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Dead End ユUキ・サクラ 妖闘桜散 (63)

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「うん、そこは変わらないよ、予定通り左部隊の部隊長と言うポジションは私が引き継いで、マリンさんだけが右部隊に合流って感じ、予定変更は移動するタイミングが早くなっただけ、っで、ここから小さな変更点かな?カジカさんがいる場所に向かう時にね、一緒に右第3部隊も連れて行って欲しいんだよね、マリンさんの休憩が終わるころには広場で待機してる、はずだよ」
小さな変更点を伝え終わると、ガンガンっと己の拳をぶつける様に手甲を叩いている
「うし!それじゃ後は任せたよ姫様!」
「うん!こっちはまかせて!逆にそっちを任せたよ!」
「応さ!」
ニカっと豪快な笑顔の後、斧を手に取ってドスドスと地面を揺らしながら転送の陣が設置してあるセーフティエリアに向かって駆けだしていく。
大きな後姿を見送り続けるていると、誰も彼女の後をついて行かないけど?えっと、予定だとマリンさんが下がる時は一緒に下がって少しの間だけど、セーフティエリアとかで軽く休憩を取ってから此方に戻ってきてもらう予定だったんだけれど?
誰も休憩に戻ろうとせずに、彼女の後ろ姿を騎士や戦士達が敬礼をして見送っている…

うーん、どうしよう。
感慨深いのもわかるけれど、君たちも一旦、休憩で戻ってもいいんだけど?
ちょっと作戦が早まったけど、休憩時間は休憩してね?これから先、休憩する時間が減っていく可能性が高いからね?

どうしたものかと悩みながら彼らの行動を見守る。
されど、誰一人として敬礼している騎士や戦士達が休憩をするためにここから動く気配が無い。
どうして、動かないのかその理由にすぐ気が付く。自分が司令官であることを思い出す。

…ぁ、私が許可を出さない限り勝手に動けないか、そうだよね、大雑把な作戦概要しか、皆には伝えてなかったっけ?
ダメだなー私も、この先の事で頭がいっぱいで気遣いができてないや。
「疲れてる人たちは一旦、セーフティエリアに移動して休憩してきてよ?何なら、マリンさんと一緒に街に戻って3時間くらい休息してきてもいいよ?」
「いえ!自分達はまだまだ戦えます!」
予定としてはマリンさんが後退するタイミングで休憩を取ってもらう予定だったけれど、予定が早まったから、出撃したてなのかも?現場の士気的にまだまだ体力余っていそうな雰囲気だし、彼らの言葉を尊重しようかな。
「んじゃ、命令!さっきの爆発音で敵が集まってくるよ!全力で殲滅!予測として大型種が混在した中型種の群れが来るからね!人型も警戒!」
「応!」
ガシャっと派手な音が複数の鎧から鳴り、気迫のこもった良い返事が空へと飛び立っていく。
普段なら注意する程の声量だけど、今は気にすること必要が無い、派手な音を鳴らしたところで先ほどの爆発音に比べたら些細ってね、敵が向かってくるのは判り切っている、派手に音を鳴らしたって良いよ。

遠くから聞こえてくるであろう足音を警戒しつつ
「後は…敵の波が落ち着いてきたら休憩をとりに一旦帰還してね、その時に、うん、転がっている邪魔な敵の死骸を片付けておきたいかな?素材として利用もしたいからね、休憩ついでに街に持ち帰ってね!持ち帰ったら」
視界の端に薄っすらと見える森に向かって指を刺す、指示した森、そこには大型種や人型が多く目撃される危険な森、デッドラインで死闘が待っている、邪魔をされないためにも挟撃されないためにも先手として潰さないといけない森
「左方面奥側にある森を焼くためにね、投石部隊に声を掛けて出撃してもらって!その後は…しばし休息かな?」
司令官として次の指示を出していると、警戒を怠らないで聴力を強化していると…遠くで物音が聞こえた、死の大地で物音なんて何か決まっている。
「さぁ、ご馳走が大地を揺らして飛び出してくるよ!!総員構え!!」
号令を出すと、体に魔力が満たされていくのが分かる、視線を後方に向けると光の柱が消えていくのが見えた
私が指示を出す前から魔力転送装置を使って魔石に魔力を充填させてくれる。良い連携!!良い判断!!

迎え討つ準備は完璧!何が来ようが全て喰らってあげる!!

総員、力強く得物と小槌を抜き襲い掛かって来るであろう獣共に向けて構えていると、遠くから多くの足音が聞こえてくる…

敵の種類を音でもある程度は把握できる。
魔力を聴覚に集中させ音を細かく広い、分析する…

大勢の足音の中には…重量感が伴った足音もする…大型種か…タイプはどれかな?
視力に魔力を注ぐ…低い姿勢の中に、一つだけ大きいのが混ざっている、大きな点が一つ、熊タイプか。

久方ぶりのご馳走に舌なめずりしちゃいそう…

数多くの殺したい奴らが群れを成して私を楽しませてくれようとしている、自然と笑みが零れてしまう。
邪悪な感情に対して一つの瞳が大声で文句を叫んでくれたおかげで負のスパイラルに陥ることなく、我に返る。

うん!うん!いけないいけない!
快楽の為じゃなくて愛する旦那様を迎える為に!だよね!…お邪魔な奴らを駆逐しますか!!

