無くなったかと言うと、社交界での流し目とか、あからさまな誘いも無くなった。
貴族の夜会でね~、この手のサインをね、見逃すと本当の本当にいざこざが起きるから見つけ次第、近寄って、その芽を摘んで踏みつけないといけないから、毎度のことながら大変だったんだよね。
他にも、その空気に耐え切れなくなってちょっと休憩しようと夜風に当たっている時を狙いすましてやってくるんだよね!どうでもいい人物が!
その相手もしなくてよくなったし、媚薬が入ったワインを飲まされそうにならなくなったし、良いことづくめだったからね。元筆頭騎士の影響力は王都全てに響き渡る。

それ程迄の強者が傍に居るという安心感は…麻薬に近い、一度触れてしまうと離れることが出来なくなる。
この強者が自身の手札から抜け、他に行ったと考えると頭を抱えたくなる…そうだよ、思い返せば、お爺ちゃんと私が行動をともにすればするほど情けない男が表舞台に出なくなった気がする。
どんだけ弱虫毛虫なんだよあいつ…
王である己を守る人物達を冷静に客観的に見てしまったかもしれないね、目の前にいる近衛兵達とお爺ちゃんを比較しちゃいけないよ。
私だって今まで出会ってきた人の中で対人戦においては一番だと感じてしまう程に全ての技量が洗練されている。
そんな人物が、命がけで王国が秘宝を守り続けていたんだから経験だって豊富だろうし、培ってきたノウハウが違い過ぎる、そんなお爺ちゃんよりも近衛兵達の実力が劣っているって感じるのは当然じゃないかな?
っていうか、それだけで、安心して表舞台に出れないなんて…はぁ、ほんっと情けない男、王族として心も体も弱すぎる。
心身ともに鍛えなおしてこいっての。

そんな一連の流れがあるから、私としてはお爺ちゃんが起こす行動に関しては、ある程度は制止する。
けれども!余りにも傍若無人で頭が痛くなったりする、けれども!心の底から嫌う事なんて出来ない、出来るわけがない。

運命共同体である、勇気くんには、私が貴族社会でこういった面倒なことに巻き込まれていた経験があることを魂の同調で知っている、だからこそ、凡その事情は把握してくれている、そんな彼だからこそ、ほんのわずかな言葉だけでも、なるほど、一理あるっと、納得してくれる。
此方の事情を直ぐに理解して、私の心情を直ぐに察してくれて、そして、私の言葉を素直に受け止めて頷いてくれる。
誰にも話せない事情を理解してくれる過去現在未来、私の唯一の理解者…
受け止めるだけでも辛く、触れるだけでも痛く、音を聞くだけでも発狂してしまう…
熱した鉄球のような私の全てを…彼は苦痛を噛み締め乍ら我が事の様に受け止め、抱きしめてくれる…

誰も真似できることのできない父性を持ち合わせているのに、ハゲデブ親父みたいに変な解釈をすることなく、真っすぐに受け止めてくれる純粋なところ…好きだなぁ。

…な・の・で!!私の意思とは関係なく外堀をきっちりと埋めていこうとする人はね、と~~っても、貴重だから強く止める気は無かったりする、にしし。何時か振り向かせてやるんだから!

因みに…
勇気くんが戦士長になる前から彼のポテンシャル、頭角を見抜き、彼の想い人になるべく言い寄る人達が後を絶ちません!!
この国が一夫多妻制じゃなかったら私達の心がどうなるか…想像したくない!!私は…やるときは、やる、もん…彼の心が私から離れるって考えただけで

…狂ってしまう、自信がある…

彼に言い寄る人達が余りにも増えてきたから、最初はね、魔眼に魅入られたかな?って思ってたら、違ったんだよね。各々がちゃんと、勇気くんのここが好きだというポイントがしっかりとしていて、何となく好きって感じのふわっとした感想じゃなかった。ガチ恋だった…
それ以降、色々と調べてみたらね、驚いたことにユキさんの時と違って、勇気くんが表に出ている時ってね、魔眼の影響が薄いみたい?
どうしてだろう?魂が女性じゃないと真なる効果を発揮しない、とか?魅了という力に溺れやすいのは男性が多いから?ってこと?
ん~…こればっかりは、人の心だからどの様に作用しているのか検証しにくから、調べようが無いんだよなぁ。調べるとしたら勇気くんの事を何一つ知らない状況で心理的変化がどう動いたのか調べないといけない、この前提だけでも難しいのに、さらに難題がある…だって、ユキさんを表にだして、勇気くんを表に出してっなんて事情、何も知らない人にさ明かす事なんて出来ない…できっこないよ。

っま、魅了の魔眼の効果がどの程度なのか検証する迄も無く、それの効果を抜いても、彼はモテまくっているから、魅了の魔眼対策何て無意味なんですけどね!!
始祖様の絵画を見た人は、勇気くんを見た瞬間に始祖様の再来だと感じ、始祖様の様に崇めすり寄ってくる。
始祖様の敬虔なる信徒ではなく聖女信仰を良しとする敬虔なる信徒も、彼の美貌の前では…骨どころか魂を抜かれて一瞬で始祖様進行に鞍替えする程にね…
敬虔なる教会の信徒以外にもね、美を見て育ち、英を見て育ち、義を抱き育った武家出身の戦乙女ちゃん達も彼の美貌や武勲によって、ガンガン心を射貫かれてて、当家に欲しいとアプローチ合戦が凄い。

気が付けば彼のファンクラブが発足していて、今では規模が把握できない程に膨れ上がっているらしい…
ファンクラブの規模に関しては、メイドちゃんが調べてくれたから間違いないんじゃないかな?
因みにメイドちゃんはモテる人が嫌いみたいだから、勇気くんの事を警戒している。っていうか、単純に男性が苦手なんだと思う。

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