「小型種を多数確認!シャインスパーク用意!中型種殲滅用意!大型種熊タイプ!!」
号令を出し急接近してくる敵を迎え撃つ!!

波のようにうねる黒い点が此方に向かってくる、全てを一対一で倒すなんて馬鹿のすること…
視力を強化し、対象物との距離を測り、射程圏内に来るのをしばし待つ…進行方向予測する必要も無し!
足音も良し!黒い点の大きさも良し!距離が頃合いかな!
「放て!!」
声と同時に大量の弓矢が放たれる。だが、弓矢が敵に届くことは無い、それが作戦だもの。
まずは、乱戦混戦状態で大量に湧き出てくると意外と被害が出てしまう、この近辺では珍しい鼠どもを削る!!
シャインスパークが入った袋を弓兵に打たせて地面にばらまいてシャインスパークによって鼠どもを削るのが目的!弓矢で削るのが目的じゃないし、敵も馬鹿じゃない私達が放つ程度の密度じゃ仕留めきれないからね。

視力を強化して、敵が近寄ってくるのをしばし待つ…

鼠共が、シャインスパークがばら撒かれた地点を通過するのを目視で確認!!
シャインスパークを遠隔起動!無数の数えきれない細く鋭い光の柱が空をへと昇る!
そして、直ぐに次の一手を放つ!!
「第二射!放て!!」
多くの弓矢が空を駆け抜けていく最中も、天に向かって無数の鋭く細い光が数えきれないほど輝き続けている。無数の光が消えると耳を塞ぎたくなるような悲痛な叫び声が此方に届く。

されど、大地を鳴らす行軍の足音は止まらない。それもまた狙い!
仲間意識が無い他の獣共に、行軍を止めてしまった傷ついた鼠どもが踏まれて死ぬ!

その間も油断することなくシャインスパークを弓兵達に射出してもらい敵の進行方向にばら撒いてもらう。
中型種と言えど、多少のダメージに繋がるからね、機動力を少しでも削ってしまえば此方の方が圧倒的に有利となる。敵が唯一誇る数の有利、機動力の利点を奪う!

中型種がばら撒いた地点に到着!遠隔操作で起動!
先ほどと同じ光景が広がる、天に向かって無数の鋭く細い光が数えきれないほど輝いた。
違う点は耳を塞ぎたくなるような叫び声が無いってことくらいかな、中型種であれば、あれくらいなら耐えれる痛みってことね!
だけど、音でわかる、行軍の音に乱れが出ている!敵の群れに対して僅かでも確実にダメージを与えている実感がわく!行軍の数を大幅に減らしたけれどこの程度でどうにかなるほど中型種は脆くは無いってのは重々承知ってね。

多少傷つこうが走れる獣共は殺意を込めて人間へ飛び掛かってくる。待ち構えていた戦士や騎士達にね…

至る所を光で焼かれて穴だらけだというのに向かってくる。

傷だらけだというのに、持ちえる牙を決死の覚悟で人の急所に向けて飛び掛かってくる鼠や兎。
だけどね、そんな弱々しい動きじゃ私達に攻撃を当てる事なんて出来るわけがない。
お前たちが真なる獣であれば、無数の傷によって悲鳴を上げながら住処へと逃げ帰るのが道理だというのに…

溜息が出てしまうよ、お前らの作為的な生き方に。

飛び掛かってくる獣の形をした獣とは理が大きく外れた何かを戦士や騎士達がインパクト小槌改光で確実に動きを止めていく。
インパクト小槌は火薬機構を捨て新たな構造としてシャインスパークを先端に取り付けているっていう構造故に使い捨てとなる小槌。
使用後は後方部隊がいる方向にぶん投げてシャインスパークを先端に再セットしてもらって投げ返してもらう、今すぐ必要であれば投げ返してもらい、足元に落ちてるインパクト小槌改光を拾って攻撃のサイクルを行う。そうしないと、刃こぼれとかによって得物が損耗するからね。

乱戦状態で無ければ、術式部隊と共に居る後方支援部達が直ぐに拾って魔道具を先端に再セットして、彼らを守護する騎士が此方まで届けてくれる予定だけど、乱戦状態になるから悠長に走って届けるのは非効率だよね?投げ返せば良いのに、まったく、護衛の騎士に役目を与えるべきとかどうでも良くない?護衛は護衛として傍に居とけっての、死の大地で護衛を務めるってだけでも大役だってのが馬鹿にはわからないんだろうね。まぁ、馬鹿の意見は無視でいいよって伝えているから投げ返してくれるでしょ。

戦士や騎士達には得意の得物があるのに、どうしてこんなまだるっこしいことをしているのかって?決まってるじゃん、武器は消耗品だからね!
敵の数が多ければ多い程、私達の武器は消耗していくからね!
長期戦を見据えての武器選択ってね!!
この先に控えているであろう大型&人型種に効果的でない武器から消費していく!
この戦いにおいて隙を与えぬ&敵の虚を突く短期決戦が理想だという意見が多いけれど、それは相手を下に見過ぎている。
知恵無き獣だと嘲笑った作戦…過去に何度も失敗しているのにそれが分かっていない馬鹿がいる。

理想通りに行くほど先生は甘くない、備える事、考えることを止めてはいけない。
この群が何を意味するのか読まないと足元を掬われる

中型種が接近する足音の中に地面を叩く様な重低音が聞こえてくる。
そろそろ射程圏内かな?
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